アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~ソフトウェア株がAI関連として見直される!?~
投資情報部 榮 聡
2024/06/24
先週は半導体株に利益確定売りが嵩み、S&P500指数が一時5,500ポイントを超えて一旦達成感がでたとみられ、S&P500指数は週後半に下落に転じました。今週の株価材料として、5月個人消費支出物価指数、半導体株に対する物色、大統領選挙TV討論会(第1回)、などが注目されます。
今週は決算動向を受けて半導体株に替わってAI関連として物色が続く可能性があるソフトウェア株から、アドビ(ADBE)、アクセンチュア A(ACN)、サービスナウ(NOW)、セールスフォース(CRM)、オラクル(ORCL)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
4/19(金)の5,000ポイント割れから約2ヵ月で5,500ポイントに到達して、ある程度の達成感が出たとみられます。個別株では、相場上昇をけん引したエヌビディアが一時時価総額最大となって、これも達成感が出た要因とみられます。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は6/13(木)終値~6/21(金)終値によります。)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
一般消費財・サービス | 1.8% | 4.0% | 0.7% |
金融 | 1.4% | -0.8% | -0.6% |
コミュニケーションサービス | 1.3% | 2.8% | 6.9% |
エネルギー | 1.0% | -2.0% | -3.6% |
生活必需品 | 0.9% | 0.2% | 2.3% |
S&P500 | 0.6% | 3.0% | 4.4% |
資本財・サービス | 0.5% | -1.3% | -2.1% |
ヘルスケア | 0.5% | 1.5% | 0.6% |
情報技術 | -0.2% | 8.2% | 12.7% |
素材 | -0.2% | -2.1% | -2.3% |
不動産 | -0.5% | 2.5% | -1.3% |
公益事業 | -1.0% | -3.2% | 7.9% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
アドビ | 16.3% |
ギリアド・サイエンシズ | 11.2% |
アクセンチュア | 9.4% |
セールスフォース | 7.0% |
チャーター・コミュニケーションズ | 5.9% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
サイモン・プロパティー・グループ | -3.8% |
ダウ | -3.7% |
アップル | -3.2% |
ユナイテッドヘルス・グループ | -3.0% |
クアルコム | -2.4% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.6%、ダウ平均は1.5%の上昇、ナスダック指数は横ばいでした。
6/17(月)、6/18(火)はエヌビディアなど半導体株が相場上昇をけん引、S&P500指数、ナスダック指数とも最高値を更新しました。一方、6/19(水)の休場を挟んだ週後半は、S&P500指数が一時5,500ポイントを超えて達成感が出るとともに、半導体株に利益確定売りが出てS&P500指数は下落に転じました。
エヌビディアは6/18(火)に最高値を更新してマイクロソフトを抜いて時価総額最大になりました。しかし、これもある種の達成感を醸成したとみられ、週後半の2日間で6.6%の下落となっています。
経済指標では、5月小売売上高が前月比+0.1%にとどまったほか、5月の住宅着工件数、住宅建設許可件数ともに市場予想を大きく下回り、景気の鈍化を示唆するものが目立ちました。
業種指数では景気敏感株が優位となる傾向が見られます。「情報技術」は半導体株が調整に転じる一方、ソフトウェア株に上昇するものが多くみられました。
今週の米国株式
S&P500指数は4/19(金)の5,000ポイント割れから約2ヵ月で10%上昇相当の5,500ポイントに到達して、ある程度の達成感が出たとみられます。今週のTV討論会によって、大統領選挙がリスクイベントして市場の視野に入ってくると想定され、軟調になりやすい地合いと考えられるでしょう。
今週の株価材料として、5月個人消費支出物価指数、半導体株に対する物色、大統領選挙TV討論会(第1回)、などが注目されます。
