アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~パランティア、イーライリリィ、フィリップモリスほか~

投資情報部 榮 聡
2025/02/10
先週はトランプ関税への懸念から週初に下落、その後関税発動は中国だけとなったことから戻り歩調でしたが、週末の経済指標を受けて再び反落となりました。今週の株価材料として、トランプ大統領の関税政策、1月物価指標、パウエルFRB議長の議会証言、などが注目されます。
今回は先週の好決算銘柄から、パランティア テクノロジーズ A(PLTR)、イーライ リリィ(LLY)、フィリップ モリス インターナショナル(PM)、ボストン サイエンティフィック(BSX)、ジョンソンコントロールズインターナショナ(JCI)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

1/27(月)、1/31(金)、2/7(金)と大きな陰線で高値を切り下げる形になっており、あまり良い形とは言えないでしょう。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
生活必需品 | 1.6% | 5.8% | 1.4% |
不動産 | 1.3% | 7.1% | -4.2% |
エネルギー | 1.0% | 0.1% | -6.0% |
情報技術 | 0.8% | -0.4% | -2.5% |
金融 | 0.6% | 9.4% | 5.4% |
公益事業 | 0.2% | 3.3% | -1.1% |
S&P500 | -0.2% | 3.4% | 0.5% |
ヘルスケア | -0.3% | 4.7% | -2.5% |
素材 | -0.6% | 6.0% | -6.3% |
資本財・サービス | -0.8% | 4.4% | -3.2% |
コミュニケーションサービス | -2.1% | 5.9% | 9.8% |
一般消費財・サービス | -3.6% | 1.9% | 5.8% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
フィリップ・モリス・インターナショナル | 10.9% |
イーライリリー | 8.3% |
エヌビディア | 8.1% |
コストコホールセール | 6.5% |
TモバイルUS | 5.7% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ペイパル・ホールディングス | -12.7% |
メルク | -11.7% |
ナイキ | -10.7% |
テスラ | -10.6% |
アルファベット | -9.2% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.2%、ダウ平均は0.5%、ナスダック指数は0.5%のそれぞれ下落でした。
トランプ大統領は、メキシコ、カナダに対する25%の関税を発動直前に延期する一方、中国に対する10%の追加関税は発動しました。メキシコ、カナダへの関税発動を想定して2/3(月)は大幅な下落となりましたが、その後は戻り歩調となりました。
しかし、2/7(金)にはトランプ大統領が新たな関税を来週に発表するとして重石となったうえ、ミシガン大学消費者信頼感指数が7ヵ月ぶりの低水準に低下する一方、期待インフレ率は上昇して、景気軟化とインフレが共存する「スタグフレーション」が意識されて株式は再び反落となりました。
先週は12月求人数、1月ISM非製造業景気指数などの弱い経済指標が目立ち、米10年国債利回りは一時4.4%近くまで低下しました。1月非農業部門雇用者数も前月比14.3万人増と市場予想の同17.0万人増を下回りましたが、過去分が上昇修正されて過去3ヵ月の平均は23.7万人増と堅調な雇用市場を示すとして、週末には4.5%近くまで反発しています。
テクノロジー決算では、パランティアテクノロジーズは大幅上昇の一方、アルファベット、AMD、アームホールディングス、アマゾンなどは下落となりました。テクノロジー株の決算に対してプラスの反応となるハードルが上がっている印象です。
業種指数では、ディフェンシブの生活必需品、金利低下が恩恵となる不動産、原油価格に底入れの兆しが出たエネルギーなどがプラスでした。アマゾンが下落した一般消費財・サービス、アルファベットが下落したコミュニケーションサービスなどの下落が大きくなっています。
