アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディア、マーベルテクノロジー、ブロードコムの決算発表を控えてAI半導体銘柄に注目~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~エヌビディア、マーベルテクノロジー、ブロードコムの決算発表を控えてAI半導体銘柄に注目~

投資情報部 榮 聡

2025/08/25

先週の米国株式市場は、週末のパウエルFRB議長の発言を控えてリスク回避に傾く場面がありましたが、議長が9月の利下げを示唆したと捉えられたことから8/22(金)に大幅に上昇、S&P500指数は前週比プラスで引けました。今週の株価材料として、エヌビディアの決算発表、7月個人消費支出物価指数、国債の入札などが注目されます。

今回は今週、来週とAI半導体関連銘柄の決算が続くことを踏まえ、AI半導体関連銘柄から、エヌビディア(NVDA)ブロードコム(AVGO)アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)マイクロン テクノロジー(MU)マーベルテクノロジーグループ(MRVL)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

8/22(金)にパウエルFRB議長が9月利下げの可能性を示唆したことから一気に上昇し、8/15(金)に付けた最高値の6,481.34ポイントに迫りました。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
エネルギー 2.8% 0.6% 7.7%
不動産 2.4% -1.1% 4.3%
金融 2.1% 0.1% 7.1%
素材 2.1% 0.6% 8.1%
資本財・サービス 1.8% -1.3% 8.8%
ヘルスケア 1.4% 1.2% 6.1%
一般消費財・サービス 1.3% 2.9% 10.7%
公益事業 0.4% 0.8% 7.4%
生活必需品 0.3% 1.5% 0.1%
S&P500 0.3% 1.2% 11.4%
コミュニケーションサービス -0.9% 4.6% 15.2%
情報技術 -1.6% 1.0% 18.5%
騰落率上位(5日) 騰落率
ダウ 7.5%
キャタピラー 6.8%
テキサス・インスツルメンツ 5.9%
バンク・オブ・アメリカ 5.4%
メットライフ 5.4%
騰落率下位(5日) 騰落率
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ -5.5%
オラクル -4.8%
ブロードコム -4.0%
メタ・プラットフォームズ -3.9%
ターゲット -3.7%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で0.3%、ダウ平均は1.5%の上昇、ナスダック指数は0.6%の下落でした。

週末のパウエルFRB議長の講演に向けてリスク回避の気運が広がり、これまで上昇をけん引してきたテクノロジー株に利益確定売りが出て8/21(木)までS&P500指数は5日続落となりました。

一方、パウエルFRB議長は、雇用の下振れリスクの高まりを強調して、9月FOMCで利下げに着手する可能性を示唆したことから、8/22(金)は大幅に反発して引けました。

テクノロジー株の下落については、OpenAIのアルトマンCEOが8/15(金)に「AIに対する投資が1990年代のドットコムバブルのように過熱したのは事実」と話したのが影響したとの見方もありました。

8/20(水)に公表されたFOMC議事要旨では、大部分の委員は雇用のダウンサイドリスクよりも物価の上昇リスクをより懸念していることが示されました。一方、「関税の影響を完全に見極めなくても利下げは可能」とする委員が数名いたことも判明しました。

小売企業決算はまちまちの反応でした。スーパーのウォルマート、ターゲットは関税の影響が出つつあることが嫌気されて決算発表を受けて売られました。一方、ホームセンターのホームデポ、ロウズの決算に対しては、長らく続いた住宅建設市場の低迷が終わりつつあるのではとのポジティブな見方が聞かれました。

業種指数では、原油在庫の減少による原油価格の反発を受けたエネルギー、金利低下が恩恵となる不動産、4月以降の相場反発局面で出遅れが目立った保険が上昇した金融などが騰落率の上位に入りました。AI半導体銘柄を中心に利食いが出た情報技術は1%以上の下落でした。

個別銘柄で上昇率3位のテキサスインスツルメンツ(TXN)は、アナログ半導体で同業のアナログ デバイセズ(ADI)による8-10月期の売上高ガイダンスが市場予想を大きく上回ったことから連れ高となりました。両社の主要顧客である、産業機器、通信機器、自動車などの改善が期待されています。

