アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~小型株、NYダウの出遅れ物色は続くのか?~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~小型株、NYダウの出遅れ物色は続くのか?~

投資情報部 榮 聡

2024/07/22

先週はバイデン政権の対中輸出規制への言及、バイデン氏の大統領選挙撤退の可能性、世界的なシステム障害などが重なり利益確定売りが優勢となりました。今週の株価材料として、4-6月期決算発表、大統領選挙戦、ビットコインのコンファレンス、などが注目されます。

今週は先週初めまで物色が目立った小型株、NYダウに連動するETFのiシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM)SPDR ダウ工業株平均ETF(DIA)に加え、NYダウ銘柄からハネウェル インターナショナル(HON)ウォルト ディズニー(DIS)ユナイテッドヘルス グループ(UNH)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

一目均衡表の「基準線」、「25日移動平均線」とも割り込んでいますので、ファンダメンタルズに重要な変化がなければ(例えば、大手テクノロジーの決算で大きなポジティブサプライズがあるなど)、5,500ポイント前後でもみ合った後、「雲」の上限が位置する5,400ポイント辺りまで調整しやすいとみられます。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
エネルギー 2.0% 3.9% -3.3%
不動産 1.3% 6.1% 12.1%
金融 1.2% 3.9% 4.8%
生活必需品 0.9% 1.3% 4.3%
資本財・サービス 0.6% 1.8% 2.9%
ヘルスケア -0.3% 1.0% 6.0%
素材 -0.5% 0.9% 1.3%
公益事業 -1.6% 1.8% 6.2%
S&P500 -2.0% 0.7% 9.9%
一般消費財・サービス -2.7% 1.8% 8.7%
コミュニケーションサービス -2.9% -1.5% 7.2%
情報技術 -5.1% -1.4% 21.2%
騰落率上位(5日) 騰落率
ユナイテッドヘルス・グループ 10.5%
キャピタル・ワン・ファイナンシャル 6.4%
USバンコープ 6.3%
アクセンチュア 6.0%
スターバックス 5.9%
騰落率下位(5日) 騰落率
チャールズ・シュワブ -17.6%
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ -16.5%
イーライリリー -9.6%
エヌビディア -8.8%
クアルコム -8.0%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で2.0%、ナスダック指数は3.6%の下落、ダウ平均は0.7%の上昇でした。

7/16(火)までは高値更新が続きました。(1)大統領選挙でのトランプ氏優位の見方、(2)パウエル発言が利下げ期待を一層強めたこと、(3)6月小売売上高の予想を上回る堅調、などが背景です。

一方、7/17(水)はバイデン政権による対中輸出規制への懸念から半導体株が大幅安、テクノロジー大手にも利食い売りが出てナスダック指数が2.8%の大幅安となりました。一方、NYダウは金融株などがけん引して続伸、最高値を更新しました。

7/18(木)は台湾セミコンダクターの決算が好調であったことから半導体株が買い戻されたものの、買われていたNYダウ、中小型株が反落しました。バイデン大統領は、週末にも選挙戦から撤退する可能性が高いとの報道で、不透明感が高まりました。7/19(金)には世界的なシステム障害が起きたこともあり、利食い優勢の流れは変わりませんでした。

業種指数では、大手テクノロジー銘柄の寄与が大きい「情報技術」「コミュニケーションサービス」「一般消費財・サービス」の下落が大きくなっています。上位の「エネルギー」「金融」は「トランプ・トレード」の影響の可能性がありそうです。トランプ前大統領はエネルギー産業を優遇することを明言していますし、「金融」は規制緩和が期待されています。

個別銘柄では、イーライリリィ(LLY)の下落が目立ちました。スイスの製薬大手ロシュが開発している経口型の肥満治療薬の初期試験で、平均7%の体重減少が報告されました。経口型で有効性の高いものが開発されると、肥満治療薬で先行する2社にも影響が出る可能性があると懸念されたとみられます。

今週の米国株式市場

S&P500指数は7/19(金)に一目均衡表の「基準線」、「25日移動平均線」を割り込んでおり、調整が続きやすいとみられます。

今週から始まる大手テクノロジーの決算が相場の下支えになるか注目されますが、S&P500指数の予想PERは19.9倍と高いため、一旦利益を確定しておきたいとの思惑が優勢になる可能性が高そうです。

