アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~下落相場の中でも堅調に推移している銘柄群~

投資情報部 榮 聡
2025/03/17
先週の米国株式市場は、トランプ大統領が当面の景気悪化があったとしてもトランプ関税を進めるのではないかとの懸念が強まって大幅続落となりました。今週の株価材料として、2月小売売上高、FOMC(米連邦公開市場委員会)、エヌビディアのGTCカンファレンス、などが注目されます。
今回は「米国株スクリーナー」を使って最近の株価動向が相対的に堅調な銘柄から、フィリップ モリス インターナショナル(PM)、AT&T(T)、アッヴィ(ABBV)、コカ-コーラ(KO)、ジョンソン & ジョンソン(JNJ)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数のローソク足(日足、3ヵ月)

トランプ大統領の発言を受けてテクニカルに重要なポイントとされる200日移動平均線を割り込み、3/13(木)には「調整局面入り」の目途とされる直近高値から10%の下落となりました。今週は戻りが期待できるとみられますが、200日移動平均線が上値を抑える可能性がありそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 2.6% | -0.1% | 3.7% |
公益事業 | 1.9% | -0.7% | 2.9% |
金融 | -1.3% | -6.4% | -1.2% |
情報技術 | -2.1% | -10.8% | -11.8% |
素材 | -2.2% | -4.6% | -2.2% |
S&P500 | -2.3% | -7.8% | -6.8% |
資本財・サービス | -2.4% | -4.8% | -3.6% |
不動産 | -2.6% | -1.8% | -1.9% |
ヘルスケア | -3.0% | 0.0% | 4.2% |
コミュニケーションサービス | -3.5% | -11.2% | -6.9% |
一般消費財・サービス | -3.7% | -14.6% | -19.5% |
生活必需品 | -4.3% | -3.6% | -2.0% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
インテル | 16.5% |
コノコフィリップス | 9.2% |
エヌビディア | 8.0% |
ボーイング | 4.9% |
バークシャー・ハサウェイ | 3.8% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
アドビ | -12.2% |
アップル | -10.7% |
ターゲット | -9.0% |
ナイキ | -8.8% |
スターバックス | -7.9% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.3%、ダウ平均は3.1%、ナスダック指数は2.4%の大幅続落でした。
3/9(日)にトランプ大統領がテレビのインタビューで、自身の政策による景気への影響を問われた答えとして、米国経済は「過渡期(period of transition)」にあるとして、景気後退の可能性を否定しなかったことから、市場で景気への懸念が高まって一段安の流れができました。
トランプ大統領は「米国に良かれと考えて各種政策を実行しているが、良い状態となる前にそうでない時期があるかもしれない、しかし、そのような時期があるとしても必要な政策は行う」ということを言外に言っていると市場は捉えたとみられます。
3/13(木)には欧州連合(EU)からの酒類の輸入に200%の関税をかける可能性があるとして、貿易戦争の欧州への拡大が懸念されてS&P500指数は5,600ポイントを割り込みました。一方、3/14(金)は期限を迎えるつなぎ予算成立の見通しが立ったことで押し目買いが入って反発しました。
経済指標では、2月の消費者物価指数、生産者物価指数ともインフレの沈静を示しました。FRBの利下げ余地を広げると期待できるため、株式相場にはポジティブですが、トランプ関税への懸念にかき消されました。また、企業決算ではオラクルのAI関連売上が市場予想を大きく上回りましたが株価は下落で反応、アドビは業績ガイダンスが市場予想を下回って大幅下落でした。また、航空各社が需要減速、マクロ環境の不透明感を理由に業績見通しを引き下げました。
業種指数では、原油価格が底入れをうかがう動きとなっているエネルギー、ディフェンシブの公益事業がプラスでした。下落率が最も大きい生活必需品は決算を発表したコストコホールセールやウォルマートなどが下落、また、テクノロジー株の構成比が大きい一般消費財・サービス、コミュニケーションサービスなどの下落が大きくなりました。
個別銘柄で上昇トップのインテル(INTC)は、新CEOに元同社取締役会メンバーで、米ソフトウエア会社ケイデンス・デザイン・システムズのCEOや会長を務めたリップブー・タン氏を起用すると発表しました。タン氏はインテル従業員へのメモで、「事業再建が容易だと言うわけではない」としつつも、「勝つために必要なものをわれわれは持っていると全身全霊で信じているからこそ私は加わる」と述べたことが好感されました。
