新NISAで日経平均は堅調?年後半相場の物色ポイントは?

新NISAで日経平均は堅調?年後半相場の物色ポイントは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/07/09

日経平均、約3ヵ月ぶりに最高値を更新!米株も好調

7月第1週(7/1-7/5)の日経平均は、前週末比1,329円29銭高(+3.36%)となり、週足ベースで続伸。2週間の上昇幅は2,300円超に上り、7/4(木)は過去最高値を約3ヵ月ぶりに更新しました。週初は前週に続き、金融等を中心としたバリュー株が上昇をけん引。また、ドル高円安水準が維持されたことで、輸出関連株への買いも継続した形です。週半ば以降は、米テック株の上昇が追い風となり、半導体関連株などに買いが入りました。

同期間の米国市場も好調で、期中のS&P500とナスダックは4日続伸し、7/5(金)に最高値を更新。期中の景況指数が弱含みとなったことや、6月雇用統計で労働市場の減速感が示され、FRBによる年内利下げ開始観測が強まりました。金利先物市場では、9月利下げ開始観測が、58%(6/28)→72%(7/7)まで上昇しています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/28~7/5・図表7)の首位は、フリマアプリ大手のメルカリ(4385)でした。特筆すべき新たな動意材料はありませんでしたが、5日続伸し、合計20%超の大幅高となりました。また前週に続き、防衛銘柄のパフォーマンスも堅調で、三菱重工業(7011)、IHI(7013)、川崎重工業(7012)が揃ってランクイン。地政学リスクの悪化のほか、11月米大統領選でトランプ元大統領が当選するとの見方が強まったことが影響したもようです。同氏は、欧州や日本に軍事費の負担増を求めており、防衛関連株に思惑買いが入りました。アップル株が上昇し、部品を供給するSCREENホールディングス (7735)や太陽誘電 (6976)も連れ高した格好です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/28~7/5・図表8)の首位は、レーザーテック(6920)でした。空売りファンドに不正会計疑義を指摘されていた中、6/28(金)に7月付でのCFO交代を発表。会社側は疑義を否定しているものの、不安感から売りが生じたもようです。

7月第2週(7/8-12)の日経平均は、下落スタート。調整が続いたほか、ETFの分配金捻出のため8日(月)と10日(水)に1兆円強の売り需要が発生するとの予想が広がったことが重しとなりました。しかし、S&P500やナスダックが最高値を更新したことで、リスクオンムードが拡大。7/9(火)は上昇して寄り付いた格好です。週内は、パウエルFRB議長証言や米銀行決算、インフレ指標の発表など重要イベントが目白押しで、それらの動向に注目が集まる展開が予想されます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/28~7/5)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/28~7/5)

新NISAで日経平均は堅調?年後半相場の物色ポイントは?

2024年の株式市場も早くも後半戦に突入しました。本稿では前半戦(1-6月期)の相場を振り返り、後半戦に向けた注目ポイントを考察していきます。

まず、1-6月期の日経平均騰落率は+18.3%。年初から株高基調が続き2/22にはバブル崩壊前の高値38,915円を突破し、更に3/22には40,888円(騰落率+22.2%)に達しました。1-3月期の日経平均騰落率は+20.6%と高い上昇率となった一方、4-6月期の騰落率は▲1.9%と上昇が一服しました。

もっとも7月に入ると日経平均は再び株高基調となり、7/2(火)に40,000円の大台を回復すると、7/5(金)には一時41,000円台に乗せました。今年は新NISA元年で、年初から個人投資家の新規マネー流入が株式市場の話題となりました。6月はサラリーマンの賞与支給時期に加え、今年は定額減税が行われたこともあり、このタイミングで新NISAを通じたマネー流入が活性化した可能性があります。

