日経平均4万円回復を阻む3つの要因とは?

日経平均4万円回復を阻む3つの要因とは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/06/25

日経平均は3週ぶりに反落。依然としてボックス圏を推移

6月第3週(6/17-6/21)末の日経平均は、前週末比218円9銭安(▲0.56%)となり、週足ベースで3週間ぶりに反落。

週初は、フランスを中心とした欧州政治への不安感を背景に、リスクオフムードが広がり先物主導で売りが優勢となりました。6/17(月)の日経平均は700円超の大幅安となったものの、その後は自律反発による買いや、米株高が追い風となり、週末には38,600円目前まで戻しました。

同期間の米株市場では、現地時間6/18(火)にAI半導体の代表格であるエヌビディアがマイクロソフトを抜き、時価総額で世界首位に躍り出ました。翌日の休場を挟み、その後は利益確定から続落。ブロードコムなど他半導体株にも売りが波及しました。同期間のフィラデルフィア半導体株指数の騰落率は▲1.1%と、NYダウの+1.5%、S&P500の+0.6%と比べ、下げが目立った形です。また、6/21(金)は3つのデリバティブ取引の満了日が重なるトリプルウィッチングでした。そのため、急騰していた大型テック株にポジション調整の売りが発生したという面もありそうです。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/14~6/21・図表7)の首位は、三菱自動車工業 (7211)です。日本経済新聞による取材で、社長が今期(25.3期)中に追加の株主還元策を検討している旨を言及したことが好感されました。なお、増配か自社株買いかについては「両方の可能性をみる」と述べています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/14~6/21・図表8)の首位は、三越伊勢丹ホールディングス(3099)です。同期間は百貨店などの消費関連株が全般的に軟調でした。国内消費の弱含みを示唆する経済指標や訪日顧客数の伸び率が前年同期比で低調気味となったことが嫌気されました。また、既に高値圏をつけていたため、利益確定による売りが発生した面もあったと想定されます。

6月第4週の日経平均は上昇してスタート。米半導体株が売られた影響で半導体関連株が連れ安しました。しかし、円安ドル高を背景に、自動車などの輸出関連株が上昇し、全体を押し上げた格好です。ドル円は、日本当局による為替介入が警戒される心理的節目、1ドル160円を目前とした水準に位置しています。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(6/14~6/21)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(6/14~6/21)

日経平均4万円回復を阻む3つの要因とは?

日本取引所グループが週次で公表している投資部門別売買動向によると、6月第2週(6/10-14)に海外投資家は日本株(現物)を2,494億円売り越しました。売り越しは4週連続であり、昨年9月以来で最長となります。この4週間の合計売り越し額は7,000億円弱と、それほど大規模ではありませんが、年初からの日本株上昇を支えてきた海外投資家による買い支えの動きが、変わり始めていると考えて違和感はないでしょう。

日経平均は3/22に史上最高値41,087円に到達し、年間騰落率は+22.2%に達しました。その後は上昇が一服し、概ね38,000円から39,000円のボックス圏で推移しています。6/24の終値は史上最高値から5%程度の下落であり、年初からの上昇相場を踏まえると、それほど深刻な調整と捉える必要はないと思われます。

しかし、海外投資家が重視すると言われているドル建て日経平均を見ると、その姿は多少異なってきます。年初の円相場は1ドル=140円程度、その後は円安が継続中です。円建てと同様にドル建て日経平均も3/22に高値到達となりましたが、年初からの上昇率は13.8%程度と、円建てに比べて小幅に留まりました。やはりドル建て日経平均も高値到達後に上昇が一服しましたが、円相場で一段と円安が進んだこともあり、昨日までの高値からの下落率は10%強に達しました。そして年初からの上昇もほとんど掃き出しています。海外投資家から見れば、なかなか止まらない円安が日本株のパフォーマンスを低下させたことで、買い意欲を鈍らせていると推測されます。

図表9 日経平均(円建て、ドル建て)と円相場

そうした中で当面の日本株の動向に影響を及ぼしかねない材料として意識され始めているのが、欧州の政治リスクでしょう。

ことの発端は6/6-9にEU各国で行われた欧州議会選挙。同選挙で極右などのポピュリズム(大衆迎合主義)政党が議席を増やすなど右傾化が進みました。この中でEU主要国の1つであるフランスでは、極右政党の『国民連合』が勝利。この結果を受けてエマニュエル・マクロン仏大統領は、突如として自国の議会(下院)を解散し、総選挙へ打って出ることを表明しました。仏総選挙は6/30(日)に第1回投票、7/7(日)に決選投票を経て議席が確定します。

マクロン大統領としては、総選挙で改めて国民に信を問う格好となりますが、周辺国や投資家などからは、マクロン大統領にとって、かなり分の悪い選挙になると捉えられているようです。今回の選挙では、直接選挙で選ばれたマクロン大統領が自ら職を辞さない限り失職することはありません。しかし、同選挙で極右勢力が勝利すれば、議会から極右色の強い首相が選出される可能性が高まります。市場では、ポピュリズム色が強まることによる仏財政の悪化を懸念する声が聞かれます。

今回の仏政治の不透明感の影響は、欧州債市場で見ることが出来ます。図表10は仏と独の国債利回りの推移ですが、仏国債と独国債のスプレッドは、これまで比較的に安定推移していましたが、マクロン大統領による仏議会の解散・総選挙を受けてスプレッドが大きく拡大しました。それだけ投資家は仏国債を敬遠する動きが見られたのです。

そして一部報道によると、日本の投資家は仏国債を含めた同国債券を25兆円保有しており、これは米国(159兆円)に次ぐ規模とのことです。仏の政治不安、ひいては財政不安で仏-独スプレッドが一段と拡大するようであれば、仏債券に投資する日本投資家への不信感が強まる可能性があります。

また、仏だけにとどまらず、欧州の政治不安が意識されれば、欧州投資家のリスク回避が強まる可能性があります。日本取引所グループのデータによると、海外投資家による日本株売買のうち、欧州投資家が占める割合は7割以上に達しています。その欧州投資家のマネーの動きが鈍くなれば、海外投資家による日本株買いの動きも期待し難くなる可能性があります。

図表10 仏、独10年国債利回り

当面の国内株式市場は“夏枯れ相場”にも注意を払う必要がありそうです。国内株式市場は例年、夏場にかけて、国内外の機関投資家が夏休みに入ることなどに伴って、株式市場の売買高が減少する傾向があります。図表11は過去10年間の平均出来高推移を見たグラフですが、7月初旬から8月下旬にかけては、米国でFOMC(連邦公開市場委員会)が開催される7月末頃を除いて出来高は低調に推移しています。機関投資家の動きが鈍くなる一方で、夏休み入りした個人投資家は逆に動きが活発化すると言われています。少ない市場エネルギー(出来高)ながらもボラティリティ(株価の値動き)は上昇する可能性に注意する必要があるでしょう。

日経平均は春先に史上最高値となる4万円台に到達しましたが、その後は伸び悩んでいます。ここで指摘した3つの要因により、当面の平均は伸び悩みの展開となる可能性があります。中長期的には4万円を超えて上昇することが期待されますが、それは秋以降になるかもしれません。

図表11 東証出来高の季節性

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