日経平均は押し目買いの好機?株価反転のタイミングは?

日経平均は押し目買いの好機?株価反転のタイミングは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/03/12

日経平均、4万円突破後調整中か

3月第1週(3/4-8)末の日経平均は、前週末比221円88銭安(-0.56%)となり、週足べースで小幅反落。週初4日(月)、史上初となる4万円を突破しましたが、その後は調整局面に入り、日米両市場で足元の上昇をけん引してきた半導体株や関連株が一服した状態です。

前週、日経平均株価採用銘柄で大きく上昇した銘柄上位10銘柄(3/1~3/8・図表7)には、建設業から4銘柄がランクインしました。首位の大林組(1802)は4日(月)に、年間配当金額・配当の基準となるDOE(自己資本配当率)・資本効率を表すROE(自己資本利益率)の引け上げ等、資本政策の見直しを含む大規模な株主還元計画を発表。他ゼネコンにも思惑買いが入った上、大林組(1802)の株価は大幅高となり、3/11(月)時点でPBR1倍割れを回復しています。また、銀行業から3銘柄がランクインしており、ハイテク株上昇が一服したことでバリュー株に資金が流入した面もありそうです。

同週、日経平均株価採用銘柄でもっとも下がった銘柄(3/1~3/8・図表8)は川崎汽船(9107)でした。欧米向けのコンテナ船運賃が下落し、海運市況の悪化が嫌気されました。図表にランクインこそしていませんが、他海運大手2社の株価推移も軟調でした。また、円高ドル安の進行を背景に輸出をメインとする業種が売られ、輸送用機器から4銘柄がランクインしました。

3/11(月)の日経平均は大幅反落でスタート。前週末の米半導体株の下落や円高ドル安等が重しとなりました。日銀の金融政策正常化を見越した織り込みが始まっている面もありそうです。ハイテク株は前週に続き、利益確定とみられる売りが継続しました。現地時間3/12(火)には今後の米金融政策を占う上で重要な、米2月消費者物価指数(CPI)の発表を控え、警戒ムードが続いています。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(3/1~3/8)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(3/1~3/8)

日経平均は押し目買いの好機?株価反転のタイミングは?

3/11(月)の日経平均は前日比868円安と大幅反落し、終値は38,820円と39,000円台を割り込みました。日経平均は3/4(月)に初めて4万円の大台に突入し、7日(木)は取引時間中に40,472円まで上昇しました。しかし、そこから利益確定売りに押されたこともあり、日経平均は下落基調へ転じました。もっとも、今年の日経平均は年明けから堅調に推移しており、押し目買い(※)を狙いたい投資家からすれば、“押し目待ちに押し目無し”の格言通りの展開でした。中長期的な株高シナリオは不変だとすれば、現状はようやく訪れた押し目買いのタイミングにも映ります。そうなれば、考えるべきは押し目買いのタイミングはいつなのか?ということだと思われます。

※押し目買いとは、株価が継続して上昇トレンドにある時、一時的に下落したタイミングを見計らって買いを入れる手法です。

では、まず今年の日経平均上昇の手掛かりですが、これは主に2つあると考えられます。1つは米国株、特にAI(人工知能)などのグロース株(成長株)の上昇。もう1つは円安の進展です。

米国株の動きに注目すると、米国株式市場についても年明けから堅調に推移してきました。ただ、この米国市場の上昇は、ある意味で相場のセオリーに反した動きと考えられます。図表9は米国株のグロース株(成長株)/バリュー株(割安株)比率と長期金利(10年国債利回り)の推移をみたグラフですが、本来ならば長期金利上昇時には、グロース株がバリュー株をアンダーパフォームする(グロース株/バリュー株比率が低下)のがセオリーです。しかし、実際は2月下旬頃にかけて長期金利上昇を伴いながら、グロース株がバリュー株よりも堅調でした。

図表9 米グロース株/バリュー株比率と長期金利

米長期金利が上昇してきた背景には景気見通しが改善したことが挙げられます。景気見通しが改善すれば、景気との連動性が高いバリュー株が物色されますが、今回は景気回復の源泉となっているのがAI特需となるため、AI関連株や半導体関連などのグロース株が大きく物色されました。そのもっとも象徴的な値動きとなったのが、AI関連の筆頭銘柄であるエヌビディアです。

