日経平均乱高下!レーザーテックetc半導体株の動向は?
投資情報部 鈴木英之/栗本奈緒実
2024/05/31
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
日本株投資戦略
※YouTubeに遷移します。
日経平均乱高下!レーザーテックetc半導体株の動向は?
足元の東京株式市場は波乱含みの展開になっています。
日経平均株価は4/19(金)を安値に反発基調をたどってきましたが、5月下旬には上値が重くなり、5/30(木)は大幅続落となりました。米国で金融緩和期待が後退し、同国長期金利が上昇基調に転じていることが背景とみられます。月末接近に加え、米PCEデフレーターの発表(日本時間5/31夜)を控え、ポジションを取りにくくなっていることも、株価下落を加速させる要因となっています。
4/19~5月下旬の反発相場のリード役は何であったのでしょうか。世界的な半導体関連株の動きを代表するSOX指数(フィラデルフィア半導体指数)は、日経平均株価同様4/19(金)に安値を付けた後上昇に転じ、5/28(火)に5,317.87ポイントと過去最高値を更新(上昇率は24%)しました。この間、日本でも半導体関連株は総じて堅調であり、相場全般の主役の一角であったとみられます。
そうした中、日本時間5/23(木)未明に、AI(人工知能)向け半導体で約8割のシェアをもつと言われるエヌビディアが好調な決算・業績見通しと株式分割を発表。同社株は5/22(水)949.50ドルから5/28(火)には1,139.01ドルまで2割近くも急騰しました。これが好感され、日米株式市場では半導体株や関連株全般が堅調な値動きとなりました。
市場の主役としての半導体関連株はいまだ健在のようです。少なくとも、半導体関連株の強弱は、今後も日米株式市場全体の先行きに強く影響するものとみられます。
米経済については、FRB(米連邦準備制度理事会)に利下げを思いとどまらせるほどの強い経済指標が続いている訳でもなく、米金利上昇や日本株下落は「過剰反応」の面もありそうです。市場全般の反発に備え、主役の一翼を担うであろう半導体関連株は、引き続き投資先の有力候補と考えられます。
そこで今回の「日本株投資戦略」では、アナリストの市場コンセンサスを参考に、今期・来期に大幅営業増益が期待できる「半導体関連銘柄」を抽出すべく、以下のスクリーニングを行ってみました。
(1)東証プライム市場上場銘柄
(2)時価総額1,000円以上
(3)SBI証券WEBサイトの銘柄検索ウィンドウに「半導体」と入力し、出力される銘柄
(4)業績予想や投資判断等を公表しているアナリストが3名以上
(5)市場予想EPS(Bloombergコンセンサス)が過去4週間で上昇
(6)市場予想営業増益率(同)が今期・来期ともに10%以上
(7)5/31(金)~6/14(金)に決算発表を予定していない
(8)年初来の株価上昇率が0%超50%未満
(9)取引所または日証金による信用規制・注意喚起銘柄を除く
図表の銘柄は上記(1)~(9)のすべてを満たしています。掲載は来期予想営業利益が前期営業利益に対し増益率が大きい順となっています。
■図表 日経平均乱高下!レーザーテックetc半導体株の動向は?
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄名 | 株価 (5/28) |
今期市場 予想営業増益率 |
来期市場 予想営業増益率 |
2146 | 2146 | 2146 | 2146 | UTグループ | 3,030 | 42.0% | 44.1% |
6920 | 6920 | 6920 | 6920 | レーザーテック | 42,220 | 17.5% | 58.1% |
6407 | 6407 | 6407 | 6407 | CKD | 3,110 | 37.9% | 34.1% |
8035 | 8035 | 8035 | 8035 | 東京エレクトロン | 35,500 | 31.2% | 30.2% |
7951 | 7951 | 7951 | 7951 | ヤマハ | 3,425 | 47.0% | 11.1% |
4186 | 4186 | 4186 | 4186 | 東京応化工業 | 4,193 | 28.9% | 18.3% |
7729 | 7729 | 7729 | 7729 | 東京精密 | 11,325 | 25.6% | 17.1% |
5310 | 5310 | 5310 | 5310 | 東洋炭素 | 7,040 | 22.8% | 16.4% |
5706 | 5706 | 5706 | 5706 | 三井金属鉱業 | 5,168 | 13.3% | 19.4% |
6503 | 6503 | 6503 | 6503 | 三菱電機 | 2,827 | 16.9% | 13.5% |
7735 | 7735 | 7735 | 7735 | SCREENホールディングス | 15,075 | 11.1% | 15.9% |
6370 | 6370 | 6370 | 6370 | 栗田工業 | 6,674 | 13.2% | 10.6% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
一部掲載銘柄を解説!
