米国が関税(強化)を決定!今後は?
投資情報部 鈴木 英之
2025/02/04
2月相場は波乱のスタートとなっています。2/3(月)の東京株式市場では、日経平均株価が1,052円下げる急落となりました。トランプ大統領が、メキシコ・カナダからの輸入に対し25%の関税を、中国からの輸入に対し10%の追加関税を課すとし、2/1(土)に大統領令に署名し、2/4(火)から発効すると伝えられたことが要因です。
市場では、トランプ大統領の関税政策は「トレード」、すなわち駆け引きの一貫であり、実際の発動までは時間を要すとの見方が有力でした。しかし、同大統領の唐突な決定により、カナダ、メキシコ、中国のみならず、米国、世界経済に大きな悪影響を与えることが懸念され、株価の急落につながりました。
米国へのメキシコ、カナダ、中国からの輸入関税(強化)により、特に自動車業界への悪影響が懸念されています。米国の自動車輸入(2023年・完成車)のうち、メキシコが33%、カナダが17%を占めており、両国に生産拠点を有する、日本企業を含む自動車メーカーの競争力後退や業績悪化が懸念されます。さらに、輸入関税強化により、米国の物価上昇圧力を招き、米個人消費への悪影響も懸念されます。
2/3(月)の東京市場では、トヨタ自動車(7203)、ホンダ(7267)などの自動車株が軒並み安となった他、日経平均株価への寄与度が大きい半導体関連株など、売りは広範囲に広がりました。
ただ、東京市場の株価下落は過剰反応になっている可能性もありそうです。世界最大の自動車メーカーであり、東京株式市場の時価総額トップであるトヨタ自動車(7203)を例として、関税問題を考えてみました。
1/30(木)に発表された同社の「2024年 年間(1月-12月)販売・生産・輸出実績」をみると、同社の北米(米国、カナダ、メキシコの合計)販売台数は273万台(世界販売台数の22%)で、北米生産台数は205万台です。後者を全社で割った北米におけるトヨタの現地生産比率は75%と計算されます。ただ、米国販売台数233万台に対し、米国生産台数127万台(米国販売台数に対し54%)、米国の日本からの輸入54万台(同23%)、米国のメキシコ・カナダからの輸入(両国生産台数から両国での販売台数を引いた台数として計算)は41万台(同18%)と計算されます。
すなわちトヨタ自動車の米国自動車販売については、関税強化の悪影響が相対的に小さい、米国現地生産と日本からの輸入合計で77%あり、メキシコ・カナダからの輸入は、それらに比べると相対的に少ないと考えられます。同様にホンダ(7267)やSUBARU(7270)などは、メキシコ生産に比べ米国現地生産が多く、三菱自動車(7211)は日本からの輸入が多いと考えられます。2/3(月)の東京株式市場の急落は、やや過剰反応かもしれません。
ただ、米国の関税強化が具体化してきたことで、自動車を含む輸出関連企業が株式相場の主役になりにくい投資環境は続くかもしれません。2/3(月)の東京株式市場では、ソフトバンクグループ(9984)と米オープンAIによる日本での合弁設立が設立すると伝えられており、生成AIを使ったサービスを展開できる銘柄等が主役に躍り出る可能性もありそうです。
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