アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~IBM、メタ、コーニング、F5、マスターカード~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~IBM、メタ、コーニング、F5、マスターカード~

投資情報部 榮 聡

2025/02/03

先週は中国のAIスタートアップ「DeepSeek」ショックで半導体株を中心にテクノロジー株が急落、その後戻りつつあったものの、トランプ政権の関税引き上げ再表明を受けて週末に下落に転じました。今週の株価材料として、トランプ大統領の関税政策への反応、10-12月期決算発表、雇用統計、などが注目されます。

今回は先週の好決算銘柄から、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)メタ プラットフォームズ A(META)コーニング(GLW)F5 インク(FFIV)マスターカード A(MA)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

「DeepSeek」ショックによる急落に対して、「雲」が下値支持帯となっていることが確認できます。関税引き上げによる市場の懸念に対しても下値支持帯として機能するか注目です。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
コミュニケーションサービス 2.7% 7.4% 16.3%
生活必需品 1.9% 2.2% 1.0%
ヘルスケア 1.7% 5.5% -0.6%
金融 1.2% 5.8% 10.5%
一般消費財・サービス 0.8% 3.2% 18.1%
素材 -0.2% 6.7% -4.4%
不動産 -0.3% 1.4% -2.8%
S&P500 -1.0% 1.7% 5.4%
資本財・サービス -1.9% 4.2% 3.4%
公益事業 -2.1% 1.0% -0.2%
エネルギー -3.8% 0.1% -1.2%
情報技術 -4.6% -4.3% 2.0%
騰落率上位(5日) 騰落率
IBM 13.7%
スターバックス 9.0%
アッヴィ 8.0%
TモバイルUS 6.6%
メタ・プラットフォームズ 6.4%
騰落率下位(5日) 騰落率
エヌビディア -15.8%
ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS) -14.1%
コムキャスト -10.5%
ブロードコム -9.6%
ダナハー -9.4%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で1.0%、ナスダック指数は1.6%下落した一方、ダウ平均は0.3%の上昇でした。

1/27(月)に「DeepSeek」ショックで急落、その後大手テクノロジーの決算発表を受けて戻りつつありましたが、1/31(金)にはトランプ政権が、メキシコ・カナダに25%の関税、中国に10%の追加関税をかけることを確認して相場は下落に転じました。

「DeepSeek」ショックは、中国のスタートアップ企業が低コストで開発したとされる対話型AIが「ChatGPT」並みの性能を出していることから、米国AIの競争力、リーダーシップに疑問が生じたものです。開発費用は6百万ドル以下としたことから、エヌビディアをはじめとする半導体株が大幅に下落、フィラデルフィア半導体株指数は週間で5.7%下落しました。

FOMCでは政策金利は予想通り据え置きとなり、今後についてパウエルFRB議長は、「金利引き下げを急ぐ必要はない」「トランプ大統領の政策(関税、移民、財政)を注視する」とコメントして、相場へのインパクトは限られました。

大手テクノロジーの決算は、マイクロソフトがクラウドサービスの伸びが市場予想を下回って株価は下落しましたが、メタ、テスラ、アップルについては、ポジティブな反応となりました。

業種指数では、ディフェンシブの生活必需品、ヘルスケアのほか、決算の好調が目立ったコミュニケーションサービス、金融が上昇しました。半導体株の下落を受けて情報技術が大きく下落、AIデータセンターによる電力需要拡大が注目されている公益事業が下落しています。

個別株で下落率トップのエヌビディア(NVDA)は、「DeepSeek」の開発コストが6百万ドル以下とされたことで、エヌビディアの最新型AIコンピュータに対する需要が後退するのではとの懸念が生じたことによるとみられます。ただ、「DeepSeek」の開発にはエヌビディアが中国向けに開発した「H800」が使われており、また、開発費は市場投入前の最後の「トレーニング」に使ったAIコンピュータのレンタル料のことを指しているとみられます。AIコンピュータの市場に画期的な変化をもたらす可能性は小さいとみられ、徐々に戻っていくと想定できるでしょう。

