日経平均4万円回復に向けた好材料と懸念点は?

日経平均4万円回復に向けた好材料と懸念点は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/10/08

日経平均、4週ぶりの反落。石破新首相のハト派発言で、期間後半は回復

10月第1週(9/30-10/4)の日経平均は、前週末比1,193円94銭安(▲3.00%)と週足ベースで4週ぶり反落。

週初の日経平均は、1,900円超の大幅下落で始まりました。自民党総裁選で、ハト派スタンスを掲げていた高市氏を破り、石破氏が逆転当選したことを織り込んだ形です。同氏は、総裁選前に金融所得課税や法人税の強化に言及しており、日銀の金融政策に関しては、引き締めに前向きな姿勢を示していました。そのため選挙後は、急速な円高が進行し、日経平均の下落につながりました。

しかし、2日(水)夜、植田日銀総裁との会談後、石破首相は「追加利上げするような環境にない」と言及。円安の巻き戻しが追い風となり、株式市場の買い材料となりました。また、防衛や防災など新首相関連銘柄への選好が目立ったのが特徴です。米国市場では、週初にS&P500が最高値を更新するも、中東情勢の緊迫化が重しとなりました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/27~10/4・図表7)の首位は、世界最大級の医療系プラットフォームを展開するエムスリー(2413)です。9/19(木)に、入院用品レンタルを行うエラン(6099)のTOB(株式公開買付)実施を発表後、株価は上昇基調となりました。また、同期間は中東情勢緊迫化で原油価格が大幅高。業績拡大期待銘柄として、2位のINPEX(1605)の他、5位に出光興産(5019)、7位にENEOSホールディングス(5020)がランクインしています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/27~10/4・図表8)の首位は、コナミグループ(9766)です。9/27(金)には上場来高値を付けており、中間期末の権利落ち日以降は利益確定による売りが発生したとみられます。他には、9/30(月)の円高急進で大幅株安となった、レーザテック(6920)や東京エレクトロン(8035)等の、主力半導体関連株などが顔を並べました。

10月第2週(10/7-11)の日経平均は上昇スタート。自民党総裁選の結果発表前、高市氏が優勢との見方から円安が進行した9/27(金)の終値に迫る水準まで、株価が回復しています。米9月雇用統計が堅調となり、米経済のソフトランディング期待が広がった格好です。一方で、インフレ鎮静化の減速懸念から米長期金利が再び4%超となり、リスク回避姿勢が見受けられます。10日(木)に発表予定の米9月消費者物価指数(CPI)に注目が集まると予想されます。また、10/11(金)の金融株を皮切りとして、米国市場は7-9月期決算発表シーズンに突入し、企業の業績動向も材料となり得ると考えられます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/27~10/4)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/27~10/4)

日経平均4万円回復に向けた好材料と懸念点は?

日経平均は9/27(金)に39,829円と4万円台の回復にあと一歩に迫りましたが、いわゆる“石破ショック”による株安に大台回復を阻まれました。しかし、その後は再び上昇へ転じ、10/7(月)には一時39,560円(終値は39,332円)へ上昇しました。前週末に米国で発表された9月雇用統計が堅調となり、米金利上昇を伴って円相場は一時1ドル=149円台へ円安が進行したことが株高の手掛かりとなりました。

今年、日経平均が4万円台に到達したのは2回(24年3~4月、24年7月)ありましたが、いずれも大台をキープできずに押し戻されました。今年は新NISAによる個人マネーの流入などで株式市場は大きく盛り上がりましたが、日経平均が大台を突破し、更なる高みを目指すには、更なる強いサポート材料が必要になりますが、ここにきてその材料が揃ってきたように思えます。

その1つが日本株のバリュエーション。今年、日経平均が4万円に到達した際(3~4月、7月)の予想PERは16倍後半の水準でした。しかし、現状はPER算出のベースとなるEPS(1株当たり利益)の水準が上昇しており、4万円到達時の予想PERは16倍台前半に留まると見られます。つまり、同じ日経平均4万円でも、バリュエーションで見れば、前回、前々回に比べて割高感が薄れるため、4万円台突破のハードルも低くなると言えます。

