アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~相場上昇をけん引するAI関連銘柄~
投資情報部 榮 聡
2024/10/15
先週は中東情勢の膠着を受けて原油価格の上昇が一服、物価指標によって11月FOMCでの利下げに対する信頼が高まった上、半導体株への物色が強まり力強い上昇となりました。今週の株価材料として、7-9月期決算発表、米小売売上高、新規失業保険申請件数、などが注目されます。
今週はAI利用がハイパースケーラーから一般企業に広がりつつあることが相場を押し上げているとの見方をもとにAI関連銘柄に注目して、エヌビディア(NVDA)、ブロードコム(AVGO)、サービスナウ(NOW)、アクセンチュア A(ACN)、IBM(IBM) を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
10/8(火)、10/9(水)、10/11(金)、10/14(月)と力強い陽線を記録、相場の上昇圧力が強いことがうかがえます。相場のメルトアップ(買いが買いを呼ぶ状況、上昇が上昇を呼ぶ状況)の可能性がありそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は10/7(月)終値~10/14(月)終値によります。)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 4.6% | 6.2% | 0.5% |
金融 | 3.7% | 5.3% | 10.4% |
資本財・サービス | 3.0% | 6.8% | 12.0% |
S&P500 | 2.9% | 4.2% | 4.4% |
ヘルスケア | 2.5% | -0.7% | 4.4% |
生活必需品 | 1.9% | -2.0% | 6.1% |
素材 | 1.7% | 4.5% | 6.7% |
一般消費財・サービス | 1.3% | 2.2% | 1.7% |
不動産 | 1.2% | -3.0% | 9.3% |
コミュニケーションサービス | 1.1% | 6.1% | 1.7% |
公益事業 | 1.0% | 2.8% | 12.6% |
エネルギー | -1.0% | 9.5% | 3.0% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
ウェルズ・ファーゴ | 8.7% |
エヌビディア | 8.1% |
ハネウェル・インターナショナル | 7.0% |
クアルコム | 6.6% |
ターゲット | 6.0% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
テスラ | -9.0% |
コノコフィリップス | -4.6% |
ボーイング | -4.4% |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | -3.3% |
AT&T | -2.4% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で1.1%、ダウ平均は1.2%、ナスダック指数は1.1%の上昇でした。S&P500指数とダウ平均は史上最高値を更新しました。
10/7(月)は強い雇用統計を受けて、米10年債利回りが4%に乗せたほか、原油価格の上昇継続が懸念されて下落しました。一方、10/8(火)、10/9(水)と原油価格が反落、中東情勢への警戒が緩和して力強い上昇となりました。両日とも情報技術の上昇が相場をけん引しました。10/10(木)は原油価格が反発して小幅安となったものの、10/11(金)には再び上昇に転じました。
9月消費者物価指数、生産者物価指数ともコア指数の前年比伸び率が前月から拡大してインフレの下がりにくさが意識されたとみられますが、総合指数は前月から低下して、インフレ沈静のトレンドは維持されていると捉えられたようです。
業種指数(10/7(月)終値~10/14(月)終値によります)では、エヌビディアなど半導体株がけん引した「情報技術」、大手銀行の決算が好感された「金融」、「資本財・サービス」などが騰落率上位でした。原油価格の反落を受けて「エネルギー」が唯一下落しました。上昇率2位のエヌビディア(NVDA)は、10/14(月)に終値ベースの高値135.57ドルをクリアし、取引時間中の高値140.76ドルを更新するか注目されています。
今週の米国株式市場
10/8(火)、10/9(水)、10/11(金)、10/14(月)と力強い陽線を記録しています。中東情勢は緊迫した状態が続いており、大統領選挙は接戦で不透明感が強い中での動きですので、市場の上昇圧力が非常に強いことがうかがえます。相場のメルトアップ(買いが買いを呼ぶ状況、または、上昇が上昇を呼ぶ状況)の可能性がありそうです。
S&P500指数の予想PERは2025年予想EPS基準で21.4倍と通常であれば高い水準に達していますが、当面は上値を試す展開となりそうです。20倍を超えても相場の勢いが強いのは、AI利用の広がりによって将来の企業利益成長率が高まるとのシナリオで相場が動き始めている可能性が考えられるでしょう。
今週の株価材料として、7-9月期決算発表、米小売売上高、新規失業保険申請件数、などが注目されます。
7-9月期決算発表は、大手銀行、ジョンソン&ジョンソン、P&G、ネットフリックス、アメリカンエキスプレスなどが予定されています。10/17(木)の台湾セミコンダクターは半導体株、テクノロジー株へのインパクトが想定されます。
S&P500指数採用企業のEPSは、前年同期比4.1%増の予想です(FactSet社の集計、10/11(金)時点)。4-6月期実績の同11.2%増から減速の形ですが、通常のケースであれば同7~9%増で着地する可能性が高く、目立った減速にはならないとみられます。