今週の米国株式市場

トランプ大統領によるメキシコ、カナダ、中国に対する関税引き上げは米国の物価を上昇させるとの懸念から、株式市場は下落となる見込みです。一目均衡表の「雲」の上限は5,960ポイント辺りにありますが、一旦この辺りで下値が支えられるか注目です。

今週の株価材料として、トランプ大統領の関税政策への反応、10-12月期決算発表、雇用統計、などが注目されます。

トランプ大統領は、メキシコ・カナダに対して25%の関税、中国に対して10%の追加関税をかける大統領令に2/1(土)に署名しました。2/4(火)から実施される見込みで、カナダは25%の報復関税をかけるとし、メキシコ、中国も相応の対応をとる構えです。

米国の2023年輸入額に対してメキシコは16%、中国は15%、カナダは14%を占めるため(図表3)、米国の物価上昇につながるとして株式市場は嫌気すると考えられます。なお、1/31(金)の再表明を受けてS&P500指数は同日高値近辺から引けにかけて約1.1%下落しています。

10-12月期決算発表は、今週中にS&P500指数採用銘柄の6割まで進捗予定で、大勢が判明する見込みです。今週の発表予定企業には、アルファベット、アマゾン、イーライリリィ、ウォルトディズニーなどが含まれます。S&P500指数採用銘柄のEPSは、発表済企業の実績と未発表企業の予想の混合で前年同期比13.2%増見込みと好調です。

1月雇用統計の非農業部門雇用者数は、17万人増の予想です。11月は21.2万人増、12月は25.6万人増と強い数字が出て金利上昇の要因となりましたが、1月の数字が市場予想通りなら金利低下の要因になり得るでしょう。

経済指標では上記のほか、2/3(月)に米国の1月ISM製造業景気指数(前月の49.3から49.9に改善の予想)、2/4(火)に米国の12月製造業受注(前月比-0.7%の予想)、2/5(水)に米国の1月ADP雇用統計(前月比15.0万人増の予想)、米国の1月ISM非製造業景気指数(前月の54.1から横ばいの予想)、2/7(金)に米国の2月ミシガン大学消費者信頼感(前月の71.1から72.0に改善の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は先週の好決算銘柄から、インターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)メタ プラットフォームズ A(META)コーニング(GLW)F5 インク(FFIV)マスターカード A(MA)を選んでご紹介いたします。

図表3 米国の輸入額に占める国別割合(2023年)

※国連貿易データベースをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(1/31)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートインターナショナル ビジネス マシーンズ(IBM)255.70ドル23.8

【AI関連ビジネスが順調】

・10-12月期の売上・EPSとも市場予想を上回り、2025年12月期の売上は前年比5%増以上と、2024年12月期の同3%増から加速となるガイダンスを出しました。「生成AI関連ビジネスは、開始以来の累計で50億ドルを超え、10-12月期には20億ドル近く増えた」とし、受注が加速していることが示されました。

・10-12月期の売上は、インフラストラクチャが前年同期比8%減、コンサルティングが同2%減となりましたが、ソフトウェアが同10%増となって相殺、全体では同1%増(為替の影響を除くベースでは同2%増)でした。

買付チャートメタ プラットフォームズ A(META)689.18ドル26.4

【AIへの期待が持続】

・10-12月期は市場予想を上回りましたが、1-3月期の売上ガイダンスは市場予想を下回りました。しかし、ザッカーバーグCEOが「今年はわれわれにとって本当に大きな年になる。当社のAIモデルは多くの進歩を遂げるだろう。長期構想の大半が今年末までにかなり明確になる」と述べたことが好感されたとみられ、決算を受けて株価は上昇しました。

・2025年12月期の営業費用は1,140~1,190億ドル、設備投資は600~650億ドルに増えるとのガイダンスです。

買付チャートコーニング(GLW)52.08ドル52.08ドル

【生成AI向けオプティカル製品がけん引】

・生成AI向け新製品の好調でオプティカル・コミュニケーション部門(売上構成比は10-12月期に28%)の売上が前年同期比51%増とけん引しています。1-3月期の売上は前年同期比10%増、コアEPSは同約30%増になる見通しを発表しています。

