高値更新の日本株市場をリードする好業績銘柄は?

投資情報部 鈴木英之/栗本奈緒実
2025/08/15

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
日本株投資戦略
※YouTubeに遷移します。
高値更新の日本株市場をリードする好業績銘柄は?
8月相場も半ばを迎えました。例年「夏枯れ相場」が懸念される季節ですが、日経平均株価は8/12(火)に過去最高値を更新すると、8/13(水)には史上初めて4万3千円台まで上昇するなど「熱い8月相場」の様相を呈しています。
株高の要因については様々なものが語られていますが、8/7(木)がひとつの転機になったことは確かでしょう。同日、これまで世界をかく乱してきた米国の相互関税が「新税率」に移行し、市場にとっては不透明感がやや和らぎました。また東京株式市場ではこの日、トヨタ自動車(7203)、ソニーグループ(6758)、ソフトバンクグループ(9984)等の時価総額上位銘柄が軒並み決算発表を迎え、どれも大過なく通過。8/8(金)以降の3営業日、東証プライム市場の売買代金は6兆円台を回復(7/24~8/7は1日当たり4~5兆円台)しました。
そうした中、東京株式市場では8/14(木)に371社の上場企業が決算発表を実施しました。8/15(金)以降は発表社数が1桁台に減る予定で、25.4~6月期の決算発表シーズンはおおむね一巡した形です。決算発表シーズン中は、市場予想に対して会社公表数値(実績や予想)が上回ったのか、下回ったのか等、やや短期的な視点で株価が動きがちですが、今後は、業績数値を吟味して企業の成長性を再評価する季節になるとみられます。
折しも、「過去25日間の値上がり銘柄数÷同値下がり銘柄数」で計算される東証プライム市場の騰落レシオは8/14(木)時点で145%と過熱圏(120%以上)にあります。この指標が過熱圏にあるということは「値上がり銘柄数が多すぎるのでは?」というシグナルであり、今後は業績による選別が強まるとみられます。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、好決算銘柄を抽出すべく、以下のスクリーニングを行ってみました。
①東証プライム市場に上場
②3月決算銘柄(広義の金融を除く)
③時価総額1,000億円超
④予想を公表するアナリストが5名以上
⑤26.3期1Q(25.4~6月期)の純利益が市場予想を20%超上回った
⑥同上の純利益が前年同期比20%超増益(黒字転換含む)
⑦同上の経常利益が前年同期比増益(黒字転換含む)
⑧26.3期会社予想純利益が期初比下方修正されていないうえ、前期比10%超増益
⑨27.3期市場予想純利益が26.3期同純利益に対し10%超の増益予想
⑩取引所または日証金による信用規制・注意喚起銘柄を除く
図表の銘柄は上記の全条件を満たしています。掲載の順番は、26.3期1Q(25.4~6月期)純利益の前年同期比増益率が大きい順(黒字転換が最優先)となっています。なお、上場企業の業績計画では、営業利益や経常利益の実績・予想を公表しない会社も見受けられるため、今回は「純利益」を分析対象にしています。
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■図表 高値更新の日本株市場をリードする好業績銘柄は?
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 終値(円) 【8/14】 |
25.4~6月期純利益増減率 | 26.3期会社予想純利益増減率 |
4902 | 4902 | 4902 | 4902 | コニカミノルタ | 510.3 | 黒字転換 | 黒字転換 |
1803 | 1803 | 1803 | 1803 | 清水建設 | 1,828 | 362.1% | 13.6% |
6857 | 6857 | 6857 | 6857 | アドバンテスト | 11,210 | 277.7% | 37.4% |
7259 | 7259 | 7259 | 7259 | アイシン | 2,264 | 189.1% | 16.2% |
4373 | 4373 | 4373 | 4373 | シンプレクス・ホールディングス | 4,410 | 101.2% | 17.5% |
4503 | 4503 | 4503 | 4503 | アステラス製薬 | 1,652 | 82.0% | 156.2% |
5803 | 5803 | 5803 | 5803 | フジクラ | 11,905 | 63.9% | 13.0% |
8136 | 8136 | 8136 | 8136 | サンリオ | 7,986 | 37.8% | 13.8% |
5713 | 5713 | 5713 | 5713 | 住友金属鉱山 | 3,596 | 24.3% | 270.0% |
- ※Bloombergデータ、会社発表データをもとにSBI証券が作成。25.4~6月期純利益増減率は前年同期比、26.3期会社予想純利益増減率は前期比
一部掲載銘柄を解説!
■アドバンテスト (6857)~AI関連半導体の市場拡大でテスト需要が急拡大。業績予想上方修正
★日足チャート(1年)

★業績推移(百万円)

