6月相場は堅調継続?そのカギを握るのは?

6月相場は堅調継続?そのカギを握るのは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/05/30

日経平均33年ぶりの3万1千円台!AIへの期待で半導体関連株が盛り上がる

5月第4週の日経平均は続伸し、前週末比107円96銭高(+0.4%)と週足ベースで7連騰した形です。東証プライム市場では全営業日で売買代金が3兆円を上回りました。

同期間の米国市場ではS&P500が+0.3%、ナスダックが+2.5%となって年初来高値を更新するなど堅調な株価推移となりました。

同期間の日米株式市場が好パフォーマンスとなった背景には、半導体株の急騰があります。米国に上場する主要半導体関連銘柄で構成されたSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は、わずか1週間あまりで+10.7%となり、上昇相場をけん引しました。

週前半の日経平均は5/22(月)に、33年ぶりにバブル崩壊後高値31,086円をつけた後、翌5/23(火)に政府が半導体分野の輸出規制を発表。これを契機に、手仕舞い売りが広がる展開となりました。

週後半は画像処理半導体に強みを持つエヌビディア(NVDA)の株価急騰をきっかけに、半導体株や関連株が盛り上がりを見せた格好です。同社は日本時間5/25(木)の明け方に決算を発表。AI向け需要拡大を追い風に、市場予想を50%超上回る5-7月期の会社予想売上高を示し、時間外で株価は一時25%以上上昇しました。さらに翌日、ファブレス半導体メーカーのマーベル・テクノロジーグループ(MRVL)がAI関連製品で強気の売上高見通しを示して32%超の株高となり、AI関連での期待感から他半導体への買いが急速に広がった形です。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(5/22~29)では前述の米半導体株高の影響が及び、2週連続で半導体検査装置の大手のアドバンテスト(6857)がトップです。2週累計では、45%強の株高となりました。他には、SCREENホールディングス(7735)、SUMCO(3436)、ルネサスエレクトロニクス(6723)、レゾナック・ホールディングス(4004)等の半導体関連銘柄がランクインしています。

長らく膠着状態が続いていた米債務上限問題に関して、5月第4週末にようやく新しい動きがありました。
日本時間5/28(日)、基本合意に達したことが複数メディアから伝わりました。株式市場にとっての大きな懸念が後退し、5/29(月)の日経平均は続伸スタート。33年ぶり高値をまたもや更新した週初となりました。5/29(月)の米国市場はメモリアルデーで休場です。5/30(火)の日経平均は週末の5月米雇用統計発表を控え、様子見ムードが強まり、利益確定の動きも見られます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(5/22~29)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(5/22~29)

6月相場は堅調継続?そのカギを握るのは?

5月相場も残すところ僅かとなりました。そこで(図表9)の日米主要株価指数の騰落率を見ながら、5月相場の特徴を見てみたいと思います。まず、国内主要指数の騰落率(5月29日まで)は、日経平均(1)が+8.2%と、TOPIX(2)の+5.0%をアウトパフォームしています。また、TOPIXのうち主力30銘柄で構成されたTOPIXコア30(3)は+7.4%と大幅上昇だったのに対し、中小型株のTOPIXミッド400(4)は+3.9%、TOPIXスモール(5)は+1.6%と相対的に小幅上昇に留まっています。これらのデータを見ると、国内市場では大型株優位の展開だったことがうかがえます。

では、グロース株(成長株)とバリュー株(割安株)ではどちらが優位だったのでしょうか。TOPIXグロース(6)は+5.7%に対し、TOPIXバリュー(7)は+4.4%と、一見するとグロース株優位と見えます。ただし、中小型グロース株の代表的な株価指数である東証マザーズ(8)は▲1.6%と下落しています。総じてみると、大型グロース株が大きく選好された一方、中小型グロース株は敬遠されたと見られます。

日経平均構成銘柄の5月騰落率では、トップがアドバンテスト(6857)で+67.7%、2位がSCREEN HD(7735)で+30.0%、3位が東京エレクトロン(8035)で+27.3%、4位がルネサスエレクトロニクス(6723)で+26.4%と半導体関連銘柄が名を連ねています。特に代表的な値がさ株で日経平均の構成ウェイトが高いアドバンテストと東京エレクトロンは、5月相場における日経平均の上昇分(2,377円)のうち、両銘柄の寄与は4割弱(900円超)に達しており、日経平均の上昇を大きくけん引してきたことが分かります。

一方、米国はNYダウ(A)、S&P500(B)、ナスダック総合指数(H)の主要3指数のうち、ナスダック総合指数が+6.1%と他2指数をアウトパフォームしています。サイズ別で見ると、S&P500(B)の+0.9%に対し、中小型指数のS&P中型株400(C)が▲1.9%、S&P小型株600(D)が▲0.1%となり、日本と同様に大型株が選好されたことがうかがえます。また、成長株と割安株の比較では、S&Pグロース株(E)の+2.9%に対し、S&P500バリュー株(F)は▲1.5%となり、グロース株優位となっています。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)(I)が+18.4%と突出して上昇していることから、大型グロースの中でも半導体関連銘柄が大きく買われており、すくなからず日本株の動きに影響を与えているとみることができるでしょう。

図表9 日米主要株価指数の5月騰落率(5月29日時点)

  • ※BloombergよりSBI証券作成


5月相場の特徴を踏まえた上で、6月相場を占っていくのですが、まず結論から言うと5月半ばから上昇傾向にある米長期金利の動向がカギを握ることになると考えられます。半導体関連銘柄は、代表的なグロース株と言えますが、本来は長期金利の上昇に弱い株と言われています。しかし、5月相場では金利上昇を伴いながらもこうした銘柄が大きく上昇しました(図表10)。

現状、米国経済は先行き不透明感が根強く、投資家は小型株や、景気敏感株などのバリュー株の物色に二の足を踏んでいると見られます。一方、米国はインフレが依然として高い伸びを示していることを背景に金利先高観が強いのですが、いまのところ大型グロース株(半導体関連銘柄)にとって逆風となっていないようです。景気動向の影響を受け難いことがグロース株の特徴の1つと言えますが、現状はバリュー株が買い難い状況で消去法的にグロース株が買われている可能性があり、その場合、問題はこうした買いがいつまで続くのかということになると考えられます。

米国では6月13から14日にFOMC(連邦公開市場委員会)が開催されます。5月初旬、市場は6月FOMCで利上げが見送られるとの予想を強めていました。パウエルFRB議長も5月20日に行った講演で「ここまで(金融引き締め)政策を進めてきたので、データや変わりつつある見通しを注視して慎重に分析する余裕がある」と述べ、一旦、利上げを休止する可能性を示唆しました。しかし、足元では再び市場で利上げ継続の可能性が織り込まれてきています(図表11)。FOMCに向けて利上げ継続の可能性が一段と織り込まれるようであれば、金利は一段と上昇することが見込まれます。これまで堅調に推移してきた大型グロース株といえども、買い難い状況となる可能性があるでしょう。とはいえ、金利上昇により円安が進行すれば、円安メリットをうける日本株にとっては追い風になるでしょう。国内株式市場としては、半導体関連銘柄から、輸出株や景気敏感株へ物色がシフトするか注目されます。

図表10 日米 グロース株(成長株)/バリュー株(割安株)レシオと米10年国債利回り

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

図表11 市場の予想する政策金利(FFレート誘導目標)予想

  • ※BloombergをもとにSBI証券が作成

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