欧州政治リスクが意識されて日本株軟調。今後の見通しは?
投資情報部 淺井一郎
2024/06/17
6/17(月)の日経平均は大幅に下落し、一時5/30(木)以来となる38,000円割れとなる場面がありました。
株安の背景には様々な要因があると考えられます。
1つ目の要因は米国と日本の金利低下です。先週、米国では6/10(月)に4.5%前後だった10年国債利回りが、6/14(金)にかけて一時4.2%割れへ金利低下が進みました。金利低下の背景には、米国の金融政策を巡ってハト派的な見方が広がったことです。
先週6/11・12開催のFOMC(連邦公開市場委員会)では、市場で注目されていたFOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)の中で、2024年の利下げ回数予想(中央値)について前回(3月時)に3回の利下げ(0.25%pt×3回)が予想されていたのに対し、今回は1回の利下げ予想に大きく修正されました。この変更自体は、タカ派的なサプライズですが、FOMC前に発表された5月消費者物価が市場予想を下回ったことが大きく材料視され、FOMCの結果を受けながらも、市場では利下げ期待が根強く意識され、10年国債利回りは低下しました。
一方、国内では6/13・14開催の日銀金融政策決定会合において、事前予想通り、金融正常化政策の一環としての国債買い入れ策の減額方針が発表されました。しかし、減額の規模は市場への影響を考慮して次回会合で発表する方針が示されるなど、やや踏み込み切れていない印象が残る結果。市場では日銀の決定がややハト派的と受け止められると、国内金利が低下しました。そして国内外の金利低下を受けて、銀行などの金利敏感な金融株を中心に軟調な展開。また、米金利の低下で円安トレンドに歯止めがかかるとの見方が強まるなか、輸出株などについても上値の重い展開となりました。
2つ目の要因は自動車株の下落でしょう。6/3、トヨタ自動車など大手自動車メーカーで自動車などの量産に必要な「型式指定」の認証不正が発覚し、対象銘柄への売りが続いている模様です。一部報道によると、トヨタ自動車は認証不正の対象となる3車種について、7月末まで生産停止を継続すると報じられています。6月に入り、同社の株価は11営業日中、9営業日で下落するなど、影響が長引いていると見られます。この点については、操業停止による業績への影響が判明することで、株価調整は一巡してくるものと考えられます。
そして3つ目が欧州の政治リスクです。欧州では6/6~6/9にかけてEU加盟各国で行われた欧州議会選挙において、極右政党が躍進。この影響でEUの中心国の1つであるフランスでは、マクロン大統領が下院の解散を決断し、総選挙が行われることになりました(フランス下院選挙は6/30(初回投票)、7/7(決選投票)に予定)。市場では、バラマキ的な財政運営など財政悪化につながりかねない極右勢力の台頭への懸念が強まっており、欧州金融市場は株安・債券高のリスク回避的な動きとなっています。
欧州の政治リスクが日本株に及ぼす影響と聞いても、あまりピンとこない方が多いかもしれません。しかし、日本取引所グループのデータによると、海外投資家による日本株売買のうち、欧州投資家が占める割合は7割以上となっています。欧州の政治リスクが強まり、投資家のリスク回避姿勢が強まり、欧州投資家のマネーの動きが鈍くなると、日本株の上昇を支える投資家の買いが期待し難くなるなどの影響が生じる可能性があります。
本日の日本株の下落については、3つ目の要因が特に大きく意識されている可能性があります。その場合、欧州政治リスクが緩和することが、株価反転のきっかけになりますが、それにはやや時間がかかる可能性があります。当面、日経平均はやや上値の重い展開になる可能性があるでしょう。
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