株価急落!再評価期待の「地銀」10銘柄

投資情報部 栗本奈緒実
2025/11/05

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
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株価急落!再評価期待の「地銀」10銘柄
11/5(水)の日経平均株価は、取引時間中に5万円を割り込みました。主力テック株を中心に売りが広がっています。
10/30(木)の日銀金融政策決定会合では、追加利上げが実施されませんでした。
しかし、日本では日銀が目指す以上のインフレが進行しています。9月消費者物価指数(総合CPI)は前年同月比2.9%の上昇。22年4月~25年9月までの42カ月連続で、インフレ目標である2%を超えています。
新政権となり、利上げ再開の時期は後ろ倒しになった可能性は強まりました。しかし、「いずれ行われる」という見方はいまだ主流で、メガバンクを中心とした銀行株も高値圏を維持しています。一方、銀行の中でも地方銀行までは、買いの勢いは届いていない状況です。
首都圏以外では、人口の減少に伴い、企業の数も減少しています。日本の地方銀行は、オーバーバンク(銀行の数が多すぎる)状態だと指摘する声も聞こえます。
そのような中、業界再編への機運が高まっているようです。今年の9月に千葉銀行と千葉興業銀行が経営統合に関する基本合意締結を発表。2026年は八十二銀行(8359)と長野銀行、福井銀行(8362)と福邦銀行の合併、2027年は群馬銀行(8334)と第四北越FG(7327)の経営統合など続々と予定されています。
2006年~7年にかけての利上局面で、メガバンクなどの大手に比べ、地銀は貸出金利の引き上げが行われにくかったという指摘があります。今回も、金利のある世界への回帰に向け、「攻め」の再編が求められている状況です。また、地銀株は持ち合い株の解消や、業務効率化、資本効率の向上など、短期的な改善余地を残している銘柄も複数あると考えます。
今回の「新興株ウィークリー」では、時価総額100億円~3,000億円の中小型の地方銀行に絞り、スクリーニングを行いました。
条件は下記の通りです。
・東証業種が銀行業に属する企業
・時価総額が100億円~3,000億円
・不良債権比率が1.5%以下
・自己資本比率が4%以上
・取引所または日証金、当社による信用規制・注意喚起銘柄を除外
掲載は、直近3期のROE(中央値)が大きい順です。
名称の横に★が付いた銘柄は、参考②R^2(回帰線)より下に位置する(=相対的に割安・弱いとみられる状態)銘柄で、この中から本日は2銘柄詳細解説させていただきます。
WEBリクエスト募集中!
気になる投資テーマ等がございましたら、こちらにご意見お待ちしております。
【参考①】10/28(火)~11/4(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄
【参考②】時価総額*100億円~3,000億円の銀行株(*2025/10/29時点)
株価急落!再評価期待の「地銀」10銘柄
| 取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価 【11/4・円】 |
直近3期のROE 中央値(%) |
不良債権比率 (%) |
| 8393 | 8393 | 8393 | 8393 | 宮崎銀行(★) | 4,725 | 5.05 | 1.31 |
| 8367 | 8367 | 8367 | 8367 | 南都銀行 | 5,190 | 4.29 | 1.36 |
| 8551 | 8551 | 8551 | 8551 | 北日本銀行(★) | 3,785 | 3.81 | 1.48 |
| 8368 | 8368 | 8368 | 8368 | 百五銀行 | 955 | 3.65 | 1.36 |
| 8544 | 8544 | 8544 | 8544 | 京葉銀行 | 1,303 | 3.57 | 1.30 |
| 8386 | 8386 | 8386 | 8386 | 百十四銀行 | 5,490 | 3.24 | 1.34 |
| 8361 | 8361 | 8361 | 8361 | 大垣共立銀行 | 3,660 | 3.02 | 1.30 |
| 8360 | 8360 | 8360 | 8360 | 山梨中央銀行 | 3,340 | 2.77 | 0.93 |
| 8344 | 8344 | 8344 | 8344 | 山形銀行(★) | 1,701 | 2.38 | 1.01 |
| 8383 | 8383 | 8383 | 8383 | 鳥取銀行 | 1,352 | 2.17 | 1.01 |
- ※Quick Workstation Astra ManagerデータをもとにSBI証券が作成
- ※不良債権比率は、金融再生法開示債権÷(金融再生法開示債権+金融再生法・正常債権)×100で計算
- ※(★)の銘柄は、参考②R^2(回帰線)より下に位置している
一部掲載銘柄を詳細に解説!
■宮崎銀行 (8393)~宮崎、鹿児島など南九州に強固な基盤。「安定配当」から「累進配当」へ
★日足チャート(1年)

★業績推移(百万円)

