アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~ネットフリックス、TSMC、ジョンソン&ジョンソンなど先週の好決算銘柄~

投資情報部 榮 聡
2025/07/22
先週の米国株式市場は、パウエルFRB議長の解任懸念から下振れする場面がありましたが、トランプ大統領がこれを否定して回復、堅調な経済指標や4-6月期決算を受けてS&P500指数は前週比プラスで引けています。今週の株価材料として、関税引き下げ交渉、パウエルFRB議長の講演、4-6月期決算発表などが注目されます。
今回は先週4-6月期決算を発表して好調と考えられる銘柄から、ネットフリックス(NFLX)、台湾セミコンダクター ADR(TSM)、ジョンソン & ジョンソン(JNJ)、ゴールドマン サックス(GS)を、また、今週の決算発表予定の主要銘柄から、フィリップ モリス インターナショナル(PM)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

先週のもみ合いレンジから上放れの兆しがみられます。目先6,400ポイント前後に到達する可能性がありそうです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は7/14(月)終値~7/21(月)終値によります)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 2.5% | 9.8% | 40.9% |
公益事業 | 1.5% | 4.6% | 10.5% |
コミュニケーションサービス | 1.3% | 6.9% | 28.5% |
一般消費財・サービス | 0.8% | 6.6% | 26.5% |
S&P500 | 0.6% | 5.7% | 22.2% |
不動産 | 0.3% | 1.1% | 6.1% |
生活必需品 | -0.1% | -0.1% | -0.1% |
金融 | -0.3% | 4.3% | 14.8% |
資本財・サービス | -0.3% | 6.0% | 22.9% |
素材 | -0.3% | 5.0% | 13.4% |
ヘルスケア | -3.1% | -0.9% | -1.2% |
エネルギー | -3.6% | -3.8% | 6.7% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | 7.4% |
オラクル | 6.2% |
シティグループ | 5.9% |
ジョンソン・エンド・ジョンソン | 4.8% |
アルファベット | 4.7% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
ユナイテッドヘルス・グループ | -6.1% |
アボットラボラトリーズ | -5.8% |
アメリカン・エキスプレス | -5.6% |
メルク | -5.2% |
エクソンモービル | -5.2% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.6%、ナスダック指数は1.5%の上昇、ダウ平均は0.1%の下落でした。S&P500指数とナスダック指数は7/18(金)も最高値を更新しました。
パウエルFRB議長が近々解任される可能性があるとの報道で7/16(水)に株・債券・為替のトリプル安となる局面がありましたが、トランプ大統領がこれを否定して一安心となりました。ただ、トランプ大統領はパウエルFRB議長に対する不満を引き続き公言しています。
経済指標では、6月小売売上高が前月比+0.6%と市場予想の同+0.2%を大きく上回って景気減速懸念を後退させました。一方、物価指標では、6月の消費者物価指数、生産者物価指数とも市場予想を下回りました。消費者物価指数は前年比の伸びが前月からはっきりと加速し、生産者物価も内容的には関税の影響が出つつあることが示唆されました。
4-6月期決算の発表では、大手銀行は株式トレーディング収入が好調で、概ね良好でした。半導体製造装置ASMLは、売上ガイダンスは失望されましたが、AI半導体の需要は引き続き強いとコメントしました。また、AI半導体の製造を担う台湾セミコンダクターは好調が持続しました。
業種指数では、AI関連銘柄への物色が続く情報技術、AIデータセンターの投資拡大で電力需要が意識される公益事業などが上位でした。原油価格の反落を受けたエネルギー、関税引き上げが警戒されたヘルスケアの下落が大きくなっています。個別銘柄で上昇トップのアドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)は、エヌビディアとともに中国に対するAI半導体出荷の再開を発表したことが好感されました。
今週の米国株式市場