・10-12月期のその他部門の売上は、ディスプレイテクノロジーが同12%増、スペシャルティマテリアルズが同9%増、環境技術が同7%減、ライフサイエンスが同3%増、ヘムロックおよび新興ビジネスが同5%増でした。

買付チャートF5 インク(FFIV)297.26ドル20.7

【企業のIT投資回復から恩恵】

・インターネットトラフィック管理会社。インターネットトラフィックおよびコンテンツを管理、制御、最適化するためのハードウェア、ソフトウェアを提供します。サービスプロバイダーおよびEビジネス企業に、インターネットコンテンツを自動配信するソリューションも提供します。

・10-12月期の売上は前年同期比11%増、EPSは同12%増で、市場予想をそれぞれ7%、14%上回りました。企業のIT支出回復から恩恵を受けているとみられます。

買付チャートマスターカード A(MA)555.43ドル34.7

【消費好調の恩恵を受ける】

・ホリデーシーズンの消費好調を受けて10-12月期決算が市場予想を上回りました。決算と同じ日に発表されたGDP統計で、全体は予想を下ぶれたものの個人消費の好調が際立ち、今後も好調が継続するとの期待が高まっているとみられます。同業のビザの決算も好調でした。

・10-12月期の業績は、売上が前年同期比14%増、調整後EPSが同20%増、市場予想に対してそれぞれ1%、4%上回りました。決済ネットワーク収入がクロスボーダー取引の好調を受けて前年同期比13%増、付加価値サービス収入が同16%増でした。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、F5インクが2025年9月期、その他は2025年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
2月
3(月)
・米建設支出(12月)
・米ISM製造業景気指数(1月)
・トランタ連銀ボスティック総裁の講演
・セントルイス連銀ムサレム総裁があいさつ
パランティアテクノロジーズ
4(火) ・米求人労働異動調査(12月)
・米製造業受注(12月)
・トランタ連銀ボスティック総裁の講演
・サンフランシスコ連銀デイリー総裁が討論に参加
アルファベットアドバンストマイクロデバイセズ
ファイザーペイパルホールディングス、アムジェン
メルク、ペプシコ
5(水) ・米ADP雇用統計(1月)
・米貿易統計(12月)
・米ISM非製造業景気指数(1月)
・リッチモンド連銀バーキン総裁が炉辺談話
・シカゴ連銀グールズビー総裁が講演
アームホールディングスウォルトディズニー
マイクロストラテジー、ウーバーテクノロジーズ
ボストンサイエンティフィック
6(木) ・米チャレンジャー人員削減数(1月)
・米新規失業保険申請件数(2月1日に終わる週)
・FRBのウォラー理事が講演
アマゾンドットコムイーライリリィ
フィリップモリスインターナショナル
エアープロダクツアンドケミカルズ
7(金) ・米雇用統計(1月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(2月、速報値)
 
10(月) ・米NY連銀1年インフレ期待(1月) マクドナルド
11(火) ・米NFIB中小企業楽観指数(1月)
・3年国債入札
コカコーラ、S&Pグローバル
12(水) ・日本工作機械受注(1月)
・米消費者物価指数(1月)
・10年国債入札
クラフトハインツ、アルベマール
13(木) ・米生産者物価指数(1月)
・米新規失業保険申請件数(2月8日に終わる週)
・30年国債入札
ブリティッシュアメリカンタバコ、コインベースグローバル
アプライドマテリアルズ、エアビーアンドビー
14(金) ・ユーロ圏実質GDP(10-12月期、速報値)
・米小売売上高(1月)
・米輸入物価指数(1月)
・米鉱工業生産(1月)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

新着記事(2025/02/03)

免責事項・注意事項

・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社及び情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製又は販売等を行うことは固く禁じます。

【手数料及びリスク情報等】

SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。