AI相場と共に日経平均ひと休み?物色テーマ交代の可能性

AI相場と共に日経平均ひと休み?物色テーマ交代の可能性

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/06/04

日経平均はボックス圏で推移

5月第4週(5/27-5/31)の日経平均は、前週末比158円21銭安(-0.41%)となり、週足ベースで続落しました。

日米での長期金利の上昇が株式市場の重しとなる中、日経平均は38,000円を節目に押し目買い圧力が発生し、相場を下支えました。一方、39,000円が上値抵抗の節目として意識され、5月は38,000円~39,000円のボックス圏での株価推移が続いた形です。

また、日本の長期金利の上昇は、金利上昇が追い風となりやすい金融株への買いにつながりました。日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/24~5/31・図表7)では、銀行・証券・保険などの金融関連銘柄が半分を占めた格好です。首位の電線大手の古河電気工業 (5801)や2位の関西電力 (9503)は、日米株式市場で盛り上がりを見せる電力関連株として選好されたもようです。生成AI需要に対応するため、データセンター向け投資と電力需要が拡大するとの見方が市場で広がっています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/24~5/31・図表8)には、首位のレーザーテック (6920)をはじめ、荏原製作所 (6361)、東京エレクトロン (8035)など高PERの半導体関連株が多数ならびました。同期間、フィラデルフィア半導体(SOX)指数も▲1.9%と軟調でした。他には、3位にランクインしたサイバーエージェント (4751)の子会社と5位のバンダイナムコホールディングス (7832)が共同開発したスマホ向けゲーム、『学園アイドルマスター』の売上鈍化が明らかとなり、株価の押し下げ材料となったもようです。

6月第1週(6/3-6/7)の日経平均は上昇スタート。インフレ指標の伸び率鈍化を好感し、上昇した前週末の米国株のリスクオンムードを引き継ぎました。同週は、利下げ開始が確実視されているECB理事会や、米5月雇用統計などに市場の注目が集まっています。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/24~5/31)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/24~5/31)

AI相場と共に日経平均ひと休み?物色テーマ交代の可能性

6月初日の取引で、日経平均は前週末比+435円の38,923円と大幅上昇となりました。先週5/30(木)に日経平均は一時38,000円台を割り込みましたが、この日は逆に一時39,000円台に乗せるなど、短期間での買い戻しが鮮明になりました。

このところの日本株は、国内長期金利に対して教科書的な動きとなっています。すなわち金利上昇(低下)で株価が下落(上昇)する関係です。また、金利上昇局面では割安株(バリュー株)が成長株(グロース株)よりも選好され、金利低下時には逆の関係となります。値がさハイテク株の値動きの影響を受けやすい日経平均としては、グロース株物色が強まる金利低下局面の方が、追い風になりやすいと言えます。

10年国債利回りは、米国の長期金利上昇や日銀による早期追加利上げ観測などを背景に上昇傾向を辿っており、5/30(木)には一時1.1%と約13年ぶりの高水準に到達しました。その後、5/31(金)から6/3(月)にかけて10年国債利回りの上昇が一服し、それを手掛かりに日本株は大きく買い戻されました。ただし、この時はファーストリテイリングなどの非ハイテクの値がさ株が上昇を主導しており、ハイテク株については重い値動きとなりました。

図表9 日経平均と10年国債利回り

一方、米国市場に目を向けます。図表10は米国株のグロース株/バリュー株比率と、実質金利として米10年インフレ連動国債利回りの推移を見たグラフです。実質金利とは、名目金利(10年国債利回り)からインフレ見通しの影響を除いた金利です。先ほど、教科書的な関係として金利上昇時には、バリュー株がグロース株よりも選好されると説明しました。ところが、過去1年程度(昨年5月以降)の米国株式市場は、概ね1年程度に亘り、実質金利上昇時でもグロース株がバリュー株よりも選好されてきました。

いわば教科書に反する動きとなっている背景には、AI(人工知能)の急激な普及拡大が、株式市場のテーマになり続けてきたことが挙げられます。AI相場のきっかけとなったのは、昨年5月下旬に発表された米エヌビディアの決算が市場予想を大きく上回りサプライズとなったことがあります。市場では同社株はもちろん、AI関連のテクノロジー株などを物色する動きが強まりました。さらに、この1年程度の米国経済の成長が、思いのほか減速せず、堅調に推移し、景気・インフレ見通しの引き上げを手掛かりに米長期金利が上昇したものの、AIの成長期待が金利上昇の影響を上回ったこともあり、エヌビディアを筆頭にテクノロジー株などのグロース株が大きく上昇しました。

もっとも、エヌビディアが24年2-4月期決算を発表した5/22(水)以降、米国金利の上昇がテクノロジー株の重石となる場面が目立ち、AI相場の様相が薄まっているように思えます。AI自体の中長期的な成長シナリオに変化があるわけではないのですが、AI相場自体は目先、一旦、お休みとなった可能性があります。そうなると、東京株式市場を含めた当面の株式市場は、米国金利見合いで教科書的な動きになる可能性があります。

図表10 米国グロース株/バリュー株比率と実質金利

そうした中、米国では今週末に5月雇用統計の発表を控えています。元々、市場の注目が極めて高い経済指標の1つですが、現在は6/11・12の連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、金融当局者が公の場で金融政策についての見解を示すことを禁じられているブラックアウト期間にあります。金融政策の方向性を占う上での材料が乏しくなるなか、雇用統計への注目度は一段と高まっていると思われます。

Bloomberg集計のエコノミスト予想では、非農業部門雇用者数(雇用者数)の市場予想は前月比+19.0万人、失業率は3.9%。雇用者数は2ヵ月連続の20万人割れ、かつ6ヵ月移動平均を下回っており、予想ライン上の結果であれば、雇用の減速感を強める内容となりそうです。一部の市場参加者の予想である9月利下げ開始への期待を強めることにつながる可能性が考えられます。

雇用者数が市場予想を大きく上回った場合は金利上昇につながる可能性があるため、日米の株式市場にとっても逆風になると考えられます。逆に、雇用者数が市場予想を大きく下回った場合は、金利低下を促すことになると考えられますが、それと同時に景気後退懸念が強まる可能性があります。昨年からの株式市場では、景気見通しの改善(長期金利上昇)局面でグロース株が買われてきただけに、それが逆転する展開はグロース株にとって逆風になることが予想されます。

図表11 米国 雇用統計

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