また、投資部門別売買動向を見ると、海外投資家の日本株買い(現物株)は、6月第4週に6週間ぶりに買い越しに転じました。春先以降、停滞気味にあった海外投資家による日本株物色が再び動き始めた可能性があります。7月から8月の国内市場は、売買代金が低調になるなど市場エネルギーが不足しがちですが、今年は例年と少し様相が異なる可能性があり要注目です。

図表9 日経平均株価(日足)

次にセクター別の物色動向を見てみます。図表10は東証株価指数(TOPIX)をベースに、東証業種別指数の騰落率を一覧にしたグラフです。2024年6月末までの年初来業種別騰落率で上位を占めているのは、保険(1位)、銀行(3位)、証券・商品先物(4位)などの金融株です。米国金利の上昇や、日銀が3月に実質マイナス金利政策の解除に踏み切るなど、少しずつ金融引き締めへと舵が切られる中、内外の金利上昇が追い風になっていると見られます。また、石油・石炭(2位)、鉱業(8位)などのエネルギー関連、非鉄(5位)、卸売(総合商社、6位)など資源関連業種も堅調でした。

一方、騰落率の下位は繊維(30位)、パルプ・紙(31位)などの素材業種、空運(32位)や陸運(33位)などの運輸関連業種など、景気変動の影響を受け難いディフェンシブ業種が相対的に低調となりました。このうち、運輸関連はコロナ禍で大きく落ち込んだ業績が、経済正常化と共に回復しましたが、その業績回復の動きが一服してきたことが嫌気されていると見られます。

輸送機(11位)は24年3月までの騰落率が+35.9%と業種別でトップの騰落率だったものの、4-6月期が低調に推移し順位を落とすことになりました。春先以降、海外投資家による日本株買いの動きが一服したことや、一部自動車メーカーによる『型式指定』と呼ばれる認証制度における不正問題などが株価の重石になったと考えられます。後半相場では不正問題による影響一巡と海外投資家による日本株買いの動きを手がかかりに、株価の巻き返しを期待したいところです。

図表10 東証業種別指数の騰落率

最後、図表11は日経平均採用銘柄(225銘柄)をベースにした個別銘柄の騰落率で、前半の騰落率上位と下位の銘柄を掲載しました。同表では24年6月末の騰落率と共に、1-3月期、4-6月期騰落率を表記しました。1-6月期の騰落率1位はフジクラ。1-3月期、4-6月期でも1位となっており、まさに上半期の株式市場をリードし続けた銘柄と言えるでしょう。同社と古河電気工業(騰落率6位)は電線大手の一角であり、光ファイバーケーブルなどデータセンター向けの投資拡大期待が業績拡大に寄与しています。生成AI(人工知能)関連の日本株で人気化した銘柄と言えます。

また、騰落率上位には三菱重工(2位)、川崎重工(4位)、IHI(10位)といった重工株や日本製鋼所(8位)など、防衛関連銘柄が堅調に推移しました。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化していることに加え、イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への侵攻など、地政学リスクが意識されたと思われます。また冒頭でご説明したように、11月米大統領選でトランプ元大統領が当選するとの見方が強まったことが影響したもようです。

騰落率3位は三越伊勢丹HD。コロナ禍からの経済正常化、円安進展を背景に訪日外国人旅行者の回復が続く中、インバウンド関連銘柄として、根強い物色が続いています。

一方、ハイテク・半導体関連銘柄ではディスコが1-6月期騰落率の上位(9位)にランキングされていますが、同セクターにおける代表銘柄ともいえる東京エレクトロン(同39位)やアドバンテスト(同44位)については、思ったほど?騰落率が高くありませんでした。これらの銘柄は1-3月期の上昇相場では、相場のリード役でしたが、4-6月期は高値警戒感などから上値の重い展開になった模様です。もっとも、米国ではAI関連を筆頭にハイテク関連銘柄が堅調に推移しており、日本のハイテク株にも再び物色が戻る可能性がありその株価動向が注目されるでしょう。

図表11 日経平均採用銘柄の騰落率

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