いよいよ新年度入り!短観から見た有望投資テーマは?

いよいよ新年度入り!短観から見た有望投資テーマは?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/04/04

金融不安は一服。しかし、予期せぬ新たなバッドニュースが⁉

3月第5週(3/27~31)の日経平均は、前週末比656円23銭高(+2.4%)と続伸しました。
同期間、株価は日米両市場で好調なパフォーマンスとなりました。3月初旬~半ばにかけて、米欧を中心に金融システムを巡る懸念から市場心理が急激に悪化。世界各国で銀行株を中心に大幅安となる日が続きました。最終週である同期間の株価回復を受け、結果的に両市場ともに月間ベースで上昇して終えた格好です。市場心理悪化の引き金となった銀行株の株価はまだまだ低迷中で、3月の株高は、グロース株が大きく寄与した形です。

米国市場では、相次ぐ銀行破綻などを受け、景気見通しが弱含み、債券利回りが急速に低下。将来の成長性から相対的に割安感が生じた一部のグロース株等に買いが入り、米株価指数の反発を主導しました。3月月間ベースで、構成銘柄のほとんどがグロース株であるナスダックの上昇率は、NYダウの3倍超でした。一方で、一部大型ハイテク株だけが相場全体の上昇をけん引している状況を「健全ではない」と指摘する声も、市場から少なからず聞こえました。

3月月間ベースでは日経平均の月間騰落率も+2.2%と堅調でした。米金利低下の影響もあり、3月はTOPIXグロース株指数が月間で+2.8%、TOPIXバリュー指数が▲1.7%とグロース株が優位でした。

また、日本企業は3月決算企業が多いため、権利付き最終日である29日(水)までは高配当株が選好される場面がありました。しかし、権利落ち後の反動売りも大きく、日経平均株価採用銘柄の下落率上位(3/27~4/3、図表8)のトップ3では、高配当株の筆頭格である海運大手3社が揃い踏みとなっています。


足元での市場の視点は、金融システムを巡る懸念から、再び高水準のインフレ率に戻った印象です。今週は米3月雇用統計等の重要イベントも発表予定のため、手控え気味な展開が続くと予想されます。

一方で、高インフレ懸念に関してのバッドニュースとして、予期せぬ原油の減産計画が発表されました。4/2(日)に石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国で構成されるOPECプラスは、5月から日量約115万バレルの減産を発表。この量は1日の原油生産量の1%程(原油生産量は約1日1億バレル)にあたり、インフレ圧力の高まりが懸念されます。金利先物市場では同発表を受け、5月FOMC(連邦公開市場委員会)で利上げ停止予想が優勢であったのが、0.25%利上げ予想が過半数に転じています(日本時間4/4時点)。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(3/27~4/3)

図表8  日経平均株価採用銘柄の下落率上位(3/27~4/3)

いよいよ新年度入り!短観から見た有望投資テーマは?

国内では今週から新年度(23年度)に入りました。その最初の営業日である4月3日に発表されたのが、3月調査の日銀短観(全国企業短期経済予測調査)です。同統計は、四半期毎に全国約9,200社の企業を対象として、自社の業況や経済環境の現状、先行きについてどう見ているのか、あるいは売上や収益、設備投資額といった事業計画の実績や予測など、企業活動全般にわたる項目が調査されており、市場の注目度が極めて高い経済指標の1つとなります。

日銀短観の中で最も注目される業況判断DI(景気が「良い」と答えた企業の割合-「悪い」と答えた企業の割合)は、大企業・製造業で+1となり、仕入れコストの上昇や海外経済の減速、半導体需要の落ち込みなどを背景に22年3月調査以降、5期連続で悪化しました。一方、大企業・非製造業は+20と、コロナ禍から経済が徐々に立ち直る中で21年3月以降、改善傾向が続いています。先行きの業況判断については、大企業・製造業が+3と改善の一方で、大企業・非製造業は+15と悪化が見込まれています。ただし、大企業・非製造業は、先行きDIに対して次期調査における業況判断DIが上振れする傾向が続いているため、6月調査の業況判断DIについても、3月調査に続き高い水準を維持することが期待されます。

図表9 業況判断DI

  • ※日銀資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

続いて、企業の収益計画を見ていきましょう。大企業の23年度経常利益予想は、製造業が前期比▲2.7%、非製造業が同▲3.5%と減益が予想されています(図表10)。もっとも、21年度や22年度を振り返ると、経常利益予想は、期初予想(3月調査時)に比べ、期が進むにつれて上方修正される傾向があります。元々、企業の収益計画は期初時点で保守的になる傾向があり、23年度についても同様に、製造業、非製造業ともに増益予想への転換は十分に期待できるでしょう。

図表10 大企業の経常利益予想の変遷

  • ※日銀資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成


最後に日銀短観を通じて株式市場動向を占う上で、業況の改善が示唆される業種について見てみます。

図表11は各業種のDIの変化を見た分布図です。縦軸は前回(12月調査)の先行きに対して今回(3月調査)の現況がどう変化したか(=足元の景況感)、横軸は今回の現況に対する先行きの変化(=先行きの景況感)を見ています。同分布図の第1象限は、足元の景況感および先行きの景況感がいずれも改善を示す“有望業種”となります。宿泊・飲食サービスや個人向けサービスや、第2象限(足元の景況感が改善、先行きの景況感が悪化)にある小売などは、いわゆるインバウンド関連と見ることが出来ます。政府の新型コロナの水際対策が緩和され、外国人旅行者が急ピッチに回復していることに対する期待が依然として高く、株式市場においても当面の物色テーマになりつづけることが想定されます。

一方、第4象限(足元の景況感は悪化、先行きの景況感が改善)には、製造業の業種が目立ちます。足元の景況感が悪化しているため、先行きの景況感が楽観的になっている可能性があるものの、第1象限にある自動車とともに業況の悪化が底打ちした可能性があります。こうした製造業が業況改善に向けた手掛かりの1つとなるのが為替(円相場)でしょう。企業の事業の前提となる想定為替レートは1ドル=131.72円とされており、これを上回る円安水準での推移が続くようであれば、製造業(特に輸出産業)の業況改善につながることが期待されます。


図表11 業種別業況判断DI変化の分布図

  • ※日銀資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

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