今週の米国株式市場

エヌビディアの5-7月期決算は、AI半導体への強い需要を示唆すると期待されます。中国向け売上の見通しが不透明なことが嫌気される可能性がありそうですが、中国売上がなくても他市場の需要でカバーされると見込まれ、重要なネガティブ要因にはならないと期待されます。

今週の株価材料として、エヌビディアの決算発表、7月個人消費支出物価指数、国債の入札などが注目されます。

8/27(水)の引け後にエヌビディアが5-7月期決算を発表します。時価総額が最大の企業(2025年8月22日時点)であり、相場の上昇をけん引してきたAI半導体の中心銘柄であることから注目されます。これまでに出た様々なデータポイントから、5-7月期決算は堅調と期待されます。

一方、中国向けAI半導体についてどのような見通しが語られるか注目されます。エヌビディアは米政府に売上の15%を納めることで中国への輸出ライセンスを取得しましたが、中国政府が国内企業に購入を控えるよう要請しているなどで、見通しが晴れていません。

8/29(金)に発表される7月個人消費支出物価指数は、総合指数が前年比+2.6%の予想(前月は同+2.6%)、コア指数は前年比+2.9%の予想(前月は同+2.8%)です。7月の生産者物価指数が前月から大きく上昇したことやウォルマートの決算発表で「足元毎週仕入れ値が上昇している」とのコメントがあったことから、再び物価上昇への懸念が高まっています。

米10年国債利回りは先週一旦4.3%台に上昇した後、パウエルFRB議長の講演を受けて9月の利下げ期待が強まり、4.2%台に低下しています。今週は2年、5年、7年物の国債入札があります。金利のさらなる低下をサポートする国債需要があるか注目されます。

経済指標では、8/25(月)に米国の7月新築住宅販売件数(前月比+0.5%の予想)、8/26(火)に米国の7月耐久財受注(前月比-3.9%の予想)、米国のコンファレンスボード8月消費者信頼感指数(前月の97.2から96.5に悪化の予想)、8/28(木)に米国の4-6月期実質GDP(前期比年率+3.1%の予想)などが予定されています。

今週の5銘柄

今回は8/27(水)にエヌビディア、8/28(木)にマーベルテクノロジー、翌週9/4(木)にブロードコムが決算発表を迎えることを踏まえ、AI半導体関連の5銘柄、エヌビディア(NVDA)、ブロードコム(AVGO)、アドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)、マイクロン テクノロジー(MU)、マーベルテクノロジーグループ(MRVL)を取り上げます。

図表3の通り、これら5銘柄の株価をそれぞれ指数化して平均した株価は、8/13(水)にピークを付けて、8/21(木)にかけて7.5%下落しましたが、上昇トレンドを維持しているように見えます。

図表3 AI半導体関連5銘柄の株価推移

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 今週の5銘柄の投資指標

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(8/22)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートエヌビディア(NVDA)177.99ドル40.4

【AI半導体需要は強い】

・AI計算にGPU(画像処理半導体)が適していることにいち早く気付き、また、GPUをコンピュータとして使うためのソフトウェアへの投資を行ってきたことから、需要が急増するAIコンピュータ分野で支配的地位を確立しています。

・5-7月期決算のコンセンサス予想は、売上が前年同期比53%増、EPSは同50%増です。通期予想EPSの修正状況は、過去4週が0.7%、過去3ヵ月が1.8%と良好で、堅調な決算になると期待されます。市場の注目は、米中政府による関与が影響して見通しが不透明な中国向けAI半導体輸出に関してどのようなコメントが出るかに集まっています。

買付チャートブロードコム(AVGO)294.00ドル35.6

【AI関連売上が業績をけん引】

・特定顧客向けのAIアクセラレーター(エヌビディアのGPUと同様の機能をもつ半導体)や生成AIの計算量が巨大化したことでデータセンター内外で使用されるネットワーキング半導体の需要拡大が期待されます。

・2-4月期決算では売上が前年同期比20%増(半導体ソリューションが同17%増、インフラストラクチャー・ソフトウェアが同25%増)、調整後EPSが同44%増と好調でした。AI関連売上は前年同期比46%増の44億ドルで、半導体ソリューションの52%を占めました。5-7月期のガイダンスでは売上が約158億ドル(前年同期比21%増相当)で、AI関連売上は51億ドルへ加速する見込みです。9/4(木)に発表予定です。

