「日本株」は「上放れ」の可能性も?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実
2025/06/10
日経平均は38,000円を回復。米株は強気相場入り?
6月第1週(6/2~6/6)の日経平均株価は、前週末比223円49銭安(▲0.59%)と週足ベースで小幅反落。週初はトランプ大統領が鉄鋼・アルミへの関税引き上げ計画を表明し、下落でのスタートとなりました。その後は、米半導体株の上昇を受け、日経平均株価も連れ高しましたが、週末に米5月雇用統計の発表を控え、様子見気味になりました。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/30~6/6・図表7)の首位は、IHI(7013)です。2位が日本製鋼所(5631)、7位は前週首位の川重(7012)と防衛関連株が堅調さを維持しています。NATO(北大西洋条約機構)のルッテ事務総長は国防費を対GDP比5%へ引き上げる新目標について、6月オランダ・ハーグで開催される首脳会議での採択を目指すと報じられました。「加盟国はもっと防衛費を負担すべき」とし、実現した場合、非現実的と称されたトランプ大統領の要求水準に対応する格好となります。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/30~6/6・図表8)の首位は、スズキ(7269)です。中国レアアース輸出規制を受け、主力小型車「スイフト」の生産一時停止を発表しました。2位の第一三共(4568)は、開発中製品の進捗が軟調なことなどを理由に、5/29(木)に外資系大手証券会社が目標株価の引き下げを行いました。
6月第2週(6/9~6/13)の日経平均株価は、続伸スタート。週末に発表された米5月雇用統計の雇用者数や平均時給が市場予想を上回り、米景気減速懸念が後退し、米株式市場がリスクオンムードとなり、それを引き継いだ形です。6/6(金)のS&P500は節目である6,000ptを回復し、2月につけた最高値6,144.15ptまで2.4%あまりと、最高値更新をうかがう水準に位置しています。6/2(月)に発表された5月ISM製造業景況指数など、軟調な経済指標への反応は限定的で、楽観が広がっていることから、強気相場入りとの指摘も市場から聞かれます。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/30~6/6)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/30~6/6)

「日本株」は「上放れ」の可能性も?
週明け6/9(月)の東京株式市場では、日経平均株価が大幅に続伸し、7営業日ぶりに38,000円の大台を回復しました。6/6(金)に発表された5月の米雇用統計で、雇用者数の増加が予想よりも減速しなかったことが好感されました。
今後の日経平均株価はどうなるでしょうか。日経平均株価は昨年秋から2月下旬頃まで、38,000~40,000円の範囲で推移してきました。この水準まで戻ると、売り圧力が強まる可能性があります。6/9(月)の終値も、この範囲の下限に到達しています。日経平均株価を見る限り、日本株の上値は重くなるかもしれません。
しかし、日本株をTOPIXで見ると、少し違った景色が見えます。TOPIXは昨年冬から3月頃まで2,700~2,800ポイントで推移してきましたが、6/9(月)の終値は2,785ポイントで、ほぼこの範囲の上限にあります。日経平均株価が1月に付けた年初来高値40,083円から5%弱下げているのに対し、TOPIXは3月27日の年初来高値から1%強しか下げていません。TOPIXで見ると、日本株は年初来高値更新目前で、高値更新から「上放れ」の可能性もあります。
日経平均株価をTOPIXで割った倍率を「NT倍率」といいます。「NT倍率」は2025年2月半ば以降大きく下げています。NT倍率が低下するということは、日経平均株価がTOPIXと比べて弱かったことを示しています。日経平均株価もTOPIXも日本株を代表する株価指数ですが、両者の間に強弱が生じるのは、両指数の変動に寄与しやすい銘柄に差があるためです。TOPIXは時価総額の大きな銘柄の影響を受けやすく、日経平均株価は半導体関連など値がさ株の影響を受けやすいという特徴があります。「NT倍率」の上下は、日本株全体の方向感ではなく、物色の方向感を示していると考えられます。
2025年前半の株式市場では、防衛や金融などの時価総額上位銘柄が活躍し、自動車株の低調をカバーしてTOPIXが相対的に底堅く推移しました。一方、多くの半導体関連株など値がさ株が調整し、日経平均株価は相対的に軟調に推移しました。これらを背景に、「NT倍率」は下落傾向をたどったとみられます。インフレ懸念や世界的な金利上昇圧力、地政学的リスクの継続などを考えると、今後も防衛や金融などの時価総額上位銘柄に影響を受けやすいTOPIXの方が高値更新に近いかもしれません。すなわち、物色対象の傾向に大きな変化はないかもしれません。
もっとも、図表9を見る限り、NT倍率は下げ渋っているようにも見えます。これは、米テック株の上昇を背景に日本でも半導体関連が出直りつつあり、その動きが本格化すれば市場の主役が変わる可能性も残されています。
図表9 日経平均株価・TOPIXと「NT倍率」(日足)

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