波乱の日経平均!関税政策の今後は?

波乱の日経平均!関税政策の今後は?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2025/03/04

米半導体株急落で、日経平均大幅続落

2月第4週(2/25~28)の日経平均株価は、前週末比1,621円44銭安(▲4.18%)と週足ベースで大幅続落。年初からのレンジ相場の下値ラインである38,000円を下抜けました。同期間は米フィラデルフィア半導体株指数が7%超下落するなど、米半導体株の下落が、東京株式市場にも影響を及ぼしました。

AI半導体世界最大手のエヌビディアの決算発表が、株価下落の契機となりました。決算内容自体は、実績や売上高見通しは堅調でした。しかし、粗利率の見通しが市場予想を下振れ、中国の高性能低価格AI等との競合が連想されたとみられます。一方、会社側はこれに対し、新製品「ブラックウェル」の生産拡大に伴い粗利率は回復していくと説明しています。また、トランプ大統領による政策に関する方針や発言もめまぐるしく変化しており、株式市場の先行き不透明感が強まっています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2/21~2/28・図表7)の首位は、鉄とニッケルの合金で、主にステンレス鋼の原料となるフェロニッケル製造大手の大平洋金属(5541)です。インドネシアでの国内製造の増加や、主要消費国である中国の需要減少により、ニッケルが供給過剰となり、業績は23.3期から赤字続きで軟調です。そのため、2期連続無配でした。しかし、2/28(金)に配当方針の変更を発表。目標を連結配当性向30%目途からDOE(株主資本配当率)4%目途へと変更し、25.3期からの配当復活を発表したことが好感されました。他には、バフェット氏の追加取得検討が伝わったことで、複数の商社株が上位にランクインしました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2/21~2/28・図表8)には、首位のアドバンテスト(6857)を筆頭に、半導体製造装置など、AI需要への期待感で上昇していた銘柄がほとんどです。米半導体株の下落の影響が如実に表れました。

3月第1週(3/3~7)の日経平均は、前週末の米株高の影響や、自律反発による買いが入り上昇スタート。しかし、3/3(月)の米株市場で半導体輸出規制を巡る懸念が広がりエヌビディアが大幅安。4日(火)の日経平均は、売り先行で取引開始となりました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2025/2/21~2/28)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2025/2/21~2/28)

波乱の日経平均!関税政策の今後は?

振り返れば、2月相場は波乱のスタートでした。2/3(月)の東京株式市場では、日経平均株価が1,052円下げる急落となりました。そして、2月相場の終わりもまた波乱になりました。28日の東京株式市場では、日経平均株価の下落幅が一時1,400円に達し、37,000円台を割り込む場面がありました。おおよそ昨年10月以降、38,000~40,000円のボックス圏で推移してきましたが、それを下放れました。「保ち合い相場は放れた方につけ」という相場格言が正しければ、当面は要注意の展開になりそうです。

図表9  おおよそ38,000円~40,000円のボックス圏を下放れた日経平均株価

東京市場に波乱をもたらしたのは、米国市場の動きです。米国時間26日に発表された、AI(人工知能)向け半導体に強いエヌビディアの決算は決して弱い内容ではありませんでしたが、粗利率の下振れ等を理由に27日の米国市場で急落し、ナスダック指数の年初来安値更新につながりました。トランプ米大統領の関税政策に対する不透明感もむしろ強まっており、市場全体にリスク許容度が低下していたことも、株価下落を加速させました。日銀による追加利上げ観測がくすぶり、一時に比べ、円高・ドル安が進んでいることも一因とみられます。

3月の株式市場はどうなるでしょうか。上記したように、日経平均株価はボックス圏を下放れた直後だけに、当面は荒っぽい展開に注意が必要でしょう。エヌビディアの動きについても、好業績に素直に反応しにくくなっており、ハイテク株全般に調整が続く可能性はありそうです。当面は38,000円が上値抵抗ラインとなりそうです。

ちなみに、トランプ米大統領の政策について改めて注目点を列挙すると、①移民対策、②関税強化、③規制緩和・減税等になると考えられます。現時点では、①や②などのマイナス面ばかりが織り込まれている印象です。

①や②について、本質的に米国経済にとってもマイナス面が無視できないことから、今後は実行中止や先送りされるケースも出てくるとみられます。ただ、日本時間3/4(火)午前10時の時点では、メキシコ・カナダからの輸入に対し25%の関税が、中国からの輸入に対し10%の追加関税(計20%の関税)が賦課される運びになっています。関税実行を控え、リスク回避の売りが広がる中、3/4(火)の日経平均株価は再び波乱の展開になっています。

図表10は、日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ(7203)およびホンダ(7267)について、米国で販売される台数(2024年)の供給元をみたものです。確かに、メキシコ・カナダでの生産比率もある程度を占めています。ただ、自動車業界は長期にわたる円高、貿易摩擦を潜り抜けており、米国内生産の比率もかなり高くなってきています。関税は確かに重しになりそうですが、自動車業界の柔軟な対応も期待できそうです。

米国は、多くの人が認める「車社会」です。メキシコ・カナダへの関税は、自動車自体に加え、それを動かすエネルギーや、それを作る鉄鋼等にもかかわってきます。米国での販売価格上昇により、米国での自動車販売減少が長期化することは、トランプ政権の支持率低下(関税政策を維持できる余地の縮小)につながる可能性もありそうです。

そもそも、トランプ米大統領が指向するブロック経済化が、企業が日本国内に製造・営業拠点を構える動機づけとなり、国内設備投資が増えている側面も見逃せません。トランプ新大統領の登場による世界的なサプライチェーン再構築の中、日本が再評価されてきた面も大きいとみられます。

さらに、第1次トランプ政権でスタートした所得減税の延長や、法人税の引き下げが今後話題になる可能性もあるでしょう。日本の主力企業の業績を示唆する日経平均株価の予想EPS(1株利益)が過去最高水準にあることや、3月期末の配当取りの動き等、相場の下支え要因も存在していると思われます。

図表10 米国で販売された自動車(2024年)の供給元

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