波乱相場でリスクを減らす10%リスクコントロール戦略

投資情報部 土居雅紹 根津真由子
2026/03/31
相場は乱高下。中東情勢が重荷に
■ 3月第4週(3/23-3/27)の株式市場動向(図表1)
日経平均株価の3/27(金)終値は53,373円07銭で、前週末比54銭高(+0.00%)と横ばいとなりました。
週足で見ると横ばいではありながらも、市場は値動きの激しい展開が相次ぎました。
中東情勢に関する報道が相次ぐ中、問題解決の糸口が見えないことが要因です。
■ 騰落率の傾向(3/19-3/27)(図表4・5)
・上昇率上位:大手保険グループの東京海上ホールディングス(8766)が上昇率トップ。米投資会社バークシャー・ハサウェイと資本業務提携を行うと発表。バークシャー・ハサウェイからの出資額は2,874億円としています。今後の収益拡大への期待感から買いが先行しました。
・下落率上位:半導体テスターのトップ企業であるアドバンテスト(6857)が下落率トップ。米フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が急落していることを受け、半導体の主力銘柄である同社株に売りが広がったとみられます。
■ 3月第5週のスタート(3/30)
日経平均株価の3/30(月)終値は51,885円85銭で、前週末比1,487円22銭安(-2.79%)と大幅下落。
中東情勢のさらなる悪化を警戒した売りが広がり、朝方には下げ幅は一時2,800円超となりました。
原油高も拍車をかけ、企業の業績への影響も懸念されています。
先行きは依然として不透明で、投資家のリスク回避姿勢は継続しています。
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図表1 日経平均株価の値動きとその背景
図表2 日経平均株価
図表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
図表4 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(3/19-3/27)
図表5 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(3/19-3/27)
波乱相場でリスクを減らす10%リスクコントロール戦略
■市場の荒れ具合でリスクを変える
イラン戦争で原油価格が急騰し、世界的な供給不安を引き起こしつつあります。この結果、日経平均株価は3月初めから大荒れの展開となっています。最大のリスク要因は、トランプ大統領自身が不確実性の発信源となっていることで、残念ながらこの状況が当面さまざまな形で継続すると考えられます。
極端な荒れ相場への対応は、投資経験、余裕資産の額、リスク許容度などによってさまざまで、万人に共通の正解はありません。短期の値幅取り目的のトレーディングや長期投資目的のバーゲンハンティングの機会と考える方もいる一方、大きな値動き自体がストレスとなってしまっている方も少なくないと思われます。
では、保有しているリスク資産を売却してしまえばよいかというと、まず下落過程で売却することは容易ではありません。特に損失を抱えている場合は、行動経済学の観点からみても、損失を実現することへの心理的な抵抗が大きく、含み損を抱えたままになりがちです。
さらに、ポジションを整理できたとしても、市場の戻りに再び参加することへのハードルも高いものがあります。「落下しているナイフを掴むな」という投資格言はありますが、多くの場合は、ナイフが完全に床に刺さっても恐怖心からポジションを取ることは投資経験が豊富な方にとっても容易ではありません。
そこで、選択肢の一つと考えられるのがリスクコントロール戦略です。この考え方は、株価変動の大きさ(ボラティリティ)などをリスクの目安とし、リスクが高い時には株式等のリスク資産への投資を減らし、リスクが低い平時にはリスク資産への投資を増やして、ポートフォリオ全体のリスクを一定の範囲に抑えることを目指すというものです。
■10%リスクコントロール戦略とは
リスクコントロール戦略には、相場状況を独自基準で判断して複数の資産への投資比率を段階的に変更したり、変更の割合を連続的にしたり、判断基準をオプション価格から算出される予想変動率(インプライド・ボラティリティ)を用いたり、原資産のヒストリカル・ボラティリティ(一定期間の標準偏差)を利用したりする様々なバリエーションがあります。これらは、実際に投資信託やETFの運用に用いられているものもあります。
これらのうち、個人投資家が株価指数先物、CFDや株価指数連動ETFなどを用いて、日経平均株価に対して運用する場合に利用しやすいと思われるのが10%リスクコントロール戦略です。コンセプトが簡単で、容易に入手可能な日経平均株価の終値だけから投資割合が算出できます。具体的には、日経平均株価を対象として運用する資金(リスク資産)と短期資金から構成する運用ポートフォリオを想定し、達成したい年率の価格変動率を10%として、リスク資産への投資比率を動的に変更させるというものです。
例えば、株式(日経平均連動ETF等)と現預金だけからなるポートフォリオを前提として、
株式の価格変動率が20%なら、目標10%÷株式の価格変動率20%=0.5となり、ポートフォリオの50%を株式運用とします。
株式の価格変動率が30%に上昇したら、目標10%÷株式の価格変動率30%=0.33333.. となり、ポートフォリオの株式での運用割合を1/3まで減らす、という運用になります。
■ボラティリティには何を使う?
