「トランプ関税ショック」に反転の兆し?

「トランプ関税ショック」に反転の兆し?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2025/04/08

日経平均、急落!相互関税は想定以上で、スタグフレーション懸念が広がる

4月第1週(3/31~4/4)の日経平均は、前週末比3,339円75銭(▲9.0%)の大幅安となりました。4/2(水)、米トランプ政権が相互関税の詳細を発表。関税対象が予想以上に広範かつ高税率であったため、米スタグフレーション懸念が広がり、世界中で急速な株価下落を引き起こしました。米政権の新たな関税政策に対し、中国当局は報復措置を発表するなど、貿易戦争激化への懸念が強まりました。また、リスク回避の動きから、為替市場で、急速に円高が進行したことも製造業のウエイトが大きい日経平均にとって下落圧力となった格好です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(3/28~4/4・図表7)の首位は、家具大手のニトリ(9843)です。海外に生産拠点を有しており、円高によるコスト減等が連想されたもようです。他には、鉄道や食品、医薬品といった内需メインのディフェンシブ株がランクインしました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(3/28~4/4・図表8)の首位は、国内半導体大手のルネサスエレクトロニクス(6723)です。同期間、米国に上場する主要半導体株で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は▲16%と、世界的に半導体株が急落した影響を受けました。他には、銀行が5銘柄続きます。景気見通しに対する懸念が拡大し、日銀による追加利上げ観測が後退。同時に、金融政策正常化による業績改善期待も後退した格好です。

4月第2週(4/7-11)の東京株式市場は、前日比2,644円安(▲7.8%)と史上3番目の下げ幅となる大幅続落でスタート。大阪取引所では、日経平均先物に対し、一時売買を停止するサーキッドブレーカーが発動しました。4/7(月)の日経平均終値31,136円は、史上最大の下落幅を記録した2024/8/5の安値31,458円を下回りました。当面はトランプ関税に関する報道の動向に左右される展開が続くと予想されます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(3/28~4/4)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(3/28~4/4)

「トランプ関税ショック」に反転の兆し?

4月第1週(3/31~4/4)の日経平均株価終値は33,780円となり、前週末比3,339円(9%)安となりました。取引時間中ベースでは約8ヵ月ぶりに34,000円を割り込みました。トランプ米大統領が4/2(水)に発表した「相互関税」の税率が想定以上に厳しく、世界経済への悪影響や米国がスタグフレーション(物価上昇と景気悪化の同時進行)に陥ること等が懸念されました。

一方米国では、中国が米国からの輸入に対して34%の報復関税を発表したことを背景に4/4(金)の主要株価3指数はそろって急落。雇用統計はほとんど材料視されませんでした。恐怖指数として知られるVIX指数は40台を大きく突破して45.31と2020年以来の高水準です。パニック売りを受けて、S&P500指数はピークから17%安と調整局面入りし、ナスダックは同23%安と弱気相場入りとなっています。2年程度続いた米国株の上昇相場が一旦終焉を迎えた可能性があると考えられます。

こうした環境下では、市場参加者がFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げを催促するために、マーケットで売りが強まるリスクを想定しておく必要があるかもしれません。従って売買代金の変化が注視されそうです。なお、バリュエーション面ではS&P500指数の12カ月先予想PERは約18倍と割高感は解消されつつありますが、ヒストリカルで見ると割安とはまだ言えない水準です。

足元の軟調なマーケットが落ち着きを見せるためには、関税引き上げに伴う貿易戦争が改善に向けた兆しを見せる必要があると思われます。そのため、①今週4/9(水)に予定されている相互関税の各国ごとの上乗せ分の発動に関して税率の引き下げあるいは先送りがされるかどうか、②中国の報復関税に対して米国が再報復せずに静観するかどうかが注目ポイントになりそうです。また、③インフレへの懸念が高まっていることから、4/10(木)発表予定の3月米CPIが市場予想(4/7時点では前年同月比+2.6%)並みの落ち着きをみせるかどうかも併せて注視されそうです。

4/11(金)にはJPモルガンなど大手金融機関が決算発表を行う予定で、米国は決算発表シーズンを迎えます。トランプ関税一色のマーケットの注目が企業業績に向かうかどうかもポイントになりそうです。また、景気悪化懸念が台頭する中、来週4/16(水)には小売売上高の発表も控えており、一連のトランプ関税の影響がCPIや小売売上高といった経済指標に表れているかどうかを確認する重要イベントになりそうです。

これらを受け、4月第2週(4/7~4/11)の東京株式市場も波乱のスタートとなりました。4/7(月)の日経平均株価終値は31,136円58銭となり、前週末比2,644円00銭安下落。昨年8/5の4,451円安、87/10/20の3,386円安に続く過去3番目の下げ幅(図表9)となりました。

ただ、テクニカル的には、相場の底入れに向けた指標も出つつあります。日経平均株価は4/7(月)時点で、25日移動平均線からマイナス15.1%かい離していますが、通常はマイナス7~8%かい離で「下げ過ぎ」とみられます。ただ、この指標は、歴史的な下落相場ではオーバーシュートすることがあります。事実、昨年8/5の急落場面ではマイナス20%超まで売り込まれました。もっとも、その後は反発していますので「逆張り指標」としての機能はあるといえそうです。

4/8(火)の東京株式市場は、大きく反発して寄り付いています。石破首相がトランプ米大統領と電話会談を行い、関税引き下げに向けて交渉が始まったことや、日鉄買収に向け同大統領が再審査を命じたこと等が好感されました。

図表9  日経平均株価の下落幅ランキング(東証再開以降)

上記したように、日経平均株価の25日移動平均マイナスかい離率は「売られ過ぎ」のタイミングを計るテクニカル指標になっています。同時に、一連の株価下落局面で、そのマイナスが著しく大きい時、すなわち、株価が移動平均から大きく下振れしているときは、相場が歴史的な厳しい局面にあることを数字で示しているといえます。

図表10はおもな日経平均株価下落過程で、25日移動平均マイナスかい離率が最大どの程度まで大きくなったのかを示しています。最大のかい離率が15%を超えた下落相場のみ図表化しています。その前後の日々でも、かい離率が「売られ過ぎ」状態が続いている場合があります。

もっとも厳しかったのは、リーマンショック後の下落過程でした。08/10/8にマイナス乖離が21.5%拡大した後も、下落基調が続き、同10/27(10/8の12営業日後)にマイナス28.4%まで拡大し、株価が底入れしました。リーマンショックは、株式市場が恐れる金融危機が懸念された株価下落であり、株価底入れに時間を要しました。

昨年は8/2に日経平均が前営業日比で2,216円下げ、25日移動平均マイナスかい離が9.9%まで拡大。通常であれば底入れしても不思議でないかい離率ですが、8/5に4,451円と過去最大の下げを記録し、同かい離が20.4%まで拡大してようやくボトムとなりました。

今回はどうなるでしょうか。「トランプ関税」で一番被害を受けるのは米国の消費者となる可能性があります。全米でのデモや支持率低下により、トランプ関税の税率緩和が始まれば、そこが相場が本格的に反転する契機になるかもしれません。

図表10 おもな日経平均株価下落過程で25日移動平均マイナスかい離率が大きかったのは?(マイナス15%超のケース)

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