「関税」「決算」「金利上昇」そして今後は?
投資情報部 鈴木 英之
2025/05/26
5/26(月)の東京株式市場では日経平均株価が買い先行となりました。トランプ米大統領が5/23(金)に「欧州から米国への輸入に、6/1から50%の関税を導入する」と示唆したものの、5/25(日)の欧州委員長との電話会談で「欧州からの関税は7/9まで延期する」ことに同意したと伝えられ、投資家の安心感が強まりました。
もっとも、5/26(月)の東京株式市場では、上値の重さも意識されているようです。トランプ米大統領は、米国へ輸入されるすべてのスマートフォンに25%関税を課すとしており、そちらの懸念は晴れていません(日本時間5/26正午時点)。
世界的な金利上昇も懸念材料です。米国では、5/16(金)にムーディーズ・レーティングスが米国長期発行体格付け等を引き下げた後、5/21(水)には米20年国債の入札が不調という結果になりました。5/22(木)には大規模な支出が懸念される米税制・歳出法案が下院を通過するという経緯があり、米30年国債利回りが2023年秋以来の5%台に上昇し、10年国債利回りも本年2月以来の4.5%台を付けています。問題は米長期金利の上昇にもかかわらず、円高・ドル安が進んでいることで、米国からの資金流出が懸念されます。
そうした中、3月決算企業等の決算発表シーズンが終了。2026年3月の上場企業純利益は減益が見込まれています。日経平均の実績PER14.79倍に対し、予想PERは15.35倍(ともに5/23時点)と上昇が見込まれており、やはり減益が織り込まれている形です。日経平均株価の予想PERは2024年以降、一時を除きおおむね15~17倍程度で推移してきましたが、減益見通しにより市場心理が低下すると、PERは低めの推移に代わる可能性があります。その意味でも、日経平均株価の上値は重くなる可能性がありそうです。
トランプ関税の霧が相当晴れない限り、指数の上昇は期待しにくく、国内株の物色は内需株中心になる可能性が大きそうです。
【やさしく解説】簡単だけど奥深い「PER」
前項の説明でも登場した「PER」は株式投資でよく使われる投資指標です。教科書的にいえば、株価を1株当たり利益(EPS)で割った数値で、単位は「倍」です。
ここで1株当たり利益は、純利益を発行済み株式数で割った数字です。今、年間100億円の純利益をあげている会社が、1億株の株式を発行しているとするならば、1株当たり利益は100円(100億円÷1億株)であると計算されます。仮にこの会社の株価が1,500円であるとするならば、株価1,500円を1株当たり利益100円で割った15倍がPERということになります。
PERはある会社が他の会社と比べて割高か割安か評価するときに多く使われる指標です。今、A社とB社の1株当たり利益がともに100円で、A社株価が1,000円、B社株価が2,000円ならば、A社のPERは10倍、B社は20倍と計算されます。この場合、A社の方のPERが低く、B社より割安であるという評価が成立します。
それでは、株式投資でPERの低い、割安感の強い会社に投資すれば、必ず株価上昇を享受できるでしょうか。必ずしも、そうはならないというのが現実です。PERが長年低い会社もあれば、長年高い会社もあります。
今、A社もB社も1株利益が100円であるとします。ここで、A社は最近成長著しく今後も成長継続が期待されるとします。これに対し、B社は業績が近年停滞気味で今後も成長を期待しにくいとします。感覚的にも、利益が同じ会社であれば、成長が期待される会社の株に投資した方が良さそうです。この場合、A社の方の株価が高くなり、たとえば株価が2,000円(PER20倍)、B社は株価が1,000円(PER10倍)というケースも出てきます。言い換えれば、PERが高いことはそれだけ、投資家の期待感が強いことを示しているという面がある訳です。
したがって、PERを使って割高・割安を評価する時は、業種や成長性等が似ている銘柄同士で行う方がよいとみられます。
なお、一般的に1株当たり利益には今期や、来期などの予想1株当たり利益が使われることが多くなっています。
ちなみに、PERを求める式を変形すれば、株価は一株当たり利益にPERを掛けたものとなります。したがって、株価が上昇するには、一株当たり利益という「現実」と、PERという「期待」を掛け合わせた数字、「現実」と「期待」の掛け算した数字が上昇することが必要であると考えられます。
企業としては、利益を増やし、1株利益を増やす努力も必要ですが、投資家の「期待」を高めるために適時情報開示を積極的に行う必要などもある訳です。何千銘柄も上場銘柄がある中で「頑張っているから、そのうちわかってくれる」というのでは、上場企業として努力不足であると指摘されかねません。
ちなみに、ある銘柄の株価を長めにみていると、PERの一定のレンジの中で動いているという場合があります。たとえば、ある銘柄はPER何倍前後の時は底値圏であり、PER何倍前後の時は高値圏であると考えることができます。
日経平均株価採用銘柄をひとつの会社とみなせば、日経平均株価の予想PERや1株当たり利益を計算することができます。前項でご説明した通り、2024年以降の日経平均株価はおおむね予想PER15倍~17倍での推移になっています。
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