また、詳細の説明を省略しますが、一般的に長期金利の上昇は、株式にとって逆風(PERの押し下げ要因)になります。長期金利の水準については、現状の日本10年国債利回りが0.9%台(10/7)と、前回の日経平均4万円台到達時(1.1%前後)に比べ低位で推移しています。国内金融政策は、今年3月にマイナス金利政策が解除され、7月には追加利上げが行われるなど、金融政策の正常化に向けた動きがとられ、このことが株式市場の重石となっていました。しかし、最近は石破首相が「追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と述べ、植田総裁も金融引き締めを急がない姿勢を示すなど、これまでのタカ派姿勢が鳴りを潜め、長期金利の低下につながっていると見られます。長期金利が低位にあることがPERの押し上げ(株価上昇)に繋がりやすいと考えられます。

図表9  日経平均株価と予想EPS(1株当たり利益)

10月は3月期決算企業の中間決算発表シーズンに入ります。これに先立って10/1(火)に発表された日銀短観(9月調査)は、企業業績の動向を占う上で注目と考えられます。

日銀短観では大企業の業況を示した業況判断DIが、非製造業が+34と3月調査以来、再び過去30年間の最高値に到達、製造業も+13と高水準を維持しました。足元の業況改善を受けて、企業決算でも堅調な実績が示される可能性が期待できます。一方、業況判断DIの先行きについては非製造業で反落が見込まれているものの、製造業は+14と更なる改善が見込まれており、製造業を中心に業績見通しの改善が来たされるでしょう。決算を通じて企業業績の改善期待が高まれば、予想EPSの上昇を通じて株価の押し上げに拍車をかけることが期待されます。

図表10 日銀短観 業況判断DI

日本株を取り巻く外部環境に注目すると、米国経済はこのところ景気に対する悲観が大きく後退しました。特に先週に米国で発表された経済指標では、3日(木)のISM非製造業景況指数、そして4日(金)の雇用統計が、いずれも市場予想を上回る改善となりました。日本株にとっては、経済的な関わり合いが深い米国の景気不安が一気に緩和したことは、プラスになります。また、景気回復期待で米国金利が上昇し、日米金利差の拡大を通じて円安・ドル高が進んだことも、日本株にとってプラスと考えられます。

日本企業の業績改善(予想EPSの成長期待)や、米国を中心とした外部環境の改善などを考慮すると、日経平均が4万円台を突破するための土台が整ってきているように思えます。そう考えると、日経平均の視界は良好と捉えることもできますが、その一方で注意するべき点はないのでしょうか。

これは、これまでの話からすれば矛盾するようにも見えますが、日本株の足かせとなり得るのは米国経済の回復が一段と進むことではないでしょうか。

米国の金融政策は、今年9月開催のFOMCで0.50%(50bp)の大幅利下げが行われ、同会合で示されたドットチャートにおいて0.50%(50bp)の追加利下げの可能性が示唆されています。市場としても、米国はある程度の利下げ継続を前提に、経済がスローダウン(ソフトランディング)するとの期待が株式市場を下支えしています。しかし、経済指標の改善が続くと、ソフトランディングの前提となる、利下げの可能性が低下することにつながるでしょう。そうなると、米国金利の上昇が、米国株の足かせになるとなります。

また、米国金利の上昇は日米金利差の観点から見ると円安・ドル高要因となりますが、米国金利の上昇により米国株が下落すると、投資家のリスク回避が強まって、為替市場で逃避の円買いが強まり、むしろ円高・ドル安が進むことになりかねず、そうなれば日本株の逆風になると考えられます。

10/7(月)の米国市場では、10年国債利回りが約2ヵ月ぶりに4%台へ上昇しましたが、米国株式市場は金利上昇が嫌気されて下落し、円相場も円高・ドル安が進みました。10年国債利回りの4%水準は、米国株、ひいては日本株にとって、株安と株高(あるいは円安と円高)の分岐点になると思われます。日本株にとって望ましいのは、米国の景況感の改善が進みつつ、米国長期金利が抑制されることと言えるでしょう。

図表11 円相場と米10年国債利回り

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