日銀が利上げ、半導体株が波乱!日経平均は?

日銀が利上げ、半導体株が波乱!日経平均は?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2025/01/28

トランプ氏大統領に就任。即時の関税強化は見送られ、楽観広がる

1月第4週(1/20~24)の日経平均株価は、前週末比1,480円高(+3.9%)と週足ベースで反発。週初1/20、トランプ氏が米大統領に就任しました。就任以前、「就任初日」の対中関税強化等の公約実行を謳っていましたが、関税強化が当面は見送りとなったことで、市場に安心感が広がりました。また、民間によるAI(人工知能)インフラへの巨額投資計画(4年間最大5,000億ドル、日本円約78兆円)が発表され、半導体や半導体関連株等のテック中心に追い風となりました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(1/17~1/24・図表7)には、首位にフジクラ(5803)、3位に住友電気工業(5802)、6位に古河電気工業(5801)と電線大手3社が揃い踏みでした。2位のソフトバンクグループ(9984)と、米オープンAI、米オラクルによる米AIインフラへの巨額投資計画が発表され、データセンター投資拡大による恩恵期待が広がりました。首位のフジクラ(5803)は、北米向けに強みを持っており、受注増への期待も大きかったと予想されます。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(1/17~1/24・図表8)の首位は、トラック大手の日野自動車(7205)でした。米国でのエンジン認証不正問題を巡り、米当局と和解を発表し、前週は上昇率首位となりましたが、反動売りが生じたもようです。

1月第5週(1/27~1/31)、日経平均の出だしは軟調です。中国新興企業DeepSeek社の低コスト生成AIが、「ChatGPT」と同等の能力を保持しているとされると伝わり、半導体関連株やデータセンター投資拡大期待で上昇していた電線株などが売られました。同報道を受け、米半導体も売られ、特にAI半導体大手のエヌビディア(NVDA)の1/27(月)の株価は、前日比17%弱の大幅下落となりました。

同期間は日米で主力企業の決算発表や、米FOMC(連邦公開市場委員会)など、重要日程が目白押しです。1月FOMCでは、「追加利下げをしない」がほぼ確実視されており、会合後のパウエルFRB議長の会見に注目が集まっています。3月会合での利下げ実施の有無に関し、手掛かりとなり得る発言を探す状況が予想されます。主力企業の決算発表は、想定より円安であることが、下支え材料になると期待されます。12月の日銀短観で発表された、2024年度の想定為替レート(参考)は、1ドル146円85銭です。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2025/1/17~1/24)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2025/1/17~1/24)

日銀が利上げ、半導体株が波乱!日経平均は?

1/24(金)に日銀金融政策決定会合が行われ、政策金利を0.25%引き上げて0.50%にすることが発表されました。政策金利は2008年以来の0.5%を回復(図表9)したことになります。

このこと自体は市場は織り込み済みで、サプライズはありませんでした。マイナス実質金利が続く中、年初の経済界との情報交換で、賃金上昇への確信を強めたことで利上げにつながった面があるようです。

ただ、展望レポートをみると、日銀による物価見通しが引き上げられています。また、海外経済を波乱要因とする記述が一部削除されています。トランプ氏の大統領就任後も市場は安定しており、特に米国経済・市場へのリスク認識を後退させた可能性があります。総じて「若干タカ派的な内容」であったと理解できそうです。

日本の政策金利は2025年内に0.25%利上げがあと1回、2026年半ばに同利上げがあと1回というのが平均的シナリオになりそうです。日本の中立金利は1%程度との見方が有力であり、政策金利が1%まで届き、そこで物価が安定していれば、利上げは終わるかもしれません。

以上から当面は金利の緩慢な上昇が予想され、日本の10年国債利回りも緩やかな上昇が見込まれます。1/24時点での2025年末市場予想相場水準(Bloombergコンセンサス)をご紹介すると以下のようになっています。

日本10年国債利回り 1.38%(1/23時点 1.205%)

ドル・円相場 1ドル148円(同156円50銭)

ユーロ・円相場 1ユーロ157円(同162円87銭)

なお、日銀短観(2024年12月調査)によると、「事業計画の前提となっている想定為替レート」(全規模・全産業)はドル・円相場の場合、2024年度上期147円61銭に対し、下期146円15銭になっています。仮に市場の想定通りに2025年末まで円高・ドル安が進んでも、企業の想定レートに比べれば円安・ドル高水準であり、企業業績に与える悪影響は限定的であるとみられます。

