アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディアの好決算を受けて注目のマイクロン、AMD、TSMCほか~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディアの好決算を受けて注目のマイクロン、AMD、TSMCほか~

投資情報部 榮 聡

2024/05/27

先週はFOMC議事要旨がややタカ派と捉えられ、さらに強い米国の5月PMI(購買担当者景気指数)がインフレの下がりにくさを連想させたことから、株式は下落に転じました。一方、エヌビディアの決算は市場の期待に対して「満点回答」と捉えられました。今週の株価材料として、個人消費支出物価指数、AI関連株の物色動向、中国企業景況感、などが注目されます。

今回はエヌビディアの好決算がAI関連銘柄への物色余地を広げたと考えられることから、関連銘柄として、エヌビディア(NVDA)マイクロン テクノロジー(MU)アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)台湾セミコンダクター ADR(TSM)スーパー マイクロ コンピューター(SMCI)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

5,300ポイント前後でのもみ合いから、一目均衡表の「転換線」まで押し、もみ合い水準までの反発となっています。「転換線」を下値支持ラインとして上昇できるか注目されます。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 3.4% 9.6% 8.2%
コミュニケーションサービス 0.3% 3.4% 9.7%
S&P500 0.0% 4.0% 4.5%
資本財・サービス -0.7% 1.3% 3.5%
素材 -0.9% 2.0% 5.4%
公益事業 -1.2% 7.6% 15.7%
ヘルスケア -1.3% 3.1% -1.6%
生活必需品 -1.3% 2.1% 4.1%
一般消費財・サービス -1.9% -0.2% -2.7%
金融 -2.0% 1.8% 3.5%
不動産 -3.7% 2.3% -2.7%
エネルギー -3.8% -5.1% 6.5%
騰落率上位(5日) 騰落率
エヌビディア 15.1%
クアルコム 8.5%
イーライリリー 4.9%
ゼネラル・エレクトリック 4.7%
ネットフリックス 4.1%
騰落率下位(5日) 騰落率
ターゲット -9.3%
チャールズ・シュワブ -8.3%
ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS) -7.1%
ロウズ -6.9%
ブリストル マイヤーズ スクイブ -6.3%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.5ポイントとわずかに上昇、ダウ平均は2.3%の下落、ナスダック指数は1.4%の上昇となりました。

5/22(水)のFOMC議事要旨で追加利上げの可能性に言及されるなどして、FRBは想定よりもタカ派と捉えられて米10年国債利回りが上昇、株式は週初のもみ合いから下落に転じました。

5/23(木)は米国の5月PMI(購買担当者景気指数)が非常に強く、特にサービス業の上昇が大きかったことから、インフレの下がりにくさが連想されて、前日の相場の流れを強化して大幅な下落となりました。

一方、先週最も重要な株価材料と注目されたエヌビディアの決算は、2-4月期実績、5-7月期ガイダンスとも市場予想を上回って好調で、AI関連を中心とするテクノロジー株への物色余地を広げたと考えられます。5/24(金)にはミシガン大学の消費者信頼感(確報値)で1年先のインフレ期待が速報値の前年比+3.5%から同+3.3%に下方修正となったことが好感されて反発しました。

業種指数ではエヌビディアの好決算が半導体や大手テクノロジー株の物色を刺激したことから「情報技術」が騰落率トップです。個別株で騰落率2位のクアルコム(QCOM)は、マイクロソフトが発表したAIに特化した新カテゴリーのコンピュータにおいて、当初投入されるモデルではCPUはインテルやAMDではなく、クアルコム製であることが判明して好感されました。

今週の米国株式市場

S&P500指数は、先週号で述べた通り、短期的に5,500ポイントを目指して上昇する可能性が高いとみられます。先週の株価材料として最も注目されたエヌビディアの決算発表は「満点回答」と捉えられており、相場の物色の柱を引き続き形成しそうです。

また、先週の相場で下落のきっかけとなった米国5月PMIは景気の改善を示しているため、株価の持続的な下落につながる内容ではありません。

今週の株価材料として、個人消費支出物価指数、AI関連株の物色動向、中国企業景況感、などが注目されます。

5/31(金)に発表予定の4月個人消費支出物価指数では、総合指数、コア指数とも前年比の伸びは前月から横ばいと予想されています。予想並みの数字となって、4月の消費者物価指数、生産者物価指数に続いてインフレの沈静を示すなら、相場にポジティブになると期待されます。

