日経平均急落! 日経VIと併せて確認しておくべき指標は?

投資情報部 土居雅紹
2026/10/20
日経平均急落時に日経VIがスパイク
日経平均株価は日々の値動きは荒くなっていますが、長期トレンドで見れば引き続き高値圏にあります。また、日経225オプションの市場価格から算出される日経平均ボラティリティー・インデックス(「日経VI」)も高水準で推移しています。通常、株価が上昇基調にあるときは日経VIの水準が低下しやすいとされますが、直近ではその関係が崩れている状態が続いています。背景には、トランプ関税ショック、中東情勢の緊迫化とそれに伴う原油価格高騰、世界的なインフレの進展と日米政策金利の利上げ、AI・半導体関連株の急騰・急落など、先行き不透明感を強める材料が相次いでいることがあります。
株式市場では、こうした変動性(ボラティリティ)指標を株式相場の先行きを読むヒントとして注目する動きがあります。日経VIに加えて、米国のS&P500オプションの取引価格から算出されるCboe Volatility Index(「VIX」または「恐怖指数」)、ナスダック100オプションから算出されるCboe NASDAQ 100 Volatility Index(「VXN」)、原油ETFのオプションから算出されるCboe Crude Oil ETF Volatility Index(「 OVX」)まで視野を広げると、日経平均の値動きについて異なる角度からの手がかりが見えてきます。今回はこれら4つの変動性指標と日経平均株価の関係を振り返り、投資判断への活用ポイントを探ります。
図表1 日経平均株価と日経VI、VIXの推移(2007/5/10-2026/10/15)
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日経平均を占うカギはOVXとVXN?
■日経VI・VIXは「同時進行」のシグナル
2007年5月以降の日経VIとVIXの推移を日経平均株価と比較すると、両指標とも株価急落時にスパイク(一方向への急激な値動き+直後の急反転)する「同時進行」の傾向があるように見えます。2008年8月からの世界金融危機や2020年3月のコロナショックでは数日間で株価は急落、日経VIとVIXは急騰となりました。2011年3月の東日本大震災や2024年8月の植田ショック、2025年4月のトランプ関税ショック、2026年3月の急落では、突発的なイベントの性格もあって、株価急落と日経VIのスパイクは同時に発生しています(イベントの性格が日本限定の場合は、日経VIだけ上昇してVIXの上昇が限定的となることもあります)。このため、「日経VIやVIXが上昇し始めたらそろそろ注意」という売買の先回りシグナルとして使うことは難しいとみられます(図表1)。特に、2025年1月の第2次トランプ政権発足以降は、日経VIの高水準が常態化しており、従来の相場の荒れやすさの目安とすることもあった日経VI30〜40台という水準から読み取れる情報量は低下している可能性があります。
一方、取引の参考になりそうな特徴として、日経VIかVIXのいずれかが50を超えた場面では、数ヵ月程度かかる場合もあるものの、日経平均株価が底を打って上昇に転じやすい傾向が見られます(図表1のオレンジ色点線の水準)。この利用法であれば、相場急落時に待機資金で買いに転じるタイミングを計るシグナルとして一定の有用性があるといえそうです。また、日経VIに比較して相対的に低位で安定しているVIXを併せて見ることで、混乱が広がっているのが日本市場だけなのか、あるいは世界的に市場が動揺しているのかを判断する有用性が増すと考えられます。
なお、日経VIの水準がVIXを上回っていることが多い理由については、私見ではありますが、日経225オプションの買い需要の強さ(コールでもプットでもどちらか一方でも買い需要が多ければボラティリティは上昇)、業者間市場でオプションの売り手となることが多かった仕組債販売の減少などが考えられます。一方のVIXの水準を押し下げ得る要因としては、米国市場でのカバードコールETFの普及、満期が1日のオプションを売り建てる投資家の増加などが考えられます。これらの状況が今後も続くのであれば、日経VIがVIXよりも高い状況が継続しやすくなると思われます。
■VXN・OVXで日経平均株価の「外部要因」を探る
VIXや日経VI以外の情報源として有用とみられるのが、Nasdaq100オプションから算出されるVXNと、原油ETFオプションから算出されるOVXです。日経平均株価はAI・半導体関連株の急騰を主因に上昇してきたため、その多くのハイテク企業が含まれるNasdaq100の値動きは、S&P500よりも日経平均株価への影響が強く出る可能性があります。このため、Nasdaq100の予想変動率ともいえるVXNが上昇する局面では、日経平均株価も軟調になりやすいと考えられます(図表2の緑色線がVXN)。
また、日本は原油輸入への依存度が高く、原油価格の上昇は国内経済に悪影響を及ぼします。このため、OVXが低下する、つまり原油価格上昇への不安が低下する局面では、時間差を伴いながらも日経平均株価の上昇につながりやすいとみられます(図表2のオレンジ色点線の楕円の局面、茶色矢印がOVXの方向、黄色矢印が日経平均株価の方向)。2008年12月にはOVXがピークを付けて急低下した後、日経平均は2009年3月に底打ちして上昇しています。2016年初めの世界同時株安から6月の英国のEU離脱(Brexit)、その後のトランプラリーと続いた局面、コロナショック、ロシアによるウクライナ侵攻後のOVX下落局面、2026年3月のOVXスパイク後の下落局面においても、OVXが大きく低下した後に日経平均株価が上昇基調に転じています(図表3)。
■指標の組み合わせ方と留意点
以上を踏まえると、日経VIまたはVIXが50を超える場面を待機資金で日本株の買いポジションをとるタイミングの第一の目安とし、併せてVXNやOVXがスパイク後に下落傾向にあることを確認して投資判断に用いる、という組み合わせ方が一案と考えられます。特にOVXが下落基調を維持するのであれば、インフレ圧力の後退や金利低下を伴いながら、企業業績に好影響があると考えられるので、日経平均株価が堅調となりやすいとの見方に説得力があります。
ただし、この分析はあくまで過去の限られた期間における観測事例に基づくものであり、再現性を保証するものではありません。また、日経VIの高止まりが常態化している現状は、従来の経験則の有効性そのものを変化させている可能性もあります。実際の投資判断にあたっては、主要国の政治状況、金融政策や為替動向などを総合的に検討する必要があります。
まとめ
日経VI・VIXのスパイクは日経平均株価急落の「結果」として現れやすく、先回りのシグナルとしては使いにくい一方、日経VI50超えという極端な水準は待機資金投入の目安になる可能性があります。また、VXNはAI・半導体関連株を含む米国のハイテク株の地合い、OVXは原油価格高騰による日本経済への逆風を映す指標として、日経平均株価の先行きを探る補助指標になりそうです。もっとも、日経VIの高止まりが常態化するなど、各種指標の傾向は変化し得るため、単独の指標に依存せず、複数指標とファンダメンタルズを組み合わせた総合判断が重要です。
本レポートは過去データおよび筆者の分析に基づくものであり、将来の相場動向を示唆・保証するものではありません。また、特定の商品や投資手法を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身の資産状況、投資目的、リスク許容度などを踏まえて行ってください。
図表2 日経平均株価とVXN、OVXの推移(2007/5/10-2026/10/15)
図表3 イベント発生時期、OVXのスパイク/ピークアウト時期と日経平均株価の反応
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