アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~パランティア、アリスタ、ドアダッシュなど先週の好決算銘柄~

投資情報部 榮 聡
2025/08/12
先週の米国株式市場は、労働市場の鈍化を受けて9月FOMCでの利下げ期待が高まって相場を支えたほか、新たな税率による相互関税は大きな混乱なく発動され、戻り基調となっています。今週の株価材料として、トランプ関税の行方、7月小売売上高、物価指標などが注目されます。
今回は先週4-6月期決算を発表して好調と見られる銘柄から、パランティア テクノロジーズ A(PLTR)、アリスタ ネットワークス(ANET)、ドアダッシュ A(DASH)、マクドナルド(MCD)、ウーバー テクノロジーズ(UBER)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

7月雇用統計が労働市場の鈍化を示唆して大きく下落しましたが、すかさず押し目買いが入って戻り基調です。地合いの強さが感じられる動きで、再び高値更新に進むか注目です。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(「5日」は8/4(月)終値~8/11(月)終値によります)
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
一般消費財・サービス | 3.3% | 1.0% | 11.5% |
生活必需品 | 2.9% | 2.1% | 1.9% |
情報技術 | 1.5% | 5.1% | 25.2% |
素材 | 0.7% | -2.4% | 5.0% |
S&P500 | 0.7% | 1.8% | 12.6% |
コミュニケーションサービス | 0.6% | 5.6% | 20.4% |
金融 | -0.2% | -0.8% | 3.9% |
資本財・サービス | -0.6% | 0.0% | 10.4% |
エネルギー | -1.3% | -5.8% | 2.0% |
不動産 | -1.6% | -1.5% | -1.5% |
公益事業 | -1.7% | 4.0% | 7.0% |
ヘルスケア | -2.1% | -3.8% | -1.9% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
アップル | 11.7% |
テスラ | 9.6% |
アルトリア・グループ | 6.0% |
インテル | 5.9% |
CVSヘルス | 5.6% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
イーライリリー | -17.4% |
アクセンチュア | -7.8% |
セールスフォース | -7.8% |
エマソン・エレクトリック | -7.5% |
IBM | -6.2% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で2.4%、ダウ平均は1.3%、ナスダック指数は3.9%の上昇でした。ナスダック指数は8/8(金)に最高値を更新しています。
非農業部門雇用者数の急速な悪化を受けて8/1(金)には相場が急落しましたが、先週は9月FOMCでの利下げ期待が高まり、株価を支える要因になりました。
トランプ政権の相互関税は、新たな関税率で予定通り8/7(木)に発動しました。米国と各国に一部で理解の齟齬もみられますが、大きな混乱にはなっていません。インドに対しては、ロシア産原油の購入をめぐり25%の追加関税を課す大統領令が出て、関税率は合計で50%になりました。
経済指標では、7月ISM非製造業景気指数が50.1と、前月の50.8から低下、市場予想の51.5を下回り、雇用統計に続いて景気に対する懸念を強める要因となりました。
業種指数では、テスラやアマゾンが上昇した一般消費財・サービス、タバコ株や小売株が上昇した生活必需品などの上昇が大きく、関税引き上げへの懸念が続いているヘルスケアが下落しました。個別株で上昇率トップのアップル(AAPL)は、トランプ政権に寄り添う形で1,000億ドルの追加投資を発表したことで、製品輸入に対する関税を回避できるのではないかとの期待が膨らんで大きく上昇しました。一方、下落率が大きいイーライ リリィ(LLY)は、4-6月期決算は市場予想を上回ったものの、経口型の肥満治療薬の臨床試験結果が市場予想に届かず、失望売りにより下落しました。
今週の米国株式市場
今週発表される消費者・生産者物価指数、小売売上高とも相場を動かす可能性がありそうです。過去数ヵ月、経済指標に対する相場の反応は鈍い印象でしたが、7月非農業部門雇用者数のようにはっきりした傾向が出た場合は別のようです。FedWatchの9月利下げ確率が1週間前の90%超から85%へ低下するなど動きが見られ(日本時間8/12(火)午前9時)、相場の反応は複雑になりそうです。
今週の株価材料として、トランプ関税の行方、7月小売売上高、物価指標などが注目されます。
トランプ政権の相互関税は、新たな関税率で予定通り8/7(木)に発動しましたが、引き続きニュースが出ています。中国に対する一部関税措置の停止期限は90日間延期されました。また、AI半導体では、エヌビディア、AMDとも中国に対する売上の15%を米政府に支払う取引が成立したと報じられています。
米小売売上高は5月に前月比-0.9%となって景気減速懸念を高めましたが、6月に同+0.6%となって懸念は一旦後退しています。7月が市場予想通り同+0.5%増となるなら、消費に対する市場の懸念はかなり後退すると期待されます。
消費者物価指数、生産者物価指数とも伸び率は前月から高まる予想で、関税の影響が出てくる見込みです。8/12(火)の7月消費者物価指数は総合指数が前年比+2.8%の予想(前月は同+2.7%)、コア指数は前年比+3.0%の予想(前月は同+2.9%)、8/14(水)の7月生産者物価指数は総合指数が前年比+2.5%の予想(前月は同+2.3%)、コア指数は前年比+3.0%の予想(前月は同+2.6%)です。
経済指標では、8/14(木)に日本の4-6月期実質GDP(前期比年率+0.4%の予想)、EUの4-6月期実質GDP(前年比+1.4%の予想、1-3月期も同+1.4%)、8/15(金)は米国の7月小売売上高(前月比+0.6%の予想)、米国の8月ミシガン大学消費者信頼感指数(前月の61.7から62.0に改善の予想)、などが予定されています。
