米金融緩和後も円安と日本株上昇が続く理由は?

米金融緩和後も円安と日本株上昇が続く理由は?

投資情報部 淺井一郎 栗本奈緒実

2024/09/24

日経平均は大幅続伸。FOMC後、米経済への軟着陸期待広がる

9月第3週(9/17-20)の日経平均は、前週末比1,142円15銭高(+3.12%)と週足ベースで続伸。9/17-18に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)とFRB(米連邦準備制度理事会)議長会見通過後、日米株式市場は堅調に推移しました。

FOMCでは、通常の利下げ幅(0.25%)の2回分に当たる0.5%の利下げが決定されました。しかし、直後の会見でパウエルFRB議長は「米経済は良好」と言及。市場では米経済が軟着陸するとの期待が広がった格好です。9/23(月)時点において、NYダウとS&P500は最高値を更新しています。また、東京株式市場では、1ドル140円を心理的節目に円高が一服したことも押し上げ材料になりました。9/20(金)の日銀会合では追加利上げは行われず、当面は1ドル140円が支持ラインになると想定されます。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/13~9/20・図表7)の首位は、鉄をリサイクルするために使用される黒鉛電極メーカー、レゾナック・ホールディングス(4004)でした。黒鉛電極の値上げ発表や、黒鉛電極は半導体の部材として使用されているため、米半導体株の上昇も追い風となりました。8位のファーストリテイリング(9983)は、9/19(木)、傘下のGUの基艦店をNYに開業。今後の事業成長に欠かせないとし、ユニクロと同様に北米の出店舗計画を掲げています。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/13~9/20・図表8)には、首位の三越伊勢丹ホールディングス(3099)を筆頭に、小売業や陸運業など、円安による業績拡大が期待できる企業が多数ランクインしました。ただ、下げ幅は概ね小さくとどまっているもようです。

9月第4週(9/24-27)の日経平均は、米国株の上昇を追い風に、始値は前日比447円高でスタート。今週は、経済指標次第で、FOMC後に広がった米経済の楽観ムードが後退する可能性もあり、注意が必要と考えられます。9/26(木)は3月末決算企業や9月末決算企業の権利付き最終日で、配当落ちが市場全体の下落材料となるでしょう。また、米国では主要指数が最高値を更新している中、7-9月期の四半期末が到来予定。ポジション調整による売りの発生に、ご注意ください。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(9/13~9/20)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(9/13~9/20)

米金融緩和後も円安と日本株上昇が続く理由は?

先週は日米で金融政策の方針を決める注目の会議が行われました。

まず、米国で開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利であるFFレート誘導目標が4.75-5.00%と、市場予想を上回る0.50%ptの大幅利下げが発表されました。また、同会合で公表されたFOMC政策メンバーによる政策金利見通し(通称:ドット・チャート)では、2024年末にかけて今回の利下げに加えて、更に2回(0.25%pt×2回)の利下げ見通しが示されるなど、前回(6月時点)よりも大幅に引き下げられました。米国の金融政策は2022年の利上げスタートから大きく引締められてきましたが、ここにきてようやく金融緩和方向へ舵が切られることになりました。

一方、日本の日銀金融政策決定会合では、サプライズ利上げとなった前回(7月)会合から、今回は金利据え置きが発表されました。植田日銀総裁は、金利据え置きの背景の1つとして、「円安に伴う輸入物価の上振れリスクは相応に減少した」と言及。しかし、その一方で「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と発言。従来のタカ派姿勢を維持したことで、市場では当面、追加利上げのタイミングなどが注目されることになると考えられます。

図表9 FOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)

金融政策においてハト派色が強まった米国とタカ派維持の日本、金融政策の方向性から見れば、円相場において円買い、ドル売り(円高・ドル安)が意識されそうですが、日米の政策後は、日米間の金利差が拡大して、円安・ドル高傾向が強まっています。

この背景には米国金利のうち、特に長期金利の上昇が挙げられます。一般的に金利は2年国債利回りなど比較的に年限が短めの金利は金融政策の見通しを反映し、10年国債利回りなど長めの金利は景気見通しを反映し易いと言われています。FOMC後に長期金利が上昇したのは、(大幅利上げによる影響も含めて)米国の景気見通しが改善したためと言えます。

確かにこのところの米国経済指標見ると、雇用統計など一部の経済指標は弱い結果のものもありましたが、個人消費関連の経済指標は堅調に推移しており、米国経済の底堅さを示す結果が続いていました。このため、市場では米国が景気後退(ハードランディング)を回避して、景気減速(ソフトランディング)から、金融緩和によって再び景気が勢いを取り戻す、との期待が高まりました。これが米長期金利を上昇させて、景気回復期待を伴ったリスク選好による株高と、円安・ドル高につながったと考えられます。

ちなみに図表10は米国10年国債利回りとエコノミック・サプライズ・インデックス(ESI)の推移を見たグラフです。ESIは米国で発表される各種経済指標の結果と、市場予想の乖離を表した指数であり、経済指標が市場予想を上回る(下回る)と指数は上昇(低下)します。ESIは歴史的に見て上昇と低下を循環する傾向があり、現状は上昇局面にあると考えられます。つまり現在は経済指標を通じて景況感の改善が意識され易く、米長期金利の上昇により円安・ドル高傾向が続きやすいと考えられます。

図表10 米10年国債利回りとESI

日本株にとっては円安地合いとなることで輸出株主導の株価回復が期待されます。米国景況感の改善が大きく進めば、いずれ米国の利下げ観測が後退して、金利上昇が米国株の足かせになる可能性には注意する必要があり、この点は慎重に見極めていく必要があります。しかし当面は、米景況感の改善が、リスク選好と円安・ドル高を通じて日本株の追い風になることが期待されるでしょう。

図表11 円相場と日経平均

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