<3月相場展望>日経平均の行方を占う意外な注目点は!?

<3月相場展望>日経平均の行方を占う意外な注目点は!?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/02/28

米金利上昇!だが、下値が堅い東京市場

2月第4週(2/20~24)の日経平均は、59円65銭安(▲0.2%)と小動きで、保ち合いの状態が継続しています。

同期間の米国市場は、東京市場より軟調な展開が続きました。NYダウは▲3.0%と週足ベースで4週続落、S&P500は▲2.7%で3週続落と下落基調です。

米国では、前週に続き堅調な経済指標が発表されました。2月総合購買担当者景気指数(PMI)・速報値は景気拡大の節目である50を8ヵ月ぶりに上回りました。さらに、週終盤には1月個人消費支出物価指数(PCE)が発表され、前月比・前年同月比いずれも市場予想を上振れた結果です。また価格変動の多いエネルギーを除したコア指数も同様に堅調な結果でした。同指標はFRB(米連邦準備制度)がインフレ進行度を測る際、重視される指標のひとつです。

足元で堅調な米経済指標が相次いだのを受け、市場ではFRB(米連邦準備制度理事会)による積極的金融引き締めの長期化懸念が強まっています。その影響で、金融政策の動向に敏感な米2年債利回りは2007年以来の高水準となり、株式市場への下落圧力となりました。

東京市場では、24日(金)に衆議院で日銀・新総裁に就任予定の植田氏による所信聴取が行われ、現行の金融緩和政策の継続を肯定する発言がありました。一部で懸念されていた金融政策の急な方向転換等は示唆されず、安心感から買いが広がった模様です。東京市場が米国市場に比べ、下値が堅かった要因と考えられます。

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(2/20~27)では、海運大手3社がランクインしました。バリュー株物色の流れが続いたことや、バルチック海運指数が上昇したことが好感された形です。他には、3月の期末が近づいているため配当取りという面があっとことも考えられます。

図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(2/20~27)では、保険大手T&Dホールディングス(8795)が首位です。自社株買いの可能性が低いことから国内証券会社が投資判断を引き下げたことが嫌気された模様です。

10-12月期の決算発表シーズンが終わったことで、同期間は上昇率・下落率の上位ともに、個別材料で動意する銘柄が多かったようです。東京市場全体で材料に乏しかったということもあるでしょう。米金融政策や米国市場の動向に左右されながらも、3月の東京市場では配当取り等が下支え材料として期待されます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(2/20~27)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(2/20~27)

<3月相場展望>日経平均の行方を占う意外な注目点は!?

今週から3月相場に入ります。米国では引き続き金融政策の行方が最大の注目点であり、3月21から22日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、市場は経済指標の動きやFOMCメンバーの発言などに一喜一憂することが予想されます。今回のFOMCでは、政策メンバーによるFFレート見通し(ドットチャート)が更新されます。市場参加者は、ドットチャートを通じてFFレート(政策金利)の最終的な到達点(ターミナルレート)や、利上げから利下げへ転じるタイミングなどについて、メンバーがどのように考えているかを知ることになるため、通常のFOMCよりも注目度の高い会合となります。

今年1月の米国株式市場は堅調に推移しました。1月31日の225の『ここがPOINT!』<飲み頃のスープはまだ続く?米金融政策の注目点は?>で指摘しましたが、米国市場がゴルディロックス相場(適温相場)となるなか、主にグロース株(成長株)への物色が強まりました。しかし、2月に入ると米国株式市場は長期金利の上昇を伴い、一転して重い値動きとなりました。きっかけは、2月3日に発表された1月雇用統計が雇用者の伸びが市場予想を大幅に上回るなど強い結果となったことでした。米国の経済が市場の想定よりも堅調との認識が広がり、米国の金融引き締め局面が長期化するとの観測が米国株の重石となりました。

図表9は米国のエコノミック・サプライズ・インデックス(ESI)と10年国債利回りの推移です。米国では、1月雇用統計の発表以降も、市場予想に対して強い経済指標の発表が相次いだことでESIが上昇し、それに伴って10年国債利回りも上昇傾向にあります。年明け以降の米国経済は、暖冬により活動が活発化しているとの指摘があり、当面は強い経済指標が続く可能性があります。強い経済はESIとともに10年国債利回りの上昇を促すことで、米国株式市場の逆風になる可能性があるため注意が必要となります。

図表9 米国エコノミック・サプライズ・インデックス(ESI)と10年国債利回り

  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成


一方、国内株式市場は、円相場の動きをどうとらえるかがポイントになりそうです。米国金利の上昇は、日米金利差拡大を通じて、円相場において円安・ドル高要因となります。この場合、円安、米金利上昇を手掛かりとする輸出株や金融株などを物色する動きが期待される一方、米国金利上昇でリスクオフの米国株安の動きが想定されます。

図表10は、円相場と、代表的な輸出株であるTOPIX-17自動車・輸送機指数の値動きおよび、相関係数を見たグラフとなります。両者の相関係数は昨年の円安局面において大きく低下し、一時は逆相関へ転じました。これは、米国金利上昇によるリスクオフの影響が、円安効果よりも相場に与える影響が大きかったことなどが要因だったと考えられます。しかし、今年に入ると相関係数は徐々に上昇し、順相関が強まっています。多くの3月期決算企業にとって足元の円安が今期(23年3月期)業績におよぼす影響は軽微であり、来期(24年3月期)業績を左右することになります。3月に入り、市場の関心が来期の業績動向へと移り始める中、輸出株を中心に円安進展による業績拡大期待が高まる可能性が想定されるでしょう。

国内金融政策を巡っては、3月9日から10日かけて日銀金融政策決定会合が開催されます。今回は黒田体制で行われる最後の会合となりますが、市場では植田新体制への金融政策のつなぎとして、イールドカーブ・コントロール(YCC)政策を修正・撤廃するのでは?との憶測が絶えないようです。実際に同会合で日銀がYCCを見直す可能性は、現時点で微小と考えられます。しかし、同会合に向けて米国市場において長期金利が一段と上昇すれば、その影響が国内債券の売りに波及し、国内長期金利の上昇圧力が強まる可能性は否定できません。1月の日銀金融政策決定会合前にも金利上昇圧力が強まるとともに、株式市場はYCCの修正への警戒で重い値動きとなっており、今回の会合でも同様の動きに注意する必要がありそうです。

図表10 TOPIX-17自動車・輸送機指数と円相場の値動きと相関係数

  • ※TOPIX-17自動車・輸送機指数:東証33業種の輸送用機器とゴム製品を合わせた指数
  • ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成


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