アメリカNOW! ~好決算を発表した半導体関連のASML、TSMCおよび大手銀行株~

アメリカNOW! ~好決算を発表した半導体関連のASML、TSMCおよび大手銀行株~

投資情報部 榮 聡

2025/10/20

先週の米国株式市場は、トランプ大統領の発言を受けた10/10(金)急落から半分程度戻して、S&P500指数は6,600ポイント台前半を中心とするもみ合いに転じました。今週の株価材料として、7-9月期決算発表、地銀の信用不安の行方、9月消費者物価指数の発表が注目されます。

今回は先週に好決算を発表した半導体関連のASML ホールディングス NYRS(ASML)台湾セミコンダクター ADR(TSM)、また、大手銀行のモルガン スタンレー(MS)バンク オブ アメリカ(BAC)ゴールドマン サックス(GS)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

トランプ大統領の発言を受けた10/10(金)の急落から、6,600ポイント台前半を中心とするもみ合いに転じました。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
コミュニケーションサービス 3.6% -3.5% 13.8%
不動産 3.4% 1.1% 0.6%
情報技術 2.1% 2.0% 9.4%
生活必需品 2.0% 1.0% -0.3%
一般消費財・サービス 1.9% -3.5% 4.4%
S&P500 1.7% 0.0% 5.8%
公益事業 1.5% 8.4% 9.3%
資本財・サービス 1.2% -0.5% 0.2%
素材 1.0% -3.0% -1.4%
エネルギー 0.9% -1.9% 0.4%
ヘルスケア 0.7% 4.7% 8.7%
金融 0.0% -3.6% -0.7%
騰落率上位(5日) 騰落率
アメリカン・エキスプレス 9.6%
スターバックス 8.8%
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ 8.5%
ブロードコム 7.6%
ウェルズ・ファーゴ 7.3%
騰落率下位(5日) 騰落率
アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG) -4.8%
イーライリリー -3.7%
ペイパル・ホールディングス -3.5%
アボットラボラトリーズ -3.0%
チャーター・コミュニケーションズ -2.4%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.7%、ダウ平均は1.6%、ナスダック指数は2.1%の反発となりました

中国に11月1日から100%の追加関税を課すとするトランプ大統領発言を受けた10/10(金)の急落から、6,600ポイント台前半を中心とするもみ合いに転じました。先々週末にトランプ大統領が対中国への敵対姿勢を和らげる投稿を行ったことから米中対立への懸念は一旦後退しました。

7-9月期決算発表の先陣を切った大手銀行はいずれも好調で相場のセンチメントを支えました。一方、10/16(木)には地銀のジオンズ バンコープ(ZION)ウェスタン アライアンス バンコープ(WAL)が融資先の不正を発見したとして損失計上を公表したことから、信用不安の懸念が高まる場面がありました。しかし、大手格付け会社ムーディーズのアナリストが、信用状況の悪化は見られないとコメントしたことから市場の懸念は一旦後退しました。

半導体関連企業で決算を発表したASML ホールディングス NYRS(ASML)台湾セミコンダクター ADR(TSM)は、両社ともAI需要の拡大を示唆したことから、AI関連銘柄への物色意欲が維持され、相場を支える要因となりました。

業種指数では、コミュニケーションサービスの上昇が目立ちました。アルファベットの反発に加え通信サービス銘柄が揃って上昇しました。個別銘柄では、10/10(金)に決算を発表したアメリカン エキスプレス(AXP)が上昇トップでした。米国消費の堅調を背景に7-9月期決算は売上・利益とも市場予想を上回り、通期業績ガイダンスの下限値を売上・EPSともに引き上げました。

今週の米国株式市場

米中対立に対する懸念、政府閉鎖の継続、地銀不安と悪材料が重なっていることから目先は軟調となりやすいでしょう。しかし、利下げ期待とAI物色で中期上昇トレンドは維持されると考えられます。

今週の株価材料として、7-9月期決算発表、地銀の信用不安の行方、9月消費者物価指数の発表などが注目されます。

今週の7-9月期決算発表として、コカ・コーラ、ベライゾンコミュニケーションズ、ネットフリックス、IBM、AT&T、スリーエム、テスラなどが予定されています。S&P500指数採用銘柄のうち58銘柄の発表が終わった段階で、既発表企業のEPSは前年同期比16.0%増、市場予想を5.7%ポイント上回って好調です(Bloombergによる集計)。

10/16(木)に米地方銀行2行が融資先の不正を発見したとして損失を計上したことから、地銀の信用不安が高まりました。JPモルガンのダイモンCEOは決算説明会で「ゴキブリを1匹見たら、たいてい他にもいるものだ」と警告していたことが市場で意識されており、当面は警戒が残りそうです。

前回地銀の信用不安が取り沙汰された2023年3月には、シリコンバレーで新興テクノロジー企業への融資を中心に行うSVBファイナンシャルグループの株価が財務強化のための増資を3月9日に発表して株価が60%下落しました。しかし、金融当局が3月10日に破綻認定して金融システムから切り離したことから、大事に至りませんでした。S&P500指数は2023年3月9日に1.8%、3月10日に1.4%の下落となりましたが、その後は反発基調となりました。

政府閉鎖のために発表されていなかった9月の消費者物価指数が10/24(金)に発表予定です。総合指数は前年比+3.1%の予想(前月は同+2.9%)、コア指数は同+3.1%の予想(前月は同+3.1%)です。当初の発表予定日は10/15(水)でした。

