米国株急落・日経平均急落でスタート、今後は?
投資情報部 鈴木 英之
2026/06/08
米国株急落・日経平均急落でスタート、今後は?
6/8(月)の東京株式市場では、売りが大きく先行しています。6/5(金)に発表された2026年5月の米雇用統計で強い数字が示され、金利上昇観測が強まったことが主因です。
6/5(金)に発表された2026年5月の米雇用統計は、市場予想を大きく上回る内容となりました。非農業部門雇用者数は前月比17.2万人増となり、市場予想の8万~10万人程度を大幅に上回りました。失業率は4.3%で横ばい、平均時給も前年比3.4%増と底堅さを維持しました。さらに、3月・4月の雇用者数も合計9.3万人上方修正されており、米労働市場が想定以上に堅調であることが改めて確認される結果となりました。
米国での報道をみると、今回の雇用統計に対する評価は総じてポジティブです。特に注目されたのは、これまで一部で懸念されていた景気減速シナリオが後退したことです。レジャー・接客業や医療、地方政府部門を中心に雇用増加が続いており、米国経済は依然として高い雇用創出力を維持しているとの見方が広がっています。
一方で、金融市場の反応は必ずしも好意的ではありませんでした。同日の米国株式市場では、ナスダック総合指数を中心に大幅な下落がみられました。背景にあるのは、「景気が悪いから株が下がった」のではなく、「景気が強すぎるために金融引き締め懸念が強まった」という構図です。雇用統計を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利下げへ転じるとの期待がさらに後退しました。むしろ市場では、年末に向けて利上げの可能性を織り込む動きが強まりました。
実際、FedWatchでは、本年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利上限が今より引き上げられるとの見方が72%(6/8時点)織り込まれた形です。11月の中間選挙後、12月FOMCでの利上げが有力な選択肢として意識され始めています。今回の株価急落は、「利下げ期待の後退」ではなく、「次の政策変更が利上げになるかもしれない」という市場の再評価が引き起こしたものといえます。
この影響を最も強く受けたのがAI・半導体関連株です。米長期金利の上昇は、将来利益への期待を織り込んで高いバリュエーションが許容されてきたこれらの銘柄にとって逆風となります。NVIDIAやAMD、BroadcomなどのAI・半導体関連株には利益確定売りが集中し、ナスダック総合指数の大幅安につながりました。また、市場ではAI・半導体分野等への投資について長期的な成長性そのものは肯定されているものの、「株価が期待を先取りしすぎているのではないか」との議論も強まっています。
なお、中東情勢については市場参加者も注視しているものの、今回の株価急落の主因とはみなされていません。仮にイランや中東湾岸諸国を含む地域情勢の悪化によって原油価格が大幅上昇すれば、インフレ圧力を通じて利上げ観測をさらに強める可能性はあります。しかし、6/5(金)の市場では地政学リスクよりも、雇用統計と金利上昇の影響が圧倒的に重視されました。
総じて米国市場のコンセンサスは、「景気後退は見込んでいないが、AI・半導体関連株の高い評価が金利上昇に耐えられるかを試す局面に入った」というものです。景気や企業業績に対する見方は依然として比較的強気ですが、今後の相場の焦点は、FRBが年末に向けてどのような政策スタンスを示すのか、そしてAI関連銘柄の成長期待が現在の株価水準を正当化できるのかに移りつつあります。
したがって、過度の懸念は不要とみられますが、物色動向が変化する可能性には注意したいところです。
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