過去1ヵ月にわたって物価上昇、景気減速の「兆し」は表れていると見ていますが、市場の買い気が強すぎて、はっきりした「証拠」が出るまでは、相場は調整に転じないようです。いましばらくは、上値を試す可能性のほうが高そうです。
今週の株価材料として、関税引き下げ交渉、パウエルFRB議長の講演、4-6月期決算発表、などが注目されます。
トランプ政権は7/7(月)から主要な貿易相手国に新たな「相互関税」の税率を通告、8/1(金)を発動の期限としています。関税交渉が活発化するか注目されます。新たな税率は4月に通告されたものを上回るものが多くなっています。
一方、最近の事例では、べトナムが当初の46%から20%(積み替え品については40%)、インドネシアは当初の32%から19%への引き下げで合意しており、関税引き下げ交渉に対する市場の期待は持続しているとみられます。
7/22(火)午前8時半からパウエルFRB議長が、銀行に関するカンファレンスで開会のあいさつを行います。トランプ大統領のFRBに対する利下げ要請圧力が増している中、パウエルFRB議長の発言がトランプ大統領の反応を誘発する可能性が懸念されます。
4-6月期決算発表では、ベライゾンコミュニケーションズ、コカコーラ、テスラ、AT&T、IBM、アルファベット、インテルなどが予定されています。S&P500指数採用企業の四半期決算発表が12%終わった段階で、4-6月期予想EPS(既発表企業の実績と今後発表する企業の市場予想の混合)は前年同期比5.6%増です。4-6月期決算は堅調に始まったと言ってよいでしょう。
経済指標では、7/23(水)に米国の6月中古住宅販売件数(前月比-0.7%の予想)、7/24(木)に米国の6月新築住宅販売件数(前月比+4.2%の予想)、7/25(金)に米国の6月耐久財受注(前月比-10.5%%の予想、前月は同+16.4%)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は先週4-6月期決算を発表して好調と考えられる銘柄から、ネットフリックス(NFLX)、台湾セミコンダクター ADR(TSM)、ジョンソン & ジョンソン(JNJ)、ゴールドマン サックス(GS)を、また、今週の決算発表予定の主要銘柄から、フィリップ モリス インターナショナル(PM)を選んでご紹介いたします。
図表3 4-6月期決算の概況(主要銘柄の先週発表分から抜粋)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 今週の5銘柄の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/21) |
予想PER (倍) |
ポイント |
買付 | ネットフリックス(NFLX) | 1,233.27ドル | 46.5 | 【好調持続】 ・4-6月期の売上は前年同期比16%増、EPSは同47%増と好調な業績が維持されました。7-9月期の売上ガイダンスは、加入者数の増加、価格改定の効果、広告収入の増加を背景に前年同期比17%と加速の見通しです。通期の売上と営業利益率のガイダンスが上方修正されました。 ・下半期には「ストレンジャーシングス」「ウェンズデー」など人気シリーズの投入が見込まれており、ライブイベントへの展開にも注目が集まっています。決算発表翌日の株価は5.1%下落となっていますが、年初来43.0%上昇していたため利食いが優勢になったとみられます。好調なファンダメンタルズを受けて見直し買いが期待できると考えられます。 | |
買付 | 台湾セミコンダクター ADR(TSM) | 238.85ドル | 23.9 | 【AI半導体需要で好調持続】 ・4-6月期決算は、AI半導体の需要拡大で売上は前年同期比39%増、EPSは同60%増と好調が持続、市場予想も上回りました。7-9月期の売上ガイダンスは、4-6月期比8%増相当で、市場予想を2%上回りました。 ・AI半導体の需要サイクルが予想以上に拡大していることから、2025年12月期の売上ガイダンスを前年比20%台半ばから同30%増に引き上げています。米国による関税の影響は、AI関連売上の占める割合が高くなっていることから、限定的であると期待できるでしょう。 | |
買付 | ジョンソン & ジョンソン(JNJ) | 164.36ドル | 15.2 | 【がん治療薬の好調で通期ガイダンス上方修正】 ・4-6月期決算は売上が前年同期比5%増(事業売却および為替の影響を除いたベース)、調整後EPSは同2%減でした。がん治療薬「ダラザレックス」とメドテック部門が好調で、市場予想比で売上は4%、調整後EPSは3%上回りました。 ・2025年12月期の業績ガイダンス中央値は、売上が前年比3.8%増から同4.8%増へ、調整後EPSは同6.2%増から同7.0%増へ引き上げられました。会社側は下半期に売上の加速を見込んでいることから、通期業績ガイダンスは保守的とみられます。 | |