■レーザーテック(6920)~最先端半導体の黒子的存在。受注底入れで再飛躍も
★日足チャート(6カ月)
- ※データは2024/5/31 (日足)10:00時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■EUV対応露光装置向けで独占的
おもに半導体製造の前工程で使用されるフォトマスク、およびその元となるマスクブランクスの検査装置を製造・販売しています。
マスクブランクスの母材はガラス基板です。この上に複雑な回路基板を形成したものがフォトマスクです。このフォトマスクを原盤として用い、ステッパー(露光装置)を使って、シリコンウェハ上に回路を焼き付け、半導体が製造されていきます。
半導体は小型化・高性能化を実現し、コスト競争力を高めるため、回路の線幅を可能な限り微細化すべく技術開発が進められてきました。最先端の回路線幅である5ナノメートル(1ナノメートル=10億分の1メートル)以下を実現するために、最新鋭のステッパーでは、EUV(極端紫外線)という従来の10分の1の波長の光が用いられています。
当社は、EUV露光装置に対応のフォトマスク、マスクブランクス検査装置では独占的存在です。言い方を変えれば、当社の検査装置なくして最先端の半導体は製造困難と考えられます。
おもな取引先はTSMC(23.6期売上構成比34%)、インテル(同31%)、サムスン電子(同12%)等、世界の主要半導体メーカーとなっています。
■受注底入れ~前工程市場は25年から拡大
4/30(火)に発表された24.6期3Q決算(24.1~3期)では売上高622億円(前年同期比155%増)、営業利益263億円(同182%増)と増収増益になりました。
同四半期の受注高は763億円と前年同期比で2.2倍に拡大。前四半期までの5四半期は受注が平均400億円弱で低迷してきましたが、8四半期ぶりの高水準を回復しました。
受注をけん引しているのはEUV露光装置対応フォトマスク検査装置で、需要・引き合いが強いようです。
24.6通期では売上高1,950億円(前期比27%増)、営業利益670億円(同6%増)が会社計画です。3Q累計の営業利益581億円(前年同期比111%増)で、通期計画に対する進捗率86%を考えると保守的なイメージですが、研究開発費の積み増しが想定されている様です。それでも、円安進展等もあり、市場では通期で営業利益731億円(前期比17%増)を予想しています。
SEMI(国際半導体製造装置材料協会)の予想によると、半導体前工程製造装置市場の規模は2024暦年は前年比横ばいにとどまるものの、2025年は21%程度成長する予想となっています。市場では25.6期の当社の営業利益を1,157億円(前期比58%増)と予想しています。
■東京精密 (7729)~「計測技術」を持つ唯一の半導体製造装置メーカー。生成AI関連の受注堅調
★日足チャート(6カ月)
- ※データは2024/5/31 (日足)10:00時点。
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
- ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
★業績推移(百万円)
- ※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
■「計測技術」を持つ唯一の半導体製造装置メーカー
精密測定機器事業で創業。『測れないものは、つくれない。』という考えのもと、同社製品は、あらゆるものを超高精度かつ高速に測る技術を有します。
計測機器事業で培った技術力を用い、1950年台に半導体業界へ進出。現在では、半導体製造装置事業が全売上高の74%、全営業利益の79%に上ります(24.3期)。製品別の構成は、検査装置(プロ―パ)が30%半ばで、加工装置(ダイサ・研削装置)が60%半ばです(同)。
世界60カ所以上に拠点を展開。半導体製造装置事業の海外売上高比率は80%(同)で、アジアが中心です。同社製品は、国内外で高いシェアを獲得しています。また、半導体の微細化・複雑化が進み、同社製品に対する需要が高まっています。
■24.3期は当初計画を上振れ。生成AIの受注堅調
24.3期は民生エレクトロニクス需要の低迷が想定以上に長期化したこと等を背景に、前期比で減収減益となりました。ただ、1-3月期でみると、計画通りの出荷・据付が進み、前四半期比で大幅な増収増益を達成。当初計画より上振れたことから、連結配当性向の目安40%程度に基づき1株当たりの配当を増額しています。
なお、半導体製造装置事業の受注は、民生エレクトロニクス関連が低迷したものの、生成AI等が下支えしたもようです。
また、生成AI関連需要に関しては、案件の期ずれリスクが考慮されています。会社側は、想定規模の半分程度を上期業績予想に織り込んでいると述べており、上方修正への期待感を残した格好です。
23年7月に稼働した飯能工場に続き、25年度(26.3期)には、稼働予定の名古屋工場など生産能力も順調に拡大予定です。
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