■半導体テスタのトップ企業。GPU向けでは圧倒的
当社は半導体テスタのトップ企業です。テスタは半導体製造工程で複数回、製品に欠陥がないか否か検査を行う装置です。これまで、米テラダイン(TER)と市場のシェアを二分してきました。半導体テスタ市場の当社世界シェアは、2017年36%から、2024年58%と拡大傾向で、当社の地位が向上しています。
AI(人工知能)向け半導体のテスタ市場では圧倒的なシェアを有しています。AI半導体最大手であるエヌビディア(NVDA)は、GPUに台湾TSMCのパッケージ技術を採用していますが、同技術の半導体テスタ市場ではシェア8割と推測されています。
業績は半導体市場の拡大を背景に、21.3期~23.3期までは3期連続で増収増益を確保。24.3期はメモリ等半導体市場の調整を受け減収減益となりましたが、25.3期は売上高7,797億円(前期比60%増)、営業利益2,281億円(同179%増)、純利益1,611億円(同158%増)とそれぞれ過去最高水準を記録しました。年間を通じ、AI関連半導体向けテスト需要が高水準で推移しました。
■下期踊り場想定も、通期業績予想を上方修正
7/29(火)に発表された26.3期1Q(25.4~6期)決算では売上高が2,637億円(前年同期比90%増)、営業利益が1,239億円(同295%増)と四半期ベースで過去最高売上・利益となりました。台湾向けが前年同期比3.9倍とけん引しました。AI向けの需要増加に、製品供給力が対応できました。
1Qの好業績を受け、会社側は26.3通期の業績を以下のように修正しました。
・売上高 7,550億円→8,350億円(前期比7%増)
・営業利益 2,420億円→3,000億円(同31%増)
・純利益 1,790億円→2,215億円(同37%増)
AI向け半導体は複雑かつ高価であり、歩留まりや信頼性をあげるために、多くのテストが行われるようになっているようです。複数機能を1つのチップに集約したSoC(システム・オン・チップ)向けが半導体の複雑化を背景に旺盛な需要が見込まれます。
下半期は次世代デバイスへの移行タイミングによる一時的な消化期間が見込まれ、収益の減速が織り込まれているようです。その後、27.3期にかけては再び成長が加速すると、会社側ではみています。市場予想(Bloombergコンセンサス)営業利益は26.3期3,059億円、27.3期3,563億円となっています。
株価は7/29(火)の好決算発表後は利益確定売りに押される場面もありましたが、1万円を割り込む場面で押し目買いが入り、その後は反発基調になっています。短期的には7/16(水)の高値12,040円が上値抵抗ラインとみられます。
本年10月末予定(会社側)とされる26.3期2Q決算発表では、中期計画のアップデートが予定されており、それに向けて期待が高まる場面も、可能性としてはありそうです。
■アイシン (7259)~自動車部品大手。プラザ合意後、現地生産を加速
★日足チャート(1年)

★業績推移(百万円)

■自動車部品の大手メーカー
自動車部品メーカーの世界的大手。トヨタ(7203)が同社株式の20%を保有する筆頭株主で、持分法適用関連会社です(25.3期末時点)。
トヨタ向けの売上高が68%(25.3期)を占めますが、他企業との取引もあります。直近では三菱自動車と協業し、東南アジア(ASEAN)に投入する独自のハイブリット車(HEV)技術を改良し、燃費と走りの両方を底上げしました。ほか、シェアリング事業を行うLuupと、新車両「Unimo」の共同開発などもしています。
エンジンやモーターの力をタイヤに伝える「パワートレイン」関連部品ではトップクラスのシェアを有します。
製品別の売上高構成比は、パワートレイン関連55%、走行安全関連(ブレーキ等)21%、車体関連(ストライドドア等)19%、CSS(コネクティッド・シェア・サービス)3%、エナジーソリューション(蓄電システム・エネファーム等)3%となっています(25.3期)。
■プラザ合意後、現地生産を加速
1985年のプラザ合意後、本格的な海外生産を開始。24年9月末時点の地域別生産会社数は日本46社に対し、海外83社(アジア53社、北米19社、中南米6社、欧州4社、アフリカ1社)と、グローバルに分散された現地生産体制を構築しています。
具体的な現地生産比率は非開示ですが、生産拠点数や海外売上比率(56%、25.3期)から、現地生産比率が自動車部品メーカーの中でも高い部類に入ると考えられます。
■収益性が大幅改善。自社株買いも下支え?
26.3期1Q(4~6期)は、売上高1兆2,203億円(前年同期比3%増)、営業利益478億円(同42%増)、純利益395億円(同189%増)と増収増益を達成。生産台数の増加や、企業体質改善努力(高付加価値製品のポートフォリオ拡充、固定費削減など)等の成果で収益性が向上し、売上高営業利益率は3.9%(前年同期は2.8%)となりました。地域別では、日本は前年同期比減益でしたが、アジア、北米、中国、欧州など海外で軒並み大幅に営業増益となり、全体を押し上げた格好です。
会社側は、米政権による関税への影響額は200億円を見込んでいましたが、当初見込みよりも下がったため、関税の支払額も減少を見込んでいるもようです。また、全額しっかり先方と協議しながら価格転嫁していきたいとの旨を述べています。
2026年3月末まで実施予定の自社株買いの進捗率は、株式数の上限1.3億株に対し35%、取得価額の総額1,200億円に対し6.9%です。当面の株価の下支え要因としても期待されます。
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国内株式
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