日経平均は再び急変?そのシナリオをズバリ解説!

日経平均は再び急変?そのシナリオをズバリ解説!

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/09/17

日経平均は小幅高。円高が重しとなるが、半導体関連株の上昇が押し上げ材料に

9月第2週(9/9-13)の日経平均は、前週末比190円29銭高(+0.52%)と週足ベースで小幅反発。米大幅利下げ観測の拡大を背景とする円高進行が重しとなりました。また、米大統領選のTV討論会を経て、民主党候補で副大統領のハリス氏が、共和党候補で株式市場に好意的と目されるトランプ前大統領より優位であるとの見方が広がったことも売り材料となった格好です。

これらの要因によりリスクオフムードが漂う中、主力半導体関連株の上昇が寄与し、日経平均は小幅高を確保しました。同期間の米国市場では足元の株価推移が弱含んでいたエヌビディアなどの主力テック株に見直し買いが発生。米SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は同10%の大幅高となり、東京株式市場でも半導体関連株が連れ高した形です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/6~9/13・図表7)でも、首位の半導体製造装置を手掛ける荏原製作所(6361)をはじめ、傘下に英半導体設計会社アームを擁するソフトバンクグループ(9984)や東京エレクトロン(8035)など、半導体関連株が複数ランクイン。2位のIHI(7013)は国内証券会社が投資判断を「中立」から「買い」とし、目標株価を「4,400円→8,000円」に大幅引き上げを実施。民間航空機のエンジンのスペアパーツ事業の回復や、防衛向け売上の拡大により、営業利益も拡大するとの見方を示しています。同じく防衛関連で10位の川崎重工業(7012)は、外資証券会社が投資判断最上位の「買い」で新規調査を開始。同業のIHI(7013)や三菱重工業(7011)に比べ、株価評価が出遅れていると分析しているもようです。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/6~9/13・図表8)の首位は、米アップルに部材を提供している太陽誘電(6976)でした。現地時間9日(月)に米アップルが新型である「iPhone16」の発売を発表。事前に予想されていた以上の内容は発表されず、材料出尽くしとみられる売りが発生しました。他には、円高が懸念材料となり、輸送用機器メーカーが多数ランクインしました。

9月第3週(9/17-20)の株式市場は中銀ウィークが到来予定です。日米含めた主要国の政策金利や米8月小売売上高など、重要イベントが目白押しとなっています。さらに、20日(金)の米国は3つのデリバティブ取引の決済期日が重なるトリプルウィッチングであり動意材料の多い期間となるため、注意深く動向を見守る必要がありそうです。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/6~9/13)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/6~9/13)

日経平均は再び急変?そのシナリオをズバリ解説!

今週は、米国でFOMC(連邦公開市場委員会、9/17・18開催)、日本で金融政策決定会合(9/19・20開催)と、金融政策の方向性を決める重要な会議が相次ぎます。前回(7月末)も日米の会合が立て続けに行われましたが、この際は8月初旬に株式市場が急落するきっかけになりました。それだけに今回も市場参加者の関心は極めて高く、結果次第では株式市場の反応も大きくなることが予想されます。とは言え、FOMCや日銀金融政策決定会合の結果で、日本株がどう動くのか、については非常に難解に感じている方も多いのではないでしょうか。そこで本稿ではFOMCと日銀金融政策決定会合の注目ポイントと、主として日本株への影響を考えてみましょう。

まずは米FOMCです。今回の会合では政策金利ですFFレート誘導目標については引き下げられることが確実視されているようです。これは8/23にパウエルFRB議長が、インフレ率が2%の物価目標に持続的に向かっている、との認識を示した上で「金融政策については調整する時が来た」と発言したことが背景にあります。

そうした中、今回は利下げの大きさが注目されることになりそうです。上記パウエル議長の発言後、市場では0.25%の利下げが本命視されてきました。しかし、最近は0.50%かそれを上回る幅の利下げが有力視されてきているようです。市場ではFRBが大幅な利下げに踏み切ることによって、米国は景気後退(リセッション)を回避して、再び成長へ転じるとの期待を強めていると見られます。

