NT倍率の罠?──日経平均とTOPIXのすれ違いを読み解く

投資情報部 土居雅紹 根津真由子
2025/11/04
日経平均は初の5万2000円台
■10月第4週(10/27~10/31)の株式市場動向
・日経平均株価10/31(金)終値は52,411円34銭で、前週末比3,111円69銭(+5.94%)の大幅上昇。 
・日経平均株価の変動要因
①週初:米中関係の改善や米利下げ、新政権への期待から1,212円67銭高(+2.46%)と続伸。
②週中:アドバンテストが今期の営業利益計画の引き上げや自社株買いを公表し、急騰。日経平均は大幅反発した一方で、TOPIXは続落。
③週末:米ハイテク株高が追い風となり、半導体関連株に買い。
■ 騰落率の傾向(10/17~10/24)
・上昇率上位:首位のアドバンテスト(6857)は2026年3月期の業績の上方修正と自社株買いを発表。29日にはストップ高で取引を終了しました。
・下落率上位:ニデック(6594)は東京証券取引所から28日付で特別注意銘柄に指定されました。加えて、11月5日付で日経平均株価の算出銘柄から除外されることが決定。これらが嫌気され、一時ストップ安をつけました。
■ 11月第1週のスタート(11/3)
日米ともに決算発表シーズンが到来しており、注目が集まります。
なかでも、4日には任天堂(7974)、5日にはトヨタ自動車(7203)が決算発表を行う予定です。
米国では7日に雇用統計の発表が予定されていますが、政府機関の閉鎖状態は継続しており、発表が延期される可能性は高そうです。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景
	図表2 日経平均株価
	図表3 NYダウ
	図表4 ドル・円相場
	図表5 主な予定
	図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
	図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(10/24~10/31)
	図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(10/24~10/31)
	NT倍率の罠?──日経平均とTOPIXのすれ違いを読み解く
■日経平均株価、5万円突破後も続伸──TOPIX出遅れに注目
高市政権の発足後、支持率の高さと日米首脳会談の成功を背景に、日経平均株価は勢いよく続伸しています。一方、TOPIX(東証株価指数)も上昇してはいるものの、日経平均に比べるとやや出遅れ感が否めません。
図表9は過去2年間の日経平均株価とTOPIXの値動きを示したものです。日経平均株価はこの間に約1.86倍、TOPIXは約1.71倍に上昇しました。グラフを見ると、両者は概ね同じような動きをしているものの、上下の位置が入れ替わる場面が見られます。
この値動きの差に着目するのが「NT倍率取引」です。NT倍率とは、日経平均株価をTOPIXで割った値で、図表9ではこの倍率が概ね一定のレンジ内で推移していたことが分かります。過去2年間では、NT倍率が14.50〜14.60に達すると反転し、TOPIXのパフォーマンスが日経平均を上回る局面が見られました。
現在は、10月に入ってからの日経平均株価の急騰により、NT倍率は大きく上昇。これは、TOPIXが日経平均株価に対して出遅れていることを意味します。こうした局面では、NT倍率の低下を見越して「NT倍率トレード」(日経平均先物を売り、TOPIX先物を買う)の投資機会と考える方も少なくないと思われます。
図表9 過去2年日経平均とTOPIXはともに上昇するもNT倍率はレンジ内の動き?
	■NT倍率トレードは長期では成立しない?
一見すると、NT倍率が一定のレンジ内で推移するなら、NT倍率トレードはリスクの低い裁定取引のように思えます。しかし、実際にはそう単純ではありません。
図表10は過去20年間の日経平均株価とTOPIXの値動きを示したものです。2007年のサブプライム危機では両指数ともに下落しましたが、その後の回復局面では差が生じ、特に2012年末のアベノミクス以降は日経平均株価がTOPIXを牽引する形となりました。
NT倍率は2005年の9.42から上昇を続け、現在は15.55と、2021年2月のピークとほぼ同水準です。ここから反転する可能性もありますが、過去20年のトレンドを見る限り、NT倍率は長期的に上昇傾向にあります。つまり、NT倍率が一定のレンジにあるという前提で長期ポジションを取ると、梯子が外れてしまうリスクがあるのです。
図表10 過去20年のNT倍率は長期上昇トレンド
	■日経平均株価とTOPIXの比較は「りんごとみかん」
10月29日、日経平均株価は前日比+2.17%(1088円47銭高)と大幅に上昇した一方、TOPIXは逆に−0.23%と下落しました。この乖離の主因は、日経平均株価の構成比率が10%を超えるアドバンテストが22%高のストップ高となり、日経平均を2%強押し上げたことにありました。
図表11はTOPIX上位36銘柄の構成比率(2025年10月30日時点)を示しています。TOPIXではトヨタが最も高く3.6%、上位3銘柄の合計で9.4%、上位5銘柄で15.2%となっていました。
一方、日経平均株価ではトヨタの構成比率はわずか1%。代わりに、ソフトバンクGが10.4%、ファーストリテイリングが8.6%、アドバンテストが11.6%と上位3銘柄だけで30.6%を占めています。これに東京エレクトロンとTDKを加えた上位5銘柄では、実に39.6%にもなります。TOPIXでは組み入れ比率36位0.4%のフジクラは日経平均株価では1.3%に構成比率が大きくなります。日経平均株価でのこのように一部の高株価銘柄の影響が大きく、かつてはファーストリテイリングの比率が目立っていたため「ユニクロ指数」と呼ばれることもありました。これが現状では、アドバンテスト、ソフトバンクG、ファーストリテイリングの頭文字を取って「アドバン・ソフト・ユニクロ指数」ともいえる状況です。
■日経平均株価の構成方法がNT倍率を押し上げる?
日経平均株価は、新規銘柄を組み入れる際、取引が活発で業績好調な企業を選ぶ傾向があります。こうした銘柄はすでに株価が高いことが多く、構成比率も高めにスタートします。勢いのある時期に組み入れられるため、その後も株価が堅調に推移しやすく、結果として日経平均はTOPIXをアウトパフォームする傾向が続いています。
もちろん、銘柄入れ替えには課題があります。除外銘柄の大幅下落や新規組み入れ銘柄の高値掴みなど、理論的には日経平均のパフォーマンスを押し下げる要因です。しかし、最終的には新規銘柄の株価上昇がそれを補い、TOPIXより高いパフォーマンスにつながっています。
さらに、日経平均連動型の投資信託やETFは国内個人投資家に根強い人気があります。現状では、これらに流入した資金の約40%が構成上位5銘柄を機械的に買い上げるため、日経平均の上昇圧力を強める要因となっています。
こうした指数の構成方法の特徴と資金流入により、NT倍率は短期的には上下に振れるものの、指数の算出方法に大きな変更がない限り、長期的には上昇傾向が続く可能性があります。したがって、NT倍率トレードは長期では成立しにくく、行う場合は数日から数週間程度の短期トレードに限定するのが賢明でしょう。
図表11 TOPIXと日経平均に占める構成比: 日経平均は「尖った」指数
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信用取引の「二階建て」に関するご注意
委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。
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・ 日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。
・ 日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。
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日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。
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