10%リスクコントロール戦略にどういったボラティリティを用いるかを判断する場合、入手の容易さと特徴を考慮する必要があります。オプション価格から算出される予想変動率を用いる場合、オプションの限月、権利行使価格と原資産価格の位置、コールとプットの別などによって数値が大きく異なることに加えて、継続して用いる際に過去データの入手に苦労することもあります。そこで、日経平均VIで代用すれば入手は容易なのですが、OTM(アウト・オブ・ザ・マネー)を広く用いる算出方法のため、ATM(アット・ザ・マネー)のインプライド・ボラティリティとは一致しないことがあります。
一方、原資産価格(今回は日経平均株価)のヒストリカル・ボラティリティ(過去の値動きの標準偏差)を用いる場合には、移動平均のように、インプライド・ボラティリティに遅れて変化することになります。加えて、計測期間が短い(10営業日など)と変動が大きすぎて投資比率の決定に用いるには使いにくくなります。とはいえ、計算期間を長く(50営業日や100営業日など)とると、水準変化が緩慢で、投資比率の決定には使いにくくなります。そこで、ここでは20営業日のヒストリカル・ボラティリティを用います。※
※日次価格の対数変化率の過去20営業日の標準偏差を計算し、年率換算のために252の平方根を乗じます。
図表1は日経平均VIと日経平均株価の20日ヒストリカル・ボラティリティの推移(2022/2/2~2026/3/27)です。前述のように日経平均VIはヒストリカル・ボラティリティに比べて高い水準となることが多くなります。また、2024年11月にトランプ氏が大統領選に勝利(当確)して以降、日経平均VIの水準が高止まりします。しかしながら、実際の過去の価格変動率はそこまで高くはなっていないことから、オプション市場での日経平均オプションへの需要の高まりが反映されていたと推測されます。この点においても、リスク資産への投資割合を算出する10%リスクコントロール戦略には、20日ヒストリカル・ボラティリティを用いることがよさそうです。
図表6 日経平均VIと20日ヒストリカル・ボラティリティ(2022/2/2~2026/3/27)
■10%リスクコントロール戦略はこう使う
10%リスクコントロール戦略を個人投資家が日経平均株価への投資に利用するには以下のような手順で行うことが考えられます。※1
①日経平均株価の終値をエクセルなどに記録し、日次の変化率を計算(厳密にいえば対数変化率ですが、単純変化率でも可)
②過去20日分の日次の変化率から、エクセル関数などを使って標準偏差を計算
③標準偏差に252の平方根(15.87451)を乗じて年率換算の20日ヒストリカル・ボラティリティを計算する
④10%リスクコントロール戦略なので、10%÷20日ヒストリカル・ボラティリティでリスク資産への投資比率(修正前)を求める
⑤(ちょっと工夫)管理の手間と売買回数を減らすため、④で求めた数値を20%、40%、60%、80%、100%の5区分に集約※2
⑥前営業日のリスク資産への投資比率になるように、当日終値で取引を行って調整する(翌営業日変動分から比率を反映)
これで、2営業日前のリスク資産への投資比率がポートフォリオに反映される仕組みの10%リスクコントロール戦略を実践できます。
※1 ヒストリカル・ボラティリティを用いる任意の10%ボラティリティ・ターゲット戦略の例であり、「日経平均リスクコントロール・インデックス」とは無関係です。
※2 利用するエクセル関数の例 5区分のリスク資産投資比率 =ROUND(④/2,1)*2
■試算結果
図表2は日経平均株価にそのまま投資していた場合と、10%リスクコントロール戦略を用いた場合の試算結果です(2022/2/2~2026/3/27)。10%リスクコントロール戦略は、リスク資産への投資割合を1%刻みとした場合(緑線)と5区分(0%~100%、20%刻み、黒線)の2通り試算しています。「10%HV投資割合-5区分」(面グラフ)はヒストリカル・ボラティリティ(HV)を用いた10%リスクコントロール戦略で、投資割合を5区分とした場合の推移です。この試算結果からは以下のことが分かります。ただし、あくまで過去の値動きに基づく試算であり、将来の運用成果等を保証するものではありません。
・1%ずつでも、20%ずつ5区分でリスク資産への投資比率を変更してもパフォーマンスはほぼ同じ
・ポートフォリオのリスクを減らしている10%リスクコントロール戦略はパフォーマンスが安定する可能性
・日経平均株価急騰局面において10%リスクコントロール戦略のパフォーマンスは劣後
・2024年8月上旬(図中A点)や2025年4月初旬(図中B点)のような株価ショックの際には、日経平均株価の累積パフォーマンスが急速に悪化
・5区分運用では、2026年3月2日時点で40%リスク資産運用、3月19日以降はリスク資産への投資割合は20%のみで、急落局面での下振れを抑える効果があった
■まとめ
・10%リスクコントロール戦略にはヒストリカル・ボラティリティ(過去の値動きの標準偏差)を用いる
・毎日エクセル等でリスク資産の比率を計算し、翌日の日経平均株価の現物取引終了時点で日経平均先物やCFD等を取引して調整する
・1%ずつ細かく投資比率を変更するのではなく、20%刻みの5区分として売買回数を抑える工夫の余地あり
・波乱相場でポートフォリオの安定性を得る手段として10%リスクコントロール戦略は選択肢となり得る
図表7 10%リスクコントロール戦略の試算結果(2022/2/2~2026/3/27)
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追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。
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委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。
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・ 先物・オプションの証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)
・ 指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。
・ 日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。
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・ 指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使または転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。
・ 未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。
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