買付チャートアドバンスト マイクロ デバイシズ(AMD)167.76ドル42.4

【AI半導体に参入】

・2024年後半からAI半導体に参入しました。AI関連のソフトウェア群で10年以上の蓄積をもつエヌビディアとの競争力格差は大きいものの、エヌビディアのライバル企業を育ててエヌビディアの市場独占を阻止したいマイクロソフトなどハイパースケーラーの支援もあり、ある程度のシェアを獲得できるとみられます。

・4-6月期決算では、中国向けの売上見通しが不透明との会社側コメントが嫌気されて株価は下落しました。しかし、7-9月期の売上ガイダンスは約87億ドルとして市場予想を4%上回りました。市場予想を上回った主因はデータセンター向けとみられ、AI半導体需要に関してはポジティブに捉えられます。

買付チャートマイクロン テクノロジー(MU)117.68ドル9.3

【広帯域メモリ(HBM)の需要拡大に期待】

・生成AIの計算では、従来型AIよりも大量のデータを参照しながら処理を行うため、データを一時的に保持するためのDRAMの需要が拡大しています。とくにプロセッサーとのデータのやり取り速度が速いHBM(高帯域幅メモリ)と呼ばれるDRAMが売上増をけん引しています。

・3-5月期決算は売上が前年同期比37%増、EPSは同5.6倍と好調でした。さらに、8/11(月)にはAIデータセンター向け需要の拡大を背景に6-8月期の売上ガイダンスを従来の104~110億ドルから111~113億ドルに引き上げました。6-8月期決算は9月下旬に発表の予定です。

買付チャートマーベルテクノロジーグループ(MRVL)73.00ドル26.0

【カスタムAI半導体に期待】

・カスタムAI半導体はブロードコムが10年以上の実績をもつのに比べて、同社は2023年に参入しており、かなり後発です。しかし、現在「カスタムXPU」と「カスタムXPUアタッチ」(XPUの周辺半導体)で18本のプロジェクトについて生産を行っているのに対して、パイプラインとして10以上の顧客に50本以上のプロジェクトが商談中で、プロジェクトの総売上は750億ドルに達する可能性があると明かされました。

・5-7月期売上ガイダンスは20億ドル±5%で、中央値は2-4月期比5.5%増、前年同期比57%増に相当します。エヌビディアに続いて8/28(木)に決算発表予定です。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、エヌビディア、マーベルテクノロジーが2026年1月期、ブロードコムが2026年10月期、アドバンストマイクロデバイセズが2025年12月期、マイクロンテクノロジーが2026年8月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
25(月) ・米シカゴ連銀全米活動指数(7月)
・米新築住宅販売件数(7月)
・ダラス連銀ローガン総裁が講演
・NY連銀ウィリアムズ総裁が講演
 
26(火) ・米耐久財受注(7月)
・S&PコアロジックCS住宅価格(6月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感指数(8月)
・リッチモンド連銀バーキン総裁が講演
・米2年国債入札
 
27(水) ・米5年国債入札 エヌビディアクラウドストライクホールディングス
28(木) ・米実質GDP(4-6月期、改定値)
・米新規失業保険申請件数(8月23日に終わる週)
・米中古住宅販売成約(7月)
・ウォラーFRB理事が講演
・米7年国債入札

マーベルテクノロジー、デルテクノロジーズ、ダラーゼネラル、アルタビューティ

29(金) ・米個人所得・個人支出(7月)
・米個人消費支出物価指数(7月)
・米ミシガン大学消費者信頼感指数(8月、確報値)
9月
1(月)
・米市場休場(労働者の日)  
2(火) ・米ISM製造業景気指数(8月)
・米建設支出(7月)
 
3(水) ・米求人労働異動調査(7月)
・米製造業受注(7月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
セールスフォース
4(木) ・米チャレンジャー人員削減数(8月)
・米ADP雇用統計(8月)
・米新規失業保険申請件数(8月30日に終わる週)
・米貿易統計(7月)
・米ISM非製造業景気指数(8月)
・シカゴ連銀グールズビー総裁がQ&Aセッションに参加
ブロードコム、ルルレモンアスレティカ
5(金) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、確報値)
・米雇用統計(8月)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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