経済指標では上記のほかに、10/23(木)に米国の9月中古住宅販売件数(前月比+1.5%の予想)、10/24(金)に米国の9月新築住宅販売件数(前月比-11.6%の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は先週に好決算を発表した半導体関連のASML ホールディングス NYRS(ASML)台湾セミコンダクター ADR(TSM)、また、大手銀行のモルガン スタンレー(MS)、バンク オブ アメリカ(BAC)、ゴールドマン サックス(GS)を選んでご紹介いたします。

図表3 大手銀行の7-9月期決算概要

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 今週の5銘柄の投資指標

注:予想PERは今期予想EPSに基づいて計算しています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(10/17)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートASML ホールディングス NYRS(ASML)1,029.27ドル34.3

【半導体の露光装置大手】 

・オランダ企業で米国にも上場しています。半導体製造装置の一種、露光装置で9割以上の市場シェアをもち、最先端の半導体に使われるEUV露光装置の唯一のメーカーです。

・7-9月期の売上は市場予想を下回ったものの、受注額は54億ユーロで市場予想の49億ユーロを大きく上回りました。AIデータセンター投資の急拡大が、同社の先端半導体製造装置の需要を押し上げると期待されます。

買付チャート台湾セミコンダクター ADR(TSM)295.08ドル24.1

【AI半導体を製造するファウンドリー】

・台湾企業で米国にADRとして上場しています。世界最大のファウンドリー(半導体の受託製造会社)で、最先端の半導体製造を多く手掛けます。

・7-9月期決算の売上は市場予想を2%、EPSも10%上回りました。10-12月期の売上見通しは322~334億ドルで、市場予想の312億ドルを3~7%上回りました。エヌビディアやAMDから製造委託を受けているAI半導体が売上をけん引しています。

買付チャートモルガン スタンレー(MS)158.67ドル15.5

【投資銀行大手】

・ゴールドマンサックスと並ぶ投資銀行の大手です。資産運用業務の強化を進めたことが奏功して、大手銀行の中でも四半期決算が好調となることが多くなっています。

・7-9月期は大幅な増収増益で、市場予想も大きく上回りました。株式トレーディング収入、株式引受手数料、債券引受手数料などが市場予想を大きく上回って好調です。

買付チャートバンク オブ アメリカ(BAC)51.28ドル11.8

【米国銀行で最大手級】

・米国銀行で最大手級で、商業銀行に強く、「メリルリンチ」を買収して証券・投資銀行部門でも有数です。純金利収入の稼得環境が改善しており、利益成長見通しが改善しています。

・7-9月期決算は増収増益となり、市場予想も上回りました。株式トレーディング収入、金融アドバイザリー手数料、債券引受手数料などが市場予想を上回って好調でした。

買付チャートゴールドマン サックス(GS)750.77ドル13.7

【投資銀行大手】

・モルガンスタンレーと並ぶ投資銀行の大手です。消費者向けビジネスへの展開の方針を転換し、モルガンスタンレー同様に資産運用業務を強化しつつあります。

・7-9月期は大幅な増収増益で、市場予想も大きく上回りました。債券トレーディング収入、金融アドバイザリー手数料、債券引受手数料などが市場予想を上回って好調です。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2026年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
20(月) ・米景気先行指数(9月)  
21(火)   コカ・コーラネットフリックス
GEエアロスペース、フィリップモリスインターナショナル
22(水) ・米20年国債入札 IBMAT&Tスリーエム、アンフェノール
ボストンサイエンティフィック
23(木) ・米シカゴ連銀全米活動指数(9月)
・米新規失業保険申請件数(10月18日に終わる週)
・米中古住宅販売件数(9月)
テスラ、ボーイング、GEベルノバ、サービスナウ
ラムリサーチ、ハネウェルインターナショナル
24(金) ・S&Pグローバル日本製造業PMI(10月)
・HCOBユーロ圏製造業PMI(10月)
・S&Pグローバル米国製造業PMI(10月)
・米消費者物価指数(9月)
・米新築住宅販売件数(9月)
・米ミシガン大学消費者信頼感指数(10月、確報値)
P&G、S&Pグローバル
26(日) ・APEC閣僚会議、首脳会議(韓国、11月1日まで)  
27(月) ・米耐久財受注(9月)
・米2年債・5年債入札
ソーファイ・テクノロジーズ
28(火) ・S&PコタリティCS住宅価格指数(8月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感指数(10月)
・米7年債入札
ビザペイパルホールディングス
ユナイテッドヘルスグループ、ブッキングホールディングス
29(水) ・中国製造業・非製造業PMI(10月)
・米中古住宅販売成約(9月)
・FOMC政策金利
アルファベットメタプラットフォームズマイクロソフト
ベライゾンコミュニケーションズクラフトハインツ
ボーイング、キャタピラー、サービスナウ
TEコネクティビティ
30(木) ・日本鉱工業生産(9月)
・日銀政策金利
・ECB政策金利
・ユーロ圏実質GDP(7-9月期、速報値)
・米実質GDP(7-9月期、速報値)
・米新規失業保険申請件数(10月25日に終わる週)
・ダラス連銀ローガン総裁の講演
アップル、コインベースグローバル、イーライリリィ
ストラテジー、マスターカード、メルク
31(金) ・米個人消費支出物価指数(9月)
・米個人所得・個人支出(9月)
・クリーブランド連銀ハマック総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁が会合に出席
アッヴィエクソンモービルシェブロン

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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