今週の5銘柄
今回は先週4-6月期決算を発表して好調と考えられる銘柄から、パランティア テクノロジーズ A(PLTR)、アリスタ ネットワークス(ANET)、ドアダッシュ A(DASH)、マクドナルド(MCD)、ウーバー テクノロジーズ(UBER)を選んでご紹介いたします。
図表3 4-6月期決算の概況(主要銘柄の先週発表分から抜粋)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 今週の5銘柄の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (8/11) |
予想PER (倍) |
ポイント |
買付 | パランティア テクノロジーズ A(PLTR) | 182.68ドル | 247.9 | 【AI利用の拡大から恩恵】 ・ビッグデータを取り扱いやすくするソフトウェアを提供、売上構成比は、政府向けが55%、民間企業向けが45%となっています(2024年12月期)。企業がAIを業務に使うときには、AIモデルを自社のデータで「訓練」する必要があることから、AI関連の売上が急増しています。また、政府向けでは防衛関連が伸びています。 ・4-6月期決算は、売上が前年同期比48%増、EPSが同102%増で、それぞれ市場予想を7%、15%上回って好調な結果となりました。株価は既にアナリストの目標株価を上回っていますが、引き続き上昇基調を維持しています。 | |
買付 | アリスタ ネットワークス(ANET) | 137.65ドル | 46.6 | 【データセンター向けネットワーク機器の会社】 ・データセンター向けのネットワーク機器や関連ソフトウェアを手がけています。「EOS」が基幹システムで、IT大手、金融、政府機関などが顧客です。 ・4-6月期決算は売上が前年同期比30%増、EPSが同39%増で、それぞれ市場予想を5%、12%と大きく上回りました。800ギガビット、1.6テラビットのスイッチへのアップグレードの波が続いているうえ、ハイパースケーラーによるAIデータセンター投資からも恩恵を受けて予想以上の売上拡大が続いています。 | |
買付 | ドアダッシュ A(DASH) | 256.09ドル | 49.4 | 【フードデリバリーで米国最大手】 ・フードデリバリーで米国最大手。宅配プラットフォームを活用して、料理以外の商品宅配も展開しています。欧州の同業やロボット配送企業の買収を通じて、積極的な拡大策を講じています。2013年設立、2020年にナスダック上場、2025年3月にS&P500指数に採用されました。 ・4-6月期決算が市場予想を上回ったうえ、7-9月期の注文総額のガイダンスを前年同期比21~24%増相当の242~247億ドルと発表して、市場予想を上回りました。 | |
買付 | マクドナルド(MCD) | 304.36ドル | 23.7 | 【既存店売上が2年来の伸び】 ・マクドナルド(MCD)は4-6月期決算が市場予想を上回り、既存店売上は前年同期比3.8%増と過去2年近くで最も高い伸びを記録しました。映画「マインクラフト」や「スクイッシュマロ」(ぬいぐるみ)とのコラボレーションや低価格メニューの提供が押し上げ要因になったと見られます。 ・同社は大腸菌の集団感染や中東での米国ブランドへの反発、トランプ米大統領による貿易摩擦など不安定要因が続きましたが、足もとの業績が堅調なことが確認されています。 | |
買付 | ウーバー テクノロジーズ(UBER) | 90.58ドル | 22.1 | 【顧客数が順調に拡大】 ・ライドシェアで北米首位。宅配事業も展開しています。アルファベット傘下のウェイモと提携して、ジョージア州アトランタやテキサス州オースティンで自動運転タクシー事業を展開、テスラのロボタクシー事業と競合しています。 ・4-6月期は売上が市場予想を上回り、EPSは市場予想と一致しました。月間アクティブ・プラットフォーム・ユーザー数が前年同期比15%増と順調に拡大しています。200億ドルの自社株買いを発表しましたが、貨物輸送事業の売却が原資になるのではと観測されています。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
11(月) | ・米NFIB中小企業楽観指数(6月) | オクロ |
12(火) | ・米消費者物価指数(7月) ・リッチモンド連銀バーキン総裁の講演 |
エコペトロル、リゲッティコンピューティング サークルインターネット、コアウィーブ |
13(水) | ・米工作機械受注(7月) ・シカゴ連銀グールズビー総裁の講演 ・アトランタ連銀ボスティック総裁の講演 |
シスコシステムズ |
14(木) | ・日本実質GDP(4-6月期、改定値) ・中国鉱工業生産・小売売上高(7月) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、改定値) ・米生産者物価指数(7月) ・米新規失業保険申請件数(8月9日に終わる週) |
ゴリラテクノロジー、アプライドマテリアルズ |
15(金) | ・米小売売上高(7月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(8月) ・米輸入物価指数(7月) ・米鉱工業生産(7月) ・米ミシガン大学消費者信頼感指数(8月、速報値) |
|
18(月) | ・米NAHB住宅市場指数(8月) | メドトロニック、パロアルトネットワークス |
19(火) | ・米住宅着工・建設許可件数(7月) | ホームデポ、アナログデバイセズ |
20(水) | ・FOMC議事要旨(7月29日、30日開催分) ・20年国債入札 |
ウォルマート、ターゲット、ロウズ |
21(木) | ・米新規失業保険申請件数(8月16日に終わる週) ・S&Pグローバル米国製造業PMI(8月) ・米中古住宅販売件数(7月) |
|
22(金) | ・ジャクソンホール会議(24日まで) |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
新着記事(2025/08/12)