エヌビディアの好決算は、直接的には関連する半導体企業の物色につながって相場を押し上げる要因になると考えられます。また、これはAIコンピュータへの巨額の投資を行っているハイパースケーラーが投資に対するリターンに手ごたえを感じていることが示唆されます。

さらに、フアンCEOは決算説明会で、生成AIの広がりは次の産業革命が始まっていることを意味し、あらゆる産業の生産性を大きく引き上げるだろうと発言しています。このようなシナリオに信頼感が高まるなら、株式市場全体の予想PERの上昇につながると考えられます。

中国の製造業景気指数は、3月、4月と連続で50を上回り、景気底入れの可能性が示唆されています。5月も50超えとなるなら、中国景気回復への期待が高まるとみられます。既に発表されている4月の鉱工業生産や貿易統計でも底入れの兆しがみられています。

経済指標では、5/28(火)に米国の5月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の97.0から96.0に悪化の予想)、5/30(木)に米国 の1-3月期実質GDP(前期比年率+1.3%の予想)、5/31(金)に中国の5月製造業PMI(前月の50.4から横ばいの予想)、同非製造業PMI(前月の51.2から51.5に改善の予想)、米国の4月個人消費支出物価指数(総合指数は前年比+2.7%の予想、前月は同+2.7%、コア指数は前年比+2.8%の予想、前月は同+2.8%)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回はエヌビディアの2-4月期実績、5-7月期ガイダンスとも市場予想を上回る好調となり、AI関連銘柄への物色余地を広げたと考えられることから、エヌビディアの好決算で注目できる関連銘柄をご紹介いたします。

関連銘柄のピックアップについては、5/15(水)掲載の外国株式特集レポート『どうなる来週のエヌビディア決算!?「データポイント」を整理して備える』で言及した銘柄を中心に選びました。エヌビディア(NVDA)、マイクロン テクノロジー(MU)、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、台湾セミコンダクター ADR(TSM)、スーパー マイクロ コンピューター(SMCI)をご紹介いたします。

図表3 エヌビディアの部門別売上推移

注:2Q(5-7月期)予想はBloomberg集計のコンセンサス予想です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(5/24)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートエヌビディア(NVDA)1064.69ドル40.0

【再び好決算】

・5/22(水)に発表された2-4月期決算は、売上が前年同期比3.6倍、前四半期比18%増、調整後EPSは前年同期比5.6倍、前四半期比19%増で、いずれも市場予想を上回りました。5-7月期の売上ガイダンスは280億ドル±2%で、これも市場予想を上回りました。さらに、1対10の株式分割、1株当たり4セントから10セントへの増配を発表して好感され、株式は高値を更新しました。アナリストの目標株価平均値は1,171.56ドルに引き上げられています。

・現在主力のAIコンピュータチップ「H100」から最新型の「ブラックウェル」への移行に際して買い控えが起きるのではないかとの質問には、AIコンピュータチップの需給はひっ迫しており、この状況は来年まで続く見通しだとして、買い控えの影響は限定的との見方を示唆しました。「ブラックウェル」については、5-7月期に生産が始まっており、8-10月期に生産を引き上げ、11-1月期には顧客の手元に届いているとのスケジュールを示しました。

買付チャートマイクロン テクノロジー(MU)129.49ドル16.1

【AIモデルの巨大化でメモリー需要拡大】

・「大規模言語モデル」の普及によってAIモデルの規模が巨大化していることから、計算に必要になるメモリー量(DRAM)が拡大しています。コンピュータのメモリーは計算するときに必要になるデータを一覧できるように展開しておく機能がありますが、モデルの規模が大きくなるとその分必要なメモリー量が拡大します。

・同社は半導体メモリーの大手で、このようなメモリー需要の拡大から恩恵を受けています。3/20(水)に発表された12-2月期は、売上が前年同期比57%増、EPSは前年同期の1.91ドルの赤字から0.42ドルの黒字に転換して、市場予想を大きく上回って好調でした。3-5月期の売上ガイダンスは64~68億ドルとして、前年同期比71~81%増へ加速する見込みです。3-5月期決算は6月下旬に発表予定です。