10/17(木)に発表予定の米国9月小売売上高は、前月比+0.3%の予想です。前月の同+0.1%に続いて2ヵ月連続のプラスで堅調が予想されています。先々週の9月ISM非製造業景気指数、9月雇用統計で景気動向に対する警戒は後退しましたが、10/11(金)のミシガン大学消費者信頼感が予想以上に悪化した後ですので、注意は必要でしょう。
先週の新規失業保険申請件数は25.8万人に急増しましたが、ハリケーン「へリーン」やボーイングのストライキによる一時的影響が含まれるため基調はわかりにくくなっていました。このため、今週の数字も注目を集めそうです。引き続き高水準の25.8万人が予想されています。
経済指標では上記のほか、10/18(金)に中国の7-9月期実質GDP(前年比+4.5%の予想、4-6月期は同+4.7%)、中国の9月鉱工業生産(前年比+4.6%の予想、前月は同+4.5%)、同じく小売売上高(前年比+2.5%の予想、前月は同+2.1%)、米国の9月住宅着工件数(前月比-0.4%の予想)、同じく住宅建設許可件数(前月比-0.7%の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は相場のけん引役となっているAI関連銘柄から、エヌビディア(NVDA)、ブロードコム(AVGO)、サービスナウ(NOW)、アクセンチュア A(ACN)、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)を選んでご紹介いたします。
過去1ヵ月の相場上昇では、エヌビディア、ブロードコム、AMDのAI関連半導体銘柄が主要銘柄の騰落率上位となってきました。
この動きを後押ししたとみられるエヌビディアのフアンCEOのインタビューでは、新製品「ブラックウェル」に常軌を逸した需要があると発言したほか、AIコンピュータへの投資がハイパースケーラーによるものから、一般事業会社にも広がっていることが強調されていました。このため、一般企業がAIを自社の業務プロセスに取り入れようとするときに、これをサポートするソフトウェア企業群も注目できるでしょう。
AI関連ソフトウェア銘柄は、9/18(水)付外国株式特集レポート「AI関連の物色は半導体からソフトウェアにシフト!?注目のソフトウェア株をご紹介!!」に掲載した銘柄から選んでいます。
図表3 相場上昇をけん引するエヌビディア(6ヵ月、日足)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (10/14) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | エヌビディア(NVDA) | 138.07ドル | 34.0 | 【AI利用の広がりを示唆】 ・10/3(木)にフアンCEOは、AIコンピュータの新製品「ブラックウェル」に対する需要は常軌を逸していると発言して、需要超過状態が続いていることが確認されました。5-7月期決算でAIコンピュータ売上の半分以上はクラウドサービス事業者以外だと開示、一般事業会社のAIコンピュータ投資がこのような状況を生み出しているとみられます。 ・5-7月期決算は、実績、8-10月期ガイダンスとも市場予想を上回り、アナリストによる通期の業績見通しも決算後に上方修正されて良好な決算でした。新製品「ブラックウェル」はイールド(半導体生産の良品率)を改善するためにフォトマスク(転写する設計図)に変更を加えたために、投入は当初予定から遅れましたが、2024年11月-2025年1月期に投入の見込みです。 | |
買付 | ブロードコム(AVGO) | 182.31ドル | 29.3 | 【AI関連売上が好調】 ・AI関連の売上好調が注目されています。5-7月期決算では、AI関連の通期売上見通しを従来の110億ドルから120億ドルに引き上げ、売上の20%以上を占める見通しです。同社のAI関連売上の中身は、データセンターで使用されるネットワーキング半導体と特定顧客向けAIアクセラレーター(エヌビディアのGPUと同様の働きをする半導体)です。 ・5-7月期はVMウェア買収の影響で売上は前年同期比47%増、調整後EPS同18%増でした。8-10月期の売上ガイダンスは140億ドルで前年同期比51%増の予想ですが、市場予想を下回りました。AI半導体とVMウエアは堅調ながらAI以外の製品に対する需要が低調とみられます。通期のAI関連売上は120億ドルに達する見込み(予想は118億ドル)です。 | |
買付 | サービスナウ(NOW) | 944.69ドル | 57.3 | 【企業のAI利用拡大局面で活躍が期待される】 ・企業向けに各種ソフトウェアを提供して、業務の自動化を促進するサービスを提供しています。この仕事はAIとの親和性が高く、生成AIが売上増につながりやすい企業として注目されます。生成AIを業務執行に取り込むためのバーチャル・エージェント「Now Assist」を投入、エヌビディアが企業向けの分野で同社を提携先として選んだほか、コンサルティング大手のアクセンチュア、デロイトなど企業向けサービスで重要な企業と提携を進めています。 ・4-6月期決算は、売上が前年同期比22%増、調整後EPSが同32%増、流動残存履行義務が同22%増でした。売上と流動残存履行義務は市場予想並み、調整後EPSは市場予想を9%上回って好調でした。通期のサブスクでの売上高見通しが上方修正されました。マクダーモットCEOは「生成AI指向の製品の採用が売上の押し上げに貢献している」と述べています。 | |
買付 | アクセンチュア A(ACN) | 364.60ドル | 28.3 | 【AI関連の新規受注が加速】 ・ITサービスと経営コンサルティングが2本柱。企業が自社の事業にAIを取り入れようとするとき、どのような分野でどのように取り入れたらよいかについて相談する相手として同社が選ばれると期待されます。6-8月期のAI関連の新規受注は10億ドルと増加基調です。受注額全体は201億ドルなので、まだ5%程度ですが今後寄与が高まることと期待されます。 ・6-8月期の売上は前年同期比3%増ですが、新規受注額は同21%増となっているため、2025年8月期は業績モメンタムの改善が見込まれます。2025年8月期の売上は、為替の影響を除いたベースで前年比3~6%増ですが、AI関連が順調なら見通しの引き上げが期待できるでしょう。 | |