外国株式
1分でチェック!今週の米国株式「CPIや小売売上高のほか、米中関税の一部停止措置延長に関する詳細などが注目ポイント」
先週から11日までの米国株は、アップル(AAPL)の大型投資計画や地区連銀総裁などによる利下げ示唆を背景にナスダックが史上最高値を更新する場面がありました。週間ベースではS&P500やナスダックなどの主要株価3指数ともに反発となりました。S...
投資情報部 齊木 良
2025/08/12

投資信託
残高最大+過去最高値 S&P500ファンドを20%上回った 6ヵ月好成績ファンドは?
国内公募の追加型株式投資信託(ETFを除く)で残高首位ファンドのeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(以下、S&P500ファンド)が、2025年8月1日に純資産総額8兆円を突破しました。また、同日の基準価額(34,806円)は、...
投資情報部 川上雅人
2025/08/12

国内株式
好業績+有配+「8月株主優待銘柄」
8月の東京株式市場は波乱のスタートとなりました。7月米雇用統計の悪化を嫌気して8/1(金)に米国株が急落し、週明け8/4(月)の東京株式市場では日経平均株価が一時4万円を割り込みました。しかし、その後は米国株式市場が持ち直したこともあり、日...
投資情報部 鈴木英之/栗本奈緒実
2025/08/08
免責事項・注意事項
・レポートおよびコラムの配信は、状況により遅延や中止、または中断させていただくことがございます。あらかじめご了承ください。
・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。
【手数料及びリスク情報等】
SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。