選別物色中心の展開、業績面でのけん引役は?

選別物色中心の展開、業績面でのけん引役は?

投資情報部 鈴木英之 栗本奈緒実

2025/05/27

日経平均6週ぶりに反落。米減税政策による赤字悪化や、関税を巡る懸念が再燃

5月第3週(5/19~5/23)の日経平均株価は、前週末比593円25銭安(▲1.57%)と週足ベースで6週ぶりに反落。米国と各国間の貿易交渉の進展などを背景に5週続伸していましたが、上昇一服となった格好です。

市場の焦点は、関税から米財政への不安に移りました。トランプ大統領が掲げる減税案が、米財政赤字を悪化させるとの懸念が広がり、5/21(水)には株・債券・通貨のすべてが売られるトリプル安が発生。同日の米長期金利は4.6%と本年2月以来の高水準を記録しました。週内最終日は、米関税政策を巡る懸念が再燃。トランプ大統領は、EUに対して50%の関税をかけると表明し、アップルを含むスマートフォンメーカーに対しても、米国内で製造しない場合、25%の関税を課すと警告しました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/16~5/23・図表7)の首位は、古河電気工業(5801)です。5/21(水)に開催された中期経営計画の進捗説明会では、データセンタに使用される光ファイバ・ケーブル、光部品向けに売上高が拡大するとの見方を示したことが好感されました。また同社はBABA法(Build America, Buy America)に合致する米国での一貫生産体制が整っており、米国の関税リスクなどの影響を受けにくい点が強みの一つです。同期間は、同じく電線大手のフジクラ(5803)や、住友電気工業(5802)が連れ高し、ランクインしました。2位の三菱重工(7011)や、3位の日本製鋼所(5631)、5位のIHI(7013)は、トランプ大統領が原子力発電を増強する命令に署名すると報じられ(5/23に実際に署名)、原子力発電関連銘柄として選好されました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/16~5/23・図表8)の首位は、京成電鉄(9009)です。5/21(水)に25.3期業績と中期経営計画を発表。配当方針や26.3期の予想配当額が市場の期待に届かず、失望売りにつながりました。同社はOLC(4661)の株式を20%弱保有する筆頭株主であり、アクティビストの要求などもあり25.3期に一部保有株式を売却。株式売却資金による株主還元に期待感が募っていました。

5月第4週(5/26~5/30)の日経平均株価は、上昇スタートしました。5/26(月)の日本時間朝、トランプ大統領はEUに対する50%の関税発動を6/1(日)から7/6(日)に延期すると表明し、リスクオンムードから先物主導で上昇した形です。しかし、再びトランプ大統領の発言に一喜一憂する展開となり、市場の警戒感は取り除かれていない状態が続いています。週内は、AI向け半導体大手のエヌビディアが決算発表予定で、関税政策による業績見通しの変化などに市場の注目が集まっています。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル・円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(5/16~5/23)

図表8 日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(5/16~5/23)

選別物色中心の展開、業績面でのけん引役は?

5/26(月)の東京株式市場では日経平均株価が続伸しました。トランプ米大統領が5/23(金)に「欧州から米国への輸入に、6/1から50%の関税を導入する」と示唆したものの、5/25(日)の欧州委員長との電話会談で「欧州からの輸入製品に対する関税は7/9まで延期する」ことに同意したと伝えられ、投資家の安心感が強まりました。

もっとも、5/26(月)の東京株式市場では、上値の重さも意識されているようです。トランプ米大統領は、米国へ輸入されるすべてのスマートフォンに25%関税を課すとしており、そちらの懸念は晴れていません(日本時間5/26時点)。

世界的な金利上昇も懸念材料です。米国では、5/16(金)にムーディーズ・レーティングスが米国長期発行体格付け等を引き下げた後、5/21(水)には米20年国債の入札が不調という結果になりました。5/22(木)には大規模な支出が懸念される米税制・歳出法案が下院を通過するという経緯があり、米30年国債利回りが2023年秋以来の5%台に上昇し、10年国債利回りも本年2月以来の4.5%台を付けています。問題は米長期金利の上昇にもかかわらず、円高・ドル安が進んでいることで、米国からの資金流出が懸念されます。

そうした中、3月決算企業等の決算発表シーズンが終了。2026年3月期の上場企業純利益は減益が見込まれています。日経平均の実績PER14.88倍に対し、予想PERは15.46倍(ともに5/26時点)と上昇が見込まれており、やはり減益が織り込まれている形です。日経平均株価の予想PERは2024年以降、一時を除きおおむね15~17倍程度で推移してきましたが、減益見通しにより市場心理が低下すると、PERは低めの推移に代わる可能性があります。その意味でも、日経平均株価の上値は重くなる可能性がありそうです。

図表9は日経平均株価採用銘柄について、今期予想純利益の金額が大きい順に20銘柄を列挙したものです。予想金額が大きい分、日経平均採用銘柄の予想1株当たり利益に大きく影響することが想定されます。金利が上昇局面にあり、銀行株の業績見通しが総じて好調なようです。半導体関連株も堅調な利益の伸びが期待されています。自動車、電気機器等の大手は、トランプ関税による混乱をどう乗り越えていくのか、難しい舵取りが求められることになりそうです。

日経平均株価の上値が重い状況は続くとみられ、当面は選別物色の展開が予想されます。

図表9  日経平均株価の予想純利益額ランキング

損失は限定的!日経平均の予想に応じたオプション取引戦略を動画でご紹介

新着記事(2025/05/27)

信用取引のご注意事項

信用取引に関するリスク

信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。

信用取引の「二階建て」に関するご注意

委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。

ご注意事項

・ 本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。

・ 必要証拠金額は当社証拠金(発注済の注文等を加味した証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。

・ 当社証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。

・ 証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、またはお客さまごとに変更することがあります。

・ 「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は原則新規建てしたセッションに限定されます。なお、各種設定においてセッション跨ぎ設定を「あり」とした場合には、プレクロージング開始時点の証拠金維持率(お客さま毎の証拠金掛目およびロスカット率設定に関わらず必要証拠金額は証拠金×100%で計算)が100%を上回っていれば、翌セッションに建玉を持ち越せます。「HYPER先物コース」選択時は必要証拠金額は証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。

先物・オプションの証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)

・ 指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。

・ 日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

・ 日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。

・ 日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。

・ 指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。

・ 未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。

・ 「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は委託手数料を機関投資家から受け取ります。

・ J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。

・ SBI証券で取り扱っている商品等へのご投資には、商品毎に所定の手数料や必要経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります(信用取引、先物・オプション取引、商品先物取引、外国為替保証金取引、取引所CFD(くりっく株365)では差し入れた保証金・証拠金(元本)を上回る損失が生じるおそれがあります)。各商品等への投資に際してご負担いただく手数料等及びリスクは商品毎に異なりますので、詳細につきましては、SBI証券WEBサイトの当該商品等のページ、金融商品取引法等に係る表示又は契約締結前交付書面等をご確認ください。