「日経平均最高値」出遅れ主力株を探る

「日経平均最高値」出遅れ主力株を探る

投資情報部 鈴木英之/栗本奈緒実

2024/07/12

「日経平均最高値」出遅れ主力株を探る

7月第2週、日経平均株価が高値を更新しました。7/4(木)には、3/22(金)に記録した過去最高値40,888円を上回り、7/9(火)に41,000円台に乗せ、7/11(木)には史上初めて終値が42,000円台に乗せてきました。

米インフレ懸念の後退と米株高、円安、企業業績の上振れ期待、フランス下院議会選挙で極右勢力の台頭にブレーキがかかったこと等が要因です。ただ、より本質な理由は別の所にあるように考えられます。すなわち、中国が生産・営業拠点、さらに証券投資の対象になりにくくなってきたのに対し、日本が幅広い意味で投資の対象として再評価されてきたことが上昇相場の本質という可能性もありそうです。

設備投資の面では世界的なサプライチェーンの再構築が意識され、九州や東北・北海道等で半導体工場の新設が計画されています。インバウンド需要は高水準で推移し、海外から数多くの人々が訪日し、日本への理解を深めています。いずれにせよ、日本にお金が落ちる流れが強まってる状態です。日本は株式投資の受け皿としても、バフェット氏が商社株の割安感を指摘し、東証の要請で企業の資本政策が改善し、新NISAが個人投資家の新しい資金をもたらすなど、魅力が高まってきたといえます。海外投資家の買い越しも復活しつつあります。

米国では、大統領選挙を控えた6月下旬のテレビ討論会を経て、一気にトランプ氏優位の流れになりました。同氏は中国に対し貿易等で引き続き強硬姿勢を取るとみられ、そのことが逆に、日本株再評価の流れをより強くする要因になっているように思われます。

なお、日米ともに株価上昇に短期的な過熱感もあり、7/12(金)の東京株式市場も大きく売りが先行しました。足元は相場の乱高下に注意が必要かもしれません。そうした中、今後物色対象はどうなるでしょうか。今回の「日本株投資戦略」では、出遅れ銘柄を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行ってみました。

①東証プライム市場上場銘柄

②時価総額1,000億円以上

③予想EPS(1株利益)を公表しているアナリストが2名以上

④PBR1倍未満

⑤今期市場予想配当利回り(Bloombergコンセンサス)が2.2%(東証プライム市場平均)超

⑥ROE(前期実績)が10%超

⑦今期および来期の市場予想営業利益(Bloombergコンセンサス)が増益予想

図表の銘柄は上記の全条件を満たしています。掲載の順番はPBRの低い順となっています。

■図表 「日経平均最高値」出遅れ主力株を探る

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名 終値(円)
【7/11】
PBR
(倍)
今期市場予想
配当利回り
ROE
7261 7261 7261 7261 マツダ 1,570.5 0.57 4.29% 13.1%
8078 8078 8078 8078 阪和興業 5,960 0.69 3.19% 11.7%
6752 6752 6752 6752 パナソニックホールディングス 1,354 0.70 2.73% 10.9%
5101 5101 5101 5101 横浜ゴム 3,386 0.74 2.86% 10.7%
5471 5471 5471 5471 大同特殊鋼 1,453.5 0.74 3.34% 12.5%
5191 5191 5191 5191 住友理工 1,507 0.80 2.50% 10.3%
2001 2001 2001 2001 ニップン 2,314 0.81 2.64% 12.8%
6674 6674 6674 6674 ジーエス・ユアサ コーポレーション 2,950.5 0.90 2.42% 11.4%
5991 5991 5991 5991 日本発条 1,716.5 0.94 3.32% 10.4%
  • ※会社公表データ、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

一部掲載銘柄を解説!

■マツダ(7261)~会社側業績予想の前提は「円高」で、あまりに保守的過ぎ?

★日足チャート(6カ月)

  • ※データは2024/7/12 (日足)11:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■国内5位の完成車メーカー

売上高(24.3期)で国内第5位の完成車メーカーです。グローバル販売台数の構成比(同)は日本13%、北米41%、欧州15%、中国8%となっており、おもに日本や北米で生産された車両が、広く海外で販売されています。

前期(24.3期)は売上高4兆8,276億円(前期比26%増)、営業利益2,505億円(同76%増)となり、売上高、営業利益ともに過去最高を記録しました。

25.3期の会社計画は、売上高5兆3,500億円(前期比10%増)、営業利益2,700億円(前期比7%増)と増収増益の継続を見込んでいます。販売台数については、北米で前期比17%増、世界で13%増を見込んでいます。

24.3期の為替の平均レートは1ドル145円、1ユーロ157円でした。25.3期の前提為替レートは1ドル143円、1ユーロ155円に設定されています。報道等から当社の場合、1ドル1円の円安で37億円、1ユーロ1円の円安で21億円の営業増益要因になるとみられます。

会社側の前提では25.3期に円安効果は見込まれていないようです。むしろ、会社側予想では25.3期末には1ドル136円まで円高・ドル安が進み、為替差損が発生し、経常利益は2,200億円(前期比31.1%減)と減益が予想されています。

■業績予想は保守的過ぎ?

