アメリカNOW! 今週の5銘柄~好決算期待で関税の影響も大きくないとみられる銘柄~

アメリカNOW! 今週の5銘柄~好決算期待で関税の影響も大きくないとみられる銘柄~

投資情報部 榮 聡

2025/04/14

先週の米国株式市場は、トランプ政権が一旦発動した一律10%を上回る高関税について、報復措置を講じた中国を除いて90日間停止するとしたことから反発に転じました。今週の株価材料として、トランプ関税に関する交渉、3月米小売売上高、1-3月期決算発表の開始、などが注目されます。

今回は先週から発表が始まった1-3月期決算が堅調と期待され、かつ、関税の影響が大きくないとみられる銘柄から、フィリップ モリス インターナショナル(PM)ビザ A(V)パランティア テクノロジーズ A(PLTR)ネットフリックス(NFLX)ユナイテッドヘルス グループ(UNH)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数のローソク足(週足、2年)

チャート的には100週移動平均線が下値抵抗帯として機能した形です。関税による不透明感は強いものの、米国経済がリセッションに陥るとの確たる証拠はまだ無いため、当面弱気相場(高値から20%の下落が目安とされる)に転じて持続的な下落となることは考えなくてよいでしょう。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 9.7% -6.5% -13.0%
資本財・サービス 6.5% -3.9% -6.5%
コミュニケーションサービス 6.4% -5.8% -8.4%
S&P500 5.7% -4.9% -8.2%
金融 5.6% -3.6% -3.3%
一般消費財・サービス 4.6% -3.7% -16.1%
素材 3.6% -5.5% -6.1%
生活必需品 3.1% 2.2% 6.1%
公益事業 2.4% -2.6% 0.9%
ヘルスケア 1.2% -5.3% -2.3%
不動産 -0.2% -5.9% -2.9%
エネルギー -0.4% -11.0% -12.8%
騰落率上位(5日) 騰落率
ブロードコム 24.4%
エヌビディア 17.6%
ボーイング 14.8%
ユナイテッドヘルス・グループ 14.2%
JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー 12.3%
騰落率下位(5日) 騰落率
ブリストル マイヤーズ スクイブ -8.3%
アッヴィ -6.4%
シェブロン -5.3%
ナイキ -5.0%
ファイザー -4.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で5.7%、ダウ平均は5.0%、ナスダック指数は7.3%の大幅反発となりました。

トランプ政権は4/9(水)午前0時に一旦発動した一律10%を上回る高関税について、報復措置を講じた中国を除いて90日間停止すると発表したことから、米国株式市場は大幅な上昇に転じました。中国に関しては、関税率を125%から145%に引き上げることが4/10(木)に発表されました。

4/8(火)に株価が下落する中でも米10年国債利回りが上昇を続けたことが、トランプ政権内に危機感を生んで、政策の調整に至ったとみられます。中国など大口保有国による米債売却が噂されており、このまま長期金利が上昇を続けると金融危機につながる可能性が懸念されたとみられます。

また、世論調査によると、トランプ大統領、共和党とも国民の不支持が3月から4月にかけて急上昇しており、政策に対する国民の不満が高まっていることも政策調整に動いた背景とみられます。

業種指数は関税の影響が大きいとして売り込まれていた情報技術、資本財・サービス、コミュニケーションサービスなどが大幅な反発となりました。フィラデルフィア半導体株指数は10.9%の上昇でした。個別銘柄で上昇率が最も大きいブロードコム(AVGO)は、通信機器向け半導体が主力で、関税の影響が大きいとみられるほか、最大100億ドルの自社株買い計画を発表しました。

今週の米国株式市場

先週は一部関税の延期を受けて株式は反発しましたが、米10年国債利回りは4/7(月)から4/11(金)まで5営業日連続の上昇となって同期間の上昇幅が0.5%ポイントに達しました。また、ドル指数は同期間に3.1%の下落となって年初来の安値を更新していることが、市場の不安材料になっています。

トランプ政権の関税に関する一連の行動が米国に対する信用を低下させて、米国からの資金離れにつながっていると言われており、この動きが続くと米国株式市場への影響も避けられません。今週に米国の金利上昇、ドルの下落が止まるか注視していく必要があるでしょう。

