【8月相場の展望】大幅安の後、次の最高値更新の鍵は?

【8月相場の展望】大幅安の後、次の最高値更新の鍵は?

投資情報部 栗本奈緒実 根津真由子

2025/08/05

利益確定売り優勢。週明けも波乱

7月第5週(7/28~8/1)の日経平均株価は、前週末比656円63銭安(▲1.58%)と週足ベースで反落しました。日米企業の決算発表や金融政策決定会合を控え、利益確定売りや持ち高整理の売りが優勢となったことが背景です。7/29~7/30に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)、および7/30~7/31の日銀金融政策決定会合では、いずれも政策金利の据え置きが発表されました。

日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(7/25~8/1)の首位は富士電機(6504)でした。通期の連結営業利益予想を1,180億円から1,245億円(前期比5.8%増)に上方修正したことが買い材料となりました。7/31に発表された25年度第1四半期決算では、エネルギーおよびインダストリーセグメントが業績をけん引し、売上高・営業損益ともに過去最高を更新したとしています。
第2位は電線御三家の一角であるフジクラ(5803)です。世界的なデータセンターの建設の加速を背景に、光ファイバーケーブルや光部品などの光関連製品への需要が高まり、AI関連銘柄として買いが集まりました。電線御三家のなかでも、北米向けデータセンターに強みを持つとされています。

一方、日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(7/25~8/1)首位は東京エレクトロン(8035)でした。日経平均構成銘柄の中で3番目に大きいウェイト(6.8%)を占める同社は、今期業績予想の下方修正が嫌気され、一時ストップ安になるなど大幅に下落し、1銘柄で日経平均を498円押し下げる場面(8/1)もありました。7/31に発表された26年3月期第1四半期決算では、通期の連結営業利益予想を7,270億円から5,700億円に引き下げ、期末配当予想についても従来の373円から240円に引き下げました。

8月第1週(8/4~8/8)の日経平均株価は大幅安でのスタート。8/1(金)に発表された米雇用統計では、7月非農業部門雇用者数が7.3万人増と市場予想(同10.5万人増)を下回ったうえ、過去2か月分が25.8万人分下方修正されたことを受けて米主要株価指数は大幅下落しました。一時、節目の4万円を割り込む場面もありましたが、押し目買いが入り、下げ渋る展開となりました。ドル安/円高の進行により輸出関連株を中心に嫌気されたほか、米株市場での半導体株安の流れを受け、国内の関連株にも売りが先行しました。

図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景

図表2 日経平均株価

図表3 NYダウ

図表4 ドル/円相場

図表5 主な予定

図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定

図表7 日経平均株価採用銘柄の騰落率上位(7/25~8/1)

図表8  日経平均株価採用銘柄の騰落率下位(7/25~8/1)

【8月相場の展望】大幅安の後、次の最高値更新の鍵は?

米労働市場の減速が示唆され、8/4(月)の日経平均株価は508円90銭安(前日比▲1.25%)となりました。取引時間中は、大台の4万円を割り込む場面もありましたが徐々に下げ渋りました。

株安の原因となった米7月雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが予想を下振れたうえ、5月・6月の数値が合計で約26万人と、2020年のコロナ禍以来の大きさの下方修正となりました。回答率の低下が影響したとの指摘が市場から聞こえてきますが、トランプ大統領は労働統計局(BLS)の局長を解任し、政治的干渉への懸念も広がっている状況です。現在の米株市場は景気減速リスクに敏感な状態といえるでしょう。金利先物市場では、FRBの9月利下げ観測予想が92%まで織り込みが進み、年内予想利下げ回数も3回が主流に変化しました(日本時間8/4時点)。

東京株式市場では、4~6月期の決算発表シーズンが本格化しています。今四半期はトランプ米大統領が関税政策を開始。先行き不透明感の台頭により、企業の設備投資が鈍化しました。そのため、主力半導体関連株を中心に通期会社計画を下方修正した会社も多々あり、苦しい四半期という印象があります。しかし、実際のTOPIXの業績予想の温度感を測るリビジョンインデックスは図表9の通りです。

【リビジョンインデックス】とは、企業の業績に対する、アナリストの業績予想がどの程度「上方修正」されたか、「下方修正」されたか、そのバランスを数値化した指標です。数値が上がる程、企業業績に対する市場の期待が高まっていることを示しています。

図表9  【TOPIX17業種】 2025年7月 今期・来期 月次リビジョンインデックス

TOPIX構成銘柄のうち、上方修正された銘柄は511社に対し、下方修正銘された銘柄は519社とほぼ拮抗でした。上方修正が1社のみだったエネルギー資源の項目を除くと、電力・ガス、運輸・物流などの内需株の業績見通しが強くなりました。トランプ関税の影響を受けにくく、関税政策に関する急激な動きがあった際も底堅い値動きで、相場全体の下支え役になると考えられます。7月末時点では、4-6月期決算の発表済み企業は全体の4分の1程度ですが、決算発表シーズンの出だしは時価総額の大きい会社が比較的多く、全体の方向を占う上でも有用です。

日経平均株価に影響する米国株式市場も上昇余地があると考えられます。S&P500構成銘柄の決算発表済み企業の中で、市場予想を上回ったポジティブサプライズ銘柄の割合は8割超です(8/4時点)。また、金融政策の面でも株高が期待できます。第1 次トランプ政権では、強硬な通商政策 → 景気指標の弱含み → FRB の利下げ という順で株高局面に転じました。

現在の第 2 次政権下でも同様のシナリオが意識されるものの、米インフレ率がなお高止まりしているため、FRB は利下げ再開を躊躇している状態です。

図表10  第1次トランプ政権下でのS&P500の推移(2018年~2019年)

図表11  米国 小売売上高

そこで今注目されるのが7 月の米小売売上高と7月消費者物価指数(CPI)です。弱さが確認されれば、8/21(木)〜23(土)開催のジャクソンホール会議でパウエル議長が“利下げの地ならし”を示す余地が高まり、株価押し上げ要因となり得ます。

バンク・オブ・アメリカ・インスティテュートのカード支出データ(Consumer Checkpoint: Summer temperature check, 2025/7/10)は速報性が高く、個人消費の先行指標とされます。同レポートによれば 6 月のカード支出は必需物販が小幅反発した一方、旅行・外食など裁量サービスは 3 カ月連続減少。特に低所得・若年層の失速が目立ち、求人統計以上に“雇用の体感”が悪化していると示唆されます。

これら先行シグナルは、「7 月統計の弱含み → 利下げ地ならし」という市場シナリオを補強する材料と言えるでしょう。


8月は「夏枯れ相場」と言われるように、機関投資家の動きが鈍くなることが想定されます。ちょっとした材料で、株価がいつもより上下に振れやすくなる可能性があるため、想定外の動きにも注意をする必要があります。

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