しかし、最近は3/1(金)発表の2月ISM製造業景況指数が市場予想に反して前月から悪化したことや、3/8(金)の2月雇用統計で失業率が3.9%と約2年ぶりの水準に上昇するなど、景気の先行きに不透明感を示すデータが相次ぎました。そうした中、米国市場で主力グロース株の一角を売る動きが見え始めると、それまで堅調に推移していたエヌビディアも8日(金)に5%強の大幅下落となりました。米国市場はもちろん、国内市場でも一旦、値がさハイテク株を中心に利益確定の売りが出たと思われます。

図表10 エヌビディア株価とNASDAQ総合指数

一方、円相場については、先週に150円台から一時146円台半ばへ円高が進みました。前述、米景況感の悪化に伴う米金利の低下に加え、国内では日銀のマイナス金利政策の解除観測が強まったことが円買い材料になったと見られます。円高進行を手掛かりに輸送機などの輸出関連株についても、一旦、利益確定が膨らんだと考えられます。

今後の見通しについては、当面は株価上昇局面が一服するとともに、上値の重い展開が続く可能性が考えられます。米国市場については、3/19・20のFOMC(連邦公開市場委員会)まで景気の不透明感が根強く意識される可能性があります。同FOMCでFRBから楽観的な景気見通しと共に、年内の利下げ開始の可能性が示唆されれば、景気の不透明感が緩和し、株価の買い戻しのきっかけになると考えられます。

また、米国株を観る上では、引き続きエヌビディアの株価動向にも注視する必要がありそうです。同社については、中長期的な業績や株価の上昇シナリオは変わらないとの見方が多いですが、それでも短期的に見れば株価上昇が行き過ぎとの見方もあります。同社株の調整が長引くようであれば、国内市場においても値がさ株の株価調整が続く可能性があるでしょう。

円相場については、来週3/18・19開催の日銀金融政策決定会合までは円高含みでの推移が想定されます。今週3/13(水)には、春闘の集中回答日になりますが、そこで堅調な賃上げ状況が確認されれば、金融政策決定会合において、マイナス金利政策の解除がいよいよ現実味を帯びることになります。政策転換への思惑から、国内金利が上昇し、円買いの動きを強める可能性があるでしょう。ただ、もし日銀が3月にマイナス金利の解除に踏み切ったとしても、その後の金融政策について日銀が緩和的なスタンスを維持する方針を示せば、円相場の円高基調についても一巡すると見られます。

今年の日経平均は僅か2ヵ月あまりで20%近く上昇し、史上最高値である4万円台に到達するなど、かなり急ピッチな株価上昇となりました。企業業績の改善期待など中長期的な株価上昇シナリオは健在とみられるものの、短期的には過熱感を解消するべく上昇が一服しても不思議ではないように思えます。短期的に見れば、もう少し株価調整余地はありそうですが、長い目で見れば、押し目買いのタイミングと考えることもできるでしょう。

図表11 円相場と日米金利差

おすすめ記事(2024/03/12 更新)

信用取引のご注意事項

信用取引に関するリスク

信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。

信用取引の「二階建て」に関するご注意

委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。

ご注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。

・必要証拠金額は当社SPAN証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。

・当社SPAN証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。

・SPAN証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、またはお客さまごとに変更することがあります。

・「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は原則新規建てしたセッションに限定されます。なお、各種設定においてセッション跨ぎ設定を「あり」とした場合には、プレクロージング開始時点の証拠金維持率(お客さま毎のSPAN掛目およびロスカット率設定に関わらず必要証拠金額はSPAN証拠金×100%で計算)が100%を上回っていれば、翌セッションに建玉を持ち越せます。「HYPER先物コース」選択時は必要証拠金額はSPAN証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。

先物・オプションのSPAN証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)

・指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。

・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。

・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。

・指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。

・未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。

・「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は委託手数料を機関投資家から受け取ります。

・J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。