【 11月相場展望 】年初来高値が視野に入る日経平均。今後の注目点は?

【 11月相場展望 】年初来高値が視野に入る日経平均。今後の注目点は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2023/11/07

調整局面から回復!節目の32,000円を再突破

11月第1週(10/30-11/2)末の日経平均は、前週末比958円20銭高(3.09%)高と週足ベースで3週ぶりに反発。日米両市場ともに、10月までの調整局面からようやく回復に転じました。

株価下落の大きな圧力であった米長期金利(10年債利回り)の上昇は、10/23(月)に07年以来となる5%を一時突破。しかしその後、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見からハト派寄りとみられる発言があったことや、10月雇用統計で労働市場の鈍化が示唆されたこと等で、市場ではFRBが利上げを終了するとの観測が広がりました。結果として11/6(月)時点の米長期金利は、4.5%台と一服した水準で落ち着いています。

期中は、日銀の金融政策決定会合でYCC(イールドカーブ・コントロール)の再修正もありました。しかし、YCCの上限1%超えを容認するという内容で、市場に与えたインパクトは少なかったようです。ドル円相場は米長期金利の低下で、多少円高に振れたものの、依然として歴史的円安水準であることには変わりありません。

一方、海外売上高比率が高い企業にとって円安は追い風になる面があります。11/1(水)に7‐9月期決算を発表したトヨタ(7203)は、円安を背景に通期計画の大幅な上方修正を行っています。決算発表シーズンが佳境を迎える中、同社のような好決算銘柄が相場を押し上げました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(10/27~11/2・図表7)でも、首位の日清粉G(2002)は10/27(金)の大引け後、7-9月期決算を発表。海外製粉事業などが好調で通期計画の上方修正を実施しました。2位の大阪ガス(9532)も米LNGプラントの稼働再開により、4-9月期の営業損益が黒字転換したことや自社株買いの実施を発表したことが好感されたもようです。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(10/27~11/2・図表8)では決算内容が振るわなかった銘柄が複数ランクインしています。首位の日野自動車(7205)は、エンジン不正問題での和解金による特損の発生で、今期(24.3期)220億円の最終赤字に転落する(従来予想100億円の黒字)見通しを示しました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(10/27~11/2)

図表8  日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(10/27~11/2)

【 11月相場展望 】年初来高値が視野に入る日経平均。今後の注目点は?

11/6(月)の日経平均は前週末比758円高の32,708円。先週の月曜日(10/30)の終値(30,696円)から、1週間で2,000円強の大幅上昇となりました。日経平均は最近の上値抵抗ラインだった13週移動平均を大きく上回っており、9/20以来の32,000円台を回復し、年初来高値水準である33,753円を射程に捉え始めたように見えます。

日経平均が大幅に上昇した背景には、米国の金利が低下し、世界的にリスク選好の動きが強まったことが挙げられます。先週の米国では、10月非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を下回るなど、重要経済指標の一部において景気減速を示す指標が相次いだことや、米連邦公開市場委員会(FOMC)において、ややハト派的な見方が示されたことで、FRBによる一連の利上げがようやく打ち止めになるとの期待が高まりました。また、11月初旬に米財務省が発表した米国債の四半期定例入札の規模が市場予想を下回ったことで、米国債増発への懸念が後退しました。これらを手掛かりに、10/23(月)に一時5%台に乗せていた米10年国債利回りは、11/3(金)には一時4.5%割れへ急低下することになりました。米国金利の上昇に歯止めがかかったことで、テクノロジー株などのグロース株(成長株)を物色する動きが広がったのです。

そして、市場では早くも米長期金利がピークアウトし、今後は低下へ転じるとの見方が広がっているようです。確かに、その可能性は否定できないものの、これまでの長期金利上昇の過程を振り返ると、金利がピークアウトしたと判断するにはまだまだ時期尚早と考えた方がよいと思われます。

図表9 日経平均の日足チャート

図表10は米10年国債利回りの推移を示したグラフです。コロナショックから経済が立ち直る過程において、米10年国債利回りは大きく上昇してきました。2022年以降、米10年国債利回りは2%、3%、4%の節目到達時に一旦、利回りの上昇に歯止めがかかり、その後、しばらくボックス圏で推移しました。これらの節目到達時においても、市場では長期金利の上昇はピークに達したとの見方がありましたが、結局のところ、長期金利が明確に低下へ転じることはなく、逆に節目を突破して上昇していったのです。こうした経緯を踏まえると、当面、米長期金利については上昇、低下の両睨みの展開になると想定されます。

また、市場では金利上昇=株価下落、金利低下=株価上昇、と捉えられがちですが、この金利低下シナリオについても、一考の余地がありそうです。

長期金利は一般的に景気見通しを反映すると言われています。したがって、長期金利が大きく低下するということは、景気が後退局面にあることを示唆することになります。その場合、長期金利は低下(債券高)となりますが、リスク回避的に株価は下落します。つまり、株から債券へ投資マネーがシフトする“逆業績相場”となる可能性があります。

前述のとおり、今月初旬に発表された経済指標の多くは、米経済の悪化を示唆する内容でした。しかし、市場では今のところ、経済指標の悪化を景気減速と捉えて、株式にとってポジティブな材料と捉えているようです。今後も景気減速を示唆する経済指標が相次ぐことも想定されますが、過度な指標の悪化は株式市場において悪材料視されかねません。これまで以上に経済指標の動きに注意を払う必要があると考えられます。米長期金利の動きとしては、上がりすぎず、下がりすぎず、ボックス圏での推移が、当面の株式市場にとってもっとも都合が良い展開といえるのかもしれません。

図表10 米10年国債利回りと米国株価指数

一方、日本株にフォーカスした際に注目したいのは、海外投資家による日本株買いの動きと考えられます。

日本取引所グループ(JPX)が発表している投資部門別売買動向によると、海外投資家による日本株売買は、10月第4週(10/23-27)までの6週間のうち、5週間で売り越しとなっています。今年春からの日本株上昇を支えてきた海外投資家の日本株買いの動きは、足元で一服しています。しかし米国金利の動きが落ち着きを取り戻してくれば、再び海外投資家の日本株買いの動きが戻ってくることが想定されます。

また、3月期決算企業の中間決算発表シーズンにあり、今週は決算発表企業数においてピークを迎えています。11月は本決算発表が集中する5月ほどではないものの、自社株買いなどの株主還元策の発表が多くなる月となります。自社株買いに関しては、今年は東証が低PBR企業に対して改善策を要請した影響もあってか、自社株買いの発表が、企業数、金額ともに過去の平均を上回るペースとなっています(図表11)。株主還元強化の動きに着目した海外投資家の買いが期待されるでしょう。

図表11 日本企業 自社株買いの季節性

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