個別株で下落率トップのエヌビディア(NVDA)は、「ディープシーク」ショックで急落した後、徐々に戻りつつあります。「ディープシーク-R1」の開発コストが6百万ドル以下とされたことで、エヌビディアの最新型AIコンピュータに対する需要が後退するのではとの懸念が生じて下落しました。ただ、この開発にはエヌビディアが中国向けに開発した「H800」が使われており、また、開発費は市場投入前の最後の「トレーニング」に使ったAIコンピュータのレンタル料のことを指しているとみられます。AIコンピュータの市場に画期的な変化をもたらす可能性は小さいとみられ、引き続き株価の戻りが期待できるでしょう。
今週の米国株式市場
トランプ大統領の関税政策のインパクトについて、関税引き上げがすべて輸入物価の上昇に反映されると仮定して、図表3で試算しています。「現状」の対中国のみであれば、輸入物価の上昇は1.3%の上昇にとどまる一方、メキシコ、カナダへの25%の関税が発動される「悪化」のケースでは8.3%の上昇と予想されます。
1.3%上昇であれば米消費者物価の押し上げは限定的と考えられます。しかし、8.3%上昇になると影響は大きくなると考えられ、インフレ上昇、金利上昇による株価の調整は避けられないとみられます。このため、引き続き関税政策に注視していく必要がありそうです。
今週の株価材料として、トランプ大統領の関税政策、1月物価指標、パウエルFRB議長の議会証言、などが注目されます。
トランプ米大統領は2/7(金)に、貿易相手国と同様の関税を課す「相互関税」の導入計画を来週公表する予定だと語りました。「他国と同等に扱われるようにするためだ。米国はそれ以上もそれ以下も望んでいない」と説明しました。協議するため、2/10(月)か2/11(火)に会合を開催すると述べています。
物価指標はこれまでじり高となってきましたが、1月分の予想は以下のように落ち着きを示唆する可能性があり、その場合は金利を抑える方向に作用して好感されるでしょう。
米国の1月消費者物価指数は、総合指数が前年比+2.9%の予想(前月は同+2.9%)、コア指数は前年比+3.1%の予想(前月は同+3.2%)、1月生産者物価指数は総合指数が前年比+3.2%の予想(前月は同+3.3%)、コア指数は前年比+3.3%の予想(前月は同+3.5%)です。
2/12(水)のパウエルFRB議長の議会証言では、トランプ大統領の関税政策の第1弾が出たあとですので、これについてどのような言及があるか注目されます。
経済指標では上記のほか、2/14(金)にユーロ圏の10-12月期実質GDP(前年比+0.9%の予想、前期は同+0.9%)、米国の1月小売売上高(前月比0.0%の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は先週の好決算銘柄から、パランティア テクノロジーズ A(PLTR)、イーライ リリィ(LLY)、フィリップ モリス インターナショナル(PM)、ボストン サイエンティフィック(BSX)、ジョンソンコントロールズインターナショナ(JCI)を選んでご紹介いたします。
図表3 関税引き上げのインパクト試算(2024年データ)

注:関税引き上げが100%輸入価格に反映されることを前提に、2024年輸入額全体への影響を試算したものです。
※米商務省経済分析局データをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (2/7) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
買付 | パランティア テクノロジーズ A(PLTR) | 110.85ドル | 205.3 | 【AI向けが好調】 ・ビッグデータを扱うためのソフトウェアを提供する会社です。AI向けソフトウェアが好調で、10-12月期実績、2025年12月期業績ガイダンスとも市場予想を上回りました。AIのトレーニングには大量のデータを扱う必要があり、その用途に同社のソフトウェアが使われています。 ・10-12月期決算は、売上が前年同期比36%増、EPSが同75%増で、市場予想をそれぞれ7%、27%上回りました。アナリストの目標株価は今後上方修正されると見込まれますが、2/6(木)時点で90.06ドルなので、押し目買いスタンスがよさそうです。 | |
買付 | イーライ リリィ(LLY) | 878.31ドル | 38.2 | 【肥満治療薬拡大で2025年も高成長へ】 ・売上をけん引している糖尿病治療薬「マンジャロ」、肥満治療薬「ゼップバウンド」とも流通在庫が積みあがっていた影響を受けたとみられ、7-9月期に続いて10-12月期売上も市場予想を下回りました。しかし、2025年12月期も、売上レンジの中央値が前年比32%増、調整後EPSの中央値が前年比79%増と高成長が続くガイダンスが示されました。 ・10-12月期決算は、売上が前年同期比45%増、EPSが同113%増で、市場予想をそれぞれ1%、5%上回りました。2/6(木)時点のアナリスト平均目標株価は989.67ドルです。 | |