大幅利下げが行われた場合、まず注意するべきは円相場への影響でしょう。現状、米国10年国債利回りは3.6%台前半で推移していますが、大幅利下げとなると一段と利回り低下が進みそう。そうなれば、円高・ドル安を後押しすることが予想されます。円相場は日本が祝日だった9/16に1ドル=140円を下回って円高・ドル安が進行する場面がありましたが、大幅利下げとなれば改めて円高・ドル安進行を試こととなり、日本株としては輸出株を中心に逆風になると考えられます。

また、大幅利下げによる米国株の動きにも要注目です。市場では米国経済に対して(大幅利下げシナリオの下で)比較的に楽観的な見方がされていますが、この辺りは、市場参加者はやや楽観的過ぎるとの見方があるようです。そもそも大幅な利下げが行われるとすれば、それは米国経済の先行きに不安があるということの裏返しでもあります。そのため今回のFOMCで示されるFOMCメンバーによる経済、政策金利見通し(図表9)や、FOMC後に行われるパウエル議長の記者会見の内容に注目する必要があります。この記者会見を経て、米国経済に対する市場の楽観的な見方が維持されれば、米国株の上昇が日本株を下支えする展開が想定されます。しかし、逆に米国経済に対する悲観的な見方が広がれば、米国株安と円高・ドル安の進行が、日本株の逆風になることが想定されます。

図表9 FOMCメンバーの経済、政策金利見通し(中央値)

一方、利下げ幅が0.25%に留まる可能性も十分に想定されます。足元の米国経済は減速感が強まっているとは言え、今のところリーマン・ショック時のような急激なリセッションに陥っている訳ではなく、利下げの局面の初動として、0.25%の利下げは無難と言えます。

前述したように、米国市場は大幅利下げシナリオに対し、やや前のめりになっているように見えるため、0.25%利下げに留まるのであれば、材料消化により米国金利の低下は一服(上昇)する可能性が高いと思われます。日米金利差の観点から見れば、円高・ドル安についても一服することが想定され、円の先高観が重石となっていた日本株にとってはポジティブに受け止められやすいでしょう。また、利下げ幅が0.25%に留まるようであれば、パウエル議長の記者会見などを通じて米国経済に悲観的な見方が広がることもなさそうであり、この点から見ても日本株にとっては追い風になることが期待されます。

図表10 米国市場と為替の動きで想定される日本株への影響

日本では9/19・20に日銀金融政策決定会合が行われます。日本では今年3月に実質マイナス金利政策が解除され、いわゆる金利のある世界を取り戻したのですが、その後、日銀の金融政策の方針は二転三転するところがあり、日銀と市場参加者との対話についても上手くいっていないように思えます。

前回7月末に行われた会合では、やや予想外のタイミングで利上げが行われたことに加え、会合後の記者会見で植田総裁が追加利上げの可能性を示唆し、タカ派的なスタンスが示されるなど、サプライズが伴った政策判断が示され、株式市場の混乱を招くことにもなりました。

その後、内田副総裁が「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と発言したこともあり、金融市場の混乱は終息へ向かいました。しかし、最近は植田日銀総裁が9/3の経済財政諮問会議で、物価の見通しが実現していくとすれば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整」する方針を示し、更に複数の審議委員からも追加利上げの可能性が示されるなど、タカ派的なメッセージが相次いでおり、市場でも日銀の金融引き締めに対する警戒が続いています。

今回の金融政策決定会合では、政策金利の変更(利上げ)が行われる可能性は低いと見られています。ここもと実質賃金のプラスが続くなど、景気回復の動きが確認される一方、インフレへの影響が懸念されていた円安・ドル高の動きが一服しているため、追加利上げを急ぐ状況ではないと考えられます。

もっとも、上述したように日銀と市場参加者の対話がうまくいっていないだけに、想定外のことで相場が大きく動く可能性があります。会合後の記者会見で植田総裁が従来からの主張である、金融引き締めを継続する姿勢を改めて示すようであれば、国内金利上昇による円高・ドル安が日本株を下押しする展開も想定されるでしょう。

図表11 金融政策を巡る最近の言動

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