今週の株価材料として、トランプ関税に関する交渉、3月小売売上高、1-3月期決算発表の開始、などが注目されます。

トランプ関税に関して、米国と各国間でどのような関税引き下げ交渉が行われるのか注目されます。また、劇的にエスカレートした米中対立の行方も注目です。中国が一歩も引かないため、現在の主導権は中国側にある印象です。週末には消費者の反発を考慮して、トランプ政権は相互関税の対象からスマホ・パソコンを除外したと報じられました。

3月小売売上高は前月比+1.4%の予想です。1月に前月比-1.2%となった反動増が2月の同+0.2%に続いて出る見通しです。関税による消費者心理悪化懸念をいくらかでも払拭できるか注目です。

1-3月期決算は、S&P500指数採用銘柄のEPSが前年同期比7.3%増と堅調の予想です(FactSet社集計、4/11(金)時点)。ただし、関税による影響の不透明感を受けて会社の業績見通しは慎重になることが見込まれ、それにどのように反応するかがポイントとなりそうです。

経済指標では上記のほか、4/16(水)に中国の1-3月期実質GDP(前年比+5.2%の予想、前期は同+5.4%)、中国の3月鉱工業生産(前年比+5.9%の予想、1-2月は同+5.9%)、中国の3月小売売上高(前年比+4.3%の予想、1-2月は同+4.0%)、4/17(木)に米国の3月住宅着工件数(前月比-5.7%の予想)、3月住宅建設許可件数(前月比-0.6%の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は先週から始まった1-3月期決算発表が堅調と期待され、かつ、関税の影響が大きくないとみられる銘柄を選んでご紹介いたします。

【スクリーニング条件】

(1)通期予想EPSの過去3ヵ月修正率がプラス

(2)通期予想EPSの過去4週修正率が-0.1%以上

(3)1-3月期業績が増収増益予想(GEエレクトロニクスは、事業分離の影響を除くと実質的に増収です。)

(4)S&P100指数採用銘柄で、5月の第1週までに決算発表予定の銘柄

図表3に抽出された銘柄から、関税による影響を考慮して、フィリップ モリス インターナショナル(PM)、ビザ A(V)、パランティア テクノロジーズ A(PLTR)、ネットフリックス(NFLX)、ユナイテッドヘルス グループ(UNH)を選んでご紹介いたします。

図表3 米10年国債利回りの一目均衡表(日足、3ヵ月)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表4 1-3月期決算の堅調が期待される銘柄(5月第1週までに1-3月期決算を発表予定のS&P100指数採用銘柄を対象)

コード 銘柄名 通期予想EPS
修正率
(3ヵ月)
通期予想EPS
修正率
(4週)
1-3月期
予想売上高
増加率(%)
1-3月期
予想EPS
増加率(%)
PM フィリップ・モリス・インターナショナル 1.3 0.7 3.3 7.4
CHTR チャーター・コミュニケーションズ 3.2 0.6 0.0 13.2
GE GEエレクトリック 4.3 0.1 -40.3 55.9
PLTR パランティア・テクノロジーズ 17.1 0.5 36.1 63.8
LLY イーライリリー 1.2 0.4 44.8 80.5
SCHW チャールズ・シュワブ 3.4 0.2 16.2 35.1
NFLX ネットフリックス 5.0 0.0 12.0 7.8
V ビザ 0.8 0.0 8.9 6.9
ABT アボットラボラトリーズ 0.0 0.0 4.3 9.2
UNH ユナイテッドヘルス・グループ 0.2 0.0 11.7 5.3
MSFT マイクロソフト 0.2 -0.1 10.8 9.7
RTX RTX 0.8 -0.1 2.7 2.5

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(4/11)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートフィリップ モリス インターナショナル(PM)153.8921.4

【紙巻タバコ代替品が好調】

・景気に対する感応度が低いディフェンシブな事業内容に加え、大半の事業を米国外で営んでいるためトランプ関税の影響も小さく、物色されやすい投資環境と考えられます。また、加熱式タバコ「IQOS」などの普及によって紙巻タバコ以外の売上は40%を占めるに至り、会社中身の変革が順調に進んでいることも株価堅調の要因とみられます。

・10-12月期決算は、ニコチンパウチ「ZYN」など紙巻タバコ代替品の拡大を受けて売上が前年同期比7%増、EPSが同14%増で、市場予想をそれぞれ2%、4%上回って好調でした。

買付チャートビザ A(V)333.4029.5

【電子決済の多様化にも対応】

・クレジット、デビットカードの電子決済ネットワーク提供でマスターカードとともに中国を除く世界市場を寡占しています。クレジット、デビットカードの決済市場が安定的に伸びるほか、電子決済の多様化にも対応できており、2024年から2026年にかけて10~12%の売上成長が期待されます。

