日経平均が乱高下!急落はスピード調整、意外な注意点は?

日経平均が乱高下!急落はスピード調整、意外な注意点は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/07/16

日経平均は7/11まで3日連続で最高値を更新!リスクオンムード広がる

7月第2週(7/8-7/12)の日経平均は、前週末比278円31銭高(+0.68%)となり、週足ベースで3週続伸。期中に日経平均とTOPIXはともに最高値を更新しました。海外投資家とみられる先物主導の上昇が継続した他、米ハイテク株の上昇が追い風となりました。米国では、パウエルFRB議長の議長証言で積極的タカ派発言がなかったことやインフレ指標が予想を下振れました。これを受け、FRB(米連邦準備制度理事会)による9月利下げ開始観測が再び強まり、ハイテク株が上昇。リスクオンムードが広がり、東京株式市場にも影響を及ぼしたとみられます。なお、週内最終日である7/12(金)は利益確定売りや、為替介入とみられる動きから発生した円高ドル安の進行が重しとなり、1,000円超調整した形です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(7/5~7/12・図表7)の首位は、サッポロホールディングス(2501)です。シンガポールを拠点とする筆頭株主の投資ファンドが、不動産子会社の分離上場を提案。不動産売却による株主還元の強化や事業改革の推進に期待感が募り、買い材料となりました。5位の味の素(2802)は、株主還元意欲の高さを示したことが好感されたもようです。7/4(木)の日本経済新聞の取材で同社常務が「稼いだお金は株主のもの。積極的に使い現預金を圧縮する」と回答。同社は、今期(25.3期)の設備投資や株主還元で2,000億円超を投じる予定で、積極的に成長を目指してゆくとしています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(7/5~7/12・図表8)には、首位の川崎汽船(9107)を筆頭に、海運大手3社がランクインしました。ガザ地区の停戦交渉再開が伝わり、スエズ運河経由に戻った場合、コンテナ船運賃が下落するとの思惑が広がった格好です。防衛省への金品提供問題を受け、2位に三菱重工業(7011)、5位に川崎重工業(7012)と重工大手が顔を並べました。しかし、トランプ前大統領が再選するとの予想が高まり、7/16(火)は防衛費増大による恩恵期待銘柄として、大幅高で寄り付いています。

7月第3週の日経平均は7/16(火)午前、前週末比209円高となり、反発でスタート。上述の重工大手などに買いが集まり、トランプ前大統領の再選観測上昇が意識された幕開けとなりました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(7/5~7/12)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(7/5~7/12)

日経平均が乱高下!急落はスピード調整、意外な注意点は?

日経平均は7/11(木)に42,000円の大台を突破(終値:42,426円)。しかし、その翌日の12日(金)は、前日比▲1,033円の41,190円と大幅反落し、再び大台を割りました。

6月半ば以降、日経平均は上昇基調を辿りました。図表9は日経平均の一目均衡表ですが、6/25(火)に終値で雲の上限を突破すると、そこから上昇力が強まり、7/11までの9営業日で2,640円超の大幅上昇となりました。

そうした中で発生したのが7/12(金)の大幅下落となりますが、その背景にあったのは円高進行でした。前日、米国で発表された6月消費者物価指数は、インフレの抑制と金融緩和観測を強める内容となりました。統計発表を受けて米国金利が低下(日米金利差の縮小)したため、円相場は円高含みで推移したものの、当初は1ドル=161円前後で落ち着いた値動きでした。しかし、それも束の間、円相場は突如として急激な円高が進み、一時1ドル=157円台へ突入しました。日本政府による為替介入(円買い介入)が行われたと見られています。

更に、7/12(金)の朝(8時20分頃)にも急激に円高が進む場面がありました。一部報道によると、これは為替介入ではないものの、日銀が対ユーロでレート・チェックを行ったと見られています。レート・チェックとは、日銀が銀行等の為替ディーラーなどに為替レートの取引水準を確認する行為であり、為替介入を実施するための準備段階と言われています。対ドルの為替介入だけではなく、対ユーロでも介入の準備が行われている可能性があるということで、市場では政府・日銀が円安の修正に本腰を入れ始めたと警戒が高まっていると見られます。

図表9 日経平均株価の一目均衡表

もっとも、7/12の日経平均が急落した背景に円高があったとは言え、その物色の中身を見ると、株式市場の動きは少々、複雑だったと見ることが出来ます。通常、円高が進めば、株式市場では輸出株に売りが膨らみそうなものですが、実際には値がさ株やハイテク株、金融株の方が、輸出株よりも顕著な売りに晒されました。実は、前日7/11の米国市場では、6月消費者物価指数を受けて金利が低下したにも関わらず、金利低下に強いテクノロジー株などのグロース株が軟調でした。テクノロジー株は円相場(円高)の影響を受けやすい訳でもなく、日本政府の為替介入がテクノロジー株安の直接的な要因とも考え難いでしょう。

前回、日本政府が為替介入を行った4月末から5月初旬以降、米国では金融緩和観測を背景に金利が緩やかに低下する一方、日本の金利は上昇傾向を辿ったことで、日米金利差は縮小しました。この間、米国株式市場はテクノロジー株が大きく上昇し、ナスダック総合指数は連日のように史上最高値を更新してきました。一方、その間の円相場は円安が進行しており、これは日米金利差よりもリスク選好のドル買い(円売り)が活発化したことが要因と考えられます。要はリスク選好で米テクノロジー株高と円安が並行していたのですが、これが米6月消費者物価指数の発表と、その後の為替介入(とみられる円高)が合わさって投資家のリスク許容度が低下し、これまでの動きが逆回転したと考えられます。それが、日本株にも影響して日経平均の大幅下落につながったと捉えることが出来ます。

図表10 日米金利差と円相場

では、今後の日経平均の見通しはどうでしょうか・前述のとおり、消費者物価統計の発表を受けて大きく下落したナスダック総合指数ですが、その後は切り返す動きとなっており、7/15(月)には再び史上最高値の更新をうかがう動きとなりました。リスク回避の動きは一時期なものだったのかもしれません。そうであれば、日経平均についても7/12の下落は、上昇相場におけるスピード調整だったと言えるでしょう。投資部門別売買動向(図表11)を見ると、日本株上昇時に大きな買い手となる海外投資家は、足元で再び日本株買いを活発化させる兆候が見られ、相場が落ち着けば株高の流れを取り戻すことが期待されます。

もっとも、その一方で注意するべきは、やはり為替介入への警戒です。前述のとおり、日本政府は行き過ぎた円安の是正に本腰を入れている可能性があり、当面は為替介入への警戒が、日本株の上昇を抑制する要因になることも考えられます。

更に、もう1つ注意するべき動きは、株式市場において中小型株物色へシフトし始めた可能性です。米国では11日にナスダック総合指数が2%近く下落した一方、中小型株指数のラッセル2000株価指数は3.6%の大幅上昇となり、3/28の高値を超えてきました。また、国内株式市場でも12日(金)に日経平均が大幅下落した一方で、グロース250株価指数が3.2%の大幅上昇となりました。中小型株市場へマネーが向かえば、その分、大型株の動きが鈍くなる可能性あるため、注意する必要があると考えられます。

図表11 投資部門別日本株売買動向~海外投資家・個人投資家~

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