買付チャートアドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)166.36ドル47.4

【AIコンピュータに参入中】

・4-6月期の売上見通しが市場予想を下回って嫌気されましたが、要因はゲーム向けの低迷とみられます。AIアクセラレーターの2024年売上見通しは従来の35億ドルから40億ドルに引き上げています。エヌビディアの決算発表でAIコンピュータの需給ひっ迫が続いていることが確認され、AMDの参入も順調に進む可能性が高くなったと言えそうです。同社は2023年10-12月期から「MI300」で参入しています。

・1-3月期決算は、売上が前年同期比2%増、調整後EPSが同3%増で、市場予想は上回ったものの低調な伸びにとどまりした。データセンター向け売上が同80%増、クライアント向け(PC向け)が同85%増と伸びる一方、ゲーム向けが同48%減、組み込み半導体が同46%減と部門よって大幅な出入りとなっています。4-6月期の売上ガイダンスは前年同期比7%増と伸びは改善の見通しです。

買付チャート台湾セミコンダクター ADR(TSM)160.00ドル26.4

【4月の売上が前年同期比60%増】

・同社は米国のファブレス半導体メーカーの多くを顧客にもち、エヌビディアは主要顧客の1社です。5/10(金)に発表の4月売上が前年比60%増と、2月の同11%増、3月の同34%増から大幅に加速していますが、この背景にはエヌビディアから受託した半導体の売上増加があると見られています。

・1-3月期決算は、売上が前年同期比17%増、調整後EPSが同9%増と業績回復トレンドが継続しています。2024年の半導体市場の売上見通しを従来の「前年比10%以上」から「同10%程度」に下方修正しましたが、要因はスマホ、PCの回復動向にあり、AI関連は引き続き強いとコメントしています。

買付チャートスーパー マイクロ コンピューター(SMCI)883.88ドル25.8

【通期売上見通しを上方修正】

・エヌビディアのAIコンピュータをサーバーに組み上げてデータセンターに供給している会社で、エヌビディアのデータセンター向け売上との関連性が高くなっています。1-3月期決算は市場の高い期待に沿うことができず、決算後に株価が大幅に下落しましたが、エヌビディアの決算を受けて見直される可能性がありそうです。

・1-3月期決算は、売上が38.5億ドルで前年同期比3.0倍、調整後EPSは同4.1倍と大幅な伸びとなっています。4-6月期の業績ガイダンスは、売上が51~55億ドル(前年同期比2.3~2.5倍)調整後EPSは7.20~8.05ドル(前年同期比2.1~2.3倍)です。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアが2025年1月期、マイクロンテクノロジーが2025年8月期、スーパーマイクロコンピューターが2025年6月期、その他はいずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
27(月) ・米国市場休場(メモリアルデー)
・中国工業部門利益(4月)
 
28(火) ・クリーブランド連銀メスター総裁の講演
・S&PコアロジックCS住宅価格(3月)
・コンファレンスボード消費者信頼感(5月)
・2年国債入札、5年国債入札
 
29(水) ・リッチモンド連銀製造業景気指数(5月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
・NY連銀ウィリアムズ総裁の講演
・7年国債入札
シースリーエーアイ、セールスフォース
30(木) ・ユーロ圏景況感(5月)
・米実質GDP(1-3月期、改定値)
・米新規失業保険申請件数(5月25日までに終わる週)
・米中古住宅販売成約(4月)
・NY連銀ウィリアムズ総裁の講演
コストコホールセール
31(金) ・中国製造業・非製造業PMI(5月)
・米個人所得・個人支出(4月)
・米個人消費支出物価指数(4月)
・アトランタ連銀ボスティック総裁あいさつ
 
6月
3(月)
・財新中国製造業PMI(5月)
・ワーズ自動車販売台数(5月)
・米ISM製造業景気指数(5月)
・米建設支出(4月)
 
4(火) ・米求人労働異動調査(4月)
・米製造業受注(4月)
クラウドストライクホールディングスニオ
5(水) ・米ADP雇用統計(5月)
・米ISM非製造業景気指数(5月)
 
6(木) ・ECB主要政策金利
・ユーロ圏小売売上高(4月)
・米新規失業保険申請件数(6月1日に終わる週)
 
7(金) ・中国輸出・輸入(5月)
・ユーロ圏実質GDP(1-3月期、確報値)
・米雇用統計(5月)
・米家計純資産(1-3月期)
・米消費者信用残高(4月)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

新着記事(2024/05/27)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。