買付 | インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM) | 235.26ドル | 22.1 | 【人工知能(AI)事業の受注が急増】 ・ITサービスの大手。クラウドサービスの台頭により、古いタイプのITシステムで大きなシェアを持っていた同社の売上が伸びない時期が続いたものの、事業の取捨選択を進めて業績モメンタムは改善しつつあります。 ・4-6月期決算では、2023年半ば以降のAI事業の累計受注額が4月時点の10億ドルから7月には20億ドルに急拡大していると開示されました。同社CEOはAI関連の受注の約4分の3はコンサルティングで、残りはソフトウェアだと説明し、時間の経過とともに、ソフトウェア収入のシェアは高まる公算が大きく、この結果、利益率が高まる見通しです。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディアは2026年1月期、ブロードコムは2025年10月期、アクセンチュアは2025年8月期、その他は2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
14(月) | ・中国貿易統計(9月) ・NY連銀1年インフレ期待(9月) ・ウォラーFRB理事の講演 |
|
15(火) | ・ユーロ圏鉱工業生産(8月) ・NY連銀製造業景気指数(10月) ・サンフランシスコ連銀デイリー総裁の講演 |
ジョンソン&ジョンソン、バンクオブアメリカ、シティグループ ゴールドマンサックス、ユナイテッドヘルスグループ |
16(水) | ・日本機械受注(8月) | ソルベンタム(E)、アボットラボラトリーズ モルガンスタンレー |
17(木) | ・ECB主要政策金利 ・米小売売上高(9月) ・ファイラデルフィア連銀製造業景気指数(10月) ・新規失業保険申請件数(10月12日に終わる週) ・米鉱工業生産(9月) ・米NAHB住宅市場指数(10月) |
台湾セミコンダクター、ネットフリックス インチュイティブサージカル |
18(金) | ・中国実質GDP(7-9月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高(9月) ・米住宅着工・建設許可件数(9月) ・ミネアポリス連銀カシュカリ総裁がパネル討論に参加 |
P&G、アメリカンエキスプレス、シュルンベルジェ |
21(月) | ||
22(火) | ・EU27ヵ国新車登録台数(9月) | 3M、ベライゾンコミュニケーションズ フィリップモリスインターナショナル、ゼネラルモーターズ ロッキードマーチン、RTX |
23(水) | ・米中古住宅販売件数(9月) ・米地区連銀経済報告 |
IBM、テスラ、コカコーラ、AT&T、サービスナウ ボーイング、ボストンサイエンティフィック ネクステラエナジー |
24(木) | ・HCOBユーロ圏製造業PMI(10月) ・米シカゴ連銀全米活動指数(9月) ・米新規失業保険申請件数(10月19日に終わる週) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(10月) ・米新築住宅販売件数(9月) |
アマゾンドットコム(E) |
25(金) | ・ドイツIFO企業景況感(10月) ・米耐久財受注(9月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(10月、確報値) |
アルトリアグループ(E) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
新着記事(2024/10/15)
投資信託
NISA 投資信託 2024年度上期 6ヵ月リターンランキング
マーケットが大きく変動した2024年度上期(4~9月)が終わりました。 当半期の前半(6月まで)は企業業績の拡大などを受けて主要国の株式市場は総じて上昇、為替市場では日米の金利差が意識されて円キャリー取引が活況となって円安ドル高が進みまし...
投資情報部 川上雅人
2024/10/15
国内株式
決算発表シーズン接近!上方修正期待の12銘柄
東京株式市場は徐々に下値を切り上げる展開になっています。米国経済がソフトランディング(軟着陸)するとの見方が強まり、円安・ドル高基調となっていることが背景とみられます。また、石破新政権の経済対策に関する不透明感が後退したことも大きいようです...
投資情報部 鈴木英之/栗本奈緒実
2024/10/11
NISA・iDeCo
その課税口座の株式と投資信託、もったいないことしてるかも?
2023年までの一般NISAは、非課税期間が最長5年間で終わってしまう制度でしたが、2024年からのNISA(以下、新NISA)については非課税期間が恒久化されました。恒久化とは制度がなくならない限り、ずっと非課税ということです。
投資情報部 川上雅人
2024/10/10
国内株式
決算発表接近!業績予想上方修正期待の中小型10銘柄
日経平均株価は堅調に推移しており、4万円回復を実現する日も近いように思われます。 そう考える理由のひとつは、為替市場の安定化です。先月18日まで開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、0.5%の利下げが決められたものの、FRB(米連邦準...
投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2024/10/09
免責事項・注意事項
・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
【手数料及びリスク情報等】
SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、各商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。