アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~年後半に活躍期待の銘柄を探る!アップル、ウーバー、エアビー!?~

投資情報部 榮 聡
2024/07/08
先週は6/27(木)のTV討論会でトランプ氏優位とみて上昇していた米10年国債利回りが弱い経済指標を受けて反落、テクノロジー株が一段と買われてS&P500指数とナスダック指数が最高値を更新しました。今週の株価材料として、6月物価指標、米10年国債利回りの動き、4-6月期決算発表の開始、などが注目されます。
今週は年後半に活躍が期待される業種の代表的銘柄から、アップル(AAPL)、シェブロン(CVX)、フリーポート マクモラン(FCX)、エアビー アンド ビー(ABNB)、ウーバー テクノロジーズ(UBER)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

3月から4月にかけての押し幅の倍返しをほぼ達成しました。テクニカル的に達成感が出やすく、利益確定売りが嵩む可能性に注意が必要とみられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は6/27(木)終値~7/5(金)終値です。)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 3.4% | 9.3% | 19.5% |
一般消費財・サービス | 2.3% | 7.1% | 5.4% |
コミュニケーションサービス | 2.2% | 7.0% | 10.7% |
S&P500 | 1.5% | 4.1% | 7.0% |
金融 | 1.3% | 0.4% | -0.5% |
生活必需品 | 0.6% | 0.0% | 4.7% |
不動産 | 0.3% | 1.2% | -1.0% |
素材 | -0.5% | -1.7% | -5.2% |
資本財・サービス | -0.5% | -0.6% | -3.4% |
公益事業 | -0.5% | -1.3% | 4.5% |
エネルギー | -0.9% | 0.9% | -7.4% |
ヘルスケア | -1.0% | -1.1% | 1.2% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
テスラ | 27.4% |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | 7.8% |
ブロードコム | 7.4% |
アドビ | 5.8% |
アップル | 5.7% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ナイキ | -19.9% |
ダナハー | -5.0% |
ブリストル マイヤーズ スクイブ | -4.5% |
ディア | -4.4% |
ウォルト・ディズニー・カンパニー | -4.1% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.0%、ダウ平均は0.7%、ナスダック指数は3.5%の上昇でした。
6/27(木)に開催された大統領選挙のTV討論会でトランプ前大統領優位(財政支出拡大が見込まれる)とみて上昇していた米10年国債利回りが弱い景気指標を受けて反落、成長企業を中心に物色され、S&P500指数とナスダック指数は史上最高値を更新しました。
また、7/2(火)に発表されたテスラの4-6月期販売台数は前年同期比マイナスであったものの、市場予想を上回って株式は大幅続伸となり、成長企業株買いへの刺激となりました。
経済指標では、6月ADP雇用統計、7月ISM非製造業景気指数が弱く、金利低下の要因となりました。6月雇用統計の非農業部門雇用者数は前月比20.6万人増と市場予想を上回りましたが、5月分が27.2万人から21.8万人へ大幅に下方修正となり、雇用市場の鈍化トレンドが継続しているとの捉え方になったとみられます。
業種指数では、騰落率トップの「情報技術」はアップル、ブロードコムやソフトウェア株がけん引しました。「一般消費財・サービス」はテスラが貢献しています。
個別株で上昇が目立ったテスラ(TSLA)は、4-6月期の販売台数は前年同期比4.8%減でしたが、市場予想は上回りました。最近中国製EVに対する関税引き上げの動きが広がっているほか、AI関連として再評価する声も聞こえます。一方、下落が目立ったナイキ B(NKE)は、3-5月期の北米売上が市場予想を下回り、2025年5月期の売上は前年比一桁台半ばの減収、6-8月期は約10%の減収を見込んでいることが嫌気されました。新興メーカーとの競合激化が懸念されています。
今週の米国株式
S&P500指数は来年2025年予想EPSの277ポイントに対して20倍に到達しています。今年年末のターゲット株価でもおかしくない水準で、割高感が気にされる可能性がありそうです。
また、6/10(月)掲載の本レポートでは、当面の高値目途として3月~4月にかけての押し幅の「倍返し」となる5,575ポイントをあげましたが、7/5(金)にこれをほぼ達成しています。テクニカル的には、当面の上昇相場を出し切った可能性が指摘できるでしょう。
今週の株価材料として、6月物価指標、米10年国債利回りの動き、4-6月期決算発表の開始、などが注目されます。