買付 | フィリップ モリス インターナショナル(PM) | 144.41ドル | 20.3 | 【タバコ代替品が好調】 ・10-12月期決算は、売上・EPSとも市場予想を上回り、ニコチンパウチ「ZYN」などタバコ代替品の売上拡大が好感されて、上場来高値を更新しています。 ・10-12月期決算は、売上が前年同期比7%増、EPSが同14%増で、市場予想をそれぞれ2%、4%上回りました。2/6(木)時点のアナリスト平均目標株価は147.62ドルです。 | |
買付 | ボストン サイエンティフィック(BSX) | 105.25ドル | 36.8 | 【PFAシステムの好調が続く】 ・医療機器メーカー。心臓カテーテル、冠動脈疾患治療、ペースメーカーに強みがあります。引き続き心房細動治療に使われるパルスフィールドアブレーション(PFA)システムが好調で売上をけん引しています。 ・10-12月期決算は、売上が前年同期比22%増、EPSが同27%増で、市場予想をそれぞれ3%、7%上回りました。2/6(木)時点のアナリスト平均目標株価は117.15ドルです。 | |
買付 | ジョンソンコントロールズインターナショナ(JCI) | 87.65ドル | 24.1 | 【北米の需要が好調】 ・ビル・データセンター管理や空調システム、産業用冷却装置大手。家庭用空調事業を売却するなど事業ポートフォリオを整理して、ビル関連に特化した戦略が奏功しているとコメントしています。データセンター関連としても注目できそうです。 ・10-12月期は北米がけん引して売上が前年同期比4%増、オーガニックには同10%増で、市場予想を3%上回りました。受注はオーガニックベースで同16%増と好調です。EPSは前年同期比26%増で、市場予想を8%上回りました。2/6(木)時点のアナリスト平均目標株価は93.73ドルです。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
10(月) | ・米NY連銀1年インフレ期待(1月) | マクドナルド |
11(火) | ・米NFIB中小企業楽観指数(1月) ・3年米国債入札 ・パウエルFRB議長が上院銀行委員会で証言 ・クリーブランド連銀ハマック総裁が講演 ・NY連銀ウィリアムズ総裁が基調講演 |
コカコーラ、S&Pグローバル |
12(水) | ・日本工作機械受注(1月) ・米消費者物価指数(1月) ・10年米国債入札 ・パウエルFRB議長が下院金融サービス委員会で証言 ・アトランタ連銀ボスティック総裁が講演 |
クラフトハインツ、アルベマール |
13(木) | ・米生産者物価指数(1月) ・米新規失業保険申請件数(2月8日に終わる週) ・30年米国債入札 |
ブリティッシュアメリカンタバコ、コインベースグローバル アプライドマテリアルズ、エアビーアンドビー |
14(金) | ・ユーロ圏実質GDP(10-12月期、速報値) ・米小売売上高(1月) ・米輸入物価指数(1月) ・米鉱工業生産(1月) |
|
17(月) | ・日本実質GDP(10-12月期、速報値) | |
18(火) | ・ドイツZEW景気指数(2月) ・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(2月) ・米NAHB住宅市場指数(2月) |
アリスタネットワークス |
19(水) | ・日本機械受注(12月) ・米住宅着工・建設許可件数(1月) ・FOMC議事要旨(1月28日、29日開催分) |
アナログデバイセズ |
20(木) | ・米ファイラデルフィア連銀製造業景気指数(2月) ・米新規失業保険申請件数(2月15日に終わる週) ・シカゴ連銀グールズビー総裁がQ&Aに参加 |
リビアンオートモーティブ、ユニティソフトウェア ブッキングホールディングス、サザン |
21(金) | ・HCOBユーロ圏製造業PMI(2月) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(2月) ・米ミシガン大学消費者信頼感指数(2月、確報値) ・米中古住宅販売件数(1月) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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