生成AIの次はコレ?「量子コンピューター」関連株

生成AIの次はコレ?「量子コンピューター」関連株

投資情報部 栗本奈緒実 鈴木英之

2025/10/15

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生成AIの次はコレ?「量子コンピューター」関連株

自民党総裁選後、最高値を更新した日経平均株価は、首相指名を巡る混乱や、米中対立の激化懸念により一服した状態です。今日は、政策・地政学のノイズに左右されにくい新テーマの関連株を探ってみます。


目下の株式市場では「AI」が一大新技術として注目され株高をけん引してきました。そのような中、次に技術のパラダイムシフトを起こすと注目されているのが「量子コンピューター」です。

つい先日、ノーベル化学賞、生理学・医学賞と日本人の受賞ラッシュが嬉しいニュースとして世間を賑わせました。一方、2025年のノーベル物理学賞は、量子コンピューターなど次世代量子技術の基盤に道を開いた3氏に授与されました。


量子コンピューターとは、量子力学の原理を用いた全く新しいタイプのコンピューターです。私たちが現在、日常的に使用している古典コンピューターと得意領域が異なり、特定分野において圧倒的な処理能力を有していると言われています。

量子コンピューターは、「重ね合わせ」という量子の原理を利用することで、同時に扱える情報の数が一気に増加し、高い並列計算処理が可能となります。

高い精度の「シミュレーション」や、多くの選択肢から最も良いものを探し出す組み合わせや選択肢を選ぶ「最適解」を見つけることができるため、「渋滞解消のための経路案内」、「金融ポートフォリオの最適化」、「創薬開発の効率化」などで実用化が期待されています。

ただ、現時点では課題も多く、研究~実証段階にあるものがほとんどです。実用化が本格的に進むのはこれからとなります。

民間企業のみならず、各国政府も投資を進めている最中です。日本政府は2025年を「量子産業化元年」に位置付け、本格的な実用化を後押ししています。また、2025年は量子力学の完成者という称号を持つドイツの物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルクが量子力学の基本理論を発表してから100年の節目の年に当たり、国連は「国際量子科学技術年」と定めています。

『量子コンピューティング市場 サイズと展望 2025-2033』によると、2024年の市場規模は11.7億ドルの評価で、2033年の市場規模は119.4億ドル(10倍超)に達するとし、年平均成長率は29.5%と急拡大が予想されています。

以上を踏まえ、今回の「新興株ウィークリー」では、「量子コンピューター」関連の中小型株を探してみました。

スクリーニング条件は、以下の通りです。

・東証グロース市場、または東証スタンダード市場に上場

・売買高移動平均(25日)が2万株以上

・時価総額が100億円以上

・今期会社計画の予想売上高が前期比で増収

・今期会社計画のいずれの利益項目にも赤字予想がない

・各種資料・報道等から、「量子コンピューター」と関連性があるとみられること

・取引所または日証金、当社による信用規制・注意喚起銘柄を除く

掲載は、時価総額が大きい順です。

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【参考】 10/7(火)~10/14(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

【銘柄一覧】 生成AIの次はコレ?「量子コンピューター」関連株

取引 チャート ポートフォリオ コード 銘柄名 株価
【10/14・円】
「量子コンピューター」
との関連性
6777 6777 6777 6777 santec Holdings 8,030 MITで同社の空間光変調器が導入済。7月、量子通信・量子コンピューティング分野の豪メーカーを買収
5574 5574 5574 5574 ABEJA 3,055 「ポストAI」を見据えたプロジェクトで、量子コンピューターのソフトウェア開発に向けた研究に着手
4498 4498 4498 4498 サイバートラスト 1,325 量子コンピューターによって既存の暗号技術が将来的に破られるリスクに備え、「耐量子暗号(PQC)」の技術検証を進行中
6521 6521 6521 6521 オキサイド 1,883 当社製品は量子センシング、量子コンピューティング、量子通信のすべての分野に共通する部品として使用される
5582 5582 5582 5582 グリッド 2,350 インフラ分野でAI活用の計画最適化。国の研究機関の検証プロジェクトで研究受託。既存事業への組み込み余地は広い
7713 7713 7713 7713 シグマ光機 1,465 内閣府系組織が主催する「量子」課題の研究テーマで「高安定レーザー局部発振機」の開発に取り組む
  • ※会社発表データ、Quick Workstation Astra Managerデータ、各種報道等をもとにSBI証券が作成

一部掲載銘柄を詳細に解説!

