「トランプ大統領」が就任!今後は?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実
2025/01/21
日経平均軟調。トランプ氏の大統領返り咲き控え、見定めムード
1月第3週(1/14-17)の日経平均株価は、前週末比738円94銭安(▲1.9%)と、年初からの軟調さが継続しました。週初は、米長期金利の高止まりや、米政権による先端半導体の対中輸出規制見直し案発表等が、半導体関連株を中心に下落圧力となりました。週半ばは、米インフレ指標(コアCPI)が予想を下振れたうえ、伸び鈍化を好感して、米長期金利が低下しました。直後の日米株式市場で主要株価指数は上昇したものの、翌週にトランプ氏の大統領就任式や日銀会合等の重要イベントを控え、上値は限定的でした。
日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(1/10~1/17・図表7)の首位は、トラック大手の日野自動車(7205)です。米国でのエンジンの認証不正問題を巡り、米当局との和解を発表。制裁金を含めた最終的な負担額は、一部報道で計15億ドル程度になるとされていますが、想定の範囲内でした。市場では悪材料出尽くしとの見方が広がり、買いが入った格好です。他には、FA機器メーカーが堅調で、2位にはファナック(6954)、10位にはキーエンス(6861)がランクイン。国内証券会社が各社の受注動向が回復傾向であることから、業界の投資判断を2段階引き上げました。それに伴い、前述の2社も目標株価の引き上げがなされた形です。
日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(1/10~1/17・図表8)の首位は、アドバンテスト(6857)です。1/10(金)に上場来高値を付けた反動や、米バイデン政権による対中輸出規制強化が嫌気されました。5位は同じく半導体関連株のレーザーテック(6920)でした。
1月第4週(1/20~1/24)は、1/20(月)に米国で、トランプ氏が第47代大統領に正式に就任しました。これまで、景気刺激策に対する期待感が広がる一方、関税強化や対中輸出規制強化などが懸念材料として意識されてきました。2017年~2021年の第1次トランプ政権では、米中貿易摩擦が世界的な株価下落圧力となりました。トランプ氏は「就任初日」での公約実行を計画し、動向に大きく注目が集まってきました。
日本時間1/21(火)午前時点の東京株式市場は、米政策に関する報道で一喜一憂する展開が続いています。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(2025/1/10~1/17)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(2025/1/10~1/17)

「トランプ大統領」が就任!今後は?
米トランプ新大統領は米国時間1/20(月)に就任し、演説を行いました。「アメリカの黄金時代が始まる」とし、国境に軍隊を派遣して不法移民対策を強めるほか、環境政策をバイデン政権から転換し、化石燃料の採掘を重視すること等が唱えられました。新大統領による就任演説の概要は図表9の通りです。
焦点の関税政策については、中国、メキシコ、カナダ等を中心に貿易慣行や通貨政策等を調査するとし、関税賦課の具体策発表は見送られました。関税強化は米国の物価上昇圧力を高め、日本の自動車産業等に悪影響が大きいと懸念されていたため、1/21(火)の東京市場では取引開始直後、日経平均が買われ、外為市場では円高・ドル安が進展し、一方で自動車株は買い直されました。
しかし、日本時間1/21午前10時過ぎに「トランプ氏、メキシコ・カナダに2月に25%関税検討」との一部報道が紹介されると、日経平均株価は伸び悩み、外為市場では円が反落しました。
自動車株等にとっては不透明感が残る内容とみられますが、日本を含む世界を対象とした関税賦課の具体策が触れられなかったことは当面の不透明感の後退につながりそうです。日経平均株価は当面、38,000~40,000円のボックス圏で膠着状態が続く可能性が大きそうです。
図表9 トランプ大統領週に演説の概要と想定される影響

トランプ政権がスタートし、2025年における米国の政策金利はどうなるでしょうか。
米国の政策金利(FFレート誘導目標)は、米国時間昨年9/18発表の0.5%、同11/7発表の0.25%、同12/18発表の0.25%と3会合連続の引き下げ(累計で100bps)により、現在は4.25~4.50%となっています。
足元の米国経済は強い内容のものが目立つ一方で、インフレ関連指標は落ち着きをみせています。追加利下げを抑制する材料と、促す材料は拮抗していると言えそうです。
図表9において、青い棒グラフはCME「Fedウォッチ」において、2025年末の各金利が何%織り込まれているのかを示しています。薄い青色の棒グラフは、前回FOMC直後の昨年12/23時点の織り込み度合いを、濃い青色の棒グラフは本年1/20時点の織り込み度合いを示しています。利下げ観測に若干後退の兆しはあるものの、大勢感に大きな変化はないとみられます。
すなわち、2025年のFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ回数について、FOMCメンバーの予想の中心が2回であるのに対し、市場の同予想は1回という見方にも大きな変化はないと見受けられます。
こうした中、1/20(月)のトランプ大統領就任演説では、外国からの輸入に関税を賦課する方針は示されましたが、具体策の開示は見送られました。ただ、メキシコ・カナダからの輸入については25%の関税賦課の可能性が報道され、事態は流動的となっています。また、国境対策強化による労働市場の逼迫により、賃金上昇圧力は残りそうです。米政策金利の引き下げ余地は縮小しつつあるように思われます。
図表10 2025年末の米政策金利は?

日本の10年国債利回りはこの約15年間、前半は利回り低下局面、後半は同回復局面となりました。2025年1月、同利回りは一時1.25%と約13年ぶりの高水準になりました。
日本の10年国債利回りはリーマンショック(08年9月)、東日本大震災(11年3月)、日銀による異次元の金融緩和(23年4月)を経て、2016年~2020年には世界的金融緩和局面下で低水準(マイナス金利の局面も)が続きました。さらに2022年までは基本的に低い水準で上限しました。
しかし、2022年12月に日銀が国債変動許容幅を広げた後、流れが変わり始めました。2023年4月に植田総裁が就任。同年7月、10月にはYCC(イールドカーブコントロール)を修正、24年3月マイナス金利解除、24年7月政策金利再引き上げを経て、現在は金利を正常化するプロセスにあるとみられます。
本年1/20時点では、1/24(金)に結果発表の日銀金融政策決定会合で、政策金利が0.25%から0.5%に引き上げられるとの見方が優勢になっています。また、利上げ実施後、市場コンセンサス(Bloomberg)では年末までに0.25%の利上げがあと1~2回あるとの見方が優勢です。それに合わせ、日本の10年国債利回りは1.38%前後まで上昇するとの見方が市場コンセンサス(Bloomberg)になっています。
トランプ政権が成立しましたが、日本を含む世界の国々に関税を賦課する具体論が見送られたため、株価が急落するリスクは後退したとみられます。また、トランプ政権はドル安を志向するとの見方は根強く、円高は日米関係維持の面から許容されやすいため、政策金利・長期金利に上昇余地があり、円高・ドル安は進みやすいとみられます。
図表11 上昇基調を強める日本の長期金利(月足・本年1/17時点)

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