買付 | ゴールドマン サックス(GS) | 706.00ドル | 15.2 | 【株式トレーディング、投資銀行が好調】 ・4-6月期の収益は前年同期比15%増、EPSは同27%増、市場予想に対してそれぞれ8%、12%上回って好調でした。株式トレーディング収入が同36%増、投資銀行収益が同26%増などとけん引しました。投資銀行は、株式、債券の引き受けは低調だったものの、M&Aが同71%増と大きく伸びたことが貢献しました。 ・多角化事業の整理・売却を経て、機関投資家向けビジネスが引き続きコア事業になっています。資産運用業務は機関投資家のトレーディングビジネスよりも収益の安定性が高く、資本の必要性も低いことから、より高い株価評価(PER)につながると考えられます。 | |
買付 | フィリップ モリス インターナショナル(PM) | 180.48ドル | 24.1 | 【米国での加熱式タバコの普及に注目】 ・7/22(火)寄り前に4-6月期決算を発表する予定です。売上は前年同期比9%増、EPSは同21%増の市場予想です。加熱式たばこやオーラルたばこの販売増によって利益率が上昇する見込みです。 ・同社は紙巻たばこを販売していない米国で加熱式たばこの販売をする権利を兄弟会社のアルトリアから購入して昨年から販売促進活動を進めています。米国での加熱式タバコの販売増は、紙巻たばこの代替でなく、売上純増につながるため、業績拡大の勢いが強まっている点が注目されます。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれもが2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
21(月) | ・米景気先行指数(6月) | ベライゾンコミュニケーションズ |
22(火) | ・パウエルFRB議長の講演 ・米リッチモンド連銀製造業景気指数(7月) |
コカコーラ、ゼネラルモーターズ、ロッキードマーチン フィリップモリスインターナショナル インチュイティブサージカル、テキサスインスツルメンツ |
23(水) | ・米中古住宅販売件数(6月) ・20年国債入札 |
アルファベット、テスラ、AT&T、IBM サービスナウ、TモバイルUS、アンフェノール |
24(木) | ・EU27ヵ国新車登録台数(6月) ・HCOBユーロ圏製造業PMI(7月) ・ECB主要政策金利 ・米シカゴ連銀全米活動指数(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月19日に終わる週) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(7月) ・米新築住宅販売件数(6月) |
インテル、ドイツ銀行、ハネウェルインターナショナル ダウ、ラスベガスサンズ、ネクステラエナジー |
25(金) | ・米耐久財受注(6月) | |
28(月) | ・2年国債入札 ・5年国債入札 |
|
29(火) | ・S&Pケースシラー住宅価格(5月) ・米求人労働異動調査(6月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感指数(7月) ・7年国債入札 |
プロクター・アンド・ギャンブル、ソーファイ・テクノロジーズ ビザ、ペイパル・ホールディングス、ユナイテッドヘルス ボーイング |
30(水) | ・ユーロ圏景況感(7月) ・米ADP雇用統計(7月) ・米実質GDP(4-6月期、速報値) ・FOMC政策金利 |
アーム・ホールディングス、メタ・プラットフォームズ マイクロソフト、クラフト・ハインツ、フォード・モーター スターバックス |
31(木) | ・中国製造業・非製造業PMI(7月) ・米チャレンジャー人員削減数(7月) ・米個人所得・個人支出(6月) ・米個人消費支出物価指数(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月26日に終わる週) |
アップル、アッヴィ、ブリティッシュアメリカンタバコ アルトリアグループ、コインベースグローバル マスターカード |
8月 1(金) |
・米雇用統計(7月) ・ISM製造業景況指数(7月) ・米建設支出(6月) ・ミシガン大学消費者信頼感指数(7月、確報値) |
アマゾンドットコム、エクソンモービル、シェブロン MARAホールディングス、マイクロストラテジー |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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