6月物価指標では、引き続きインフレ鈍化の傾向が確認されるか注目です。米国の6月消費者物価指数は、総合指数が前年比+3.1%の予想(前月は同+3.3%)、コア指数が前年比+3.4%の予想(前月は同+3.4%)です。一方、6月の生産者物価指数では、下掲のように前月から伸び率が上昇する予想となっています。
米10年国債利回りは、TV討論会を受けてトランプ優位と判断、財政赤字拡大懸念から、4.2%台から4.4%台後半まで上昇した。しかし、その後に発表された景気指標が弱く、利下げ期待が高まったことから反落となり、変動が大きくなっています。今週は3年、10年、30年の国債入札の動向にも注目です。
4-6月期決算では、S&P500指数採用企業のEPSが前年同期比8.8%増の予想で、1-3月期実績の同5.9%増から加速して好調が予想されています(FactSet社集計)。アナリストの事前予想に対して実績は3~4%ポイント上に着地することが普通であるため、増益率は10%以上に達する可能性が高そうです。ここまで相場が市場に強かった主要な背景と考えられます。
経済指標では上記のほか、7/12(金)に中国の6月輸出(前年比+7.9%の予想、前月は同+7.6%)、同輸入(前年比+3.5%の予想、前月は同+1.8%)、米国の6月生産者物価指数(総合指数は前年比+2.3%の予想、前月は同+2.2%、コア指数は前年比+2.5%の予想、前月は同+2.3%)、米国の7月ミシガン大学消費者信頼感(前月の68.2から横ばいの予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は2024年も7月を迎えたことから、年後半に活躍が期待される業種と銘柄を探ってみました。
まず、図表3でS&P500指数の25業種について、2024年と2025年の増益率を確認してみました(業種ウェート順)。業種ウェートが大きい、上位の業種の多くは2025年も2桁の増益が見込まれています。
特に「半導体・同製造装置」の増益率は42.4%と突出して高く、引き続き注目できる業種であることが確認できます。一方、増益率は2024年から鈍化の見込みであることから、これまでのような勢いで買われ続けるかについては、疑問もあるでしょう。
これを踏まえて、今回は(1)2025年予想増益率が10%以上、(2)2024年から加速が予想されている、以下の5業種(図表3の黄色のハイライト)に注目しました。さらに、各業種を代表する銘柄で、業種を選んだ上記の条件を個別の予想増益率でも満たすものを2銘柄ずつリストアップしました。
「テクノロジーハード機器」 アップル(AAPL)、コーニング(GLW)
「エネルギー」 シェブロン(CVX)、ハリバートン(HAL)
「素材」 フリーポート マクモラン(FCX)、デュポン ド ヌムール(DD)
「消費者サービス」 エアビー アンド ビー(ABNB)、スターバックス(SBUX)
「運輸」 ウーバー テクノロジーズ(UBER)、デルタ エアーラインズ(DAL)
これらの銘柄から、アップル(AAPL)、シェブロン(CVX)、フリーポート マクモラン(FCX)、エアビー アンド ビー(ABNB)、ウーバー テクノロジーズ(UBER)を選んでご紹介いたします。
図表3 業種別予想増益率(S&P500指数の25業種分類、黄色のハイライトは注目業種)

注:データは7/3(水)時点です。業種ウェートが小さい「不動産管理・開発」は注目業種から除きました。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 注目業種の代表的銘柄

注:データは7/3(水)時点です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/5) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | アップル(AAPL) | 226.34ドル | 34.3 | 【業績モメンタムは改善へ】 ・1-3月期は主力のiPhone売上が前年同期比10%減となったことがひびいて減収減益と冴えませんでしたが、4-6月期は売上が前年同期比3%増、EPSは同6%増へ業績モメンタムが改善の見通しです。通期でも売上は2024年9月期の前年比1%増から2025年9月期に同8%増へ業績は改善見通しです。 ・年次開発者会議で次期iPhoneにAI機能を付加することを発表して、iPhoneの買い替え需要を刺激する可能性があると、AI関連としての注目も高まっています。中期的には22億台に達する稼働中の機器を経由するサービス収入の成長が期待されます。 | |
買付 | シェブロン(CVX) | 154.31ドル | 12.1 | 【原油価格安定なら業績回復が期待される】 ・エネルギー大手です。2022年に乱高下した原油価格は、2022年末からWTI先物価格で70~90ドルのレンジで推移しています。このレンジで推移するなら、業績は回復基調となることが期待できそうです。2023年10月にシェールオイルや海底油田の開発を手掛ける米ヘスを530億ドルで買収すると発表しました。同買収案については、米連邦取引委員会(FTC)の承認を得る必要があるほか、南米のガイアナ油田の権益を巡るエクソンとの係争の行方も注目されています。 ・1-3月期の決算は、調整後EPSが前年同期比17%減でした。上流部門は増益の一方、下流部門で精製マージンの低下が影響しました。原油生産量はPDCエナジーの買収に加え、シェールオイルの好調で同12%増と伸びています。 | |