今週の米国株式市場
S&P500指数は3/13(木)に2/19(水)高値から10%を超える下落となり、「調整局面入り」の水準に達ました。ファンダメンタルズ(経済成長、企業業績)については、いまのところそれほど悪化しているわけではありませんが、トランプ関税による先行きの不透明感が投資環境の悪化につながるとの見通しから予想PERが低下しています(図表3)。
今週は以下にあげる株価材料について、2月小売売上が改善する、FOMCで「経済が悪化する場合は利下げで対応する」といったコメントがでる、エヌビディアのカンファレンスでAI市場への見直しが刺激される、などのシナリオが実現すれば、一旦戻りを試すことが期待できるでしょう。
今週の株価材料として、2月小売売上高、2月消費者物価指数、FOMC(米連邦公開市場委員会)、エヌビディアのGTCカンファレンス、などが注目されます。
3/17(月)に発表予定の2月小売売上高は前月比+0.6%の予想です。1月分は前月比-0.9%となって市場予想の同-0.1%を大きく下回ってネガティブサプライズとなりました。今回予想並みの回復となれば、市場の景気懸念をかなりの程度払拭する可能性がありそうです。
3/19(水)に結果が発表されるFOMCでは、政策金利は4.25~4.50%で据え置きの見通しです。トランプ関税の影響、金融市場の先行き懸念を踏まえて、今後の利下げの可能性に関する情報が注目されます。
エヌビディアは年次の「GTCカンファレンス」を3/17(月)~3/21(金)に開催します。今回は最新型AI半導体、量子コンピュータ、人型ロボットなどが取り上げられる見込みです。フアンCEOの基調講演は、米太平洋時間の3/18(火)午前10時、米東部時間では3/18(火)午後1時、日本時間の3/19(水)午前2時からの予定です。先週エヌビディアの株価は週間で8.0%の上昇となっており、ここまでの相場下落を先導してきた同社株が底入れとなるか注目です。
経済指標では上記のほか、3/18(火)に米国2月住宅着工件数(前月比+1.1%の予想)、米国の2月住宅建設許可件数(前月比-1.6%の予想)、3/20(木)に米国2月中古住宅販売件数(前月比-3.4%の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は相場の下落が大きくなる中で、株価が堅調に推移している銘柄群をご紹介いたします。
当社WEBサイトの「米国株スクリーナー」を使って、以下の条件で図表4の銘柄を抽出しました。
【スクリーニング条件】(3/13(木)時点のデータによります)
(1)25日移動平均からの乖離率が-2%以上
(2)75日、200日移動平均からの乖離率が0%以上
(3)過去20日間に株価が上昇している
(4)大型株(米国籍以外の銘柄を除きました)
ここから、フィリップ モリス インターナショナル(PM)、AT&T(T)、アッヴィ(ABBV)、コカ-コーラ(KO)、ジョンソン & ジョンソン(JNJ)を選んでご紹介いたします。
図表3 S&P500指数の予想EPSと予想PER

※BloombergデータをもとにSBI証券作成
図表4 株価が堅調な銘柄のスクリーニング(「米国株スクリーナー」の3/13(木)データによります)
コード | 銘柄名 | 現在値 (ドル) |
株価移動平均乖離率(%) (25日) |
株価移動平均乖離率(%) (75日) |
株価移動平均乖離率(%) (200日) |
値上がり率(%) (20日) |
ABBV | アッヴィ | 211.6 | 4.2 | 13.9 | 14.8 | 9.6 |
VZ | ベライゾン・コミュニケーションズ | 43.7 | 2.7 | 5.8 | 5.2 | 7.9 |
BRKB | バークシャー・ハザウェイ | 504.2 | 2.9 | 6.9 | 11.4 | 6.9 |
JNJ | ジョンソン・アンド・ジョンソン | 163 | 1.1 | 6.8 | 5.0 | 5.0 |
T | エー・ティー・アンド・ティー | 26.1 | -0.3 | 8.4 | 20.5 | 2.9 |
AZN | アストラゼネカ | 76.5 | 2.0 | 9.6 | 2.2 | 2.8 |
TMUS | TモバイルUS | 259.1 | -1.2 | 8.3 | 21.4 | 1.5 |
KO | コカ・コーラ | 69.6 | 0.1 | 7.1 | 5.1 | 1.3 |
PM | フィリップ・モリス・インターナショナル | 150.5 | -0.8 | 11.9 | 22.3 | 0.4 |
注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (3/14) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | フィリップ モリス インターナショナル(PM) | 151.88ドル | 21.3 | 【紙巻タバコ代替品が好調】 ・ディフェンシブな事業内容に加え、10-12月期決算は売上が前年同期比7%増、EPSが同14%増で、市場予想をそれぞれ2%、4%上回って好調だったことから、堅調な株価となっています。 ・10-12月期決算後には、ニコチンパウチ「ZYN」など紙巻タバコ代替品の売上拡大が好感されて上場来高値を更新しました。加熱式タバコ「IQOS」などの普及によって紙巻タバコ以外の売上は40%を占めるに至り、会社中身の変革が順調に進んでいます。 | |
