上昇続く日本株市場~そろそろ波乱に注意?

上昇続く日本株市場~そろそろ波乱に注意?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2025/05/13

日経平均4週続伸!各国交渉が進展し、米関税政策発動前の水準まで株価回復

5月第1週(5/5~5/9)の日経平均株価は、前週末比672円64銭高(+1.83%)と週足ベースで4週続伸し、トランプ大統領による関税政策発動前の3月下旬の水準まで回復。米英間での関税協議が合意に達するなど、米関税政策を巡る懸念が世界的に後退しました。また、期中には米中貿易協議が週末(5/10~11)にスイスで開催されることが明らかになり、交渉進展への期待感が広がった格好です。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/2~5/9・図表7)の首位は、NTTデータグループ(9613)です。8日(木)に親会社のNTT(9432)が、同社を完全子会社化するため約2.3兆円のTOB(株式公開買い付け)実施を発表。7日(水)の終値は2,991.5円でしたが、発表後は買い付け価格の4,000円付近まで計34%超上昇しました。また、3月決算企業の本決算発表シーズンが佳境を迎え、IHI(7013)や味の素(2802)などの主力好決算銘柄も複数ランクインしました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/2~5/9・図表8)では、医薬品が3銘柄並びました。期中、トランプ米大統領は医薬品株への関税を2週間以内に発表する意向を述べ、警戒感から売りが広がりました【*現地時間11日(日)、トランプ米大統領は予告していた発表内容は、「薬の価格の大幅な引き下げ」だったことを明かしました。】。2位のオムロン(6645)や3位のダイキン工業(6367)などは、会社計画の業績見通しが市場予想を下回り、決算内容が嫌気された格好です。今回の決算発表シーズンでは、米関税政策による不確実性を背景に、慎重な業績見通しを発表する会社が複数見受けられました。

5月第2週(5/12~16)となり、日本時間12日(月)夕方、米中貿易協議の詳細が明らかになりました。米中両国は共同声明で、互いに関税を115%引き下げることに合意したと発表。米国は中国製品への輸入関税を145%→30%、中国は米国製品への関税を125%→10%に引き下げることになり、株式市場ではリスクオンムードの拡大が一段と加速しました。12日(月)の米国株式市場はS&P500が前日比3.25%高、13日(火)の日経平均株価は9時半時点で2%超高を付けました。楽観的な見方が広がった一方で、米金利先物市場では、FRBによる年内の予想利下げ回数の主流が3回→2回に減少し、中長期的な懸念材料となり得ると市場から指摘する声も聞こえています。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/2~5/9)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/2~5/9)

上昇続く日本株市場~そろそろ波乱に注意?

日経平均株価の値戻しが継続しています。4/7(月)に一時30,792円の安値を付けた後は反発基調となり、5/13(火)の取引開始時点では38,000円台を回復しました。

5/12(月)に、米国が中国からの輸入にかかる関税145%のうち、91%は撤廃、24%は90日間停止し、当面は30%に引き下げると発表。中国も米国からの輸入にかかる関税125%を当面10%に引き下げることで合意しました。米国は日常品や、玩具、電子機器、機械等多くの物品を中国から輸入しており、中国への関税は、物価高を通し、米国企業、消費者に悪影響が大きいと懸念されてきました。今回の合意で、そうした懸念が後退し、米国株の大幅高につながりました。

5/12(月)の米株高を好感し、5/13(火)の東京株式市場も大きく買いが先行しています。日経平均株価の寄り付きは、前日比505円高の38,149円となり、本年3月下旬以来の高値水準を回復しています。市場のムードは大きく改善し、当面は強気な見方も増えそうです。

ただ、日経平均株価は昨年秋以降本年2月下旬まで続いたボックス相場(おおよそ38,000円~40,000円)の水準は過去の累積出来高も多く、今後は戻り売りの増加に要注意です。テクニカル的には、中長期的な相場の方向感に影響する200日移動平均線(5/12時点で37,915円)に届いてきたことで、目標達成感も醸成しやすいとみられます。

さらに、当面は以下の観点からも反落に要注意となりそうです。

①日経平均株価はトランプ大統領が「相互関税」を打ち出した4/2(水)終値を回復

②日経平均株価の複数のテクニカル指標に過熱感が台頭

・25日移動平均線からのプラス乖離率(通常はプラス7~8%以上で「上げ過ぎ」)が7.9%(5/12時点)(図表9参照)

・RSI(相対力指数・14日)が87%(通常は70%以上で「上げ過ぎ」)※

③企業業績の先行きには不透明感が強まってきている。日経平均株価の予想EPSも低下の兆し

④米国経済が悪化し、物価が上昇に転じるまではタイムラグがあると予想され、楽観視するのは時期尚早であること

東京株式市場は決算発表シーズンが佳境を迎え、好決算銘柄が上昇に寄与している面もあります。しかし、5/15(木)で2025年1~3月期の決算発表はおおむね一巡し、例年であれば、その後は商いが細りやすくなるタイミングです。5月後半の株式相場には要注意です。

短期的な高値警戒感に注意が必要となる一方で、中期的な見通しは改善されつつあります。25日移動平均線自体の下落が5/7(水)に底を打ち、以降上昇に転じているためです。財務省が5/12(月)に発表した「対外及び対内証券売買契約等の状況」によると、海外投資家は4月、日本の株式及び債券を8兆円超買い越し、2005年以降で最大を記録しました。

世界最大の経済大国であり、世界から投資資金を集めてきた「米国一極集中」の動きに対し、世界の投資家が資金の分散を図り始めている可能性があります。東京株式市場は過熱感から、仮に短期的な押し目を形成しても、押し目は買われる可能性が大きそうです。

※RSI(相対力指数:Relative Strength Index)

一定期間の株価騰落幅絶対値の合計を分母、上昇した日の上昇幅合計を分子とし、その比率で計算されます。たとえば

1日目100円高、2日目100円安という相場推移で、この2日間のRSIを計算する時

RSI=100/(100+100)=50% と計算されます。

多くの場合、RSIは14日間で計測されています。70%以上で「上げ過ぎ」、30%以下で「下げ過ぎ」という評価になり、相場の転換点の判断に使われます。

図表9 日経平均株価と25日移動平均線乖離率

損失は限定的!日経平均の予想に応じたオプション取引戦略を動画でご紹介

新着記事(2025/05/13)

信用取引のご注意事項

信用取引に関するリスク

信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。

信用取引の「二階建て」に関するご注意

委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。

ご注意事項

・ 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。

・ 必要証拠金額は当社証拠金(発注済の注文等を加味した証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。

・ 当社証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。

・ 証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、またはお客さまごとに変更することがあります。

・ 「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は原則新規建てしたセッションに限定されます。なお、各種設定においてセッション跨ぎ設定を「あり」とした場合には、プレクロージング開始時点の証拠金維持率(お客さま毎の証拠金掛目およびロスカット率設定に関わらず必要証拠金額は証拠金×100%で計算)が100%を上回っていれば、翌セッションに建玉を持ち越せます。「HYPER先物コース」選択時は必要証拠金額は証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。

先物・オプションの証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)

・ 指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。

・ 日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

・ 日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。

・ 日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。

・ 指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。

・ 未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。

・ 「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は委託手数料を機関投資家から受け取ります。

・ J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。

・ SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。