図表9  政策金利は2008年以来の0.5%に

株式市場は、トランプ大統領の正式就任、日銀金融政策決定会合という重要イベントを通過しました。米国時間1/29(水)にはFOMC(米連邦公開市場委員会)結果発表を控えていますが、今回は「政策金利に変更なし」のシナリオが99.5%織り込まれており、同会合を契機とする波乱は比較的想定しにくいと考えられます。

そうした中、日経平均株価は引き続き、おおむね38,000円~40,000円のボックス圏内に収まる動きとなっています。日経平均がボックス圏の動きにとどまっている大きな理由は3つ考えられます。

ひとつは企業業績の伸び悩みが考えられます。日経平均の予想EPS(1株利益)は昨年10/15に2,514円まで上昇し過去最高値を付けた後、それ以下の水準でもみ合っており、日経平均の頭を押さえているようです。

もうひとつは、欧米と日本の金融政策について方向感が異なることです。欧米が金融緩和を指向しているのに対し、日本の金利は引き上げ方向であり、その分、日本株市場に資金が流入しにくくなっています。

3つめは半導体関連株がやはり、ボックス相場を続けていることです。図表10は半導体に関連する世界的な主力企業で構成される米SOX指数(フィラデルフィア半導体指数)と日経平均株価の動きを比べたもの(2023年初めを1として指数化)です。世界の半導体市場をけん引する銘柄を含むSOX指数は、日経平均株価をアウトパフォーマンスする傾向です。しかし、チャートの形自体は似ているようです。SOX指数が上昇(下落)する局面では、日経平均も上昇(下落)する傾向があるようです。アドバンテスト(6857)や東京エレク(8035)など、半導体関連株に日経平均株価への寄与度が大きい銘柄が含まれていることが影響しているとみられます。

図表10 日経平均株価の今後を大きく左右する半導体株

上記より、日経平均株価の先行きは半導体株の影響を強く受けると考えられます。

上の図表10にもあるように、米SOX指数は2023年秋を当面の底に、2024年半ばにかけて上昇し、その後もみ合う展開になっています。世界半導体出荷について2024年以降、増加基調が強まったことが背景です。ただ回復はメモリ中心で、産業向け等の回復は遅れており、それがもみ合いに転じた一因にもなっています。

そうした中、1/27(月)に、中国の新興企業であるDeepSeek(深土求索、ディープシーク)が、米生成AIに匹敵するとされる高性能AIを低コストで開発に成功し、アップルストアの無料ダウンロードランキングでトップになったニュースが世界を駆け巡りました。エヌビディアの機能が制限されたAI向け半導体を使い約600万ドル(9億円強)で開発したといいます。

生成AIの開発には高価な半導体が必要で、投資には巨額の資金が必要との前提条件に疑問符が付いた形です。これを受けて、1/27(月)・1/28(火)の東京株式市場では、半導体や電線株等に大きく売りが先行。1/27(月)の米国市場でも、エヌビディア(NVDA)が17%弱急落するなど、半導体株が波乱の展開になりました。1/27(月)のSOX指数は9.1%も下げています。

図表11にもあるように、SOX指数は「上放れ」の兆しを見せた後に「下放れ」する展開となっています。SOX指数の影響を受けやすい日経平均株も当面は「上放れはお預け」となり、ボラティリティが高まる展開が警戒されます。

ただ、世界の主要企業が相次ぎ、中国の新興企業のAIを採用するかといえば、安全保障の観点から疑問符が付くでしょう。ディープシークのAIの能力や実際の開発費等については吟味も必要になるでしょう。半導体関連企業の業績にすぐさま影響が出る訳ではないでしょう。

とはいえ、中国企業に限らず、低コストで生成AIを開発できる可能性が示されたことは、重要な変化でしょう。今回の件があってもサービスナウ(NOW)やセールスフォース(CRM)などのソフトウェア企業は堅調です。市場の関心は生成AIに関するインフラ関連企業から、それを利用して、ビジネスに革新をもたらす企業に移るとみられます。

東京株式市場についても、1/27(月)・1/28(火)ともに銀行株など値上がり銘柄数は高水準で、TOPIXは底堅い動きです。日本株全般としては、過度の懸念は不要で、選別物色が続くとみられます。

図表11 波乱のSOX指数(フィラデルフィア半導体指数)・日足

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