買付 | AT&T(T) | 26.58ドル | 12.4 | 【重要指標が堅調】 ・10-12月期決算は売上が前年同期比1%増、調整後EPSが同横ばいと低調でしたが、モバイル・サービス収入が前年同期比3%増、携帯電話の後払い契約者純増が48.2万人、消費者向けブロードバンド収入が同8%増で契約者純増が30.7万人など、重要な経営指標は堅調でした。 ・2025年12月期のガイダンスは、モバイル・サービス収入の伸びが前年比2~3%増、消費者向けブロードバンド収入の伸びが同10%台半ば、調整後EPSは1.97~2.07ドル、フリーキャッシュフローは160億ドル以上です。 | |
買付 | アッヴィ(ABBV) | 211.77ドル | 17.2 | 【「スキリージ」「リンヴォック」が順調】 ・主力薬「ヒュミラ」の特許切れの影響を相殺するため、尋常性乾癬治療薬の「スキリージ」と関節リウマチ治療薬の「リンヴォック」に注力していますが、両薬とも順調に拡大していることが確認されて株価が上昇しています。 ・10-12月期の売上は、「ヒュミラ」が前年同期比49%減の一方、「スキリージ」が同58%増、「リンヴォック」が同46%増となり、免疫学の売上全体では同5%増となりました。2025年12月期の調整後EPSガイダンスを12.12~12.32ドル(2024年12月期実績の10.12ドル)として市場予想を上回りました。 | |
買付 | コカ-コーラ(KO) | 69.16ドル | 23.4 | 【10-12月期決算が好調】 ・ディフェンシブな事業内容と10-12月期決算が好調であったことから堅調な株価推移になっているとみられます。ただし、発動された鉄鋼・アルミニウムに対する25%の関税引き上げはコスト増と価格上昇につながるため、その点は注意が必要です。 ・10-12⽉期業績は売上が前年同期比6.4%増、1株利益(調整後)が0.55ドルといずれも予想を上振れました。オーガニック売上成長は同14%増(内訳:販売数量が同5%増、販売価格/ミックスが同9%増)で、市場予想の同7.2%増を上回りました。販売数量の増加が、予想の同0.56%を⼤きく上振れたことが寄与した形です。 | |
買付 | ジョンソン & ジョンソン(JNJ) | 162.81ドル | 15.4 | 【2025年は堅調見込み】 ・ここ数年株価が低調に推移して予想PERも15倍台と割高感がなく、事業内容もディフェンシブなことから、この局面で買われた可能性がありそうです。10-12⽉期決算は売上が前年同期比7%増(事業売却、為替の影響を除くベース)、調整後EPSは買収企業の研究開発費を計上した影響で同17%減でした。「ダラザレックス」「トレムフィア」などの販売が好調の一方、「ステラーラ」は前年同期比15%減でした。 ・2025年12月期の業績ガイダンスは、事業売却、為替の影響を除くベースで売上が前年比2.0~3.0%増、調整後EPSは同5.2~7.2%増です。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
17(月) | ・中国鉱工業生産・小売売上高(2月) ・米小売売上高(2月) ・NY連銀製造業景気指数(3月) ・NAHB住宅市場指数(3月) |
・エヌビディアのGTCカンファレンス(21日まで) |
18(火) | ・米住宅着工・建設許可件数(2月) ・米輸入物価指数(2月) ・米鉱工業生産(2月) ・米20年国債入札 |
|
19(水) | ・日本機械受注(1月) ・FOMC政策金利 |
|
20(木) | ・米新規失業保険申請件数(3月15日に終わる週) ・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(3月) ・米中古住宅販売件数(2月) |
マイクロンテクノロジー、ナイキ、アクセンチュア フェデックス |
21(金) | ・NY連銀ウィリアムズ総裁が講演 | カーニバル |
24(月) | ・auじぶん銀行日本製造業PMI(3月) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(3月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(3月) ・シカゴ連銀全米活動指数(2月) |
|
25(火) | ・S&PコアロジックCS住宅価格(1月) ・米新築住宅販売件数(2月) ・コンファレンスボード消費者信頼感指数(3月) ・2年国債入札 |
|
26(水) | ・米耐久財受注(2月) ・5年国債入札 |
ダラーツリー |
27(木) | ・米実質GDP(10-12月期、確報値) ・米新規失業保険申請件数(3月22日に終わる週) ・米中古住宅販売制約(2月) ・7年国債入札 |
ルルレモンアスレティカ |
28(金) | ・米個人所得・個人支出(2月) ・米個人消費支出物価指数(2月) ・ミシガン大学消費者信頼感指数(3月、確報値) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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