株価下落局面は継続?どう考える、どう対応する?

投資情報部 鈴木 英之

2024/05/02

■なぜ、株価は下げたのか?

4月相場が終わりました。日経平均株価は3月22日に史上最高値41,087円を付けた後は下落に転じ、4月19日には36,733円の安値を付けました。1ヵ月弱で10%を超える下落率を記録したことになります。その後は少し落ち着きを取り戻しましたが、一時に比べ、株価上昇の勢いは弱まったようにみられます。

株価が下落した理由はいくつかあげられます。ひとつは、米国経済が強さを維持し、インフレ懸念が再燃したことから、同国で長期金利が上昇したことが要因です。金利の上昇は成長株にとってはマイナス要因と考えられ、米国株も3月下旬以降、下落傾向となりました。

もうひとつは、中東情勢が混迷の度を深めたことです。イスラエルとハマスの対立が、イスラエルとイランの対立へと拡大する兆しをみせました。中東情勢の悪化は、世界的に投資家のリスク許容度を低下させ、原油価格上昇やインフレ上昇をも懸念させる要因になります。

さらに、グローバルな半導体関連企業の業績に不透明感が強まったことが響きました。独占的な半導体露光装置メーカーである蘭ASML社の受注が急減し、投資家に驚きを与えました。世界最大手の半導体製造企業である台湾TSMC社が、半導体市場の見通しを引き下げたことも効きました。東京市場全般に強い影響力のある半導体関連株が東京市場でも下げ、日経平均株価の下落を加速させました。

半導体関連企業も含みますが、4月下旬以降に本格化し始めた上場企業の決算発表で、次期の業績予想を厳しくみる所が増えたことも、投資家心理に影を落としたものとみられます。

ただ、過度の懸念は不要であると考えます。これらの下落要因が市場に次第に織り込まれることにより、株価は次の上昇トレンドを描くと期待されます。

■マイナス要因は次第に消化される?

そもそも、米国経済が強く、同国の金利が上昇する局面は、日本経済にとって悪いわけではないと思います。米国金利が上昇すると円安・ドル高が進みやすくなるため、輸出企業の多くが輸出を拡大させやすくなるというメリットを受けます。また、インフレ自体は株価に悪い所ばかりではありません。インフレは企業の資産を膨らませる効果があり、負債金利が変わらなければ純資産の増加が期待されるためです。

中東情勢については、いまだ解決した訳ではありませんが、イスラエルとイランの対立については、落としどころを探る状態が続いているようです。

半導体市場についても、その成長について、過度に悲観するべきではないようです。5月1日の東京市場では、半導体フォトマスク欠陥検査装置のレーザーテック(6920)が受注の回復を伴う好決算を発表し、15%近い上昇を記録しました。半導体関連銘柄全般に弱気となっていた投資家によっては、逆の意味でショックになった可能性がありそうです。回復が遅れている半導体の搭載先市場はあるものの、半導体市場全般の成長トレンドは続いているとみられます。

これら、マイナス要因は数多かったものの、それがいったんは市場に消化され、株価は上昇に転じる可能性も大きそうです。

■1年に1~2回はある下落局面

冒頭でもご説明したように、日経平均株価は3月22日に史上最高値41,087円を付けた後は下落に転じ、4月19日には36,733円の安値を付けました。下落率は10.6%です。

残念ながら株式市場は、つねに上昇している訳ではないのです。過去5年を振り返ると、10%前後、あるいはそれを上回る下げは、年に1~2回あるものなのです。以下、取引時間中ベースで、2019年~2023年の主要な株価下落(高値→安値)をチェックしておきます。

2023年・・・33,634円(9/15)→30,487円(10/4) 下落率9.4%
2022年・・・29,323円(1/4)→24,681円(3/9) 下落率15.8%
2021年・・・30,714円(2/16)→27,385円(5/13) 下落率10.8%
  30,795円(9/14)→27,293円(10/6) 下落率11.4%
2020年・・・23,995円(2/6)→16,358円(3/19) 下落率31.8%
2019年・・・22,362円(4/24)→20,289円(6/4) 下落率9.3%

2020年は、新型コロナの感染が拡大し、WHO(世界保健機構)からパンデミックを宣言され、市場の警戒感が急速に高まり、株の下落率が大きくなったものです。

株式市場は、毎年のように、ある程度の規模の株価下落を経験し、それを乗り越えることによって、史上最高値を実現したことになります。

■長期投資においては「時間分散」の有効性を再確認

長期投資においては「時間分散投資」が有効であると考えられます。

下の図表は、日経平均株価に投資ができたと仮定した場合
(1)1989年末、日経平均株価に3,500万円一括で投資し、現在まで保有した場合の資産額
(2)1989年末以降、毎年末に100万円ずつ現金で積み立て(最後の積み立ては2023年末)した場合の現在の保有額
(3)1989年末以降、毎年末に100万円ずつ日経平均株価に投資(同上)した場合の現在の保有額

という3つのケースにおいて、途中および最終的な投資成績をみたものです。「現在」は2024年4月末で統一します。

(1)のケースは、折々の資産評価額は日経平均と同じになります。1989年末38,915円からスタートし、途中元金が4分の1以下になる場面もありましたが、2024年4月末の日経平均はほぼ、1989年末の水準を回復しました。最初投資した3,500万円は現在、約3,445万円となっています。

(2)は1989年以降2023年末までの35年間、毎年100万円ずつ積み立てるので、現在の資産額は3,500万円です。

(3)は、株価が安い局面では多くの数量を買えるのが特徴です。たとえば、2011年は年末の日経平均株価が8,455円とバブル期以降で最低で、1989年の約4.6分の1でしたので、逆に89年の4.6倍の数量を買えることになります。
例えば「等株数投資」では35年間毎年1単位ずつ買うと35年間で35単位投資することになりますが、「等金額投資」では、初年度購入数量を1単位とすると35年間で約87単位も投資できることになります。この効果が大きく、資産額は最終的に約8,582万円となっています。」

長期投資で有効な時間分散投資の手法を確認し、日々値動きが繰り返される株式投資で活用していただければ幸です。

図表 長期投資で確認したい時間分散の有効性(日経平均株価に投資ができたと仮定した場合)

  • ※QuickデータをもとにSBI証券が作成。各投資手法における各年末の資産金額を示しています。最新データは2024年4月末の株価を基準とした資産額になります。
  • ※上記は過去の株価等に基づいたシミュレーションであり、将来の株価および動向等を示唆・保証するものではありません。
  • ※上記は税金、諸費用等は考慮しておりません。
  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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