・10-12月期決算は、売上が前年同期比10%増、調整後EPSが同14%増で、市場予想を上回って好調でした。取引総額、クロスボーダー取引額、取扱件数とも改善のトレンドを示してます。

買付チャートパランティア テクノロジーズ A(PLTR)88.55161.0

【AI向けが好調】

・ビッグデータを扱うためのソフトウェアを提供する会社です。AI向けソフトウェアが好調で、10-12月期実績、2025年12月期業績ガイダンスとも市場予想を上回りました。AIのトレーニングには大量のデータを扱う必要があり、その用途に同社のソフトウェアが使われています。企業の投資マインド悪化には注意が必要ですが、基本的に関税は関係ないと考えられます。

・10-12月期決算は、売上が前年同期比36%増、EPSが同75%増で、市場予想をそれぞれ7%、27%上回って好調でした。

買付チャートネットフリックス(NFLX)918.2937.0

【新規加入者増と値上げで業績拡大】

・1-3月期の業績ガイダンスは、売上が前年同期比11%増、EPSは同6%増で、前四半期から伸びが鈍化の見通しです。しかし、米国では平均13%の値上げを予定しているため、先行きの売上は再度加速すると期待されます。トランプ関税の影響を受けにくい成長銘柄として注目を集めやすいと考えられます。

・10-12月期の新規加入者数が18.9百万人と市場予想の9.2百万人を大幅に上回りました。マイク・タイソンの復帰試合、NFL試合などライブイベントの配信、ドラマ「イカゲーム2」の投入などの施策が奏功したとみられます。

買付チャートユナイテッドヘルス グループ(UNH)599.4720.2

【株価が戻り歩調】

・同社の株価は昨年12月に幹部が射殺され、医療保険金の支払い慣行について当局から調べを受けたことで低迷していました。一方、先週にはMedicare(公的医療保険制度)向け医療保険の規制が緩和する見通しとなったことから上昇モメンタムが強まりました。関税に関係なく、景気感応度も低いことによる物色も後押しとなっているようです。

・2025年12月期の業績ガイダンス中央値は、売上が前年比13%増、調整後EPSが同8%増と堅調維持の見通しです。医療保険部門はトランプ政権による規制緩和の恩恵を受ける見込みで、同社が中期目標としている13~16%の売上拡大の実現確度を高めると期待されています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、ビザが2025年9月期、その他は2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
14(月) ・中国貿易統計(3月)
・NY連銀1年インフレ期待(3月)
・フィラデルフィア連銀ハーカー総裁の講演
ゴールドマンサックス
15(火) ・NY連銀製造業景気指数(4月)
・米輸入物価指数(3月)
ジョンソン&ジョンソンバンクオブアメリカ
シティグループ、ユナイテッドエアラインズ
16(水) ・日本機械受注(2月)
・中国実質GDP(1-3月期)
・中国鉱工業生産・小売売上高(3月)
・米小売売上高(3月)
・米鉱工業生産(3月)
・米NAHB住宅市場指数(4月)
・20年国債入札
・カンサスシティ連銀シュミット総裁、ダラス連銀ローガン総裁が意見交換
アボットラボラトリーズ、トラベラーズ
17(木) ・ECB主要政策金利
・米住宅着工・建設許可件数(3月)
・米新規失業保険申請件数(4月12日に終わる週)
・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(4月)
台湾セミコンダクターネットフリックス
アメリカンエキスプレス、ユナイテッドヘルス
18(金)    
21(月)    
22(火)   テスラベライゾンコミュニケーションズ
ロッキードマーチン
23(水) ・auじぶん銀行日本製造業PMI(4月)
・HCOBユーロ圏製造業PMI(4月)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(4月)
・米新築住宅販売件数(3月)
・地区連銀経済報告(ベージュブック)

IBMAT&T、ボーイング、サービスナウ
ネビウスグループ(E)

24(木) ・IFO企業景況感(4月)
・シカゴ連銀全米活動指数(3月)
・米耐久財受注(3月)
・米新規失業保険申請件数(4月19日に終わる週)
・米中古住宅販売件数(3月)
インテルP&G、メルク、ペプシコ
ブリストルマイヤーズスクイブ
25(金) ・米ミシガン大学消費者信頼感(4月、確報値) アッヴィアルファベット(E)

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

新着記事(2025/04/14)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。