日経平均株価が過去最大の下落幅。今後どうみる?
投資情報部 鈴木 英之
2024/08/05
8/5(月)の日経平均株価は3営業日続落し、前週末比下落幅は4,451円28銭、下落率は12.4%となりました。これまでの日経平均株価下落幅ワーストは「ブラックマンデー」と呼ばれる1987/10/20の3,836円安(下落率14.9%)であり、下落幅ではそれを上回る過去最大に、下落率ではそれに次ぐ第2位になりました。
7月第5週(7/29~8/2)に投資環境が変化したことが株価急落の理由です。日本では日銀金融政策決定会合(7/31)で日銀が追加利上げを実施し、市場ではさらなる利上げの可能性が指摘されるようになりました。米国ではFOMC(米国時間同日)で金融政策の変更は据え置かれたものの、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が9月に利下げの可能性を示唆しました。日米で金融政策の方向感相違が明確(日本は利上げ方向、米国は利下げ方向)となり、急速に円高・ドル安が進んだことで、下げを加速させる形になりました。
8/2(金)に発表された米7月雇用統計では、非農業部門雇用者数が事前の市場予想を下回るなど、米国経済の成長鈍化を示唆する材料が増えました。仮にFRBが9月に利下げするにせよ、それでは遅すぎ、米国はリセッションに突入するかもしれないとの見方が強まりました。それを嫌気して8/2の米国株が大幅下落したことも、日本株急落につながりました。
今後はどうなるでしょうか。下げ過ぎでしょうか、まだ下がるのでしょうか。
それを考えるひとつの切り口として、日経平均株価の25日移動平均かい離率があげられます。一般的に、日経平均株価が25日移動平均から上方に7~8%かい離した場合は「上昇し過ぎ」、下方に7~8%かい離した場合は「下落し過ぎ」と考えるのが教科書的な理解とみられます。今回は「下げ過ぎ」でしょうか。ちなみに、今回、8/5(月)の急落で、日経平均株価の25日移動平均線マイナスかい離率は一気に20.4%まで拡大しました。10%を超えるようなマイナスかい離は、東京市場の歴史でも少ないので、同移動平均線マイナス10%乖離後の日経平均の推移について、いくつか例をみてみました。
(1)ブラックマンデー・・・冒頭にご説明した87/10/20の下げで、同日の日経平均株価は25日移動平均線からマイナス14.5%かい離しました。その後同株価は18営業日後の11/11までに4%下落(終値ベース)していったん底を打ちました。
(2)リーマンショック(2008年)・・・08/10/6に、日経平均株価は25日移動平均からマイナス12.6%かい離しました。その後も株価は14営業日後の10月27日まで31.6%下落(終値ベース)し、日経平均株価は25日移動平均からマイナス28.4%かい離し、ようやく当面の底入れとなりました。
(3)東日本大震災(2011年)・・・11/3/11(金)の東日本大震災を受け、週明けに株価下落が本格化し、3/15に日経平均株価は25日移動平均からマイナス18.1%かい離しました。株価はその日に当面の安値(終値ベース)を付けました。
(4)新型コロナ流行(2020年)・・・20年1月末にWHO(世界保健機構)が「パンデミック」を宣言し、そこから株価下落が本格化しました。3/9に日経平均株価は25日移動平均からマイナス13.0%かい離。その8営業日目となる3/19まで16.0%下げて下げ止まりました。
これらから、日経平均株価の25日移動平均線マイナス乖離が10%を超える下げは、歴史的な下げが多いようです。マイナス乖離が10%を超えて以降は下げ止まった場合もありますが、下落が続くケースもあり注意が必要です。ただ、同移動平均線かい離率が今回のように20%を超えてきたケースは、2000年以降ではリーマンショックくらいしかありません。
リーマンショックが金融危機を伴っていたことと比較すると、今回はそのような懸念は少なく、さすがに日経平均株価は下げ過ぎと言えるかもしれません。
このまま日経平均株価が下落した場合、そもそも日銀の追加利上げは難しくなりそうです。さらに円安・ドル高の進展により利上げを急ぐ必要性も低下するとみられます。日経平均株価の高値からの下落が1万円を超えたことで、値頃感も台頭してくるタイミングとも考えられます。
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