日経平均は3週続落!今後をどう考える?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実
2025/03/11
トランプ関税の不透明感は色濃いまま。景気後退可能性、否定せず
3月第1週(3/3~7)の日経平均は、前週末比268円安(▲0.7%)となり週足ベースで3週続落。3/7(金)は、心理的節目の37,000円を割り込み、年初来安値を更新しました。トランプ米政権の関税政策が相場を翻弄している状態です。
トランプ関税に関しては、中国やカナダが報復措置を発動するなど、貿易戦争激化による世界的な景気悪化懸念が広がりました。これに対し、トランプ米政権はメキシコやカナダからの輸入品について、適用除外の拡大を行いましたが、「先行きの不確実性」が市場で嫌気されているため、株高にはつながりませんでした。 同期間の恐怖指数(VIX指数)は、強い警戒感を表すとされている20を一貫して超えた水準での推移となりました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2/28~3/7・図表7)には、首位の三菱重工業(7011)をはじめ、2位にIHI(7013)、4位に川崎重工業(7012)と、重工大手3社が揃い踏みです。地政学リスクが再び意識され、防衛関連銘柄として重工大手が選好されました。現地2/28に行われたウクライナのゼレンスキー大統領と、米国のトランプ大統領の首脳会談は、激しい口論に発展しました。首脳会談が途中で決裂したことを受け、地政学リスクが再び意識され、防衛関連銘柄として重工大手が選好されたようです。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2/28~3/7・図表8)の首位は、ディー・エヌ・エー(2432)です。スマートフォン向けゲーム「Pokemon Trading Card Game Pocket(ポケポケ)」が業績を押し上げ、2月末まで右肩上がりの株価推移でした。しかし、3月以降は材料出尽くしによる売りが発生した格好です。他にもゲーム関連株では、4位にコナミグループ(9766)がランクインしました。また、米AI関連株が下落し、日本の主力株にも売りが波及。データセンター投資拡大で買われていた電線株の古河電気工業(5801)や、AI向け半導体検査装置として引き合いの強いアドバンテスト(6857)が大きく下げました。
3月第2週(3/10~14)の日経平均は、上昇スタート。しかし、翌3/11(火)は前場時点で一時1,000円超安を付ける場面がありました。下落のきっかけは、またもやトランプ大統領の発言です。9日(日)のFOXニュースのインタビューで、高関税政策や物価上昇観測から生じる不透明感による景気後退の可能性を問われた際、「過渡期がある」と回答。同大統領が景気後退の可能性を否定しなかったことで、市場のリスク回避姿勢が強まっています。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2/28~3/7)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2/28~3/7)

日経平均は3週続落!今後をどう考える?
日経平均株価は昨年10月以降本年2月まで、おおむね38,000円~40,000円のボックス圏内で推移してきました。しかし、2/28(金)にボックス相場下限38,000円を下回って取引開始となったことで、下落トレンドに転換しました。3/11(火)午前の時点では一時36,000円割れ水準まで下落しています。
日経平均株価が下落した要因は、(1)円高、(2)米テック株の調整、(3)米関税政策に対する不透明感等であるとみられます。
米株価の変動率を示すVIX指数が、3月以降、波乱に警戒すべき「20」を超えており、機械的な売りが下げを加速させているとみられます。
(1)の「円高」については、3/12(水)に予定されている春闘の集中回答日が大きなポイントになりそうです。順調な賃金上昇が期待できれば、日銀による利上げの材料となりそうです。現状では9月までに0.5%→0.75%、年末までに1.00%への政策金利引き上げが市場コンセンサスであるとみられます。これに対し、米国の経済指標には弱さがみられ始めており、年末までに0.25%の利下げが2~3回行われると、短期金利市場では織り込まれています。金融政策の方向感の違いが維持され、円高・ドル安が進んでいます。年初には一時1ドル158円近辺まで円安・ドル高が進んでいましたが、足元ではそこから10円以上の円高・ドル安が進んでいます。
(2)については、米国でハイテク株の組み入れが多いナスダック総合指数が2/19(水)20,056ポイントから3/10(月)には17,468ポイントまで大きく下げるなど、米テック株中心の調整が進んでいます。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)に至っては、年初来高値から2割弱下げています。1月下旬の「ディープシーク・ショック」を経て、2月下旬のエヌビディア決算では好業績が示されたものの、サプライズを起こせず、株価は下落に転じてしまいました。米テック株の調整は、日経平均への寄与度が大きい半導体関連株の下落を通じ、日経平均株価の下落につながっています。
(3)については、直近では3/4(火)にメキシコ・カナダからの輸入に対し25%の関税、中国からの輸入に対し10%の追加関税が始まりました。ただ、カナダ・メキシコ分については自動車やUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に含まれる品目については4/2(水)までの関税猶予が決まりました。今後は3/12(水)からの鉄鋼・アルミ輸入への関税25%、4/2(水)の相互関税や自動車・半導体向け関税の全容表明、カナダ・メキシコへの関税再適用等が注目材料となりそうです。
図表9 おおよそ38,000円~40,000円のボックス圏を下放れた日経平均株価

今後の日経平均株価はどうなるでしょうか。その予想のためには上記した(1)円高、(2)米テック株の調整、(3)米関税政策について、吟味する必要があります。
(1)「円高」については、過度の懸念は不要とみられます。円高が持続するためには、日米株式市場の安定が必要条件になると考えられるためです。パウエルFRB議長は利下げについて急がない姿勢を示していますし、日銀も円高や株安の環境下では利上げに踏み切りにくいとみられます。日米金融政策の方向感の相違は長期化しない可能性があります。
しかし(2)「米テック株の調整」については、テック株の下落一巡までは少し時間がかかるかもしれません。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)が年初来高値から2割弱下げていますが、これ以上下がると本格的な下落局面が心配されます。好業績でも売られる銘柄が多い今のような局面は要注意でしょう。なお、中国では過去1ヵ月、急速にディープシークの普及が進んでいるようです。ディープシークは、今後主要先進国以外で普及が進む可能性もありそうです。エヌビディア等の優位性が維持できるかどうか、一応の注意が必要です。
(3)については、図表10にもある通り、米国にとりメキシコ、カナダ、中国は重要な輸入先となっています。鉄鋼や自動車の多くがメキシコ・カナダから米国に輸出されています。すでにメキシコ・カナダからの輸入について、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に含まれない商品は課税対象です。今後仮に関税が拡大された場合、米国のインフレが加速(すでに鉄鋼等では価格上昇が進行)し、米経済がスタグフレーション(インフレと不況の同時進行)に陥る可能性が強まりそうです。
以上から、日米の株式市場では、悪材料が出尽くしていない印象です。ただ、日経平均株価のRSIが30%を割り込むなど、テクニカル的にはすでに「下げ過ぎ」を示唆する指標も出始めており、35,000円台に入ると押し目買いが増えてくる可能性もありそうです。
物色的には、グローバルな貿易体制と関わりの少ない銘柄(たとえば建設)や、情報通信関連銘柄の一角、3月期末を控えて銀行株等の配当取り等にとっては、買いチャンスとなるかもしれません。
図表10 米国の輸入先国・地域別構成比(2024年)

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