「関税」「金融政策」など重要な相場材料をどうみる?

「関税」「金融政策」など重要な相場材料をどうみる?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2025/03/18

米株市場は軟調だが、日経平均は小幅高!トランプ関税への警戒は継続

3月第2週(3/10~14)の日経平均は、前週末比165円93銭高(+0.45%)と週足ベースで4週ぶりに反発。トランプ関税の不透明感で米主要株価指数は大幅安となった一方、東京市場は踏みとどまった格好です。米国市場では、トランプ大統領の関税政策の不透明感が下落圧力となりました。米関税政策に対し、報復関税を行う国が出てきたり、トランプ大統領の発言が二転三転していることなどが嫌気され、リスクオフムードが拡大しました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(3/7~3/14・図表7)の首位は、AI向け半導体検査装置として引き合いの強いアドバンテスト(6857)です。他にも電線株や半導体関連株など、足元の下落が大きかった反動で、買い戻しが入った銘柄が複数ランクインしました。3位の東京電力ホールディングス(9501)は、原発再稼働による思惑が上昇に寄与した形です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(3/7~3/14・図表8)の首位は、リクルート(6098)です。TOPPAN(7911)が、政策保有株1銘柄を売却し、755億円の特別利益を計上すると発表。具体的な会社名は明かされていませんが、TOPPAN(7911)の有価証券報告書によると、24.3月末時点の時価総額が700億円を超えるのは、リクルート(6098)のみであり、需給バランスの悪化を懸念され、売りが広がりました。

3月第3週(3/17~21)の日経平均は上昇スタート。軟調だった米国市場に買い戻しが入ったことが、追い風となっています。なお週内は、日米ともに金融政策に関する会合が予定されおり、緊張感の漂う展開が想定されます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2025/3/7~3/14)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2025/3/7~3/14)

「関税」「金融政策」など重要な相場材料をどうみる?

日経平均株価は昨年10月以降、おおむね38,000円~40,000円のボックス圏で推移してきましたが、2月末にボックス圏を下放れてしまいました。「保ち合い相場は放れた方に付け」の格言通り、3月の日経平均株価は下落基調が強まり、3/11(火)には一時36,000円を下回る場面がありました。

しかし、36,000円割れをみた3/11(火)の日経平均株価は後半急速に下げ渋り、ローソク足に下ヒゲを形成し、その後は反発に転じる展開となっています。年金資金による買いが推測され、投資家の下値不安を後退させた可能性がありそうです。

反発相場は続くのでしょうか。一時的にせよ36,000円割れをみた後だけに、株価が同水準まで再び下がった場合に押し目買いが入ってくるのか、下値の固さを試す場面が出てくるかもしれません。当面は、日米で金融政策を決める会合があることに加え、4/2(水)に米国で関税政策の詳細が決まるというスケジュールもあり、乱高下が続く可能性は残りそうです。

なお、3/19(水)に結果発表が予定されている日銀金融政策決定会合については、今回は「政策金利据え置き」となる可能性が大きそうです。米国経済に対する不透明感の高まりに加え、円高の進展で利上げを急ぐ必要性が後退しているためです。ただし、日本の長期金利は1.5%台まで上昇しており、中期的には追加利上げが想定されています。

一方、米国時間3/19(日本時間3/20早朝)にはFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表が予定されています。やはり、米国経済に対する不確実性が意識され、こちらも政策金利(現状4.25~4.50%)据え置きがメインシナリオです。

しかし、図表9にもあるように、米短期金利先物市場は2025年内、0.25%の利下げが2~3回実施されることを織り込んでいるようです。そうした金融緩和観測が強まるのか弱まるのか、3ヵ月に1度FOMCで発表される「ドット・チャート」の更新が、今回のFOMCの主要注目点です。昨年12月FOMCでは、メンバー19人のうち10人が、2025年末政策金利は3.75~4.00%(0.25%の利下げが2回)との予想が中心になっていました。「ドット・チャート」が金融緩和方向に動くと、米国経済の先行き不透明感を強める可能性がありそうです。

図表9  米短期金利先物市場が織り込む2025年末の政策金利水準

上述したように、4/2(水)に米国が関税政策の詳細を決める予定で、乱高下が続く可能性には注意が必要です。

3/12(水)には、米国への鉄鋼・アルミ輸入に対し関税25%の適用が実施され、株式市場において心配の種とされていました。ただ、鉄鋼・アルミ関税については、業種ごとに影響が異なると思われるので、投資家としては物色対象の選択の際に注意する必要がありそうです。

まず、日本の鉄鋼やアルミ業界についてですが、悪影響は限定的とみられます。2024年日本の総輸出額は107兆円でしたが、鉄鋼はそのうち、約4.39兆円(輸出総額の4.1%)を占めるに過ぎないためです。さらに、図表10にもあるように日本の鉄鋼輸出のうち、米国向けは3,027億円(鉄鋼輸出の6.9%)にとどまっています。ちなみに、米国鉄鋼需要はその約8割程度を国内生産からまかなえるようで、原材料の自給率も高く、残る輸入分はカナダ、メキシコ、ブラジルからが中心とみられます。日本の鉄鋼メーカーへの影響は小さそうです。

なお、アルミについては、日本で成形される部分のほとんどが内需であり、米国への輸出は極めて少ないようです。米国のアルミ需要については、国内生産からの自給率は約50%程度の模様ですが、日本のアルミメーカーは一部、米国現地生産で対応しており、むしろ関税はプレゼンスを高めることになるかもしれません。

鉄鋼・アルミ関税については、それらを原材料として使う自動車産業に逆風となりそうです。上記したように、米国のおもな鉄鋼輸入先はカナダ、メキシコが含まれ、アルミはカナダからの輸入が相当分あるようです。米国へのカナダ・メキシコからの関税が実行されると、自動車の生産コストは大幅に上がりそうです。

以上から、鉄鋼やアルミ関連株については、年初来の株価が堅調です。業種別株価指数の「鉄鋼」は年初来の上昇率が10%に達しています。自動車株は円高観測もあり、年初来の株価は軟調なようです。

図表10 日本の鉄鋼輸出(2024年)

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