5月個人消費支出物価指数は、総合指数が前年比+2.6%の予想(前月は同+2.7%)、コア指数は前年比+2.6%の予想(前月は同+2.8%)です。前月から伸び率が低下してインフレの沈静を示唆する予想で、相場の下支えが期待できるでしょう。
最近の相場上昇をけん引した半導体株に対する物色がどうなるか注目されます。中心的銘柄となっているエヌビディアは先週に一時全市場で時価総額最大となり、相場に一旦達成感がでる可能性がありそうです。
大統領選挙のTV討論会では、今回適用される厳格なルール(相手候補の発言中はマイクの音が切られる、事前に用意したメモを持ち込むことは認められない、休憩時間中も支援者との接触が禁止される、など)により、実力が試される場となりそうです。政治サイト「Real Clear Politics」が集計した世論調査による支持率は、6/22(土)時点でトランプ氏46%、バイデン氏45%と拮抗しています。
経済指標では上記のほか、6/25(火)に米国の6月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の102から100に悪化の予想)、6/26(水)に米国の6月新築住宅販売件数(前月比+1.7%の予想)、6/27(木)に米国の5月耐久財受注(前月比-0.2%の予想)、などの発表が予定されています。
企業イベントでは、カーニバル、フェデックス、マイクロンテクノロジー、ナイキ、などの決算発表が予定されています。
今週の5銘柄
今週はAI関連のソフトウェア銘柄を取り上げます。
過去1ヵ月余りの相場上昇をけん引したエヌビディアが6/20(木)、6/21(金)の2日間で6.6%の下落、フィラデルフィア半導体株指数も3.9%の下落となっており、一旦高値を付けた可能性が窺えます。
一方、先々週から先週にかけて、オラクル、アドビ、アクセンチュアなどの決算発表を受けて、ソフトウェア株をAI関連として見直す動きがみられます。
5月末にはセールスフォースの決算発表を受けて、ソフトウェア株がAI関連として活躍するのは、もう少し先になりそうだとの見方が広がっていました。しかし、同社に対する失望には個別の経営方針の影響も大きいとみられます。ソフトウェア株全体として見直しの動きが継続する可能性を考慮して、アドビ(ADBE)、アクセンチュア A(ACN)、サービスナウ(NOW)、セールスフォース(CRM)、オラクル(ORCL)を選んでご紹介いたします。
図表3 見直されつつあるAI関連ソフトウェア株
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 注目銘柄の投資指標
銘柄名(コード) | 株価 (6/21) (ドル) |
予想 PER (倍) |
目標株価 (ドル) |
目標株価 乖離率 (%) |
EPS増加率 (今期予想) (%) |
EPS増加率 (来期予想) (%) |
通期EPS 修正率 (3ヵ月) (%) |
アドビ(ADBE) | 533.44 | 29.4 | 609.76 | 14.3 | 13.1 | 13.2 | 0.8 |
アクセンチュア A(ACN) | 308.98 | 25.9 | 344.08 | 11.4 | 2.1 | 8.0 | -1.4 |
オラクル(ORCL) | 141.50 | 22.6 | 149.04 | 5.3 | - | 14.8 | 0.4 |
サービスナウ(NOW) | 749.33 | 55.4 | 857.30 | 14.4 | 25.4 | 20.0 | 2.0 |
セールスフォース(CRM) | 245.06 | 24.7 | 294.50 | 20.2 | 20.5 | 11.0 | 1.4 |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (6/21) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | アドビ(ADBE) | 533.44ドル | 29.4 | 【AI機能の顧客による利用が始まっている】 デジタルトランスフォーメーションに欠かせない製品群を提供するソフトウェア大手です。3-5月期決算は、売上が前年同期比10%増、調整後EPSが同15%増と堅調でした。 「Photoshop」や「Illustrator」などのクリエーティブ製品で顧客が人工知能(AI)ベースの新ツールを採用していることが示唆され、売上は今後好調に推移する見通しを示しました。通期EPS見通しを18.0~18.20ドルとして、市場予想の18.0ドルを上回りました。 | |