買付 | フリーポート マクモラン(FCX) | 51.52ドル | 31.6 | 【銅生産の世界最大手】 ・世界最大の銅生産企業で、2023年12月期の売上構成比は銅が74%、金が16%を占めます。短期的な銅の需要と価格は中国の景気動向に左右されますが、長期的にはEVの普及やデジタル化の進展などで銅需要は2035年にかけて倍増すると見込まれています。 ・1-3月期の決算は、前年同期比17%増、EPSは同30%減ですが、それぞれ市場予想を10%、23%上回りました。主力の銅の生産が前年同期比12%増、販売量が同33%増、販売価格が同4%減、生産コスト(キャッシュコスト)が同14%減と、今後の業績改善が期待される内容でした。販売量の拡大はインドネシア事業の拡大によります。 | |
買付 | エアビー アンド ビー(ABNB) | 152.50ドル | 32.0 | 【パリ五輪で恩恵を期待】 ・1-3月期の売上は一時的な押し上げ効果もあって前年同期比18%増と非常に好調でしたが、4-6月期の売上ガイダンスは同8~10%増と減速する見通しとなり、決算後の株価は低調となっています。パンデミック後に盛り上がったリベンジ旅行によるブームが一段落して、通常の需要動向に戻ったとみられています。 ・一方、7-9月期には、夏のパリ五輪やドイツで開催されるサッカー欧州選手権(ユーロ2024)のような重要な国際的イベントが夏のピークシーズンの旅行需要に拍車をかけるとみて、売上が加速すると予想されています。 | |
買付 | ウーバー テクノロジーズ(UBER) | 71.06ドル | 62.3 | 【利益率の上昇が続く】 ・1-3月期決算では前年同期比20%増となったグロスブッキング(予約総額)が市場予想を下回ってネガティブな反応となりました。しかし、ブラジルでのカーニバルの反動減やイースター休暇やラマダンなどの日程が前年よりも早く始まったことにも影響を受けたとされ、一時要因の可能性があるようです。4-6月期のグロスブッキングのガイダンスは前年同期比18~23%増です。 ・通期では2024年12月期、2025年12月期とも前年比16%増の予想ですが、増収による利益率改善のトレンドがあることから、利益の伸びは売上よりも高い状況が続く見通しです。営業利益率は7.1%から11.2%に高まる見通しです。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、アップルが2024年9月期、その他は2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
8(月) | ・NY連銀1年インフレ期待(6月) ・米消費者信用残高(5月) |
|
9(火) | ・パウエルFRB議長が議会証言(上院銀行委員会) ・米NFIB中小企業楽観指数(6月) ・3年国債入札 |
|
10(水) | ・10年国債入札 ・シカゴ連銀グールズビー総裁があいさつ |
|
11(木) | ・日本機械受注(5月) ・米消費者物価指数(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月6日に終わる週) ・アトランタ連銀ボスティック総裁がQ&Aセッションに参加 ・セントルイス連銀ムサレム総裁がQ&Aセッションに参加 ・30年国債入札 |
ペプシコ |
12(金) | ・中国貿易統計(6月) ・米生産者物価指数(6月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(7月、速報値) |
JPモルガンチェース、シティグループ、ウェルズファーゴ |
15(月) | ・中国実質GDP(4-6月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高(6月) ・NY連銀製造業景気指数(7月) ・共和党大会(ミルウォーキー、18日まで) ・パウエルFRB議長がルーベンスタイン氏のインタビューを受ける |
ゴールドマンサックス、ブラックロック |
16(火) | ・ドイツZEW景気指数(7月) ・米小売売上高(6月) ・米NAHB住宅市場指数(7月) |
バンクオブアメリカ、モルガンスタンレー ユナイテッドヘルスグループ |
17(水) | ・米住宅着工・建設許可件数(6月) ・米鉱工業生産(6月) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) ・20年国債入札 |
ジョンソン&ジョンソン |
18(木) | ・EU27ヵ国新車登録台数(6月) ・ECB主要政策金利 ・米新規失業保険申請件数(7月13日に終わる週) ・ダラス連銀ローガン総裁があいさつ ・ボウマンFRB理事が講演 |
テスラ、ネットフリックス、ロッキードマーチン アボットラボラトリーズ |
19(金) | ・アトランタ連銀ボスティック総裁があいさつ | アメリカンエキスプレス |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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