足元の当社株を取り巻く投資環境は、逆風が目立っているかもしれません。円安メリット株と捉えられる中、日銀による為替介入観測もあり、円高・ドル安の動きが強まったためです。

仮に25.3期の平均為替レートが1ドル158円程度になった場合、当社の前提為替レート(1ドル143円)より15円の円安・ドル高水準になります。当社の場合、1ドル1円の円安で37億円の営業増益要因になるため、「37億円×15=555億円」から、現状でも営業利益に555億円の増益要因と計算されます。

同様に、25.3期の平均為替レートが1ユーロ172円の場合、当社の前提為替レート155円より17円の円安・ユーロ高になります。当社の場合、1ユーロ1円の円安で21億円の営業増益要因になるため、「21億円×17=357億円」から、現状でも営業利益が357億円上振れる計算になります。

無論、為替感応度は目安に過ぎませんが、当社の業績予想は円安メリットを織り込んでいないため、保守的に過ぎる業績予想と言えそうです。

当社のROEは13%で、おおむね完成車メーカー7社(当社、トヨタ、日産、ホンダ、スズキ、三菱自、SUBARU)の平均に近い収益力となっています。これに対し、予想PERは6.5倍(7/11)で、同平均8.3倍を下回っています。同様にPBR0.56倍(同)は同平均0.88倍を下回っています。

投資指標的にも、投資環境的にも当社株は逆張り指向の投資家にとり「一考の価値」ある銘柄かもしれません。

■ニップン (2001)~製粉大手。高付加価値の家庭用製品の販売拡大や価格改定が増益に寄与。6期連続増配

★週足チャート(2年)

  • ※データは2024/7/12 (週足)11:30時点。
  • ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
  • ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

★業績推移(百万円)

  • ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。

■製粉事業を中心に多事業展開。自社ブランド「オーマイ」製品も

1896年(明治29年)、日本初の機械式製粉の民間企業として誕生。現在は、製粉事業を核とする総合食品企業で、以下の事業を展開しています。

▹製粉事業(売上高構成比:31%、営業利益構成比:45%)

全国に7つの工場を有し、国内製粉業界はシェア2位。原材調達から製造、品質管理まで行い、パン・めん・菓子以外にも、工業用や飼料用と多様な種類の製品を取り扱っています。

▹食品事業(同57%、同41%)

小麦粉に調味料を配合したプレミックス(例:ホットケーキミックス、からあげ粉)をミスタードーナッツ等に業務用として納入。また、自社パスタのブランド「オーマイ」や、家庭用プレミックス、冷凍食品、中食などを提供しています。

▹その他事業(同12%、同14%)

同社製造のプレミックスを使用するミスタードーナツの店舗をフランチャイズで19店舗運営したり、ペットフードの受託生産等を行っています。

※構成比等は全て24.3期

■マーケティング本格始動で、時代のニーズを捉える

2022年からマーケティング会社と協業開始し、家庭用製品の販売拡大に奏功。美味しさに特化したパスタ『オーマイプレミアム至高の~』のパッケージ及び中身のリニューアル、麦ごはんや多めの野菜を使用することで、カレーやビビンバが罪悪感少なく食べられる『いまどきごはん』、バランスの取れた主食とおかずが一皿になった『よくばり御膳』など、時代に即した顧客ニーズを捉えた商品を多数展開しています。

■前期は大幅増収増益、中計を前倒しで達成。M&Aや事業提携による成長も

前期(24.3期)は売上高4,005億円(前期比9%増)、営業利益203億円(同65%増)と大幅増益でした。小麦粉の価格改定よりも、食品事業で冷凍食品などの価格改定や高付加価値商品の拡販が大きく増益に寄与しました。

前期は27.3期を最終年度とする中計目標を前倒しで達成。これを受け、中計目標の修正を行うと共に、「長期ビジョン2030」を新たに策定。目標値は以下の通りです。

27.3期目標:売上高4,500億円、営業利益210億円

31.3期目標:売上高5,000億円、営業利益250億円

基盤領域の収益力強化、北米や東南アジアで行っている海外事業や冷凍食品などの成長領域での拡大のほか、国内外でのM&A・事業提携による成長も図ってゆくとしています。

■積極的な株主還元。配当&株主優待も

株主還元も積極的です。連結配当性向は30%以上が目安で、6期連続増配を実施。特に前期(24.3期)は、利益増に伴い1株あたり40円(23.3期)→66円と大幅増額しました。過去の配当性向実績を鑑みると、18.3期~24.3期は29~32%で推移しており、連動性の高さが窺い知れます。

株主優待も実施してます。株数に応じて同社製品の詰め合わせや、小麦粘土でつくる『パンの花』の1日体験レッスン&プレコース(初心者向け短期講座)の無料受講及び入会時の入会金無料サービスなどが付与されます。

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