買付 | アクセンチュア A(ACN) | 308.98ドル | 24.0 | 【生成AI関連の受注が伸びる】 世界有数のコンサルティング会社で、ITサービスでは世界首位です。3-5月期決算は売上が前年同期比1%減、調整後EPSは同2%減で、売上・EPSとも市場予想をやや下回り低調でした。しかし、新規受注が211億ドルで前年同期比22%増で市場予想を19%上回りました。生成AIの受注が9億ドル超と12-2月期の6億ドル超から大きく伸びて受注をけん引しています。 | |
買付 | オラクル(ORCL) | 141.50ドル | 22.6 | 【AI関連がけん引して受注増】 データベースに強いソフトウェアの世界大手。3-5月期決算は、受注残の指標である残存履行義務が980億ドルで前年同期比44%増で、市場予想を33%上回りました。大規模言語モデルの学習向けの販売契約がけん引しています。2025年5月期の売上は前年比2桁増へ前年度の同6%増から加速を見込みます。3-5月期決算は、売上が前年同期比3%増で市場予想を2%下回り、調整後EPSは同2%減で市場予想を1%下回って低調でした。 | |
買付 | サービスナウ(NOW) | 749.33ドル | 55.5 | 【企業のAI利用で活躍が期待される】 企業向けに各種ソフトウェアを提供して、業務の自動化を促進するサービスを提供しています。1-3月期決算は、売上が前年同期比24%増、調整後EPSが同44%増、流動残存履行義務が同21%でした。売上と流動残存履行義務は市場予想並み、調整後EPSは市場予想を8%上回って堅調でした。一方、4-6月期および通期のサブスクリプション収入が前年同期比21.5~22%増と1-3月期の同25%増から減速する見通しとなって、決算後に株価はかなり調整しました。 | |
買付 | セールスフォース(CRM) | 245.06ドル | 24.8 | 【売上減速見通しが嫌気された】 顧客関係管理ソフトウェアで世界首位の会社です。5-7月期ガイダンスは売上が前年同期比7~8%増、流動残存履行義務は同9%増と2-4月期から減速の見込みです。2025年1月期の売上ガイダンスも、前年比8~9%増へ、3ヵ月前の同9%増から下方修正されました。顧客企業がAI対応の予算を優先していることや、同社の利益優先方針の影響が出ているとみられます。2-4月期の売上は前年同期比11%増、調整後EPSは同44%増と堅調でした。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、アドビが2024年11月期、アクセンチュアが2025年8月期、オラクルが2025年5月期、サービスナウが2024年12月期、セールスフォースが2025年1月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
24(月) | ・ドイツIFO企業景況感(6月) ・サンフランシスコ連銀デイリー総裁の発言 |
|
25(火) | ・米シカゴ連銀全米活動指数(5月) ・米S&PコアロジックCS住宅価格(4月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(6月) ・ボウマンFRB理事が講演 ・2年国債入札 |
カーニバル、フェデックス |
26(水) | ・米新築住宅販売件数(5月) ・5年国債入札 |
マイクロンテクノロジー |
27(木) | ・中国工業部門利益(5月) ・ユーロ圏景況感(6月) ・米実質GDP(1-3月期、確報値) ・米新規失業保険申請件数(6月22日に終わる週) ・米耐久財受注(5月) ・米中古住宅販売成約(5月) ・大統領選挙TV討論会(現地午後9時~) ・7年国債入札 |
ナイキ |
28(金) | ・日本鉱工業生産(5月) ・米個人所得・個人支出(5月) ・米個人消費支出物価指数(5月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(6月、確報値) ・リッチモンド連銀バーキン総裁が講演 |
|
7月 1(月) |
・日銀短観(4-6月期) ・ISM製造業景気指数(6月) |
|
2(火) | ・米求人労働異動調査(5月) ・米ワーズ自動車販売台数(6月) ・パウエルFRB議長が講演(ポルトガル) |
|
3(水) | ・米ADP雇用統計(6月) ・米貿易統計(5月) ・米新規失業保険申請件数(6月29日に終わる週) ・米製造業受注(5月) ・米ISM非製造業景気指数(6月) ・FOMC議事要旨(6月11日、12日開催) |
|
4(木) | ・米国市場休場(独立記念日) | |
5(金) | ・米雇用統計(6月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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