今週の株価材料として、4-6月期決算発表、大統領選挙戦、ビットコインのコンファレンス、などが注目されます。

4-6月期決算発表は、今週、来週にピークを迎えます。今週はアルファベット、テスラのマグニフィセント7の一部のほか、ベライゾン、コカコーラ、ビザ、IBM、AT&Tなどの発表が予定されています。

大統領選挙は、民主党側の動向によって不透明感が強まっています。バイデン大統領は選挙戦からの撤退を決め、後継候補にハリス副大統領を推薦しました。ハリス氏が民主党の候補と決まった場合、共和党のトランプ候補の優位は変化する可能性があるのか、注目されます。

7/25(木)~7/27(土)にビットコインのコンファレンス「bitcoin2024」がテネシー州ナッシュビルで開催されます。トランプ前大統領が7/27(土)に講演を行う予定で、また、同コンファレンスに合わせて資金調達イベントを開くことから市場での注目が高まっています。ビットコインの価格は、銃撃事件を受けてトランプ候補優位との見方が強まった7/14(日)から上昇基調となっています。

経済指標では上記のほか、7/24(水)に米国の6月新築住宅販売件数(前月比+3.4%の予想)、7/25(木)に米国の4-6月期実質GDP(速報値)(前期比年率+1.9%の予想)、米国の6月耐久財受注(前月比+0.5%の予想)、7/26(金)に米国の6月個人消費支出物価指数(総合指数は前年比+2.4%の予想、前月は同+2.6%、コア指数は前年比+2.5%の予想、前月は同+2.6%)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

先々週から先週初めにかけて、S&P500指数の上値が重くなる中で、中小型株指数のラッセル2000およびNYダウの上昇が目立つ場面がありました。

両指数とも米国市場がマグニフィセント7を中心とするテクノロジー株が相場をけん引するようになった2023年初からS&P500指数を大幅にアンダーパフォームしてきました。年初来の上昇率は、S&P500指数の15.4%に対して、ラッセル2000は7.8%、NYダウは6.9%にとどまっています。フィラデルフィア半導体株指数やナスダック指数が相場調整を先導する地合いのなかで、出遅れ物色に向かいやすいと考えられます。

そこで今回は、ラッセル2000に連動する投資成果を目指すETFのiシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM)、NYダウに連動する投資成果を目指すETFのSPDR ダウ工業株平均ETF(DIA)、およびNYダウ採用銘柄について以下のスクリーニング条件を満たした図表4の銘柄から、ハネウェル インターナショナル(HON)ウォルト ディズニー(DIS)ユナイテッドヘルス グループ(UNH)を選んでご紹介いたします。

【スクリーニング条件】

(1)年初来株価騰落率が15%以下

(2)予想EPS修正率(3ヵ月)がプラス

(3)来期予想増収が3%以上

図表3 主要株価指数の推移

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 NYダウ採用銘柄のスクリーニング(データは7/17(水)時点です。)

コード 銘柄名 株価騰落
(年初来)
(%)
株価騰落
(5日)
(%)
予想EPS
修正率
(3ヵ月)
(%)
来期売上
増収率
(%)
来期EPS
増加率
(%)
予想PER
(倍)
HON ハネウェル・インターナショナル 3.8 1.3 2.6 6.6 9.9 20.9
CRM セールスフォース -6.0 -1.5 1.4 9.2 11.0 24.6
DIS ウォルト・ディズニー・カンパニー 7.2 0.2 0.9 5.1 13.8 19.4
PG プロクター・アンド・ギャンブル 14.9 1.8 0.2 3.3 6.4 24.7
UNH ユナイテッドヘルス・グループ 7.2 11.9 0.2 8.0 12.6 19.4
KO コカ・コーラ 10.6 3.3 0.2 4.9 6.9 22.8
V ビザ 3.4 2.5 0.2 10.3 12.1 25.9

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(7/19)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートiシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM)216.84ドル

【小型株指数に連動する投資成果を目指すETF】

・米国株式市場における小型株セクターのパフォーマンスを測定するラッセル2000種指数(Russell2000Index)(同指数)の価格・収益表現に連動する投資成果を目指します。純資産額:600億ドル、分配利回り:1.19%、経費率:0.19%

買付チャートSPDR ダウ工業株平均ETF(DIA)402.95ドル

【NYダウに連動する投資成果を目指すETF】

30の米国優良株の指数であるダウ・ジョーンズ工業株平均指数の価格・収益実績に連動する費用控除前の投資成果を提供することを追求します。純資産額:325億ドル、分配利回り:1.66%、経費率:0.16%。