■santec Holdings6777

1984年、「光ファイバー全自動検査システム」を世界で初めて開発。光通信分野の測定器や部品を主力製品とするメーカーです。海外売上高比率は78%にのぼります(25.3期)。

足元の業績は、堅調。通信量の増加によるデータセンターへの投資拡大を背景に、同社の部品や検査装置の需要が高まっています。売上高は12期連続、営業利益は13期連続で増益を達成しました。

量子コンピューター研究の分野では、同社の空間光変調器がMIT(マサチューセッツ工科大学)などで複数導入されています。

また、25年7月、豪州の光計測機器メーカー「MOG LABORATORIES PTY LTD(MOGLabs)」を買収しました。買収先は、量子通信・量子コンピューティング分野を中心に、先端的な光測定器の開発・製造・販売を行っている会社です。新しい収益の柱の獲得を買収目的と説明しており、次の成長分野として期待が集まっています。

ABEJA (5574

AI技術を活用し、仕事効率化支援サービスを提供している企業です。

製造業や小売業、保険業といった非IT分野の大企業への導入がメインで、実装・運用に強みを持ちます。具体的には、スーパーマーケットでの人手配置や発注作業、製造業での不良品発見、保険申込の確認作業などの効率化支援を行っています。

2017年、AI向け半導体最大手エヌビディア(NVDA)とアジアで初めて資本提携を行いました。高度なIT専門知識が求められるものを自社サービスに組み込み、非IT業界にも使用可能な形にして顧客に届けています

現在は、生成AI/LLM(大言語モデル)関連売上の伸びが加速しています。2019年、「ポストAI」を見据えた新プロジェクトとしてABEJA X(アベジャ・エックス)を始動。第一弾として、量子コンピューターのソフトウェア開発に向けた研究に着手したことを発表しました。

■サイバートラスト(4498

利用者がインターネットを安心して利用できるように電子証明書を発行し、本人認証を行うサービスを提供しています。最も高機能と言われる「EV証明書」(拡張認証)を発行しており、国内で発行されるEV証明書の約50%(24年7月実績・会社資料)を発行しています。

契約が継続することで継続的な収益が見込める売上高が66%(25年6月会社資料)を占め、安定成長が期待できるビジネスモデルです。25.3期までは10期連続の増収増益を達成。26.3期1Q決算も、売上高19億円(前期比27%増)、営業利益3.0億円(同113%増)と好調で、1Qとして過去最高の売上高・営業利益を更新しました。

量子コンピューターによって既存の暗号技術が将来的に破られるリスクに備え、「耐量子暗号(PQC)」の技術検証を、弁護士ドットコムと進めています。対応を進めることで「EV証明書」の競争力向上が期待できそうです。

■オキサイド(6521

コア技術は、高品質な単結晶(原子配列がきれいな固体、極めて透明な氷のようなもの)の育成技術、および単結晶に深紫外レーザーを通すことで波長を変化させる技術です。半導体事業(25.2期売上構成比56%)では、半導体製造前工程のウエハ表面欠陥検査で当社技術が使用されます。またヘルスケア事業(同15%)では、PET検査(がん細胞を見つけるための特別なカメラ検査)に「シンチレータ単結晶」が使われています。

業績は25.2期は3Q累計では営業赤字でしたが通期では黒字転換しています。29.2期に売上高130億円、営業利益率12%が中期計画の目標(2025年4月時点)です。

当社の非線形光学結晶・素子ならびに光源モジュールは量子センシング、量子コンピューティング、量子通信のすべての分野に共通する部品として使用され、量子関連市場の成長に伴い売上の拡大が期待できます。25.2期の当社「量子関連」売上は約6億円。29.2期には10億円以上に成長すると会社では期待しています。

■グリッド(5582

インフラ分野で、AI活用の計画最適化システムを電力・物流などのインフラ分野で提供する企業です。例えば、電力需給計画業務において、需要・市場価格・天候などのデータから利益やコスト、制約を踏まえて自動で計算するサービスを提供しています。電力は大規模に貯蔵することが難しいため、人力で行うと、非常に高度な制御スキルや手間を要します。

大手電力、電工、鉄道など新規参入が難しい社会インフラ分野の大手企業と取引実績を多数有しています。四国電力向けの導入効果では、収益改善効果として年間10億円以上、計画策定時間が半分以下になったとの事例があります。電力会社向けのアップセル・クロスセル案件の進行や、システム導入後の運用・サポートを行うストック型売上の増加で業績拡大を目指しています。

長期成長戦略の一つに、量子コンピューターの活用を挙げています。2019年、量子コンピューター向けアプリケーションの開発フレームワークとして ReNom Q をリリース。また同年7月より、IBM Q Networkに参加し、実機での検証を進めています。また現在は、国の研究機関であるNEDOで量子アルゴリズムの有効性を検証するプロジェクト(~2025年10月まで)で研究受託をしており、検証が進んだ場合の既存事業への組み込み余地は広いと考えられます。

■シグマ光機(7713

国内最大手のレーザー用光学関連部品メーカーです。主力の要素部品事業(25.5期売上構成比84%)では、レーザー光の集光・反射等に必要なレンズやミラー、それを固定するホルダー等を提供しています。研究・開発機関200研究所、民間企業1,200社と取引。欧米、アジアなど海外売上高比率は35%(25.5期)です。

26.5期1Qは売上高26億円(前年同期比6%減)、営業利益2.1億円(同31%減)と減収減益でした。電子部品・半導体関連大口顧客の製造・検査装置への組み込み用途の需要が減少したこと等が響きました。26.5通期では売上高116億円(前期比1%増)、営業利益12.2億円(同7%増)の計画ですが、やや出遅れた感があります。

内閣府系組織が主催する「量子」課題の研究テーマに、アイシン、NTT等と参画しています。光格子時計の超精密な時間・周波数情報を安定的に配信するために「高安定レーザー局部発振機」の開発に取り組んでいます。




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