「日経平均上昇一服」で注意すべきことは?

「日経平均上昇一服」で注意すべきことは?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2025/05/20

日経平均5週続伸!だが、企業業績の先行きは暗い?

5月第2週(5/12~5/16)の日経平均株価は、前週末比250円39銭高(+0.67%)と週足ベースで5週続伸。米国と各国との貿易交渉の進展・進展期待を背景とした株高が継続しました。週初、米中両国は共同声明で、互いに関税を115%pt引き下げ(24%は90日間停止)に合意したことを発表。1-3月期の決算発表が終盤となり、選別物色が広がりました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/9~5/16・図表7)では期中に決算発表を行い、業績実績や見通しが好感された銘柄のほか、6位の商船三井(9104)など、決算発表後の株価下落で値ごろ感から買われた銘柄もありました。首位は、大丸松坂屋百貨店やGINZA SIXを運営するJ.フロント リテイリング(3086)です。X(旧Twitter)上で、シンガポールの物言う株主による株式取得観測が広がり、思惑買いにつながった模様です。同じく百貨店を運営する三越伊勢丹ホールディングス(3099)が連れ高となり、5位にランクインしました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/9~5/16・図表8)の首位は、ディー・エヌ・エー(2432)です。5/9(金)大引け後の決算発表では、今期(26.3期)業績見通しの開示を行わず、短期的には前期(25.3期)大ヒットした『Pokémon Trading Card Game Pocket』の反動が生じると考えていると述べています。今回の決算発表シーズンでは、先行きの不確実性などを理由に業績見通しを非開示とする企業が多くありました。また、会社計画の業績見通しを公表した銘柄の中でも、米関税政策等により保守的な数値を掲げた銘柄も多く、日経平均構成銘柄の予想1株利益は、2,480円(2025/3/31)→2,444円(2025/5/19)と低下しました。

5月第3週(5/19~23)の日経平均は、下落スタート。前週末の米国市場では、格付け会社ムーディーズが政府債務増加を理由に、米国債の信用格付けを最上級の「Aaa」から「Aa1」に引き下げました。東京株式市場では、警戒感から株式売りが優勢な展開となりました。同期間は、複数のFRB当局者による発言が予定されています。米国と各国との貿易交渉が進展を見せ、FRBによる年内利下げ予想回数が減少しており、金融政策に関する動向が市場を左右する展開が続くと想定されます。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/9~5/16)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/9~5/16)

「日経平均上昇一服」で注意すべきことは?

東京株式市場では前週(5/12~5/16)、米中協議を経て両国が当面関税を引き下げる妥協が成立し、米国株が総じて上昇。日経平均株価も一時、3月下旬以来の38,000円台を回復しました。

ただ、日経平均株価がトランプ政権から「相互関税」が提示された4/2(水)以前の水準を回復し、2月下旬まで続いたボックス相場の下限である38,000円台を回復したことで、戻り売りが出やすくなっています。5/16(金)には米国で、格付け機関であるムーディーズ・レーティングが米国長期発行体格付け等を最上位の「Aaa」から「Aa1」に引き下げました。今後、米国債が売られ(金利が上昇し)、円高・ドル安が進んだ場合、日米株式市場にも逆風が強まる可能性がある点に注意が必要です。

こうした中、東京株式市場では3月決算企業を中心とする決算発表がおおむね一巡しました。5/19(月)時点で、日経平均採用銘柄の業績見通しを示唆する日経平均予想EPS(1株利益)は2,444円となりました。決算発表本格化直前で、ちょうど1ヵ月前となる4/16(水)時点の2,477円から、若干低下したことになります。(図表9)

日経平均株価はこれまでおおむね、企業業績の方向感を示す予想EPS(1株利益)の増加を織り込む形で上昇してきました。逆に、予想EPSの減少は日経平均の先行きにとって、逆風になりやすいとみられます。

図表9 日経平均株価と予想EPS

日経平均株価と予想PERの関係は以下の通りです。

予想PER=日経平均株価÷予想EPS

前述した通り、4月以降日経平均株価はかなり値を戻しました。一方、日経平均株価の予想EPSはやや減少しました。

日経平均株価の予想EPSが企業業績という「現実」を、予想PERが市場の強気・弱気という「心理」を表すならば、4月以降の株価反発は、企業業績という「現実」に不透明感が強まる中、トランプ大統領による関税政策への懸念が後退するという「心理」の改善により上昇してきた形です。今後日経平均株価が上昇するのには、予想EPSの底打ち・上昇が望ましいところです。

それまでは、今期業績見通しの強弱を手掛かりとした選別物色が続く可能性がありそうです。

図表10 日経平均株価と予想PER

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