買付チャートハネウェル インターナショナル(HON)214.61ドル21.0

【資本財のコングロマリット】

・航空宇宙、ビルテクノロジー、機能性素材、安全・生産性の4部門で展開する複合企業体。長期的なオーガニック成長率として、航空、エネルギートランジション、オートメーションなどの事業機会により4~7%を目指します。

・4-6月期決算は、航空部門の強い需要が他部門の不振をカバーする見込みで、航空部門はさらに伸びが期待されています。7/25(木)に発表予定です。

買付チャートウォルト ディズニー(DIS)95.74ドル17.6

【動画配信サービスが黒字化へ】

・テーマパーク、映画製作、TV番組制作を行う娯楽大手。動画配信サービスは加入者が1.5億人を超え、黒字化を目指しています。業績回復をけん引してきたテーマパークの収益はピーク感が出る可能性があるものの、一時的と考えられます。年間75億ドルのコスト削減によって利益拡大を目指します。

・スポーツチャンネルのESPNは、スポーツ配信事業を立ち上げることで合意、また、ゲーム大手エピックゲームズに15億ドルを出資するなど戦略的な動きが活発化しています。4-6月期は8/7(水)に発表の予定です。

買付チャートユナイテッドヘルス グループ(UNH)565.33ドル20.5

【サイバー攻撃の影響に対する懸念が一服】

・医療保険の「ユナイテッドヘルス」と医療情報の「オプタム」が2本柱。7/16(火)に発表した4-6月期決算は増収減益で、サイバー攻撃の影響を踏まえて通期業績見通しを引き下げました。ただ、サイバー攻撃によるマイナスインパクトはほぼ見通せたとの判断から株価上昇につながっているとみられます。

・安定的な業績拡大を実現してきた会社で、長期的なEPSの成長率目標として8~11%を掲げています。調整後EPSは2024年12月期に前年比16%増、2025年12月期に同13%増が予想されています。

注:分配利回りは調査時点の数値であり将来の運用成果を保証又は示唆するものではありません。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
22(月) ・シカゴ連銀全米活動指数(6月) ベライゾンコミュニケーションズ
23(火) ・リッチモンド連銀製造業景気指数(7月)
・米中古住宅販売件数(6月)
・2年国債入札
アルファベットコカコーラテスラビザ
フィリップモリスインターナショナル、ゼネラルエレクトリック
ゼネラルモーターズ、ロッキードマーチン
24(水) ・auじぶん銀行日本製造業PMI(7月)
・HCOBユーロ圏製造業PMI(7月)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(7月)
・米新築住宅販売件数(6月)
・5年国債入札
・ボウマンFRB理事、ダラス連銀ローガン総裁があいさつ
IBMAT&T、フォードモーター、ネクステラエナジー
25(木) ・ドイツIFO企業景況感(7月)
・米実質GDP(4-6月期、速報値)
・米耐久財受注(6月)
・米新規失業保険申請件数(7月20日に終わる週)
・ビットコインカンファレンス(ナッシュビル、27日まで)
・7年国債入札
アッヴィ、ブリティッシュアメリカンタバコ、ダウ
ハネウェルインターナショナル
26(金) ・パリ五輪開幕(8月11日まで)
・米個人所得・個人支出(6月)
・米個人消費支出物価指数(6月)
・ミシガン大学消費者信頼感(7月、確報値)
3M、マスターカード、リンデ
29(月)   マクドナルド
30(火) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、速報値)
・S&PコアロジックCS住宅価格(5月)
・米求人労働異動調査(6月)
・コンファレンスボード消費者信頼感(7月)
マイクロソフトAMDファイザーP&G
ペイパルホールディングススターバックス
メルク、ビヨンドミート
31(水) ・日本鉱工業生産(6月)
・中国製造業・非製造業PMI(7月)
・日銀政策金利
・米ADP雇用統計(7月)
・米中古住宅販売成約(6月)
・米FOMC政策金利
メタプラットフォームズアームホールディングス
アルトリアグループクラフトハインツ、ボーイング
マスターカード、クアルコム
8月
1(木)
・米新規失業保険申請件数(7月27日に終わる週)
・米ISM製造業景気指数(7月)
アップルアマゾンドットコムインテル
コインベースグローバル
マラソンデジタルホールディングス
マイクロストラテジー、キャタピラー
2(金) ・米雇用統計(7月)
・米製造業受注(6月)
エクソンモービルシェブロン
ブッキングホールディングス

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

新着記事(2024/07/22)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。