■宮崎、鹿児島など南九州に強固な基盤を有する地方銀行
宮崎、鹿児島など、南九州を中心とする地方銀行です。
宮崎県内での拠点数は73、貸出シェアNo.1(県内シェア率50%)、預金シェアNo.1(同62%)を誇ります(25.3末時点『 2024年度株主・投資家向け経営末時点、郵貯説明資料』より)。
全経常収益(25.3期)のうち、貸出業務が41%、有価証券投資業務が29%を占めています。
コアである預貸ビジネスでは、貸出金利回りが、一般的な地銀に比べ平均30bp程度上回っている点が特徴です。
強固な関係の顧客基盤を背景に、短プラ*の引き上げの際には、99%の取引先で貸出金利の引き上げを実施、または了承を取得した状況です。金利上昇局面において、プライシング(価格支配力)の強さは武器になると考えられます。
*短プラ:短期プライムレート。日銀の政策金利に連動する、銀行の短期貸出基準金利。短プラが上がると、貸出金利が連動して上がりやすい。
■TSMCの熊本工場進出で南九州にも余波?
世界最大の半導体 受託製造会社 TSMCが熊本に工場を進出して以降、業績成長期待から地元熊本の企業の株が選好されました。
一方、今年の1月に発表されたJETROの『TSMC起因の半導体投資効果、熊本から九州各地へ波及(九州、台湾、米国)2025/1/6』によると熊本以外の九州地域にも恩恵の余波が届きそうです。
21年~30年にもたらされる経済波及効果は、宮崎県が1.1兆円と、令和4年度(2022年度・確報)の名目GDP3.7兆円の30%弱に該当する規模です(『宮崎県県民経済計算の概要』)。
■「安定配当」から「累進配当」へ、株主還元方針見直し
前期(25.3期)は、株主還元方針の見直しが行われました。安定配当から累進配当に変更され、6期ぶりに1株当たりの普通配当金が引き上げられました(24.3期:100円→25.3期110円)。
今期(26.3期)は、ROEが5%以上、経常利益が152億円が目標です。1Q(25.4-6月期)時点での通期会社計画に対する経常利益の進捗率は、33%超と堅調といえるでしょう。
PBR(2025/11/4時点)は0.4倍と、直近での資本政策の見直し等が加速した場合、2015年以来の高値水準回復も期待されます。
■山形銀行 (8344)~山形県トップシェア。株価は再評価局面入り?
★日足チャート(1年)

★業績推移(百万円)

■山形県トップシェアの銀行
山形県で預金シェア37%、貸出金シェア39%とトップを維持する銀行です(25.3末時点、ゆうちょ銀行、政策金融機関を除く)。
預金・貸出業務は全経常収益の約2.4%と少ないのが特徴。
ただ、本業利益*は 24.3期に黒字転換し、伸長が続いています。今後、政策金利が0.5%の横ばいでも、収益は拡大する見通しです。
*本業利益算出方法=貸出金平残×預貸金利回差 +役務取引等利益-営業経費
不良債権比率は約1%と、年々低下傾向にあります。信用格付けは、A+と東北地方の地方銀行も中でも、比較的高い信用力の評価を受けてます(JCR:日本格付研究所、25年3末時点)
■有価証券ポートフォリオ再構築、改善期待
経常収益の多くを占めているのが有価証券運用です。
しかし、有価証券評価損益は、23.3期:▲261億円、24.3期:▲143億円、25.3期:▲274億円の評価損で推移しています。他金融機関と同様、金利上昇で債券に評価損が発生しました。同社の場合はこれ加え、株式市場全体が上昇局面となっていた中、投信・外国証券等の損失大きい状態が続いています。
現在は重点戦略の一つに有価証券ポートフォリオの再構築を掲げ、相場変動に強い構成へ改めている最中です。
日銀の追加利上げを捉えるため、円債残高を徐々に増やしていく方針です。一方、外債は固定の長い債券を減らし、短めや変動金利の比率を増やすことで、金利が上がっても痛みが小さく、収益は安定化させる方針です。評価損も出にくい構成に見直すことで、運用のブレを小さくし、投資の安定性向上を目指しています。
有価証券ポートフォリオの再構築が奏功した場合、株価再評価の大きなきかっけになり得ると期待されます。
10/29(水)に今期(26.3期)中間期および通期会社計画の上方修正を行いました。通期の経常利益と純利益に関しては、ポートフォリオの入れ替えに伴う債券売却損の計上を見込んでいることから、据え置かれており、改善余地を今後に残した格好です。
11/14に、今期中間(25.4-9月期)決算を発表予定です。
■25年5月、配当性向の見直しを実施
PBR1倍割れ解消を目指し、前述紹介した収益力の強化や利益成長のほか、財務面でも取組みが行われています。
25年5月、配当性向の見直しを実施。配当性向35%以上が新たな目安となりました。これを受け、前期(25.3期)は4期ぶりに1株当たり35円→45円の増配が行われ、今期(26.3期)は同56円と連続増配が実施される予定です。11/4(火)時点で、予想配当利回りは3.4%です。
そのほか、政策保有株の持ち合い解消や、積極的な自社株買いが実施されています。
2025年に入って以降、株価は右肩上がりで堅調に推移しています。資本効率向上施策の他、収益成長、運用見直し等の施策が揃い、再評価局面に入っています。
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